おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

フォレスト・ガンプ/一期一会

2020-02-26 10:34:08 | 映画
「フォレスト・ガンプ/一期一会」 1994年 アメリカ


監督 ロバート・ゼメキス
出演 トム・ハンクス
   サリー・フィールド
   ロビン・ライト
   ゲイリー・シニーズ
   ミケルティ・ウィリアムソン
   マイケル・コナー・ハンフリーズ
   ハンナ・R・ホール
   ハーレイ・ジョエル・オスメント

ストーリー
アラバマ州グリンボウで、幼い日のフォレスト・ガンプは、母の女手一つで育てられた。
小学校に入ったが、友達は最初の登校日にスクールバスで席を譲ってくれた美しく優しい少女ジェニーだけで、
ある日、同級生たちにいじめられたフォレストは、ジェニーの「走って!」という声で猛然と駆け出した。
その駿足が買われ、数年後、フォレストはアメリカン・フットボールの選手として大学に入学。
ジェニーは彼の存在が邪魔になる時もあったが、なぜか憎みきれず、ある雨の降りしきる夜、すぶ濡れの彼を女子大の寮にこっそり招き入れ、裸の胸にそっと抱いた。
大学を中退したジェニーはヌード劇場で歌っていたが、会いに来たフォレストの前から去る。
5年後、彼はベトナム戦争に出征し、従順なフォレストは過酷な状況下でも言われるままに行軍する。
激しい銃声を背にフォレストは走ったが、あまりに走りすぎたため隊を見失ってしまう。
彼はジャングルに戻り、親友のババと尊敬するダン小隊長を助けるが、ババは彼の腕の中で息絶えた。
両足を失ったダンは、なまじ命を救われたことを恨み、彼をなじった。
フォレストが首都ワシントンで大統領から栄誉勲章を送られた日、首都では平和大集会が開かれていた。
見物に行った彼とジェニーは再会したが、反戦運動にのめり込みヒッピー生活を送っていたジェニーは彼の一途な愛を受け入れることなく、同志たちと去って行った。
ケガの治療中に病院で卓球を覚えた彼はたちまち腕を上げ、中国で開かれた世界選手権大会に出場。
たちまち有名人となったフォレストはエビ漁船を買ったが、それは亡きババとの約束だった。
母の死をきっかけに故郷に帰ったフォレストの前にジェニーが現れたが、彼女はまた1人で去って行った・・・。


寸評
自分の過去を誰かに語り掛けることで物語が進行していくという構成は時々用いられる手法だが、この作品ではフォレスト・ガンプの話を聞く相手が次々と変わっていくのが新鮮だ。
フォレスト・ガンプがいる場所がバス停なので、バスを待つ人が相手となるので時間と共に対象者が代わる。
その相手も、話の進行とともにキャラクターが話に合わせた人となり、的を得たよいキャスティングだった。
目に付くのは過去のニュース映像や、それらへの合成シーンで、この映画の持つ一つの魅力となっている。
幼いフォレスト・ガンプにギターを教えたのがエルビス・プレスリーで、成人してからはケネディ大統領、ジョンソン大統領、ニクソン大統領と会っていて、ジョン・レノンとも対談している。
あたかも会話を交わしているように編集されていて、観客へのサービスシーンとなっていた。

もう一つのキーワードがジェニーの発した「走って!」という言葉だ。
彼女の叫びで、フォレスト・ガンプは矯正器具を弾き飛ばして俊足を披露する。
IQは低いのだが、俊足を買われてフットボール選手として大学に入学し、試合ではその俊足を披露する。
ベトナム戦争に従軍した時に攻撃を受けたが、彼女の言葉通りジャングルを走って逃げて生き延びている。
ひとりになったフォレスト・ガンプは、ただ走りたいという気持ちだけで米国中を走り回る。
走ることは彼にとって人生そのものでもあった。

フォレスト・ガンプはIQは低いが、正直者で素直で優しさを持つ男だ。
子供の時に親しくなったジェニー一人を最後まで愛し続けた。
同様に戦友のババを愛し、ダン小隊長を愛した。
ダン小隊長の命を救うことはできたが、ババは死んでしまう。
ジョンソン大統領から議会栄誉勲章を贈られる時に、冗談で戦場で負ったお尻の傷を見せてほしいものだと言われ、本当にズボンを脱いでお尻を見せるなど、滑稽なシーンも多い。
しんみりとするシーンも多いのだが、同時に上記のような滑稽シーンも多いので作品自体は重くない。
逆に言えば、重厚な作品にもなったと思うが、むしろ全体的には軽い感じがする作品で僕好みではない。
しかし第67回アカデミー賞では作品賞を受賞しているし、主演のトム・ハンクスは前年の「フィラデルフィア」に続いて主演男優賞を受賞しているから、この作品を評価する人も大勢いるのだろう。

フォレスト・ガンプの人生を描いた作品だが、ジェニーの人生も描かれる。
彼女は彼と出会ったり、別れたりを繰り返しているが、心が安らぐ相手はフォレストだけだったと思う。
父親の虐待を受けていたようだから、フォレストの母親との関係とは真逆の関係だったのだろう。
女子大に入ったが、大学の服を着てグラビア誌に登場したことで退学となり、フォレストがベトナムに出征する時には、落ちぶれてストリップ劇場で働いている。
フォレストが議会栄誉勲章を贈られる時には反戦活動を行うヒッピーの仲間になっている。
ある日ジェニーは彼の前に現れ幸せな日々を過ごすがフォレストに黙って家を出ていってしまう。
そのように出会う度に様子の違うジェニーなのだが、あまり恵まれた環境ではない。
その彼女が最後に見せる姿は美しいし、そして感傷をもたらすラストの締めは良かった。