おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ファンタジア

2020-02-20 09:47:58 | 映画
「ファンタジア」 1940年 アメリカ


アニメーション監督 ベン・シャープスティーン
動画監督      ウォード・キンボール

ストーリー
8つの古典名曲の調べに合わせておのおのの動画が展開し、映画は7つの部分に分かれている。
(1) 『トッカータとフーガ・ニ短調』バッハ(1685-1750)作曲。
音のもつ色合と動きをそのままスクリーンの色彩と動きに変えたもの。
(2) 『組曲くるみ割り人形』チャイコフスキー(1840-1893)作曲。
チャイコフスキーがホフマンのお伽噺『くるみ割りとネズミの王様』をバレエ化しそのバレエ音楽中8曲を選んで組曲としたもので、映画ではそのうちの6曲である。
1金平糖の踊ー『露の精』の幻想が動画となる 。2中華民国の踊ー『キノコの踊』の動画。3葦笛の踊ー『開花のバレエ』の動画。4アラビアの踊ー『水のバレエ』の動画。5ロシアの踊ー『あざみの少年とらんの少女』の幻影。6花のワルツー『秋の精、ひめはぎのバレエ、霜の精、雪の精』の動画。
(3) 『魔法使いの弟子』デュカ(1865-1935)作曲。
ミッキー・マウスが登場する。
(4) 『春の祭典』ストラヴィンスキー(1882-1971)作曲。
全体は2部に分かれた舞踊曲。第1部が8曲、第2部が6曲から成っている。
映画は地球の発生から生物の誕生、巨大な動物たちの斗争から太陽の讚歌で結ぶ。
(5) 『田園交響曲』ベートーヴェン(1770-1827)作曲。
虹の女神アイリス、黄金の車を駆るアポロ、月の女神ダイアナ、夢の神モルフェウスの幻想の動画。
(6) 『時の踊り』ポンキエリ(1834-1886)作曲。ワニの王がカバを頭上に捧げる。ワニとカバ全員の踊りの動画。
(7) 『禿山の一夜とアヴェ・マリア』前者はムソルグスキー(1839-1881)、後者はシューベルト(1797-1828)作曲。
『禿山の一夜』の夜明けの牧歌を巡礼のみあかしに続け、高い木の幹の間をぬって進む『アヴェ・マリア』の歌声に移す。


寸評
僕が生まれる前の1940年に作られた映画だが、僕が最初に見たのはそれから50年も経ったころだったと思う。
その時は出来栄えの素晴らしさに驚嘆し、アニメ映画の最高峰だと思ったのだが、その思いは今もって変わることはない。
アニメは全編を通じて一言も発せず、その間に音楽が流れているだけだから、はたしてこれをアニメ映画としても良いものかどうか。
むしろ音楽映画と言っても良いのかもしれない。

オープニングでブルーのスクリーンを背景にオーケストラが準備に入るので、アニメを期待していると面食らう導入部に続き、指揮者レオナルド・ストコフスキーによる映画の簡単な説明が入る。
指揮者の彼は音楽について3種類あると説く。
一つは物語を伝える音楽で、二つ目は物語のない映像に彩りや描写を与える音楽で、三つ目が音楽の為の音楽ということらしい。
そして三つ目の音楽から始まる映画音楽は「トッカータをフーガ 二短調」で、途中から音楽に合わせて幾何学模様のアニメーションが映し出される。
次の音楽はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」で、ピーターパンに登場するティンカー・ベルのような妖精が飛び回り、キノコや花、金魚などが画面上を動き回るのでアニメ映画らしさが出てくる。
キャラクターは「金平糖の踊り」、「中国の踊り」、「葦笛の踊り」、「アラビアの踊り」、「コサックダンス」、「花のワルツ」と色々なダンスを見せてくれる。
そして一番目の物語を伝える音楽が始まり、おなじみのミッキーマウスが登場する。
魔法使いの帽子をかぶったことで魔力を手に入れたミッキーが、自分のやっていた水くみの仕事をホウキにやらせるというストーリーとなっていて、音声のないアニメ映画という感じだ。
最後にはアニメのミッキーとストコフスキーが合成されるのは、制作された年代では驚きだったかもしれない。

次のパートは歴史劇である。
科学映画ではないが生命の誕生から恐竜が出現し滅びるまでが描かれる。
そしてオーケストラの休憩が入り、再開時にはそれぞれの楽器のチューニング・シーンがあって、この場面を見る限りにおいては音楽映画の色彩が強いが、そこでストコフスキーによってサウンドトラックの説明がなされる。
映画フィルムには映像が収められたコマの外側に細いスペースがあり、そこに光学的に音が記録されている。
音が波の形で記録されているこのスペースをサウンドトラックと言うのだが、そのイメージの映像が展開される。
映写室で映画フィルムを扱っていた学生時代が懐かしい。
そしてベートーヴェンの「交響曲第六番 田園」が始まる。
田園のイメージに物語を付加すると言う二番目の音楽だ。
ユニコーンや女のケンタウロスが登場する神話の世界が描かれている。
「時の踊り」が繰り広げられ、「禿山の一夜」、「アヴェ・マリア」でフィナーレを迎える。
アニメのスムーズな動きを見ると、作画枚数の膨大さが想像できるし、格調の高さは年代を経ても鑑賞に堪えうるもので、ウォルト・デズニ―の執念が感じ取れる作品だ。