おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

大脱走

2019-10-01 08:43:48 | 映画
「大脱走」 1963年 アメリカ


監督 ジョン・スタージェス
出演 スティーヴ・マックィーン
   ジェームズ・ガーナー
   リチャード・アッテンボロー
   ジェームズ・コバーン
   チャールズ・ブロンソン
   デヴィッド・マッカラム
   ハンネス・メッセマー
   ドナルド・プレザンス
   トム・アダムス
   
ストーリー
新たに作られたドイツの北部第3捕虜収容所に、札つきの脱走常習者・連合軍空軍将校たちが運び込まれた。
しかし早くも“心臓男”と異名をとったヒルツ(スティーブ・マックィーン)は鉄条網を調べ始めるし、ヘンドレー(ジェームズ・ガーナー)はベンチをトラックから盗み出す始末だ。
まもなく、ビッグXと呼ばれる空軍中隊長シリル(リチャード・アッテンボー)が入ると、大規模な脱走計画が立てられた。
まず、「トム」、「ディック」、「ハリー」と名付けられた森へ抜ける数百フィートのトンネルが同時に掘り始められた。
全員250名が逃げ出すという企みだ。
アメリカ独立記念日にトムが発覚してつぶされたが、ほかの2本は掘り続けられた。
しかし、あいにくなことに掘り出し口が看取小屋の近くだったため、脱走計画は水泡に帰し、逃げのびたのはクニー(チャールズ・ブロンソン)と、彼の相手ウィリイ(ジョン・レイトン)だけであった。
激怒した収容所ルーゲル大佐(ハンネス・メッセマー)が、脱走者50名を射殺したと威嚇した。
やがて、“勇ましい脱走者”の生存者を乗せたトラックが到着したとき、ゲシュタポの車が収容所の入口に止まり、ルーゲルは重大過失責任で逮捕された。
かくてドイツ軍撹乱という彼らの大使命は果たされたが、幾多の尊い生命が失われていった。
再び収容所に静けさが訪れたが、ヒルツやヘンドレイは相変わらず逃亡計画を練りあちらこちらでその調査が始まっていた。


寸評
第二次大戦中、脱出絶対不可能とうたわれたドイツの捕虜収容所から、連合軍捕虜が大量脱走したという実話の映画化だそうで、人物設定などを脚色しているが実話であることが冒頭にテロップされる。
その題材の面白さもさることながら、見せ場に次ぐ見せ場を盛り込んだ脚本と、ダイナミックな演出によって痛快な娯楽作品に仕上がっている。
監獄からの脱獄物を除けば、脱走映画でこの作品を凌ぐものは出て来ていないのではないかと思う。
捕虜収容所ものとしても一、二を争う出来になっていると思う。
オープニングと同時に捕虜を乗せたトラックの車列が映し出され、エルマー・バーンスタインのメロデイが心地よくながれ、一気にワクワク感がアップしてあっと言う間の3時間弱である。

脱走映画となればその手口が興味しんしんで、作業の消音方法だったり、必要書類の入手方法など見ていて飽きない。
トンネルを掘っているので、掘り出した土の運び出しとか、運び出した土の処理に困るはずなのだが、これがまた面白おかしく描かれている。
戦争の悲惨さを訴える映画ではないので、捕虜収容所の理不尽な仕打ちなどのシーンは少ない。
わずかに脱獄を繰り返す一人が絶望をきたし、その挙句に鉄条網によじ登り射殺されるくらいだ。
ドイツ軍の捕虜収容所って案外と自由で、捕虜が結構な待遇でもって扱われていたことにむしろ驚くくらいだ。

脱走は紆余曲折を経ながら決行されるが、当初の脱走人数250名が76名で終わってしまうなど、大成功に終わって万々歳とならないところもいい。
収容所内は陽気と言ってもいい雰囲気が漂っていたのだが、ひとたび脱走した途端にシビアで残酷な面が突きつけられるのも場面展開的にいい。
脱走するよりも、脱走してから方が大変なのだということがわかる逃走劇もテキパキとしていて的確だ。
特にスティーヴ・マックィーンの格好よさは特筆もので、私生活でもバイク好きの彼がドイツ軍から奪ったオートバイで草原を疾走し、中立国スイスとドイツの国境線上に設けられた中間地帯にジャンプして着地し疾走する姿は”カッコイイ!”以外に言いようがない。
鉄条網にぶつかり捕えられるシーンまでかっこいい。
このバイクでの逃亡シーンは結構長くて、当然ながらこの映画の見せ場の一つとなっている。

76名の脱走者の内、50名は射殺され、11名が連行され、さらにヒルツが加わるので14名が逃げ延びたことになるが、描かれるのは3名のみ。
ほのぼのとした足取りの者が逃げ延びるのは意図的なものか?
最後に、この映画を50名の戦没者に捧げると字幕が出るが、彼等の名誉のためか彼等の射殺シーンは音声のみで写しだされない。
戦争は悲惨でさけなければならないことだが、この映画はそんな事を感じさせない痛快戦争娯楽映画である。
テーマ曲である「大脱走マーチ」も小気味良い。
見終わった後では口笛でメロディを吹いてしまいそうな軽快感がある。