ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

戦争と国際法(その1)

2023-11-16 10:39:35 | 日記
イスラエル軍がガザ地区最大の病院「シファ病院」に突入した。このことが国際社会に大きな衝撃を与え、あれこれ物議を醸している。イスラエル軍のこの行為が非難されるべき不届きな行為であることは言うまでもない。
問題は、この行為を非難すべき「理由」の説明である。きょうの朝日新聞は、この突入事件を大きく取り上げ、客観的・公平な報道の姿勢をとりながらも、随所でイスラエルを非難する姿勢をのぞかせている。その非難の「理由」が、「国際法に違反しているから」というものであることが興味深い。
(以下の朝日新聞からの記事本文の引用は、長ったらしいものの、私のこの見解を裏づける役割しか果たしていない。忙しい人、うざったいと思う人は、読み飛ばしていただいて結構である。)




「パレスチナ自治区ガザ地区に地上侵攻するイスラエル軍は15日未明、ガザ市にある地区最大規模のシファ病院で突入作戦を始めた。同軍は、病院の地下にイスラム組織ハマスの司令部があると主張。院内には患者ら数千人の民間人がとどまっているとみられ、治療が止まり、さらに戦闘に巻き込まれる懸念が広がっている。
イスラエル軍は同日午前2時(日本時間午前9時)すぎの声明で『内偵情報と作戦上の必要性に基づき、病院内の特定の場所でハマスに対する標的を絞った作戦を実施している』と発表。院内の『ハマスのテロリスト』に投降を求めた。
『人間の盾』にされている民間人に危害が及ばないよう、医療チームを伴い、新生児用の保育器や食料を戦車で運び込んだと主張した。国際法違反の可能性が高い、病院への軍事作戦に踏み切ったことで、国際的な批判が高まるのは必至だ。
イスラエル軍高官は15日昼、『作戦は進行中』としたうえで『(病院が)ハマスの拠点である証拠が見つかった』と明かした。
英BBCは院内の目撃者の話として、戦車6台とともに兵士100人以上が敷地内に侵入し、『動くな』とアラビア語で叫びながら、救急病棟に入ったと伝えた。その後、院内にいる16歳から40歳の男性全員を銃で追い立てて病院の中庭に集めているという。
シファ病院をめぐっては、米国家安全保障会議のカービー戦略広報担当調整官が14日、ハマスなどが病院から指揮統制しているとする米国の独自情報があると発言。バイデン大統領は同日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話協議していた。作戦が米国の動きの直後に始まったことを踏まえ、ハマスは声明で「すべての責任はイスラエルとバイデン政権にある。(米国は)イスラエル軍が民間人にさらなる虐殺を行うことへのお墨付きを与えた」と批判した。
一方、ガザ地区への人道支援をめぐり、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は15日、地区内で物資を運ぶ国連機関のトラック用の燃料2万3千リットルを受け取ったと発表した。ガザへの燃料搬入が認められたのは初めて。病院の発電などに使うことはできず、国連の支援活動で1日に必要な量の9%にすぎないという。」
(朝日新聞11月16日)


「イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区のシファ病院に地上部隊を突入させた。病院の地下にイスラム組織ハマスの司令部があるとみているからだ。多数の負傷者や避難民が集まる病院への突入に、国際社会からは非難の声が上がる。
15日午前1時半。イスラエル軍の戦車などの地上部隊が動き出したのを、朝日新聞の電話取材に応じた腎臓専門医は院内から目撃した。
戦車は病院から約200メートルまで迫り、包囲を続けていた。いつか起きるだろう――。男性医師はそう考えていた。14日夕方からは銃撃音が続いていた。戦車が位置を変え、何らかの作戦を展開する準備を進めているように見えていたからだ。
『病院長に会いたい』
部隊の司令官は院内に入ると開口一番、そう話したという。入ってきた兵士たちは、まず救急医療部門へ。外科部門をはじめ院内や地下の捜索を進めた。その後、兵士たちは医師やスタッフ、避難してきた人たちの様子を確認。院内には不安や恐れ、混乱が広がったが、銃撃戦や衝突は起きなかったと振り返る。
病院の敷地内には約2千人の医療スタッフや市民らが残っているとみられている。英BBCは、敷地内に戦車6台、兵士100人以上がいることを確認したと報じた。
パレスチナ紙によると、イスラエル軍に包囲され、電気や食料不足の状態が続く病院の中庭には集団墓地がつくられ、179人が埋葬された。廊下には埋葬しきれない遺体が転がり、腐敗臭が広がっているという。
 イスラエル軍は病院の近くでの戦闘は認めつつも、病院への銃撃や砲撃は否定してきた。だが、敷地近くにいる市民の一人は朝日新聞通信員の取材に、『病院内の廊下を歩いていても銃撃された。だから多くの市民は移動ができず、遺体を墓地に運ぶこともできなかった』と証言した。
地域最大規模のシファ病院は、これまでのイスラエルとの軍事衝突でも、負傷者治療の最前線の役割を果たしてきた。なぜイスラエル軍は、突入に踏み切ったのか。
シファ病院があるガザ市には、ガザ地区全体の軍事・政治の拠点が集まる。イスラエルは、ハマス軍事部門の司令部など主要施設が病院地下のトンネル内に置かれ、患者や医療関係者を『人間の盾』にしていると主張。ハマスは否定するが、イスラエル軍はガザ全域でのハマスの支配を弱体化させるために、病院の攻略が必要だとみていた。
突入前日の14日、米国家安全保障会議のカービー戦略広報担当調整官は、米国が独自に集めた情報の分析結果として、ハマスや、ガザで活動する別の武装組織イスラム聖戦が、シファ病院に『武器を保管し、施設に対するイスラエルの軍事作戦に対応する準備をしている』などと述べた。その上で、こうした行為は『戦争犯罪』にあたると指摘。空爆や銃撃戦は望まないとし、『ハマスの行為により、ガザの市民を守るイスラエルの責任が軽減されることはない』と留保をつけつつも、イスラエル軍による病院の包囲や突入そのものには異を唱えない姿勢を示していた。
■『がくぜん』『非常に心配』批判
 イスラエル軍がシファ病院に突入したことを受け、国際社会からはイスラエルを批判する声が上がる。
 国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)はX(旧ツイッター)に『がくぜんとした』と投稿。『新生児や患者、医療関係者や市民の保護は何より優先しなければならない』と訴えた。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も、シファ病院の医療関係者と連絡が取れないとXに投稿し、『非常に心配している』と述べた。
国際人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』(HRW)のイスラエル・パレスチナ担当は、カタールの衛星放送局アルジャジーラに対し『いかなる証拠も、病院が国際人道法の下に保護される地位を奪うことを正当化しない』と発言した。
米国内では、イスラエルとパレスチナを支援する市民らが、それぞれデモ行進などを実施。サンフランシスコではパレスチナへの連携を呼びかけるデモ行進があり、参加者は『いますぐ停戦を』などと訴えた。
一方、ワシントンで行われた親イスラエル派の大規模集会では、『停戦反対』と正反対の訴えをするプラカードが掲げられた。民主党の上院トップ、シューマー院内総務や共和党のジョンソン下院議長らも参加し、ハマスにとらえられた人質の早期解放などを求めた。
■<考論>双方の行為、各国が注視を 早稲田大法学学術院・萬歳寛之教授(国際法)
イスラエル軍によるシファ病院における軍事作戦では、国際人道法上の『文民病院』の保護に関する規定を踏まえ、同法違反が成立しない外観をつくろうと意識して、イスラエル軍が情報発信している印象がある。
ジュネーブ諸条約の第4条約は『文民病院はいかなる場合にも攻撃してはならず(中略)保護を受ける』とする。一方、『病院がその人道的任務から逸脱して敵に有害な行為を行うために使用された場合』で『合理的な期限を定めた警告が発せられ(中略)警告が無視された』ならば保護が消滅すると規定する。
イスラエル軍はこの規定を強く意識して、ハマスの行為や、軍の警告・避難の呼びかけで、シファ病院への保護が消滅し、少なくとも作戦が国際人道法の要請に沿っているとの外観をつくる努力をしていると思われる。
一方、イスラエルと米国はハマスがシファ病院を軍事拠点として、民間人を『人間の盾』として利用していると主張している。事実であれば、病院の民間人を巻き込むハマスの行為は、国際人道法違反や戦争犯罪に該当する可能性がある
国際法には限界があり、現在進行形の被害を止めるのは難しい。ただ、国際社会による事後的な検証には意味がある。各国は、双方の行為が国際人道法違反や戦争犯罪に当たるか注視し、常にプレッシャーをかけなければならない。」
(同上)


以上、非常に長ったらしい引用だったが、うざったいと思う人も、そうでない人も、この記事ではイスラエル軍の病院突入行為がもっぱら「国際法違反だ」という観点から非難されていることを確認していただければそれで充分である。
(つづく)

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