「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(18)

2013年12月17日 | 過去の物語
クリスマスイブ2日前の木曜日の午後9時頃、いつもより、八津菱電機華厳寮203号室に着いた沢村イズミ(24)は、田中美緒(22)に電話をしていた。

「イズミさん、今日早いね、いつもより」

と、美緒は楽しそうに話す。

「ああ、今日は少し疲れたから、早めに戻ってきたんだ」

と、イズミは、少し気を抜いて話している。

「美緒の声が聞きたくて、だから、早く戻ってきたんだ」

と、イズミが言うと、

「ほんと!わたしの声が聞きたくて、わざわざ早く帰ってきたの?」

と、美緒は、うれしそうにはしゃぐ。

「そうさ。美緒の声を聞くと、疲れが和らぐからさ」

と、イズミが言うと、

「じゃあ、いっぱい聞かせてあげるー。わー、わー」

と、はしゃぐ美緒。

「はははは・・・美緒はおもしろいなあ」

と、イズミはこころから喜んでいる。


「美緒、そういえば、イブの夜、会うだろ?」

と、イズミは、なんとはなしに聞いている。

「うん。もちろん、そのつもりだよー」

と、美緒は上機嫌で話している。

「俺、もう、プレゼント用意したぜ。今日出張帰りにデパートに寄って買ってきちゃった」

と、イズミが言うと、

「へーそうなの?わたしはねー。内緒!」

と、美緒は言う。

「内緒かー・・・ま、イブの夜を楽しみにしているよ」

と、イズミが言うと、

「うん。楽しみにしててー」

と、美緒は上機嫌で話している。

「こうやって話していると、今からでも、逢いたくなるな」

と、イズミ。

「うん。今から来る?それでも、いいよ」

と、美緒。

「うーん、俺がまだ、学生だったら、今ので、絶対に行ってるけど・・・今は社会人だから、明日を考えて、辞めておく。けっこう、つらいけど」

と、イズミ。

「わたしも逢いたいよー。イズミさーん」

と、美緒はうれしそうに言う。

「まあ、我慢我慢・・・それにイブの夜には、俺、行きたいところがあるんだ。だから、美緒、行き先は俺に任せてくれるだろ、イブの夜」

と、イズミ。

「うん。任せる任せる。イズミさんのこと、全面的に信頼してるから」

と、美緒。

「ふ。美緒のこと・・・最後までしっかり抱いてないし」

と、イズミ。

「そうだね。わたしもイズミさんに最後まで抱かれたい」

と、美緒。

「こういいながら、明日の夜、行っちゃったりして」

と、イズミ。

「イズミさんがそうしたいなら、それでも、いいよ」

と、美緒。

「まあ、大人だから、イブの夜まで、我慢するよ」

と、イズミ。

「イズミさん、強いんだね。えらいえらい」

と、美緒。

「ほめられちった」

と、イズミも美緒のしゃべり方が移ったよう。


二人の電話は、いつまでも、熱く続くのでした。


クリスマスイブから2日前の木曜日の午後10時頃。ガオはミサからの電話を受けていた。

「もしもし、ガオくん?」

と、リサが話す。

「はい。ガオです。リサさんですか・・・リサさんから、電話をくれるなんて、俺感激です」

と、ガオ。

「ねえ・・・イブの夜、会えるかしら・・・あなたとイブの夜を一緒に過ごしたいの。ホテルを取って、一晩中ベッドの中で・・・」

と、リサは単刀直入に話す。

「それは・・・いいですよ。でも、イブの夜なら・・・ホテル、僕に取らして貰えますか・・・実はリサさんと一緒に見たいイベントがあって・・・」

と、ガオも素直に話す。

「そう・・・いいわ。それはあなたに任せるわ・・・明日中にどのホテルに行けばいいか、留守電に入れておいて・・・そして、イブの夜に待ち合わせましょう」

と、リサが話す。

「もしもし、ガオくん・・・」

と、リサが改まって話す。

「はい、なんですか、リサさん」

と、ガオ。

「わたし、あなたのすべてが好きだったわ。ほんとうに、あなたのすべてが・・・だから、イブの夜は、あなたのすべてをわたしに頂戴。いいわね」

と、リサは言う。

「ホテルで一晩中裸で過ごす・・・それがどういう意味か、わからない僕でもないですよ」

と、ガオは言う。

「ふ。そうね。ガオくんは、大人だもんね」

と、リサ。

「イブの夜を楽しみにしてるわ。明日中に留守電、絶対よ。今日はあまり時間がなくて、ごめんね。じゃ」

と、リサは手短に言葉にすると、電話を切った。


「なんかいつものリサさんと、今日のリサさんは、違ったな・・・なにか、決意の電話みたいだった・・・いつもの感じが、全然なかった・・・」

と、ガオは少し訝しんだ。

「いつもは余裕って感じなのに・・・今日は何か切羽詰った感じだった・・・なにか、仕事でトラブルでもあったかな」

と、ガオは思っていた。

「しかし、イブの夜か・・・お互いが傷つかない形で、どうにか、出来るのかな・・・俺・・・」

と、ガオは思っていた。

「それとも、意志が流されて・・・いつもみたいに攻めこまれたら、思わず、彼女を抱いてしまうかもしれない・・・」

と、ガオは思っていた。


「とにかく、イブ次第だ・・・」

と、ガオは思っていた。


同じ頃。東堂賢一の妻愛美は、娘アイリのマンションに来ていた。

「それでママ、家出してきちゃったの?」

と、愛美と、一緒にお茶を飲んでいたアイリは、愛美の家出の経緯を聞いて、少し驚いていた。

「妻の気分を毎日害する旦那なんて、旦那として失格です。とにかく、わたしの旦那としては、大失格!」

と、愛美は愛美なりの哲学があって、家を出てきたようだった。


「男が外で働けるように、女は家の中全般やっているんです。だから、男が家の中に帰ってきたら、家の中を治めている女の気分を害してはいけないの」

と、愛美は話す。

「男も女も家の中においては、同格です。ただ男はいい気にさせておいた方が動かしやすいから、時に下手に出ることもあるだけ。意識の上ではむしろ、女の方が上なの」

と、愛美は話している。

「家の中を治めているのは、女なんだから、家の中では女のほうが上なのは、むしろ自然なことでしょう?違う、アイリ」

と、愛美は、お茶を白ワインに代えてくれとリクエストしている。

「それをあの人は、なんにも、わかっていない・・・しかも、キャバクラの女から電話のかかってくる携帯を使い続けて、腹が立つったら、ありゃしない!」

と、愛美は怖い顔をして話している。

「だから、わたしが壊してやったのよ。わたしが壊さなければ、絶対にあのひとは、あの携帯を理由をつけて、使い続けるつもりなんだから・・・」

と、愛美は怒りながら話している。

「あのひとは、いつもそう。理由をつけては、自分のやりたいことをしていたいだけなの・・・そういう理由を見つけるのは天才的なんだから、あのひとは・・・」

と、愛美は白ワインを飲みながら、話している。

「確かに、若いころは、そこが魅力的だったわ。くるくる頭の回転も速いし、やるとなった時のパワーはそれはそれはすごいし・・・」

と、愛美は、白ワインに少し酔いながら話している。

「あなたのことだって、一生懸命に守ってきたんだから、パパは・・・彼は何を置いてもあなたを守ったし、かわいがってきたのよ・・・」

と、愛美は、今度は、アイリの話に切り替わっている。

「そのアイリがこんなにやさしく、美しく成長して・・・そして、タケルくんみたいな、素敵な男性を見つけて・・・」

と、愛美は、アイリの今現在の話に移っている。

「アイリはタケルくんとうまくやってる?今度のイブはどんな風に過ごすの?」

と、愛美は、アイリに聞いている。

「それが・・・タケルは八津菱電機のお仕事で、今、ニューヨークに・・・1月末まで、帰ってこれないの・・・」

と、アイリは説明している。

「え?そんなに帰って来れないの・・・」

と、愛美はポカンとしている。

「でも、でも、ね。タケルはすてきなイブのショーを準備してくれたの。実は・・・」

と、アイリは、愛美の耳に、祐の優への告白ショーについて、こそこそしゃべる。

「17歳の少年が、17歳の少女に、愛の告白ですって・・・」

と、愛美は目をかっと見開いて驚いている。

「ね。素敵でしょう。そのプロデュースをわたしに頼んでくれたのよ・・・一生にたった一度しかない17歳の思い出作りを・・・」

と、アイリは夢心地になっている。

「まあ、わたしの56歳の思い出も一生に一度だけなんだけど・・・まあ、いいわ。わたしもそのショーを一緒に堪能するわ。いいでしょう?アイリ」

と、愛美も半分夢見心地。

「さ、今日はもう寝ましょう・・・いつも通り、アイリの部屋に布団敷いて寝ていいかしら・・・」

と、愛美は、アイリの部屋に、何度も泊まりに来ているらしい。

「ええ、もちろん!」

と、笑顔になったアイリは、とってもいい表情をするのでした。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午前7時頃。アイリの部屋の電話機が鳴る。

「はい。東堂です。あ、パパ・・・うん。大丈夫、ママ来てるから・・・随分怒ってたわ・・・今ダイニングで朝食作ってくれてるけど。うん」

と、アイリの部屋に愛美の様子を気にして、東堂賢一が電話をかけてきたらしい。

「そうねー。多分だけど、イブの夕方には、パパの元へ、帰ると思う。そういうひとだもん。イブの夜はパパたちと過ごすわよ。だって、いつものパーティーがあるじゃない」

と、アイリは楽観的に答えている。

「もちろん、わたしは行けないけどね。ちょっと別口の用事があるの・・・だから、悪いけど、今回も辞退させて・・・ごめんね、パパ」

と、アイリは嬉しそうに話している。

「そうだな。娘が楽しそうに話しているのに、それを邪魔するようなパパには、ならないよ・・・わかったわかった。おとなしくイブの晩を待つとするよ」

と、東堂賢一は、娘のアイリに白旗をあげていた。

「じゃあ、アイリも元気でな。よい、クリスマスイブを。メリークリスマース」

と、言ったところで、電話は切れた。


「巣立った娘は、なかなか、帰らんもんだなあ・・・まあ、いい。とにかく、愛美の居場所もわかったし・・・パーティーのメンバーも確保しなければいけないし」

と、東堂賢一は、気合を入れ始めた。

「そうか。愛美はイブの晩に帰ってくるとしたら、エイイチの相手として、白戸優里ちゃん(32)を推薦することを明確にしておけば、いいわけだ」

と、東堂賢一は考えている。

「ふむ。とにかく、今日中に、彼女を確保しておこう。あ、あと愛美へのクリスマス・プレゼントも用意しておかないとな・・・よし、すぐ出よう・・・」

と、東堂賢一は、あたふたと家を出ていった。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午前12時頃。清華女子高校の鈴木優(17)は、なんとなく、窓の外の空を見ていた。

「明日が、なんとなく、不安・・・」

そんな風に思っている。

「でも、タケルさんの頼みだし・・・」

そんな風に考えている。


鈴木タケルのニヤリとした顔を思い浮かべる。

少し心が暖かくなる。

思わず微笑む。


「大丈夫。彼がきっと守ってくれる」

そう思えた優は、笑顔になって、立ち上がっていた。


同じ頃。京王高校の滝田祐(17)は、なんとなく、窓の外の校庭を見ていた。

「明日、僕、がんばれるかな?」

そんな風に思っている。

「でも、タケルさんが、「お前なら大丈夫だ」って言ってくれた」

そんな風に考えている。


鈴木タケルのニヤリとした顔を思い浮かべる。

少し心が暖かくなる。

思わず微笑む。


「大丈夫。タケルさんの言った通りになる」

そう思えた祐は、笑顔になって、立ち上がっていた。


同じ頃。アイリとマミとアキは、Cafe 「Cou cou」で、昼食を食べていた。


「だから、明日の午後は、わたしのマンションで、17歳の恋愛告白ショーがあるのよー」

と、アイリはテンションマックスで、アミとマキの二人に説明していた。

「もちろん、タケルがかなり動いて話をまとめてくれたんだけど・・・でも、告白は、これは生ライブだから、失敗もある、息を飲むショーなのよ」

と、アイリは、少し大げさに話している。

「まあ、それに女の子は、タケルのいとこの鈴木優ちゃんで、これがほんとにお人形さんのように、かわいいの」

と、アイリは楽しそうに話している。

「そして、告白の本人は、京王高校期待の星、イケメン少年の滝田祐くん・・・17歳なのよー・・・」

と、アイリは楽しそうに話している。

「一生に一回の17歳のクリスマスイブ・・・その日に、ふたりの17歳の思い出が出来るの・・・イケメン高校生と美少女高校生の・・・」

と、アイリは説明を終えると、

「だから、明日の午後、わたしのマンションに来ない?」

と、アイリが聞くと、

「行く行くー」「行く行くー」

と、マキとアミは、目をハートマークにして、大声で、叫んでいた。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後4時頃。リョウコは公安の「攻性コンピューター室」で、さらにリサについて洗っていた。


昨日、アジトにセットされていた爆薬から、幾ばくかの情報がもたらされたからだ。

その線でリサを追っているが、状況ははかばかしくなかった。

「あの爆薬は、ごく一般的なモノだし、線を辿るには、不都合だわ・・・何かリサさん、痕跡を残していないかしら・・・」

と、何の気もなしに覗いたファイルに、大事な情報が隠されていた。

「って、言うことは、リサさんの目的って・・・」

と、驚愕した瞬間、リョウコは、佐伯涼(40)にまた、肩を叩かれた。

「そういうことだ。もっとも、その情報を復活させたのは、今、アメリカでCIAと仕事をしてくれてる、鈴木タケルくんだよ」

と、涼は言う。

「え?今、なんて?」

と、リョウコは驚愕する。

「鈴木タケルくん・・・そのうち、君の親戚になるんだろ。彼」

と、涼はさわやかな笑顔で、そう言う。

「あのー、えーと、彼は一般人のはずじゃあ・・・」

と、リョウコは混乱しながら、言葉を出す。

「ま、リョウコには、そういう関係だから、隠してたんだが・・・一度、日本でも、我々は接触を持っている。彼の洞察力は超一級品だ。使える男だ、彼は」

と、普段人を褒めない涼が、べた褒めだ。

「今回の件でも、君とガオくんを守るために、彼に動いて貰ったんだ。正解だったよ。その手が一番」

と、涼はさわやかに笑う。

「あいつニヤリとしてるぜ、きっと、寒いニューヨークでさ。あいつ、唯一寒さを苦手にしてるからな」

と、涼はおかしそうに笑う。

「今回の件では、彼にすべてを読み解いて貰った。リサの目的も、リサの所属も、そして、リサの目指しているモノも、すべてね」

と、涼は真面目そうに言う。

「それがすべてビンゴだった。だから、俺達も先手先手で動けたんだ。今頃CIAも動いて、ある人物を確保している頃だろう」

と、涼は真面目に言う。

「今、ニューヨークは、夜中の2時だ。寒いぜー。きっとくしゃみしてるぜ、アイツ・・・」

と、涼はおかしそうに笑った。


同じ頃。ニューヨークはミッドタウンに鈴木タケル(27)の姿があった。ニューヨークは、その時、深夜2時過ぎだった。気温はマイナス3度Cだった。

「12月のニューヨークなんて、来るんじゃなかった。アークッショ!」

と、タケルは寒さにガタガタ震えながら、鼻をかみまくっていた。

「だいたい知恵をあげるだけでいいって言ったのは、君じゃないか。実働部隊はあんたらが、やるって言ってたじゃん」

と、タケルは隣を歩いているマリー・スイフト(30)に、思い切り愚痴っていた。

「でも、あなたが確認するのが、一番確実だって、そう言ったのも、あなた自身でしょう?」

と、笑顔のマリー・スイフトは、タケルと行動するのが、楽しくってしょうがないらしい。

「ここだわ」

と、屈強なCIAのエージェント達が数人先導しながら、あるビルに入っていく。

そのビルの12階のとある部屋。エージェント達は簡単に鍵を開け、部屋に侵入すると、ひとりの男を見つけ出した。

「タケール!」

と、エージェントのヘッドの男がタケルを呼んだ。


タケルはその男を眺めると、親指を突き上げ、グッジョブポーズをした。


同じ頃。公安の「攻性コンピューター室」では、リョウコと涼の話し合いがまだ続いていた。

「多分、今回、リサの所属組織は、リサに関する、とある情報をリークするだろう。そうなれば、リサはもう日本にはいられない。彼女は数日中に帰国することになるだろう」

と、涼が話している。

「もう、我々がリサに会うことは、金輪際ないだろうな。次に会う時は、彼女は整形をしているはずだし、俺たちにはわからないさ」

と、涼は話している。

「とにかく、この仕事はゲームオーバーだ。処理終了。あとは、司法取引がなされて、決着がつく」

と、涼は話している。

「とにかく、リョウコは、身体を休めておけ。明日と明後日、クリスマス休暇をやるから、ゆっくりいい思い出でも作っておけ」

と、涼は笑う。

「それから、鈴木タケルには、ありがとうを言っておくんだな。あいつ、遠いアメリカから、君とガオって奴を守ってくれたんだからな」

と、涼は言うと、そのまま、笑いながら、部屋を出ていった。

「このわたしが、タケルさんに守られていたなんて・・・」

と、リョウコは、自分の身体を抱えながら、驚愕の表情を崩せなかった。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後5時頃。リョウコの兄、弁護士の東堂エイイチ(30)は、早めに自宅に帰宅していた。

「クリスマスか・・・いやな季節だ」

彼はいち早く、自宅に戻ると、シーバス・リーガルを煽っていた。

「賢一おじさんに、明日は昼間から飲もうって言われて、快諾したけど・・・まあ、イブなんて、俺には関係ないし・・・それしかないよな・・・」

と、エイイチは、さらに落ち込んでいた。


美田園美奈に、イブの誘いを断られて、エイイチの心の傷は、大きかった。

一度、誘いをオーケーされたことが、さらにエイイチの心の傷を大きくしていた。


「まあ、彼女にも、理由はあったんだし・・・でも、希望なんて見せないで欲しかった・・・」

エイイチは、さらにシーバス・リーガルを煽ると、哀しさで涙がこぼれた。


BOZZのスピーカーからは、エルビス・プレスリーの「ブルークリスマス」が流れている。

「冗談じゃないぜ・・・。ほんと、ブルークリスマスだな。今年も」

エイイチは、さらにシーバス・リーガルを煽り、涙を流していた。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後6時頃。沢村イズミ(24)は、内緒で、田中美緒(22)のアパートに来ていた。

「やっぱり、来ちゃった・・・なんて言ったら、あいつ、うれしがるかな」

と、イズミは、かなりルンルンの気分だった。


出張が直行直帰でよくなったおかげもあって、イズミは、スーツ姿のまま、田中美緒のアパートまで、来てしまったのだった。

ピンポーン!と呼び鈴を押すと、ガチャ!という音と共にドアが開けられる。

と、涙顔の美緒が現れる。

「美緒」「イズミさん・・・」

と言葉が交わされるが、すぐに美緒は、顔をそむける。

「美緒、どうした?」

と、イズミが言うと、美緒の向こうに肌色の風景がちらりと見える。

「イズミさん、ごめんなさい。今日は帰って・・・」

と言うと、泣き顔の美緒は、ドアをすぐに閉める。

「美緒・・・」

というイズミの声に、

「ほんと、ごめんなさい。今日は帰って・・・」

という美緒の言葉だけが響いた。


イズミは、立ち尽くしたが・・・そのイズミには聞こえていた・・・美緒の部屋から聞こえる、くぐもったような、男の声が。


つづく

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