クリスマス・イブを4日後に控えた火曜日の夜、10時頃、リョウコは、チーム涼のボス、佐伯涼(40)に呼び出されていた。
「重富リサ(30)の情報をフランスの対外治安総局(DGSE)がハックした証拠を見つけた・・・なるほど、これがそれね・・・」
と、佐伯涼は、ニヤリとしながら、リョウコが提出した資料を覗いている。
「リョウコも、この手にひっかかるとはなー。まあ、シナリオ的には、リサの所属機関であるDGSEに、リサがハックの方法を教え、そんで情報流出!みたいな話だろ」
と、佐伯は話している。
「は、はい。わたしは、そう見たんですが、それは誤り?」
と、リョウコが驚いたように反応すると、
「っていうかさ、DGSEともあろう者が、こんなにわかりやすい証拠を残すと思う?普通」
と、佐伯は笑顔で、さわやかに言う。
「ま、俺も若い頃に、CIAにいた時に、一時期所属したことがあるんだけど・・・もっとスパルタンな組織だぜ、あそこは・・・」
と、佐伯は、笑顔になりながら、言う。
「こんな失敗をやるような、甘ちゃんは、ひとりもいないよ。わかりやすい、アドバルーンあげ・・・いずれにしろ、リョウコがこの情報にぶち当たったことは、皆知ってる」
と、佐伯は言う。
「皆知ってる?」
と、リョウコが不可解な顔をすると、
「君がこの情報にアクセスした瞬間、君の情報が全世界の主要な諜報機関に流れるような仕組みさ」
と、涼は言う。
「・・・まあ、リサを追っているのが、リョウコだってことが、全世界的にバレちゃったってことだよ。もっともこれはリサがしかけた仕組みじゃない」
と、涼は言う。
「あのー、いまひとつ、よくわからないんですが・・・」
と、リョウコが言うと、
「まあ、いい。この件では、すでに、上が動いているし、実働部隊が動いているから、お前は、通常任務に戻れ。このこと、他言無用だぞ」
と、涼は、言うと、
「リサにも、気取られるなよ」
と、釘を刺すのを忘れない涼だった。
その直後、リョウコは、本部の建物を辞し、自宅マンションに向かう。
「どういうこと・・・リサさんがDGSEに所属しているかのように見せかけた?ということは、DGSE所属ではないってことね・・・」
と、リョウコは幾分混乱していた。
「涼さんの口ぶりでは、すでにリサさんに対する作戦が始まっているかのよう・・・わたしの勘は当たっていたってことになるわね・・・」
と、リョウコは考えていた。
「いずれにしろ、明日の勤務では、リサさんに会うことになるけど・・・まあ、いいわ。特に気にせず、いつも通りやるだけだわ・・・」
と、リョウコは結論を出すと、自宅に戻るべく、地下鉄の駅に降りていった。
クリスマス・イブを4日後に控えた火曜日の夜、午後10時頃、ガオはリサの家に電話していた。
ルルルルル、ガチャっと音がして、
「もしもし、ガオくんね」
と、リサが1コールで出てきた。
「こんばんわ、リサさん・・・昨日もいなかったから・・・今日もいないかと思っていたので、居てくれて、よかったです」
と、ガオは、少し嬉しそう。
「ふふ。ガオくんが、今日も電話してくれるって言うから・・・早く帰宅して待っていたの・・・ガオくんのこと考えていたら、胸が熱くなって、すぐに濡れちゃった」
と、リサは言う。
「いや、それは・・・」
と、苦笑するガオだが、
「僕もリサさんのこと、考えると、大きくなっちゃいますから、おあいこ、ですよ」
と、少しは大人になったガオだった。
「ふふ・・・そう大きくなるの・・・どれくらいの大きさなの、ガオくんのは?」
と、リサは相変わらずだ。
「え、それは・・・前測った時は、14センチくらいだったと思います」
と、ガオはあくまで、学究的に測ったのだった。
「あら、ちょうどいい大きさじゃない・・・太さは太いの?」
と、リサ。
「親指と人差し指で、丸をつくったくらいの太さかな」
と、ガオも、こういうネタに少し慣れたよう。
「いい感じの太さねえ・・・そんなモノが入ってきたら、さぞや気持ちいいでしょうに」
と、リサは喘ぐような声で言う。
「ガオくんは、どんな体位が好き?騎乗位は、好きかしら?」
と、リサは感情を込めて、言う。
「え?あ・・・はあ・・・そうですねー」
と、ガオは明らかに前回よりも落ち着きを取り戻している。
「リサさんが、そのー、騎乗位が好きなんですか?自分で動く方が?」
と、ガオは攻撃側に回る。今までになかったことだ。
「ふふ。ガオくんも少しは大人になったようね・・・」
と、笑うリサはガオの成長に嬉しそうだ。
「そうね。わたし、自分で入れる瞬間がたまらなく好きなの。自分で男のモノを持って、その上になりながら、あそこにあれを埋めていくの・・・」
と、リサは感情たっぷりにそのシーンを言葉で再現している。
「あれが、中に入って行く時の、こすれて入っていく瞬間がたまらないの・・・そして、クリがペニスの根本に当たって・・・最高に感じちゃうの・・・」
と、リサはその情景を思い描きながら、言葉にしている。
「その時、あなたも、感じているはずよ・・・わたしのヴァギナがあなたのペニスを締め付けるもの・・・キツく締め付けるから、まだ、若いあなたは一瞬でイっちゃうかも
と、リサはまるで目の前にガオがいるように言葉を出す。
「はは・・・リサさんの言葉を聞いてると、まるで、俺たち、ほんとうにセックスをしているような、そんな気分になりますよ」
と、ガオ。
「わたしは、しているつもりよ・・・だって、指でクリをいじりながら・・・感じながら、言葉にしているんだから・・・もう、かなり濡れてきているの・・・」
と、リサ。
「はは・・・リサさんは、大人の女性ですね・・・僕はこういうのは、初めてで・・・」
と、ガオは少々戸惑い気味。
「でも、ガオくん、前回より、全然落ち着いているじゃない・・・成長が速い証拠だわ」
と、リサは嬉しそうに言う。感情を込めて。
「リサさんを抱いたら・・・それは気持ちいいでしょうね、きっと」
と、ガオはポツリと言う。
「抱きたいの?ガオくん。今すぐにでも」
と、リサが聞く。
「いや、仮定の話ですよ。明日も早いし、今日はさすがに」
と、ガオが苦笑すると、
「抱かなくてもいいけど・・・明日、一緒にお酒でも飲まない?あなたのやさしい目を見ながら、お酒を楽しみたいの」
と、リサが誘う。
「明日ですか・・・いいですよ。飲みましょう・・・僕はあなたとの恋に、堕ちることに決めましたから」
と、ガオが決意表明。
「ふ。ほんと、それはよかったわ。あなたに、その決意があったから、今日は少し落ち着いて対応してくれたのね」
と、リサもそこは理解した。
「男がいつまでも、女性に弄ばれてては恥ずかしいだけですから。僕も柔道をやってきて、胆力はある方なんで」
と、ガオは、男らしく説明する。
「いいわ。わたしも本気であなたを弄んであげる。明日が楽しみだわ」
と、リサは、言い、待ち合わせ場所を知らせてから、電話を切った。
「あなたとの、エッチを想像しながら、これから、オナニーするわ。たくさん濡れるの・・・それから、明日また会いましょう」
リサの最後の言葉が、ガオの耳に残っていた。
「確かに、今日の俺は落ち着いていた・・・リサさんの激しい攻撃にも、耐えた・・・徹底的に相手すると決めたからか・・・落ちつけたのは」
と、ガオは赤ワインを飲みながら考えていた。
「もちろん、俺だって、女性とのエッチの経験は、人並み以上にはある。世界を放浪していた時に、出会った女性に誘惑されて寝たことだってあるし」
と、ガオは、自分が経験豊富なことを思い出していた。
「もう、リサさんは、怖くない・・・今は自分を成長させるために、この恋を使ってやるんだ。存分に」
と、ガオは決意を新たにする。
「アミさんに、このことを報告しなくちゃ・・・」
と、ガオは、電話をかけようとするが・・・。
「いや、辞めよう・・・なんでもアミさんに頼っていたら、俺自身、成長出来ない・・・」
と、ガオは電話をするのを断念する。
「俺がこの恋で成長出来たら・・・その時、アミさんに報告しよう・・・成長した俺をアミさんに見せるんだ」
と、ガオは、さらに、決意していた。
クリスマスイブ4日前の火曜日の夜は、静かに更けていった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の朝、午前7時頃。
東堂賢一(61)は、ダイニングで一人朝食を食べていた。
いつもは、笑顔で一緒に朝食を食べてくれる妻愛美(56)は、今日も料理だけ作り、自分の分を持って、自分の部屋に戻っていた。
「愛美は月曜日の夜に激怒して以来、口も聞いてくれないどころか、姿も見せない・・・」
焼き鮭で、ごはんを食べながら、つい愚痴を言う賢一だった。
「まあ、やるとなったら、徹底しているのが、愛美だからな・・・」
と、自分の軽率な行動を悔やむ賢一。
「せっかくのクリスマス・シーズンだと、言うのに・・・」
と、賢一は、寒そうな窓の外を見ながら、寂しそうに愚痴っていた。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夕方、午後5時頃。
タケルのいとこ、鈴木優(17)の携帯電話に、電話がかかってくる。
「もしもし、タケルさん!!!今、ニューヨークなんでしょ!すごい、今この携帯ニューヨークとつながっているんだ!」
と、鈴木優は、うれしそうに、はしゃいでいる。
「こっちは寒くてさ。今6度しか、ないんだ。なにしろ、朝の3時だから」
と、鈴木タケルは、寒そうに、はしゃいでいる。
「え?これ外の公衆電話から、かけてるの?」
と、優は勘違い。
「いや、6度ってのは、テレビで見たんだ。ホテルの電話から、かけてます」
と、笑うタケル。
「それでさー。優ちゃん、今度のイブ、俺戻れないから、頼みがあるんだけど・・・」
と、タケルは神妙に優に告げる。
「なーにー?タケルさんの頼みだったら、わたし、なんでも聞いてあげる!」
と、笑顔で言う優。
「イブの日にある集まりがあるんだ・・・そこに僕の婚約者がいるんだ」
と、いきなり言うタケル。
「え?・・・婚約者・・・」
と、その言葉に驚く優。
「ああ・・・僕がプロポーズした、その女性を優の目で確かめてほしいんだ。優の許せる女性か、をね」
と、タケルは真面目に話す。
「優が許せる女性だったら、僕は自信を持って、結婚する・・・結婚していい女性かどうか、優の目で確かめるんだ」
と、タケルが話すと、
「わかった・・・わたしの目で確かめてみる・・・わたしの目で・・・」
と、真面目そうにコクリと頷く優。
「よかった。頼んだよ、優・・・で、時間と場所なんだけど・・・」
と、タケルが話すと、時間と場所を、真面目そうにメモする優だった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夕方、午後5時半頃。
滝田祐(17)の携帯電話に、鈴木タケルから連絡が入る。
「あ、タケルさん・・・電話待ってました」
と、祐は、真面目に話す。
「おう。万事順調。優に電話したし、ちゃんと話しておいた。彼女は、僕の婚約者としてのアイリを確認に、当日行く・・・」
と、タケルは優を祐の為に誘い出したのだった。
「アイリがその優を歓待しているから・・・そこへ乗り込んで祐が告白するんだ。わかるな。手はずも打ち合わせ通りだ」
と、タケルは話す。
「とにかく、焦るな。お前だったら、大丈夫だ。きっと、いい17歳のイブになるぜ」
と、タケルは話す。
「はい。タケルさん、何から何まで・・・僕、なんか、うれしい・・・」
と、祐は、少し目頭を熱くする。
「おい、何言ってんだ・・・本番は、イブだぞ。優の為にも、それまで涙はとっておけ!」
と、タケルは冷静に話している。
「ま、アイリによろしく言っておいてくれ・・・俺は仕事だけどさ・・・楽しいイブを楽しめよ!じゃあな」
と、タケルは電話を切った。
「タケルさん・・・何から何まで・・・ほんと、大人のひとって、やさしいや」
と、切れた携帯を見ながら、なんとなく、感動する祐だった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夜、午後7時頃。
東堂賢一は、ひとりで、寂しい夕食を迎えていた。いつも一緒に笑顔で夕食を食べてくれる妻の愛美は、夕食だけ作ると、自分の分を持って、部屋に戻っていた。
「うーむ」
と言いながら、ガーリックステーキを食べる賢一は、仕方なく、ブランデーをグラスに注ぐ。
「この年で、ひとりの食事は、身に応えるわい」
と、愚痴を言いながら、ブランデーを飲む賢一。
「うーむ、何か、この状況を脱出する起死回生の逆転策は、ないものかのう」
と、東堂賢一は、言いながら、ブランデーをぐいと飲み干す。
と、そんな賢一に、何かひらめきのようなものが・・・。
「エイイチさん、アイリに失恋したのは、仕方ないとして・・・誰か、エイイチさんに良い相手、いないかしら。気のつくような女性・・・」
数日前、妻愛美が話していた言葉が、脳裏によぎる。
「それだ!」
と、東堂賢一は、ニヤリとする。
「うむ、これをなんとかすれば・・・あいつの気持ちも少しは変わってくるだろう」
と、東堂賢一は、ブランデーを飲み干しながら、ガーリックステーキにがぶりと噛み付いていた。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夜、午後8時頃。
東京、六本木にある、トルコ料理の店「クムファン」は、名の通った老舗の店だった。
個室でトルコ料理が頂ける店は珍しく、オールドファンにも大変な人気の店だった。
リサから指定された店に、約束より少し早く着いた田島ガオ(28)は、黒いスーツ姿で、会社帰りの風情を見せていた。
「なんとなく、オリエンタルな雰囲気・・・そういえば、トルコからイスタンブールに出た時に入った店を思い出すなあ」
と、世界放浪の旅を経験しているガオは、懐かしく記憶を思い出している。
「トルコにいた時は、よく現地のひととチャイを飲んだもんだけど・・・皆暇そうだったなあ」
と、思わず笑うガオ・・・人懐っこそうな笑顔が広がる。
「ガオくんは、いい笑顔をするのね」
と、そこへ、ブルーのチャイナドレス姿のリサが現れる。
「ははああ・・・」
と、ガオはブルーのチャイナドレス姿のリサに、呆然とする。
「似合うかしら、チャイナドレス・・・近所のホテルを借りて、そこで着替えてきたの・・・今日のために」
と、リサは妖しい雰囲気で、そうささやく。
「その気なら・・・いつでも、そこへ行けばいいのよ・・・わかるでしょ、ガオくん」
と、リサは、妖しく微笑みながら、そうささやいた。
「今から、でも」
と、リサは、ささやくと、妖艶な笑顔になるのだった。
ガオは、あまりに妖艶なリサに、ただただ、言葉を出せずにいた。
同じ頃。
イズミは、八津菱電機鎌倉工場で、担当しているシステムの問題点を把握しようとしていた。
「最近、小さな問題がちょくちょく出てきている・・・原因はなんだ?」
と、彼は端末を操作しながら、小さいテストを繰り返している。
と、そのイズミの頭に、美緒の映像が広がる。
気持ちよさそうにしている裸の美緒・・・美しくて豊かな胸が、震える映像に、イズミは思わず苦笑してしまう。
「今週の土曜日はクリスマスイブか・・・美緒に何か、クリスマス・プレゼントをあげなきゃ、いけないな」
と、やさしい気持ちで、思うイズミ。
「わたしね。四つ葉のクローバーを探すのが大好きなの・・・」
と、美緒が、一緒に飲みながら話していたのを思い出す。
「四つ葉のクローバーを探して、それをカードに貼って、記念に持ってるの・・・それを財布にいれておくと、幸運が舞い込むって、聞いたの」
と、美緒はうれしそうに話す。
「ほら、これ・・・」
と、美緒は自分の財布から、そのカードを出すと、イズミに渡す。
「へえ・・・四つ葉のクローバーが、4つあるね・・・」
と、イズミも珍しそうに、そのカードを眺める。
「それ、イズミさんにあげる」
と、美緒は上機嫌で、そう話す。
「え?だって、これ、美緒の・・・」
と、イズミが言いかけると、
「ううん。それ、昨日、イズミさんの為に、わたしが探したの。1時間かかっちゃったけど」
と、美緒は少し照れるような笑顔。
「イズミさんの為の、おまもり」
と、美緒は言うと、イズミの頬にキッス。
「ありがと、美緒・・・こんなに嬉しい贈り物は、ちょっとないな」
と、イズミも上機嫌だった。
「四つ葉のクローバーのモチーフの・・・ネックレスでも、探すか」
と、イズミは思い返している。
「クリスマスイブに、美緒の笑顔が、見たいからな」
と、イズミは独りごちると、
「さ、仕事仕事」
と、仕事に戻っていくのだった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夜は、妖しく更けていくのだった。
(つづく)
→物語の主要登場人物
→前回へ
→物語の初回へ
「重富リサ(30)の情報をフランスの対外治安総局(DGSE)がハックした証拠を見つけた・・・なるほど、これがそれね・・・」
と、佐伯涼は、ニヤリとしながら、リョウコが提出した資料を覗いている。
「リョウコも、この手にひっかかるとはなー。まあ、シナリオ的には、リサの所属機関であるDGSEに、リサがハックの方法を教え、そんで情報流出!みたいな話だろ」
と、佐伯は話している。
「は、はい。わたしは、そう見たんですが、それは誤り?」
と、リョウコが驚いたように反応すると、
「っていうかさ、DGSEともあろう者が、こんなにわかりやすい証拠を残すと思う?普通」
と、佐伯は笑顔で、さわやかに言う。
「ま、俺も若い頃に、CIAにいた時に、一時期所属したことがあるんだけど・・・もっとスパルタンな組織だぜ、あそこは・・・」
と、佐伯は、笑顔になりながら、言う。
「こんな失敗をやるような、甘ちゃんは、ひとりもいないよ。わかりやすい、アドバルーンあげ・・・いずれにしろ、リョウコがこの情報にぶち当たったことは、皆知ってる」
と、佐伯は言う。
「皆知ってる?」
と、リョウコが不可解な顔をすると、
「君がこの情報にアクセスした瞬間、君の情報が全世界の主要な諜報機関に流れるような仕組みさ」
と、涼は言う。
「・・・まあ、リサを追っているのが、リョウコだってことが、全世界的にバレちゃったってことだよ。もっともこれはリサがしかけた仕組みじゃない」
と、涼は言う。
「あのー、いまひとつ、よくわからないんですが・・・」
と、リョウコが言うと、
「まあ、いい。この件では、すでに、上が動いているし、実働部隊が動いているから、お前は、通常任務に戻れ。このこと、他言無用だぞ」
と、涼は、言うと、
「リサにも、気取られるなよ」
と、釘を刺すのを忘れない涼だった。
その直後、リョウコは、本部の建物を辞し、自宅マンションに向かう。
「どういうこと・・・リサさんがDGSEに所属しているかのように見せかけた?ということは、DGSE所属ではないってことね・・・」
と、リョウコは幾分混乱していた。
「涼さんの口ぶりでは、すでにリサさんに対する作戦が始まっているかのよう・・・わたしの勘は当たっていたってことになるわね・・・」
と、リョウコは考えていた。
「いずれにしろ、明日の勤務では、リサさんに会うことになるけど・・・まあ、いいわ。特に気にせず、いつも通りやるだけだわ・・・」
と、リョウコは結論を出すと、自宅に戻るべく、地下鉄の駅に降りていった。
クリスマス・イブを4日後に控えた火曜日の夜、午後10時頃、ガオはリサの家に電話していた。
ルルルルル、ガチャっと音がして、
「もしもし、ガオくんね」
と、リサが1コールで出てきた。
「こんばんわ、リサさん・・・昨日もいなかったから・・・今日もいないかと思っていたので、居てくれて、よかったです」
と、ガオは、少し嬉しそう。
「ふふ。ガオくんが、今日も電話してくれるって言うから・・・早く帰宅して待っていたの・・・ガオくんのこと考えていたら、胸が熱くなって、すぐに濡れちゃった」
と、リサは言う。
「いや、それは・・・」
と、苦笑するガオだが、
「僕もリサさんのこと、考えると、大きくなっちゃいますから、おあいこ、ですよ」
と、少しは大人になったガオだった。
「ふふ・・・そう大きくなるの・・・どれくらいの大きさなの、ガオくんのは?」
と、リサは相変わらずだ。
「え、それは・・・前測った時は、14センチくらいだったと思います」
と、ガオはあくまで、学究的に測ったのだった。
「あら、ちょうどいい大きさじゃない・・・太さは太いの?」
と、リサ。
「親指と人差し指で、丸をつくったくらいの太さかな」
と、ガオも、こういうネタに少し慣れたよう。
「いい感じの太さねえ・・・そんなモノが入ってきたら、さぞや気持ちいいでしょうに」
と、リサは喘ぐような声で言う。
「ガオくんは、どんな体位が好き?騎乗位は、好きかしら?」
と、リサは感情を込めて、言う。
「え?あ・・・はあ・・・そうですねー」
と、ガオは明らかに前回よりも落ち着きを取り戻している。
「リサさんが、そのー、騎乗位が好きなんですか?自分で動く方が?」
と、ガオは攻撃側に回る。今までになかったことだ。
「ふふ。ガオくんも少しは大人になったようね・・・」
と、笑うリサはガオの成長に嬉しそうだ。
「そうね。わたし、自分で入れる瞬間がたまらなく好きなの。自分で男のモノを持って、その上になりながら、あそこにあれを埋めていくの・・・」
と、リサは感情たっぷりにそのシーンを言葉で再現している。
「あれが、中に入って行く時の、こすれて入っていく瞬間がたまらないの・・・そして、クリがペニスの根本に当たって・・・最高に感じちゃうの・・・」
と、リサはその情景を思い描きながら、言葉にしている。
「その時、あなたも、感じているはずよ・・・わたしのヴァギナがあなたのペニスを締め付けるもの・・・キツく締め付けるから、まだ、若いあなたは一瞬でイっちゃうかも
と、リサはまるで目の前にガオがいるように言葉を出す。
「はは・・・リサさんの言葉を聞いてると、まるで、俺たち、ほんとうにセックスをしているような、そんな気分になりますよ」
と、ガオ。
「わたしは、しているつもりよ・・・だって、指でクリをいじりながら・・・感じながら、言葉にしているんだから・・・もう、かなり濡れてきているの・・・」
と、リサ。
「はは・・・リサさんは、大人の女性ですね・・・僕はこういうのは、初めてで・・・」
と、ガオは少々戸惑い気味。
「でも、ガオくん、前回より、全然落ち着いているじゃない・・・成長が速い証拠だわ」
と、リサは嬉しそうに言う。感情を込めて。
「リサさんを抱いたら・・・それは気持ちいいでしょうね、きっと」
と、ガオはポツリと言う。
「抱きたいの?ガオくん。今すぐにでも」
と、リサが聞く。
「いや、仮定の話ですよ。明日も早いし、今日はさすがに」
と、ガオが苦笑すると、
「抱かなくてもいいけど・・・明日、一緒にお酒でも飲まない?あなたのやさしい目を見ながら、お酒を楽しみたいの」
と、リサが誘う。
「明日ですか・・・いいですよ。飲みましょう・・・僕はあなたとの恋に、堕ちることに決めましたから」
と、ガオが決意表明。
「ふ。ほんと、それはよかったわ。あなたに、その決意があったから、今日は少し落ち着いて対応してくれたのね」
と、リサもそこは理解した。
「男がいつまでも、女性に弄ばれてては恥ずかしいだけですから。僕も柔道をやってきて、胆力はある方なんで」
と、ガオは、男らしく説明する。
「いいわ。わたしも本気であなたを弄んであげる。明日が楽しみだわ」
と、リサは、言い、待ち合わせ場所を知らせてから、電話を切った。
「あなたとの、エッチを想像しながら、これから、オナニーするわ。たくさん濡れるの・・・それから、明日また会いましょう」
リサの最後の言葉が、ガオの耳に残っていた。
「確かに、今日の俺は落ち着いていた・・・リサさんの激しい攻撃にも、耐えた・・・徹底的に相手すると決めたからか・・・落ちつけたのは」
と、ガオは赤ワインを飲みながら考えていた。
「もちろん、俺だって、女性とのエッチの経験は、人並み以上にはある。世界を放浪していた時に、出会った女性に誘惑されて寝たことだってあるし」
と、ガオは、自分が経験豊富なことを思い出していた。
「もう、リサさんは、怖くない・・・今は自分を成長させるために、この恋を使ってやるんだ。存分に」
と、ガオは決意を新たにする。
「アミさんに、このことを報告しなくちゃ・・・」
と、ガオは、電話をかけようとするが・・・。
「いや、辞めよう・・・なんでもアミさんに頼っていたら、俺自身、成長出来ない・・・」
と、ガオは電話をするのを断念する。
「俺がこの恋で成長出来たら・・・その時、アミさんに報告しよう・・・成長した俺をアミさんに見せるんだ」
と、ガオは、さらに、決意していた。
クリスマスイブ4日前の火曜日の夜は、静かに更けていった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の朝、午前7時頃。
東堂賢一(61)は、ダイニングで一人朝食を食べていた。
いつもは、笑顔で一緒に朝食を食べてくれる妻愛美(56)は、今日も料理だけ作り、自分の分を持って、自分の部屋に戻っていた。
「愛美は月曜日の夜に激怒して以来、口も聞いてくれないどころか、姿も見せない・・・」
焼き鮭で、ごはんを食べながら、つい愚痴を言う賢一だった。
「まあ、やるとなったら、徹底しているのが、愛美だからな・・・」
と、自分の軽率な行動を悔やむ賢一。
「せっかくのクリスマス・シーズンだと、言うのに・・・」
と、賢一は、寒そうな窓の外を見ながら、寂しそうに愚痴っていた。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夕方、午後5時頃。
タケルのいとこ、鈴木優(17)の携帯電話に、電話がかかってくる。
「もしもし、タケルさん!!!今、ニューヨークなんでしょ!すごい、今この携帯ニューヨークとつながっているんだ!」
と、鈴木優は、うれしそうに、はしゃいでいる。
「こっちは寒くてさ。今6度しか、ないんだ。なにしろ、朝の3時だから」
と、鈴木タケルは、寒そうに、はしゃいでいる。
「え?これ外の公衆電話から、かけてるの?」
と、優は勘違い。
「いや、6度ってのは、テレビで見たんだ。ホテルの電話から、かけてます」
と、笑うタケル。
「それでさー。優ちゃん、今度のイブ、俺戻れないから、頼みがあるんだけど・・・」
と、タケルは神妙に優に告げる。
「なーにー?タケルさんの頼みだったら、わたし、なんでも聞いてあげる!」
と、笑顔で言う優。
「イブの日にある集まりがあるんだ・・・そこに僕の婚約者がいるんだ」
と、いきなり言うタケル。
「え?・・・婚約者・・・」
と、その言葉に驚く優。
「ああ・・・僕がプロポーズした、その女性を優の目で確かめてほしいんだ。優の許せる女性か、をね」
と、タケルは真面目に話す。
「優が許せる女性だったら、僕は自信を持って、結婚する・・・結婚していい女性かどうか、優の目で確かめるんだ」
と、タケルが話すと、
「わかった・・・わたしの目で確かめてみる・・・わたしの目で・・・」
と、真面目そうにコクリと頷く優。
「よかった。頼んだよ、優・・・で、時間と場所なんだけど・・・」
と、タケルが話すと、時間と場所を、真面目そうにメモする優だった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夕方、午後5時半頃。
滝田祐(17)の携帯電話に、鈴木タケルから連絡が入る。
「あ、タケルさん・・・電話待ってました」
と、祐は、真面目に話す。
「おう。万事順調。優に電話したし、ちゃんと話しておいた。彼女は、僕の婚約者としてのアイリを確認に、当日行く・・・」
と、タケルは優を祐の為に誘い出したのだった。
「アイリがその優を歓待しているから・・・そこへ乗り込んで祐が告白するんだ。わかるな。手はずも打ち合わせ通りだ」
と、タケルは話す。
「とにかく、焦るな。お前だったら、大丈夫だ。きっと、いい17歳のイブになるぜ」
と、タケルは話す。
「はい。タケルさん、何から何まで・・・僕、なんか、うれしい・・・」
と、祐は、少し目頭を熱くする。
「おい、何言ってんだ・・・本番は、イブだぞ。優の為にも、それまで涙はとっておけ!」
と、タケルは冷静に話している。
「ま、アイリによろしく言っておいてくれ・・・俺は仕事だけどさ・・・楽しいイブを楽しめよ!じゃあな」
と、タケルは電話を切った。
「タケルさん・・・何から何まで・・・ほんと、大人のひとって、やさしいや」
と、切れた携帯を見ながら、なんとなく、感動する祐だった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夜、午後7時頃。
東堂賢一は、ひとりで、寂しい夕食を迎えていた。いつも一緒に笑顔で夕食を食べてくれる妻の愛美は、夕食だけ作ると、自分の分を持って、部屋に戻っていた。
「うーむ」
と言いながら、ガーリックステーキを食べる賢一は、仕方なく、ブランデーをグラスに注ぐ。
「この年で、ひとりの食事は、身に応えるわい」
と、愚痴を言いながら、ブランデーを飲む賢一。
「うーむ、何か、この状況を脱出する起死回生の逆転策は、ないものかのう」
と、東堂賢一は、言いながら、ブランデーをぐいと飲み干す。
と、そんな賢一に、何かひらめきのようなものが・・・。
「エイイチさん、アイリに失恋したのは、仕方ないとして・・・誰か、エイイチさんに良い相手、いないかしら。気のつくような女性・・・」
数日前、妻愛美が話していた言葉が、脳裏によぎる。
「それだ!」
と、東堂賢一は、ニヤリとする。
「うむ、これをなんとかすれば・・・あいつの気持ちも少しは変わってくるだろう」
と、東堂賢一は、ブランデーを飲み干しながら、ガーリックステーキにがぶりと噛み付いていた。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夜、午後8時頃。
東京、六本木にある、トルコ料理の店「クムファン」は、名の通った老舗の店だった。
個室でトルコ料理が頂ける店は珍しく、オールドファンにも大変な人気の店だった。
リサから指定された店に、約束より少し早く着いた田島ガオ(28)は、黒いスーツ姿で、会社帰りの風情を見せていた。
「なんとなく、オリエンタルな雰囲気・・・そういえば、トルコからイスタンブールに出た時に入った店を思い出すなあ」
と、世界放浪の旅を経験しているガオは、懐かしく記憶を思い出している。
「トルコにいた時は、よく現地のひととチャイを飲んだもんだけど・・・皆暇そうだったなあ」
と、思わず笑うガオ・・・人懐っこそうな笑顔が広がる。
「ガオくんは、いい笑顔をするのね」
と、そこへ、ブルーのチャイナドレス姿のリサが現れる。
「ははああ・・・」
と、ガオはブルーのチャイナドレス姿のリサに、呆然とする。
「似合うかしら、チャイナドレス・・・近所のホテルを借りて、そこで着替えてきたの・・・今日のために」
と、リサは妖しい雰囲気で、そうささやく。
「その気なら・・・いつでも、そこへ行けばいいのよ・・・わかるでしょ、ガオくん」
と、リサは、妖しく微笑みながら、そうささやいた。
「今から、でも」
と、リサは、ささやくと、妖艶な笑顔になるのだった。
ガオは、あまりに妖艶なリサに、ただただ、言葉を出せずにいた。
同じ頃。
イズミは、八津菱電機鎌倉工場で、担当しているシステムの問題点を把握しようとしていた。
「最近、小さな問題がちょくちょく出てきている・・・原因はなんだ?」
と、彼は端末を操作しながら、小さいテストを繰り返している。
と、そのイズミの頭に、美緒の映像が広がる。
気持ちよさそうにしている裸の美緒・・・美しくて豊かな胸が、震える映像に、イズミは思わず苦笑してしまう。
「今週の土曜日はクリスマスイブか・・・美緒に何か、クリスマス・プレゼントをあげなきゃ、いけないな」
と、やさしい気持ちで、思うイズミ。
「わたしね。四つ葉のクローバーを探すのが大好きなの・・・」
と、美緒が、一緒に飲みながら話していたのを思い出す。
「四つ葉のクローバーを探して、それをカードに貼って、記念に持ってるの・・・それを財布にいれておくと、幸運が舞い込むって、聞いたの」
と、美緒はうれしそうに話す。
「ほら、これ・・・」
と、美緒は自分の財布から、そのカードを出すと、イズミに渡す。
「へえ・・・四つ葉のクローバーが、4つあるね・・・」
と、イズミも珍しそうに、そのカードを眺める。
「それ、イズミさんにあげる」
と、美緒は上機嫌で、そう話す。
「え?だって、これ、美緒の・・・」
と、イズミが言いかけると、
「ううん。それ、昨日、イズミさんの為に、わたしが探したの。1時間かかっちゃったけど」
と、美緒は少し照れるような笑顔。
「イズミさんの為の、おまもり」
と、美緒は言うと、イズミの頬にキッス。
「ありがと、美緒・・・こんなに嬉しい贈り物は、ちょっとないな」
と、イズミも上機嫌だった。
「四つ葉のクローバーのモチーフの・・・ネックレスでも、探すか」
と、イズミは思い返している。
「クリスマスイブに、美緒の笑顔が、見たいからな」
と、イズミは独りごちると、
「さ、仕事仕事」
と、仕事に戻っていくのだった。
クリスマスイブ3日前の水曜日の夜は、妖しく更けていくのだった。
(つづく)
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