さて、その時、僕はイケメン貴島くん(29)と御島さん(31)とユキちゃん(28)とで、
お昼ご飯で、日本料理店に来ていました。
「しかし、日本女子、サッカー強いわよね・・・」
と、御島さんは半分感動している。
「生で見たんですか?昨日の試合」
と、僕。
「もちろん。わたしもゆるちょくんの影響で朝は早いから・・・余裕で見れたわ」
と、御島さん。
「御島さんは、日本の女子サッカーに精通していますからね」
「昨日の試合はどう見たら、よかったんですか?僕、実はサッカーってあまり見ない人間なんで・・・」
と、貴島くん。
「うーん、基本どんなスポーツでも同じだけど、女子サッカーで言うと、前後半90分、豊富に動ける体力が最も重要で」
「それが必須な能力なのよね」
と、御島さん。
「それはゆるちょさんの好きなサイクルロードレースの世界も同じって以前、ゆるちょさん、言ってましたよね」
と、ユキちゃん。
「うん。それは基本中の基本になるね」
と、僕。
「まあ、その圧倒的体力と、次がやっぱり、それに付随するんだけど、どんな過酷な条件でも普段と同様に戦える」
「強い精神力が必要なの。例えば、昨日の試合の場合、午後2時開始、気温30度と言う条件もあいまって」
「そこで何十キロも走るサッカーと言う競技は、過酷そのものの世界だったわよね」
「そこでは当然、精神力の差が出るわ」
と、御島さん。
「確かに、画面を見ているだけでも暑さが伝わってきたし、後半は明らかにオーストラリアの選手、歩いている選手が」
「増えた感じだったよね」
と、僕。
「そうでしょ?わたしが見た感じでは、前半20分までに、オーストラリア選手をドンドン走らせて消耗させる作戦だって」
「感じたわ。日本チームの良い所はまず、気持ちで勝っていたし、忍耐力も強い。そして、それを支える体力が」
「しっかり付いているから、ドンドン走れるし、さらにテクニックがあるから・・・オーストラリア選手の体力さえ」
「消耗させてしまえば・・・運動量とテクニックで勝る日本に勝ちが転がり込むのは時間の問題だと思っていたの」
と、御島さん。
「へー・・・そんな戦略だったんですか。すごいですね。僕はなんかただ、両者、ボールを求めて蹴り合っているようにしか」
「見えなくて・・・そうですか、裏でそんな作戦が動いていたんですね」
と、貴島くん。
「貴島くん、スポーツの試合と言うのは、チーム戦の場合、自己の優位な点を見定め、それを武器に戦うの」
「そして、逆に相手の弱い部分を見定め、そこを攻めるから勝ちが生まれるの。それは卑怯でも何でもない」
「戦いのシンプルな原理なの」
と、御島さん。
「オーストラリアは身体の大きな選手を揃えていて、ゴール前の空中戦ではチカラを発揮するし」
「特に得意なのが、守りからのカウンター攻撃なのね。ボールを持った瞬間の守りから攻めへの反転攻撃のスピードは」
「それは素晴らしいモノがあるの。だから、日本はこれを徹底的にさせなかったの」
「相手の武器を封じ、自分の武器を徹底的に使う。日本はテクニックも高いけど、要は気持ちよ」
「その気持ちが切れないからこそ、後半終了直前の岩渕のゴールが生まれたの。勝利は偶然では、ないのよ」
と、御島さん。
「気持ちって大事だよね。サイクルロードレースの風景の中でも、よく出てくるけど、一度気持ちが切れてしまったら」
「もう、そのレースでは戦えない。僕は「サイクルロードレースは人生だ」とよく言うけど、人生そのものも「気持ち」が大事じゃない?」
と、僕。
「それはそうかもしれないわね。「勝つ!」と言う強い気持ちがあるうちは人生、大逆転だって可能だと思うわ」
「ただし、その信念だけでは勝てないわ。その信念を裏打ちする「人生を勝つ!為のトレーニング」は欠かせないもの」
と、御島さん。
「そういう意味では、ゆるちょさんは毎日、幾種類ものメールを書いて、仕事の為のトレーニングにしているんですよね?」
と、ユキちゃん。
「そうだね。最初に書き始めたメールなんて、大学卒業直後から始めているからなあ・・・」
「そりゃあ、長いよ。だってそれ、大学時代の美術部の集まり・・・部長さんが、白石さんだったから、通称白石会メールって言うんだけど」
「それだしね・・・そこから今の僕が出来上がってきたんだから、僕が白石さんに頭が上がらないって事実は理解出来るでしょ?」
「特に御島さんは・・・」
と、僕。
「うん。大丈夫。要はゆるちょくんはその白石さんにお世話になって・・・今のゆるちょくんがいるなら」
「わたし達としても、ありがたいって、事になるわけだし・・・・お礼を言わなきゃいけないくらいね」
と、御島さん。
「まさに「雨降って地固まる」ですね、ゆるちょさん」
と、貴島くんが小声で言ってくれる。
「ま、そういう事だ。やっぱ、ここは「和を以て貴しとなす」が最高正義の国、ニッポンだよ」
と、僕。
「女性の生きるテーマは、いつもゆるちょくんが言う通り、「共存共栄」だもん。結局、そうなるわ」
と、御島さんが、少し照れながら言った。
「で、ね・・・日本の女子サッカーの武器って、忍耐力だけではないの。やっぱり、見た目としては、速いパス回しがあるのよね」
「これは男子サッカーの特徴でもあるけど、要は、皆の気持ちがひとつになれるから、速いパス回しが出来るの」
「お互い表情やボディランゲージや雰囲気で、サインを出し合って・・・それをお互い正確に見ぬくし、皆、攻撃的サッカーが身上だから」
「多彩な攻撃が出来るのも日本女子サッカーの強みよね」
と、御島さん。
「わたしは思うんだけど・・・日本以外の国がどうだか知らないからこういう言い方になるんだけど」
「日本人って、空気を読むのが上手いじゃない?子供の頃から空気を読む練習をしているから、サッカーのピッチ上でも」
「空気を読むのが上手いと思うのよ。だから、お互いの気持ちを読めるから、速いパス回しが出来ると思っているの」
「これは絶対的な日本の武器になるわよね」
と、御島さん。
「なるほど・・・空気を読めるからこそ、相手とのコミュニケーション能力も高くて、それが速いパス回しと言う」
「攻撃力につながっているんだ。それってある意味すげーなー」
と、僕。
「だから、日本のスポーツ選手って皆、ポジティブ思考で仲もいいですよね」
と、辛辣姫。
「で、ポジティブ思考って事に関して言えば日本の選手って、外国人選手に比べると身体が小さいのよ」
「比較すれば、それはすぐわかるわ。でも、その小ささを有利に使って、速いパス回しをするわけよ」
「「大男総身に知恵が回りかね」って言う有名なことわざがあるけど、まあ単純に身長が低ければ、脳と使う筋肉との」
「距離が近いんだから、速いパス回しも出来るし、速い攻撃も出来る・・・そこが背の低い選手の強みになるのよ」
と、御島さん。
「だから、皆、弱点を克服しているから、ポジティブ思考になれるの」
と、御島さん。
「なるほど・・・背が低いからと言って、弱点にはしないと言うわけですね」
と、貴島くん。
「そう。もちろん、やり方によっては、弱点になるわよ。実際、空中戦では、オーストラリアチームの方が強いわけだし」
「だけど、その空中戦にならないように、自分たちのゴール前での戦いにつなげないように、気をつけて戦えばいいの」
「相手の得意技を使わせないで、自分に有利な状況を作り、攻撃に出て、相手を倒す・・・これはスポーツの基本中の基本だもん」
「これは人生でも、使っていきたい考えよね・・・」
と、御島さん。
「でも、象徴的なシーンだと僕が思ったのは、後半、オーストラリアチームの足が止まって」
「なんか、日本の速いパス回しに、根負けしたって言うか、唖然としてたって言うか、そんな風に見えましたよ」
と、僕。
「そう。正にそうなのよ。試合後のオーストラリアチームの監督も言ってたけど」
「「オーストラリアチームは前半の20分で消耗して、足が止まった」って言ってたの」
「それに対して、日本チームの運動量は大して衰えなかったの」
「しかも、日本が中3日で試合を迎えているのに対して、オーストラリアチームは、中5日だったのよ」
「サッカーは回復力も大事。それすらも日本はオーストラリアを超えていたと言う事なの」
と、御島さん。
「短いパスをつないで、ボールを保持する戦術も功を奏したカタチになりましたね・・・」
「それで、オーストラリアチームは消耗したんですね」
と、辛辣姫。
「ふええ・・・そういう戦いだったんだね・・・そうやって真面目に解説されるとよくわかるわ・・・」
「すっごいな・・・」
と、僕。
「僕はそういう話が全くわかっていなかったんで、いつ、オーストラリアに縦パスから、シュートを打たれるかと思って、ヒヤヒヤしていました」
「ま、確かに消耗してた感じは、なんとなく、わかっていましたけど・・・それでも、相手が突然チカラを出してきそうで・・・」
と、貴島くん。
「わたし、なんとなく思ったのは、サッカーも人生だとしたら・・・敵の得意な芽をつぶして、自分の得意な武器をドンドン成長させて使っていくって言う」
「この戦略・・・自分の人生にも応用出来るのかなって今、思ったんですよね」
「あるいは、日本女子の豊富な運動量を支えるスタミナが重要だとすれば・・・人生に対するスタミナって何なのだろうって思ったりして・・・」
と、辛辣姫。
「へえ。それは面白い着想よね。人生に対するスタミナね・・・」
と、御島さん。
「人生でずっと戦える為のエネルギーって事になりますからね・・・どう考えたら、いいですかね、ゆるちょさん」
と、貴島くん。
「それって皆の支援なんじゃないかな。例えば、僕がずっと書き続けていられるのも、元はと言えば、白石会メールで白石さんを笑わしたいとか」
「ブログで、たくさんの読者を楽しませたいとか・・・誰かをしあわせにしたいって言う素朴な思いだもんね」
と、僕。
「それは、なでしこジャパンの女性達も同じですよね。自分たちのチカラで、日本全国を笑顔にしたい・・・そういう素朴な気持ちから始まっていますから・・・」
と、ユキちゃん。
「僕はそういう思いが持てた時、初めて日本人は強くなれるんじゃないかって思っているんだよね。だってさ、例えばラーメン屋さんだってさ」
「お客さんを笑顔にしたいから、美味しいラーメンの開発に余念が無いわけでしょ?これがさ、生活の為だ、カネ稼ぐためだって目標が変わっちゃうと」
「絶対に美味しいラーメンは、作れなくなるじゃん。材料費をケチったり、調味料もケチったり、燃料費を抑えたり・・・なんてやってると、それはすぐに味に出るから」
「・・・要は最前線で作られるラーメンの味のクオリティでは無くなると言う事なんだよね」
と、僕。
「モノの開発のベクトルって二つあるんだよ。例えばラーメンなら、自分で味を極めた、絶対に自分にしか作れない極道なラーメンを作るか」
「生活費を稼ぐために、いろいろケチって、クオリティの低い、客を騙そうとしたラーメンを作るか・・・その二つでしょ」
と、僕。
「そして、当然、日本人の舌は繊細な上に肥えているから、道を極めたラーメンはお金を稼ぐ事が出来るけど」
「客を騙そうとしたラーメンは、二度と客は口にしない・・・客の笑顔の為に作るベクトルと自身の生活費の為に客を騙そうとするベクトル」
「・・・この二つのベクトルが、この日本には存在するんだね」
と、僕。
「日本人を笑顔にしたいと言う思いと・・・自分だけが笑顔になりたいって言うベクトルの二つ・・・そういう事ですね?」
と、貴島くん。
「それって、「和を以て貴しとなす」を実現するベクトルと、「俺偉い病」で自分だけが笑顔になりたいっていう孤立する側のベクトルで」
「完全に善と悪って事じゃない。日本人を笑顔にする事が善で・・・そういう人間は日本中から応援されて、チカラになるけど」
「自分だけ笑顔になりたいって言う「俺偉い病」は悪で・・・・そういう人間は誰からも相手にされない・・・ばかりか、蛇蝎の如く嫌われる」
「・・・そういう事だもん・・・」
と、御島さん。
「ワガママな人間はどこに居ても蛇蝎の如く嫌われますからね。もう誰も相手にしないもん。「専業主婦型俺偉い病」とか「サラリーマン型俺偉い病」とかいろいろ居ますけどね」
と、ユキちゃん。
「だから、日本人を笑顔にしたいと言う素朴な思いを持ち、それを実現出来る人間だけが、日本人からの応援を受けられる」
「それが人生のスタミナになる・・・そういう事だよ」
「その構図こそが、人生を豊かにする・・・僕はそう思っているけどね」
と、僕。
「そういう思いで、日々、ゆるちょさんは、仕事をされているんですね・・・それがゆるちょさんの人生を豊かにしている」
「でも、それって当然だし、確かな事ですね。だって、ここにいる皆は、ゆるちょさんの文章を読んで、感動して、集った人間たちですからね」
と、貴島くんが言葉にする。
「だから、ゆるちょさんって、日々笑顔なんですね。そして、ゆるちょさんに触れた人間達は、皆、ゆるちょさんのファンになる」
「そういう女性や男性がぞくぞくと増えている・・・だから、さらにゆるちょさんは笑顔になる。いい循環です」
と、ユキちゃん。
「ユキちゃんが言った言葉に戻るけど・・・日本人を笑顔にしたい気持ちを持つ事、プラス・・・自分の得意な事を伸ばすって言うのも」
「大事な生き方よね。もちろん、ゆるちょくんはオリジナルな原稿執筆と言う最も得意な能力をドンドン伸ばしているから、毎日笑顔なのよね」
と、御島さん。
「はい。そうですね」
と、僕。
「しかも、ゆるちょくんにすれば、それがライフワークになっている・・・ここが大事なんだと思うの」
「わたしも社長業はライフワークだと思うもの。人間をプロデュースする仕事はわたしの天職だと思っているし・・・」
「それに、ゆるちょくんもわたしの仕事も、退職する必要がないの。もちろん、だから、ライフワークなんだけど」
「それって、わたし、日本人としての人生の完成形だと思うの。日本人の到達すべき、リアルなフルスペック・・・それ間違ってる?ゆるちょくん!」
と、御島さん。
「いや、その通りだと思いますよ。あとは、職人的に、この仕事にまっしぐらになればいい」
「僕らはもう、ミレニアム・ファルコン号に乗ったように、光速を超えるドライブに出てしまったんです」
「あとは人生の中で、脇目もふらず、ドーンと自分を成長させ続ければいい。このライフワークによって・・・それだけです」
と、僕。
「辿り着いて、しまったのね、わたし達は・・・」
と、御島さん。
「いや、僕も」「わたしも・・・」
と、貴島くんと、ユキちゃん。
4人はただただ、笑顔だった。
(おしまい)