さて、その時、僕はイケメン貴島くん(29)、社長の御島さん(31)、辛辣姫ユキちゃん(28)と、
事務所でテレビを見ながら、意見交換をしていました。
「ゆるちょさん、こういうネタ、大好物じゃないですか?」
「日本文化を分析するのに、いいネタじゃないですか。これ!」
と、貴島くん。
「ゆるちょくん的にはこのネタ、どう見えるの?」
「第一印象的には、どう?」
と、御島さん。
「創業家の人間、特に創業家の社長が、「俺偉い病」と化し」
「自分が正しい事を世間に納得させようとし始めた・・・自分の意見を世間に「負のエネルギー」として押し付け始めた瞬間」
「創業家社長のコミュニティは崩壊を始めた・・・そういう事でしょうね」
と、僕はリラックスしてコーヒーを飲みながら、言葉にする。
「だいたい、本業の家具のビジネスとは全く関係ないところで、世間に不快な思いをさせる「負のエネルギー」を一方的に押し付け始めたんだから」
「創業家社長の判断力が低下したどころか、情を使って、部下が自分についていると言う芝居のようなプレゼンをしたわけだから」
「実際は、相当追い込まれていて、創業家社長及び、創業家社長に脅された人間達の先はもう無い・・・」
「そういう結論でしょうね」
と、僕。
「だいたいこの日本においては、不利な方が先に動く・・・がお約束ですからね」
と、僕。
「相変わらず、辛辣な見方・・・わたしがこんなに辛辣になったのも、ゆるちょさんと一緒に意見を戦わせているから」
「・・・だと思いますけどね。でも、それくらい強い見方が必要だと思いますね、今回は」
と、辛辣姫。
「ふ。そういうゆるちょくんだから、話を聞く理由があるのよ」
「なるほど・・・そういう見方なのね。今回の件は・・・」
と、御島さん。
「あのー、わたし、ゆるちょさんの代わりに説明していいですか?今回の事」
と、ユキちゃん。
「どうぞ、それで辛辣姫の修行になるならね」
と、僕。
「ありがとうございます。ゆるちょさん・・・」
と、辛辣姫は、目の笑う笑顔で、お辞儀をしてくれる。
「日本文化における、いい組織と悪い組織について、まず、バッサリ言い切ってしまいましょう」
「日本におけるビジネスも世界におけるビジネスも変わりはありません」
「それは「求める人間に最適なソリューションを届ける」です。その中でも日本文化の強みは」
「言うまでもなく「おもてなしの心」・・・消費者のニーズを細かく理解し、痒いところまでサービスが届き」
「消費者に不快な気持ちを一切感じさせない事・・・それが世界で求められるビジネスの基本であり、大前提です」
と、辛辣姫。
「なるほど・・・そういう前提だったら、今回の大塚家具事件・・・まず、消費者を不快にさせている時点で終わっているね」
と、貴島くん。
「そういう事です。今回の件、報道では矮小化されているわ。つまり、会員制の高級家具販売、接客も個別単位と言う」
「①会員制高級家具販売路線で、これまで企業価値を高めてきた大塚家具の創業社長の販売戦略と、次期社長として、創業社長が決めた」
「長女の経営判断・・・ニトリなどの台頭に示されている通り、あるいはユニクロや量販店に見られるような」
「顧客である日本人の意識変化、販売環境の激変を見て取った、長女の②低価格大量販売路線・・・」
「この①と②の販売戦略の対立みたいに報道されているけど、内実は違うわ」
と、辛辣姫。
「それはどういう事かしら?ユキちゃん」
と、御島さん。
「簡単に言えば、この日本はどこまでもストーリーとして動いていると言う事です」
「そして、大切なのは、このストーリーの主人公が誰で、どういう判断で今回の挙に出たかと言う事です」
と、ユキちゃん。
「ふふ。面白そうね。わたしも事務所の社長業を担っている女性として、興味深いわ」
と、御島さん。
「なるほど、で、このストーリーの主人公は誰なの?」
と、貴島くん。
「主人公は二人・・・仮に創業社長をイエヤス、その長女をヨシムネと言う名前と言う記号で呼んでみるわ」
「イエヤスは大塚幕府を作り上げた。二代目ヨシムネは、創業時代と今が全く違う経営環境にある事を理解し」
「経営環境に合わせた手法を次々と打っている。・・・実際、今、高収益を上げている企業、ソフトバンクやユニクロ」
「ニトリや電化製品の量販店の有り様を見れば、日本における経営環境がどちらに舵を取っているかは、安くて良い物を」
「大量に販売する・・・そういう戦略が王道になりつつあるのはわかる話だわ」
「だから、長女のヨシムネの取る戦略は間違っているとは言い切れない・・・つまり、このストーリーはそこが」
「重要なキーではない、と言う事なのよ・・・」
と、辛辣姫。
「じゃあ、どういう事なのかしら?」
と、御島さん。
「それは長女ヨシムネを否定する為の理由に過ぎないのよ。大御所として第一線を退いたイエヤスは」
「自分の確立してきた路線を次々と否定し、ある意味改革を進める長女ヨシムネに対して、感情的に不快感を持っただけなのよ」
と、ユキちゃん。
「感情的に不快感って・・・それは経営判断じゃないじゃん。単なるイエヤスの気持ちだけの話になるよ」
と、貴島くん。
「そういう事。それすらわからなくなっているのよ。このイエヤスと言う老害は」
と、ユキちゃん。
「つまり、歳を重ねて人間的にも「けつの穴」の小さくなったイエヤスは自分の路線が否定されること」
「つまり、それを自分を否定している事と勘違いした・・・だから、年老いて気の短くなった老人症を発症した病気の」
「ただのジジイが、企業のコンプライアンスも何も忘れて、いや、企業価値の毀損すら、忘れて」
「「ねえ、聞いてよ。僕正しいよね?「うん」って言ってよ、皆。皆、昔、やさしかったじゃん!」と自分の為だけに、言い出したのが」
「今回の「大塚家具事件」のキモよ・・・」
と、辛辣姫。
「それって老害そのものね」
と、御島さんは吐き捨てるように言葉にする。
「つまり、大塚家具と言う企業を未だに個人経営の商店だと・・・自分だけのモノだと・・・未だに勘違いしている老害イエヤス問題なのよ・・・」
と、辛辣姫。
「ちやほやされたいだけの老害のくそジジイの問題なの。これから、こういう勘違いクソジジイがたくさん出てくるわ」
「それに今後、有効な手立てを戦略的に立てる為にも、対応策を考えなければいけないわ」
と、ユキちゃん。
「例えば、今回の事件で、わかりやすい材料があったわ。まず、特筆すべきは、イエヤスが揃えた部下たち・・・」
「あれでイエヤスの意識がもう時代遅れだと言う事は立証されたの」
と、辛辣姫。
「どういう事?なんだか、過半数のお偉いさんをずらっと並べて、プレゼンしてたけど・・・」
と、貴島くん。
「まず、わかりやすい話で言えば、イエヤスが実際に、過半数の社員から支持されているなら、あんなプレゼンする必要は」
「なかったと言う事よ。日本人はお家騒動を嫌うわ。さらに言えば、外国人から見れば、未だに創業者社長が」
「権力を握り、あろうことか、自分が指名した長女から権力を奪取しようなんて・・・子育てもろくに出来ていない」
「さらに長女の人間性や性格すら、読み取れないアンポンタンだったって事が指摘出来るじゃない」
「後継者も育てられない、人間の性格すら読み取れない、娘にさえ、否定されるイエヤスって一体何の価値があるの?」
と、辛辣姫。
「そんなだから、経営環境が以前とはガラリと変わった事を理解出来ないのよ!」
「ま、老人性痴呆症そのものよね。そんな人間に企業の経営判断なんて任せられると思う?」
と、ユキちゃん。
「任せられないね」
と、貴島くん。
「でしょ?もうひとつ言えば、イエヤスは日本人を馬鹿にしていると言う事よ」
「つまり、ああいうプレゼンすれば、日本人なんて、イエヤスを信じて、イエヤスに政権を任せるとイエヤス自身が」
「踏んだと言う事でしょう?完全に日本人全体を馬鹿にしているわね」
と、ユキちゃん。
「だって、あのイエヤスのプレゼンに出てきたオトコ達の顔を見た?」
「自分でモノを考えられないイエスマンばかりじゃない。頭の悪そうなおっさんばかりだったじゃない」
「洗練された外見を持つ、自分でモノを考えるタイプの人間なんてひとりもいなかったわ。イエヤスの長男も含めてね」
と、辛辣姫。
「だいたいわたしが許せないのは、日本人を馬鹿にしていること・・・そんな頭の悪いプレゼンの裏側くらい」
「そのからくりがどうなっているかなんて、簡単に見抜くわよ。ね、そうでしょう?」
と、ユキちゃん。
「それはそうね」「そうだね」
と、御島さんと貴島くん。
「だいたい、わたしも馬鹿にされて頭に来たけど、御島さんも、貴島さんも馬鹿にされたって事なんですよ!」
と、辛辣姫はキレ気味だ。
「それより、何より、許せないのは、ゆるちょさんを馬鹿にしたって事よ。これだけは絶対に許せない」
「あのイエヤスをビジネス的に葬り去るまでは、絶対に手を緩めないわ。それだけは絶対だわ」
と、ユキちゃん。目がギラギラしている。
「日本においては、女性を敵に回したら絶対に終わるからね」
と、貴島くん。
「そうよね・・・今回、イエヤスがやった事って、要は、大塚家具と言うコミュニティを守る・・・それを目的にしていたのよね」
「顧客第一主義じゃないのよ。顧客より、大塚家具が大事で、それより、最も大事なのは、自分がチヤホヤされる事」
「・・・結局、イエヤスは「知識者」の「俺偉い病」じゃない・・・だから、自分がチヤホヤされたいだけの為に」
「日本民族に「負のエネルギー」を放ち続けてるのよ・・・こんなの許されるのかしら?ねえ、ユキちゃん!」
と、御島さん。
「もちろん、許されませんよ。あのプレゼンの場にいたオトコ達は多分、イエヤスの長男に脅されたんでしょう?」
「「俺達につかなければどうなるか、わかっているんだろうな?うまくいった暁には出世も考えるくらいの事を・・・」」
「それを言う役割はあのぼんくらの長男だわ・・・」
と、ユキちゃん。
「だって、あの長男は、イエヤスから、ヨシムネより経営者として落ちると判断されているんですよ」
「だって、あのオトコ、馬鹿な事言ってた」
「「ヨシムネといくら仕事で衝突しても、帰りには一緒に夕食を仲良く食べた。そういう仲なんです」とか」
「そんなの、消費者であるわたし達には、なんの意味も無い言葉でしょ?」
「そういう話を持ってくるセンスにしたって、並のビジネスマン以下だわ。だって、要は日本人にお涙頂戴しようとしたって」
「事なんだから・・・ビジネスの厳しさをひとつも理解していない・・・ヨシムネより経営判断力がないと」
「イエヤスに思われるのは、当然よね。ただのボンクラだわ」
と、辛辣姫。
「ほー。そう見てくると、面白い図式が見えてきたわ。イエヤスのプレゼンに出たのは、痴呆症のイエヤス・・・」
「ヒデヨシにしておいた方がよかったかもね。まあ、いいわ。イエヤスとダメオトコの長男、そして、脅されて」
「どっちにつけばいいかも妥当に判断出来ない、「知恵」の無いオトコ達・・・単なるイエヤスのイエスマン達・・・」
「そういう事でしょ?」
と、御島さん。
「それを言うと・・・大塚家具って経営体として終わってるじゃないですか?」
「つまり、イエヤスは長男を含めて、イエスマンしか育成出来なかったんですよ。つまり、だから、業績も下がっているし」
「イエスマンにすればイエヤスこそ、神だから、イエヤスが復帰すれば、大塚家具がまた、黒字になると考えている」
「実際は、昨日のイエヤスのプレゼンに出た人材がすべて、時代遅れのポンコツばかりだったわけだから」
「それこそ、大塚家具の膿そのもの・・・企業体に進化しようとしている大塚家具の真の敵そのものって事になりますよ」
と、貴島くん。
「面白いのは・・・イエヤスが長男ではなく、ヨシムネを次期経営者に選んだ理由なの」
「「自分にノーを言える人間はヨシムネしかいなかった。だから、ヨシムネを次期社長に選んだ」ってイエヤスは言ってるのよ」
「この経営判断までは正しかったのね。昨日、イエヤスはダメなコを育てたみたいな事を言ってたけど、それが馬脚そのものよね」
「だって、だからこそ、イエヤスは、イエスマンしか育成出来なかったし、自分を守るためだけにかつての自分の判断にノーを言ったのだから」
「「もう自分には正しい判断はひとつも出来ません」って言ってるようなものでしょ・・・イエヤスとイエヤス一派は終わりよ、もう」
と、御島さん。
「実質的な経営で言えば、世界のブランドでは例えばベンツに最高級車種のチャンネルであるアーマーゲーがあるように」
「トヨタにレクサスブランドがあるように、アルマーニにもエンポリオアルマーニがあるように、顧客の年収に合わせて」
「チャンネルを複数化させるのは、半ば常識になってる・・・大塚家具も若い層向けのチャンネルと富裕層向けのチャンネルを」
「持てばいいだけの話だと思うけどね」
と、僕。
「ゆるちょさん、今回の分析、これでよかったですか?」
と、ユキちゃん。
「ああ。素晴らしい洞察力だ。・・・となるとこのストーリーの主人公は?」
と、僕。
「改革派で、経営判断も確かな久美子社長こそ、主人公でしょう」
「勝久社長は長男を含めたイエスマンしか作れなかった・・・しかも企業のコンプライアンスも考えず」
「「俺が俺が」の精神で自分をチヤホヤする事を日本国民に求めた・・・その罪は万死に値します」
「大塚家具はあの勝久氏のプレゼンに出席した人物全員を解雇し、久美子社長の元、新たに改革しながら複数の販売チャンネルを持ち」
「コンプライアンス的にも、優れた企業体として再生する事が求められると思います」
と、辛辣姫。
「この程度のプレゼンで日本国民を騙せると思った勝久氏の甘さ・・・それが最大の「負のエネルギー」となって」
「自身及び、あの勝久氏のプレゼンに出た全員に返ってくると言う当然の予見が出来ない段階で」
「あのオトコ達の運命は決まったわ。日本は自分を舐めた人間にきっついお返しをちゃんとする民族だから」
と、御島さん。
「まさに老害・・・痴呆症は怖いね。イエスマンしか作れないワンマン社長は今後、相手にされない世の中になるだろうね」
と、貴島くん。
「ユニクロの柳井社長も、社長を若手の誰かに引き継ごうとしたけど、失敗に終わってるわ」
「それだけ、人材育成というのは難しいのよ」
と、御島さん。
「情の使い方を誤ったな、あの長男・・・それがすべての命取りだったよ」
「いかにもイエスマンな風情のアンポンタンを脅迫してプレゼンしても・・・」
「勝久氏側が終わっていると理解させる材料にしかならなかったからね・・・」
と、僕。
「やっぱり、日本文化って怖いです。そして、物事の裏側をすべて見通してしまう、ゆるちょさんも・・・」
と、辛辣姫は言葉にしながら、やさしい笑顔になった。
「だから、今日も飲みに行きましょう。ほんと、ゆるちょさんって、知恵者なんだから!」
と、ユキちゃんははしゃぐように言った。
(おしまい)
事務所でテレビを見ながら、意見交換をしていました。
「ゆるちょさん、こういうネタ、大好物じゃないですか?」
「日本文化を分析するのに、いいネタじゃないですか。これ!」
と、貴島くん。
「ゆるちょくん的にはこのネタ、どう見えるの?」
「第一印象的には、どう?」
と、御島さん。
「創業家の人間、特に創業家の社長が、「俺偉い病」と化し」
「自分が正しい事を世間に納得させようとし始めた・・・自分の意見を世間に「負のエネルギー」として押し付け始めた瞬間」
「創業家社長のコミュニティは崩壊を始めた・・・そういう事でしょうね」
と、僕はリラックスしてコーヒーを飲みながら、言葉にする。
「だいたい、本業の家具のビジネスとは全く関係ないところで、世間に不快な思いをさせる「負のエネルギー」を一方的に押し付け始めたんだから」
「創業家社長の判断力が低下したどころか、情を使って、部下が自分についていると言う芝居のようなプレゼンをしたわけだから」
「実際は、相当追い込まれていて、創業家社長及び、創業家社長に脅された人間達の先はもう無い・・・」
「そういう結論でしょうね」
と、僕。
「だいたいこの日本においては、不利な方が先に動く・・・がお約束ですからね」
と、僕。
「相変わらず、辛辣な見方・・・わたしがこんなに辛辣になったのも、ゆるちょさんと一緒に意見を戦わせているから」
「・・・だと思いますけどね。でも、それくらい強い見方が必要だと思いますね、今回は」
と、辛辣姫。
「ふ。そういうゆるちょくんだから、話を聞く理由があるのよ」
「なるほど・・・そういう見方なのね。今回の件は・・・」
と、御島さん。
「あのー、わたし、ゆるちょさんの代わりに説明していいですか?今回の事」
と、ユキちゃん。
「どうぞ、それで辛辣姫の修行になるならね」
と、僕。
「ありがとうございます。ゆるちょさん・・・」
と、辛辣姫は、目の笑う笑顔で、お辞儀をしてくれる。
「日本文化における、いい組織と悪い組織について、まず、バッサリ言い切ってしまいましょう」
「日本におけるビジネスも世界におけるビジネスも変わりはありません」
「それは「求める人間に最適なソリューションを届ける」です。その中でも日本文化の強みは」
「言うまでもなく「おもてなしの心」・・・消費者のニーズを細かく理解し、痒いところまでサービスが届き」
「消費者に不快な気持ちを一切感じさせない事・・・それが世界で求められるビジネスの基本であり、大前提です」
と、辛辣姫。
「なるほど・・・そういう前提だったら、今回の大塚家具事件・・・まず、消費者を不快にさせている時点で終わっているね」
と、貴島くん。
「そういう事です。今回の件、報道では矮小化されているわ。つまり、会員制の高級家具販売、接客も個別単位と言う」
「①会員制高級家具販売路線で、これまで企業価値を高めてきた大塚家具の創業社長の販売戦略と、次期社長として、創業社長が決めた」
「長女の経営判断・・・ニトリなどの台頭に示されている通り、あるいはユニクロや量販店に見られるような」
「顧客である日本人の意識変化、販売環境の激変を見て取った、長女の②低価格大量販売路線・・・」
「この①と②の販売戦略の対立みたいに報道されているけど、内実は違うわ」
と、辛辣姫。
「それはどういう事かしら?ユキちゃん」
と、御島さん。
「簡単に言えば、この日本はどこまでもストーリーとして動いていると言う事です」
「そして、大切なのは、このストーリーの主人公が誰で、どういう判断で今回の挙に出たかと言う事です」
と、ユキちゃん。
「ふふ。面白そうね。わたしも事務所の社長業を担っている女性として、興味深いわ」
と、御島さん。
「なるほど、で、このストーリーの主人公は誰なの?」
と、貴島くん。
「主人公は二人・・・仮に創業社長をイエヤス、その長女をヨシムネと言う名前と言う記号で呼んでみるわ」
「イエヤスは大塚幕府を作り上げた。二代目ヨシムネは、創業時代と今が全く違う経営環境にある事を理解し」
「経営環境に合わせた手法を次々と打っている。・・・実際、今、高収益を上げている企業、ソフトバンクやユニクロ」
「ニトリや電化製品の量販店の有り様を見れば、日本における経営環境がどちらに舵を取っているかは、安くて良い物を」
「大量に販売する・・・そういう戦略が王道になりつつあるのはわかる話だわ」
「だから、長女のヨシムネの取る戦略は間違っているとは言い切れない・・・つまり、このストーリーはそこが」
「重要なキーではない、と言う事なのよ・・・」
と、辛辣姫。
「じゃあ、どういう事なのかしら?」
と、御島さん。
「それは長女ヨシムネを否定する為の理由に過ぎないのよ。大御所として第一線を退いたイエヤスは」
「自分の確立してきた路線を次々と否定し、ある意味改革を進める長女ヨシムネに対して、感情的に不快感を持っただけなのよ」
と、ユキちゃん。
「感情的に不快感って・・・それは経営判断じゃないじゃん。単なるイエヤスの気持ちだけの話になるよ」
と、貴島くん。
「そういう事。それすらわからなくなっているのよ。このイエヤスと言う老害は」
と、ユキちゃん。
「つまり、歳を重ねて人間的にも「けつの穴」の小さくなったイエヤスは自分の路線が否定されること」
「つまり、それを自分を否定している事と勘違いした・・・だから、年老いて気の短くなった老人症を発症した病気の」
「ただのジジイが、企業のコンプライアンスも何も忘れて、いや、企業価値の毀損すら、忘れて」
「「ねえ、聞いてよ。僕正しいよね?「うん」って言ってよ、皆。皆、昔、やさしかったじゃん!」と自分の為だけに、言い出したのが」
「今回の「大塚家具事件」のキモよ・・・」
と、辛辣姫。
「それって老害そのものね」
と、御島さんは吐き捨てるように言葉にする。
「つまり、大塚家具と言う企業を未だに個人経営の商店だと・・・自分だけのモノだと・・・未だに勘違いしている老害イエヤス問題なのよ・・・」
と、辛辣姫。
「ちやほやされたいだけの老害のくそジジイの問題なの。これから、こういう勘違いクソジジイがたくさん出てくるわ」
「それに今後、有効な手立てを戦略的に立てる為にも、対応策を考えなければいけないわ」
と、ユキちゃん。
「例えば、今回の事件で、わかりやすい材料があったわ。まず、特筆すべきは、イエヤスが揃えた部下たち・・・」
「あれでイエヤスの意識がもう時代遅れだと言う事は立証されたの」
と、辛辣姫。
「どういう事?なんだか、過半数のお偉いさんをずらっと並べて、プレゼンしてたけど・・・」
と、貴島くん。
「まず、わかりやすい話で言えば、イエヤスが実際に、過半数の社員から支持されているなら、あんなプレゼンする必要は」
「なかったと言う事よ。日本人はお家騒動を嫌うわ。さらに言えば、外国人から見れば、未だに創業者社長が」
「権力を握り、あろうことか、自分が指名した長女から権力を奪取しようなんて・・・子育てもろくに出来ていない」
「さらに長女の人間性や性格すら、読み取れないアンポンタンだったって事が指摘出来るじゃない」
「後継者も育てられない、人間の性格すら読み取れない、娘にさえ、否定されるイエヤスって一体何の価値があるの?」
と、辛辣姫。
「そんなだから、経営環境が以前とはガラリと変わった事を理解出来ないのよ!」
「ま、老人性痴呆症そのものよね。そんな人間に企業の経営判断なんて任せられると思う?」
と、ユキちゃん。
「任せられないね」
と、貴島くん。
「でしょ?もうひとつ言えば、イエヤスは日本人を馬鹿にしていると言う事よ」
「つまり、ああいうプレゼンすれば、日本人なんて、イエヤスを信じて、イエヤスに政権を任せるとイエヤス自身が」
「踏んだと言う事でしょう?完全に日本人全体を馬鹿にしているわね」
と、ユキちゃん。
「だって、あのイエヤスのプレゼンに出てきたオトコ達の顔を見た?」
「自分でモノを考えられないイエスマンばかりじゃない。頭の悪そうなおっさんばかりだったじゃない」
「洗練された外見を持つ、自分でモノを考えるタイプの人間なんてひとりもいなかったわ。イエヤスの長男も含めてね」
と、辛辣姫。
「だいたいわたしが許せないのは、日本人を馬鹿にしていること・・・そんな頭の悪いプレゼンの裏側くらい」
「そのからくりがどうなっているかなんて、簡単に見抜くわよ。ね、そうでしょう?」
と、ユキちゃん。
「それはそうね」「そうだね」
と、御島さんと貴島くん。
「だいたい、わたしも馬鹿にされて頭に来たけど、御島さんも、貴島さんも馬鹿にされたって事なんですよ!」
と、辛辣姫はキレ気味だ。
「それより、何より、許せないのは、ゆるちょさんを馬鹿にしたって事よ。これだけは絶対に許せない」
「あのイエヤスをビジネス的に葬り去るまでは、絶対に手を緩めないわ。それだけは絶対だわ」
と、ユキちゃん。目がギラギラしている。
「日本においては、女性を敵に回したら絶対に終わるからね」
と、貴島くん。
「そうよね・・・今回、イエヤスがやった事って、要は、大塚家具と言うコミュニティを守る・・・それを目的にしていたのよね」
「顧客第一主義じゃないのよ。顧客より、大塚家具が大事で、それより、最も大事なのは、自分がチヤホヤされる事」
「・・・結局、イエヤスは「知識者」の「俺偉い病」じゃない・・・だから、自分がチヤホヤされたいだけの為に」
「日本民族に「負のエネルギー」を放ち続けてるのよ・・・こんなの許されるのかしら?ねえ、ユキちゃん!」
と、御島さん。
「もちろん、許されませんよ。あのプレゼンの場にいたオトコ達は多分、イエヤスの長男に脅されたんでしょう?」
「「俺達につかなければどうなるか、わかっているんだろうな?うまくいった暁には出世も考えるくらいの事を・・・」」
「それを言う役割はあのぼんくらの長男だわ・・・」
と、ユキちゃん。
「だって、あの長男は、イエヤスから、ヨシムネより経営者として落ちると判断されているんですよ」
「だって、あのオトコ、馬鹿な事言ってた」
「「ヨシムネといくら仕事で衝突しても、帰りには一緒に夕食を仲良く食べた。そういう仲なんです」とか」
「そんなの、消費者であるわたし達には、なんの意味も無い言葉でしょ?」
「そういう話を持ってくるセンスにしたって、並のビジネスマン以下だわ。だって、要は日本人にお涙頂戴しようとしたって」
「事なんだから・・・ビジネスの厳しさをひとつも理解していない・・・ヨシムネより経営判断力がないと」
「イエヤスに思われるのは、当然よね。ただのボンクラだわ」
と、辛辣姫。
「ほー。そう見てくると、面白い図式が見えてきたわ。イエヤスのプレゼンに出たのは、痴呆症のイエヤス・・・」
「ヒデヨシにしておいた方がよかったかもね。まあ、いいわ。イエヤスとダメオトコの長男、そして、脅されて」
「どっちにつけばいいかも妥当に判断出来ない、「知恵」の無いオトコ達・・・単なるイエヤスのイエスマン達・・・」
「そういう事でしょ?」
と、御島さん。
「それを言うと・・・大塚家具って経営体として終わってるじゃないですか?」
「つまり、イエヤスは長男を含めて、イエスマンしか育成出来なかったんですよ。つまり、だから、業績も下がっているし」
「イエスマンにすればイエヤスこそ、神だから、イエヤスが復帰すれば、大塚家具がまた、黒字になると考えている」
「実際は、昨日のイエヤスのプレゼンに出た人材がすべて、時代遅れのポンコツばかりだったわけだから」
「それこそ、大塚家具の膿そのもの・・・企業体に進化しようとしている大塚家具の真の敵そのものって事になりますよ」
と、貴島くん。
「面白いのは・・・イエヤスが長男ではなく、ヨシムネを次期経営者に選んだ理由なの」
「「自分にノーを言える人間はヨシムネしかいなかった。だから、ヨシムネを次期社長に選んだ」ってイエヤスは言ってるのよ」
「この経営判断までは正しかったのね。昨日、イエヤスはダメなコを育てたみたいな事を言ってたけど、それが馬脚そのものよね」
「だって、だからこそ、イエヤスは、イエスマンしか育成出来なかったし、自分を守るためだけにかつての自分の判断にノーを言ったのだから」
「「もう自分には正しい判断はひとつも出来ません」って言ってるようなものでしょ・・・イエヤスとイエヤス一派は終わりよ、もう」
と、御島さん。
「実質的な経営で言えば、世界のブランドでは例えばベンツに最高級車種のチャンネルであるアーマーゲーがあるように」
「トヨタにレクサスブランドがあるように、アルマーニにもエンポリオアルマーニがあるように、顧客の年収に合わせて」
「チャンネルを複数化させるのは、半ば常識になってる・・・大塚家具も若い層向けのチャンネルと富裕層向けのチャンネルを」
「持てばいいだけの話だと思うけどね」
と、僕。
「ゆるちょさん、今回の分析、これでよかったですか?」
と、ユキちゃん。
「ああ。素晴らしい洞察力だ。・・・となるとこのストーリーの主人公は?」
と、僕。
「改革派で、経営判断も確かな久美子社長こそ、主人公でしょう」
「勝久社長は長男を含めたイエスマンしか作れなかった・・・しかも企業のコンプライアンスも考えず」
「「俺が俺が」の精神で自分をチヤホヤする事を日本国民に求めた・・・その罪は万死に値します」
「大塚家具はあの勝久氏のプレゼンに出席した人物全員を解雇し、久美子社長の元、新たに改革しながら複数の販売チャンネルを持ち」
「コンプライアンス的にも、優れた企業体として再生する事が求められると思います」
と、辛辣姫。
「この程度のプレゼンで日本国民を騙せると思った勝久氏の甘さ・・・それが最大の「負のエネルギー」となって」
「自身及び、あの勝久氏のプレゼンに出た全員に返ってくると言う当然の予見が出来ない段階で」
「あのオトコ達の運命は決まったわ。日本は自分を舐めた人間にきっついお返しをちゃんとする民族だから」
と、御島さん。
「まさに老害・・・痴呆症は怖いね。イエスマンしか作れないワンマン社長は今後、相手にされない世の中になるだろうね」
と、貴島くん。
「ユニクロの柳井社長も、社長を若手の誰かに引き継ごうとしたけど、失敗に終わってるわ」
「それだけ、人材育成というのは難しいのよ」
と、御島さん。
「情の使い方を誤ったな、あの長男・・・それがすべての命取りだったよ」
「いかにもイエスマンな風情のアンポンタンを脅迫してプレゼンしても・・・」
「勝久氏側が終わっていると理解させる材料にしかならなかったからね・・・」
と、僕。
「やっぱり、日本文化って怖いです。そして、物事の裏側をすべて見通してしまう、ゆるちょさんも・・・」
と、辛辣姫は言葉にしながら、やさしい笑顔になった。
「だから、今日も飲みに行きましょう。ほんと、ゆるちょさんって、知恵者なんだから!」
と、ユキちゃんははしゃぐように言った。
(おしまい)