「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス!」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(20)

2013年12月19日 | 過去の物語
クリスマスイブ当日の土曜日の午前11時半頃、東堂賢一の家に女性とその子供の来客があった。


「あーはいはい。今出ますよ」

と、東堂賢一が玄関に出ると、29歳くらいの女性と5歳くらいのかわいい女の子が来ていた。

「えーと、どなたさん、でしたっけ?今、うちの家内が家を空けてまして・・・申し訳ないんですけど・・」

と、見知らぬ客人に、困る東堂賢一だった。

「あ、すいません。自己紹介が遅れました。わたし、弓川香織(かおる)(29)と言いまして、東堂エイイチさんの向かいの部屋に住んでいる者です・・・」

と、ペコリと頭を下げる香織だった。すると、5歳の女の子もペコリと頭を下げる。

「これ、うちの子の愛(5)なんですけど、うち、母子家庭でして・・・それで、この子がどうしても、エイイチお兄ちゃんとイブは過ごすんだと言いはりまして・・・」

と、香織は説明する。

「で、エイイチさんがお部屋にいらっしゃらなかったので、管理人さんに聞いたら、こちらだとお聞きしまして・・・」

と、香織は説明する。

「ほう・・・そういうことでしたか。いや、それなら、ちょっと待っててくださいよ」

と、東堂賢一は、慌てて奥に入り、エイイチを連れてくる。

「あれ、香織さん、それに愛ちゃんも・・・どうしてここに?」

と、エイイチはポカンとしている。

「エイイチお兄ちゃん、イブ、一緒に過ごそ!」

と、エイイチを見つけた愛が、すぐさま、エイイチに甘える。

「朝から、この子、こう言いはって聞かないんです」

と、香織がすまなそうに言う。

「エイイチ、よかったじゃないか・・・お前をイブに求めてくれる素敵なレディがいたじゃないか・・・香織さん、エイイチのこと、くれぐれもよろしくお願いします」

と、東堂賢一も、そこは出来た大人・・・すぐに事情を察し、話をうまく進めていく。

「え、伯父さん・・・」

と、エイイチも慌てるが、

「香織さん、こいつは、ほんとは性格のいい素直な子なんですよ。子供にもやさしいし・・・そういう子なんで、よろしくお願いします」

と、東堂賢一が頭を下げると、

「いえ、こちらこそ、いつも愛が遊んで頂いて・・・いつも助かっていて・・・エイイチお兄ちゃんがパパになってくれたら、なんて愛が言うんです」

と、香織は、少し赤くなりながら、そんな風に言う。

「そうですか。ほら、エイイチ、なにしてるんだ。すぐに香織さん親子を送っていきなさい。それから途中でお二人の為のクリスマス・プレゼントも用意するんだぞ」

と、東堂賢一は、エイイチと香織愛親子を送りながら、そこまで言葉にした。

「伯父さん、ありがとう」

と、少し涙ぐみながら、エイイチは、言うと、香織愛親子と共に、しあわせそうに、帰って行った。


クリスマスイブ当日の土曜日の午後1時頃。イズミは、八津菱電機華厳寮で、静かに考えていた。

「美緒は、昨日、元カレに抱かれた後、俺からの電話を避けるべく、部屋を後にしたのかもしれないな」

と、イズミは静かに考える。

「イブくらいは、二人で静かに過ごしたい・・・普通、誰でも、そう考えるもんだ」

と、イズミは、考えている。

「となれば・・・イブは、一晩、美緒の部屋に誰も帰ってこないことになる・・・」

と、イズミは、考えている。


裸の美緒が、知りもしない男性に抱かれているシーンが頭に浮かぶ。

美緒は、本当に嬉しそうな顔をしている。


「くっ。この俺が・・・こんなことで、苦しめられるとは、な」


と、イズミは苦虫を噛んだ表情だ。


「それは、お前が本当に美緒を愛しているからなんじゃないか?」

と、部屋にいれば、きっと言ってくる鈴木タケルの声だった。

「美緒を本当に愛したからこそ、これまでの愛と違って、お前は苦しんでいるんじゃないのか?」

と、鈴木タケルは言っている。

「お前はとうとう「本当の愛」にたどり着いたんじゃないのか?」

と、鈴木タケルは言っている。


「夢か・・・」

イズミは、いつの間にか、眠り込んでいたようだった。

「しかし・・・パパの言ったこと・・・確かにそうかもしれない・・・・俺は、美緒を、心から愛していたのか・・・」

と、イズミは理解した。

「だから、涙も流れる・・・胸も痛くなる・・・そして、心が苦しんでいる・・・」

と、イズミは言葉にした。

「だから、こんなにも、経験したことのない、苛まれようなんだ」

と、イズミは言葉にした。

「俺はとうとう「本当の愛」に辿り着いたんだ!」

と、イズミは言葉にした。


そして、イズミはこころから叫んだ。

「美緒・・・心から言う・・・俺の元に、帰ってきてくれ・・・」

と、イズミは絞りだすように言葉にした。


同じ頃。ガオはリサへのクリスマス・プレゼントを持って、デパートの中を歩いていた。

クリスマスシーズンのデパートは、華やかで明るい光に照らし出され、人々の笑顔が輝いていた。

「なんか、たくさんの人に見られているような気がするなあ。ま、クリスマスって、そんなもんか」

と、笑顔になりながら、

「さ、部屋に帰って準備してから、リサさんの待つ、ホテルへ向かおう」

と、笑顔になるガオだった。


その背後、その様子を伺った、ひとりの女性が通信機のようなもので、報告を入れていた。


クリスマスイブ当日の土曜日の午後2時頃。アイリのマンションに、リョウコが到着していた。

「あ、リョウコちゃん、一番乗りだわ・・・」

と、アイリはリョウコの顔を見ると、嬉しそうにする。

「あーん、アイリさーん、寂しかったよーん」

と、リョウコは大好きなアイリに飛びついていた。

「よしよし、今日はアミもマキも来るから、心配しないで、心から楽しみましょう」

と、アイリが言うと、

「あ、アミさんも、マキさんも、来るんですか・・・あのお二人、楽しい人達ですからね。楽しみですー」

と、アイリの前だと、完全に妹キャラになってしまうリョウコなのだった。


と、そこへ、アミとマキが登場。


「今日は私の車で来たわよ。今日は大人数になるんでしょ?」

と、しれっと言うアミ。

「え?まあ、そうだけど・・・どういうこと?」

と、アイリはチンプンカンプン。

「こういう時って、アミは、なーにか、考えている時なのよねー」

と、マキも怪しい表情でアミを見る。

「ま、あとで、わかるって」

と、アミは苦笑い。

「あらあ、リョウコちゃん、久しぶり・・・また、楽しく、お酒飲みましょうねー」

と、アミ。

「アミさん、相変わらず、かわいいファッションですねー。いいなあ、赤いダッフルコートがよく似あって」

と、リョウコ。

「へへえ・・・ガオくんにも、そう言われたっけ・・・」

と、アミ。

「ガオくん??」

と、???なリョウコ。

「うん。タケルくんの元ルームメイトと、先週デートしちゃってね。その時、言われたの」

と、屈託のないアミ。

「はあ、あー、そういうことですか」

と、リョウコは、その話題には、乗らない。

「あ、マキさんも・・・やっぱり、マキさん、ヅカガールみたいですよね。身長高いし、スラリとしているし、男役、絶対出来ますって、麗人って感じだし」

と、リョウコは、今度は、マキに振る。

「あらあ、そんな・・・リョウコちゃんは、いっつも、いいこと、言ってくれるのね」

と、満更でもない、マキ。

「マキは、今日は上機嫌だから、ねー」

と、アミ。

「そういえば、どうなった、青山大輝(45)さんの話」

と、アイリがツッコむ。

「マキ言っちゃいなさいよ」

と、アミ。

「レジメンタルタイを贈ったら、社内でだけ、使ってくれるって・・・私に会う時だけ使ってくれるって・・・」

と、涙ぐむマキ。

「よかったねー、マキ。相手が、ちゃんとわかってくれてる、大人の男で」

と、アイリ。

「なんか、わたしも、横にいて、泣きそうになっちゃった」

と、アミ。

「こんな気持ちで、イブを送れるなんて・・・わたし、ほんと、嬉しいの・・・」

と、アイリに抱きつきながら涙ぐむマキ。

「うん。よかった、よかった。マキのことをわかってくれる、大人の男性がきっと現れると思ってたもん、わたし」

と、アイリ。

「うん、ほんと、よかった。マキ」

と、アミも、少し涙ぐむ。


「なんか、うらやましいな・・・マキさん・・・わたしは、今年は、ほんと散々で・・・ここ怪我までしちゃって・・・」

と、リョウコは怪我した膝小僧を見せている。

「きゃあ」「大丈夫?」「うわー、痛そう」

と、アイリ、アミ、マキは、それぞれ反応している。


「まあ、リョウコちゃんは、仕事が仕事だからねー」

と、アミ。

「でも、日本を守るありがたい職業なんだから、誇りのある職業よねー」

と、マキ。

「今日はリョウコちゃん、お仕事はないんでしょ。ゆっくりしていってね」

と、アイリ。

「うえーん、だから、アイリさんに抱きつきたくなるんですー」

と、途端に妹キャラのリョウコ。


「で、そのタケルさんのいとこの方って、何時頃やってくるんでしたっけ?」

と、リョウコがアイリに聞く。

「3時って、言ってたから、もうすぐだわ」

と、アイリ。

「なに、基本、その祐くんだっけ、彼が来るまで彼女を引き止めておけば、いいんでしょ?わたしたちは」

と、アミ。

「となると・・・優ちゃんのお話を聞いてあげて、どんな男性が好きか、聞いたり、タケルくんとのわたしたちのつながりとか、話せばいいわけ?」

と、マキ。

「そうね。まあ、女性同士おしゃべりしていれば、優ちゃんも慣れてくれるかな、と思うわ」

と、アイリ。

「タケルさんが、どんだけすごい男性か、話すといいと思います!」

と、リョウコが手をあげて提案。

「そうね・・・それいいかも。だって、優ちゃんも、タケルくんのこと、好きなんでしょう?」

と、アミが言う。

「ってことは、何、基本全員タケルくんのことをよく思っている女性の集まりになるじゃない。ここ」

と、マキが言う。

「ほんと・・・って、わたしが言うことじゃないか」

と、アイリ。


その言葉に、女性たちは皆笑顔になるのでした。


クリスマスイブ当日の土曜日、午後2時50分頃。東堂賢一の新しくした携帯に電話がかかってくる。

「はい、東堂賢一ですが・・・ほう、君か・・・ふむ、そうか。ふむ、わかった。そこへ行こう。それじゃ、その時に」

と、携帯を切った東堂賢一は、そそくさと外出していく。


クリスマスイブ当日の土曜日、午後3時頃。その空っぽの藤堂家に愛美が帰ってくる。


もちろん、夜のパーティー用の荷物を抱えて。

愛美はもぬけの殻の藤堂家を少し訝しむが・・・気を取り直して、夜のパーティーの準備にかかる。


同じ頃、八津菱電機華厳寮にいる沢村イズミは、美緒の部屋に電話し、誰も出ないのを確認した途端、受話器を乱暴に戻し、決断した。

「よし。もういい・・・もう、俺はいいんだ。酒だ。酒の力を借りて、このつらい自分をどうにかしよう」

と、彼は財布を持つと、真紅のアルファ・ロメオで、鎌倉の街に出ていった。


同じ頃、アイリのマンションに17歳の鈴木優の姿があった。


幾分緊張した鈴木優は、玄関でアイリに歓待されると、はにかむような表情を見せた。

アイリに勧められてダイニングに行くと、そこには、アミ、マキ、リョウコの大人の女性たちが待っていた。

「優ちゃん、こんにちわ」「はじめまして、でしょー」「はじめまして、優ちゃん」

と、アミ、マキ、リョウコに挨拶されて優は、少しドギマギした。


皆、美しい大人の女性達だったからだ。

皆、こちらを緊張させないように、やさしい笑顔だったからだ。


「この人達、暖かい・・・」

優はそんな風に思っていた。


「優ちゃん、このひとが、東堂アイリっていう、タケルくんの婚約者なのよ。ひどい奴でしょー」

と、アミがそんな風に紹介をする。

「なにがひどいのよー、ねー、優ちゃん」

と、アイリが言うと、

「だって、皆の愛するタケルくんを自分ひとりのものにしようとしているのよ。ねえ、優ちゃん、お姉さんの気持ち、わかるわよねー」

と、アミは言う。

「そうそう。タケルくんは、皆のモノなのよ。それを独り占めしちゃ、いけないわよねー」

と、マキも言う。

「いや、独り占めって・・・その言い方は、ないんじゃない?」

と、アイリも応酬。

「優ちゃん、わたしも実はタケルさんのことが、大好きなの。でも、怖いお姉さま達がいるから、黙っているのよ・・・」

と、リョウコも、言う。

「リョウコちゃん、怖いお姉さま達って、誰のことかな?」

と、アミ。

「そ、それは・・・怖くて口には出せません・・・」

と、リョウコが怖がる表情で言うと、

緊張気味だった、優が、思わず笑顔になって、笑ってしまう。


4人は、顔を見合わせ、ホッとした表情になる。


「ねえ、優ちゃんも、お姉さんたちの仲間に入らない?私たちの気持ち、あなたにもわかるでしょう?」

と、リョウコが言うと、優は、コクリと頷きながら、笑顔で、

「わかるような気がします」

と、はっきりと答えた。


4人と優は、笑顔になった。


クリスマスイブ当日の土曜日、午後3時半頃。東堂家では、愛美が夜のクリスマス・パーティーの為の料理を用意していた。

ローストビーフの下処理をしながら、チキンの唐揚げや、その他黙々と準備をしていた。

「賢一さん、どこへ行ったのかしら・・・」

と、愛美は考えていた。

「まあ、ないとは、思うけど、キャバクラの女に呼び出されて、変なプレゼント貰って、ヤニ下がって帰ってくるなんて・・・まさか、ないわよね」

と、愛美は考えていた。

「でも、今日はクリスマスイブ・・・」

と、愛美は思っていた。

「日頃から、素敵だと思っている男性に、何か素敵な贈り物をする日」

と、愛美の中では、イブとは、そういう日だった。

「そんなことがあったら、そんな時は・・・」

と、愛美は軽い怒りを覚えていた。


と、その時、玄関が閉まる音がした。

「愛美、愛美、いるのか、愛美!」

と、賢一の声が聞こえる。

愛美は、その声のする方向へ走っていく。

そこには、いかにも女が作りましたとも言わんばかりの手作りの赤いマフラーをした、賢一の姿があった。

「あなた、何そのマフラー!」

と、愛美は全身で怒りを発すると、

「パシン!」

と、賢一の頬を叩いていた。


「何をするんだ、愛美・・・」

と、賢一が言った背後から、一人の女性がすまなそうに出てくる。

賢一の事務所の経理を担当する、白都優里(32)だった。


「あら・・・このマフラー、優里ちゃんのお手製だったの?」

と、すぐに事情を察する愛美だった。

「すいません・・・日頃の感謝をどう現していいのか、わからなくて・・・大先生は、赤い色が好きと伺っていたもので・・・」

と、白都優里は、すまなそうに話す。

「ううん。優里ちゃんなら、全然いいのよー・・・まったく、賢一さんが、キャバクラなんかに行くからいけないのよ」

と、愛美は、すぐに怒りを鎮める。

「優里ちゃん、ちょうどよかったわ。パーティー料理、一緒に手伝って頂戴。優里ちゃんの結婚修行にも、なるんだから」

と、愛美は、上機嫌で言葉を出す。

「優里ちゃんの気持ちは、痛いほどわかるもの・・・わたし」

と、愛美は、賢一には何も言わず、優里を伴って、台所へ消えていく。


優里も、すまなそうに賢一を見ながら、台所へ消えていった。


賢一は、叩かれたほっぺをさすりながら二人の消えていった台所の方を黙って見ていた。


クリスマスイブ当日の土曜日、午後4時頃。真紅のアルファ・ロメオが、八津菱電機華厳寮に戻ってきた。


イズミは、グレンフィディックと、シーバス・リーガルと、スパークリングワインを2本持っていた。

「これだけありゃあ、記憶を無くすくらい酔えるだろう」

と、言いながら、自分の部屋に戻っていく。

「しかし、ちょっとドライブしたおかげか・・・少しは気分が楽になった・・・」

と、イズミは言葉にするが・・・でも、胸の痛みは、相変わらずだった。

「これは、正真正銘、本当の恋に落ちたんだなあ・・・」

と、イズミは、やさしくそう考えた。

と、そこで、イズミの携帯が鳴った。

「はい、もしもし・・・」

と、イズミが出ると、

「イズミさん!わたし、イズミさんにすぐに会いたくて、大船駅まで、来ちゃった!」

と、美緒の声だった。

「美緒、ほんとに美緒なのか?どうしたんだ・・・その・・・」

と、混乱するイズミに、

「とにかく、会って話したかったの。誤解されたくないから・・・一緒にイブを過ごしたかったから!」

という美緒の言葉を聞いたイズミは、泣いた。


ベーベー泣いた。

これでもか、というくらい大声で泣いた。


「・・・ごめん・・・ごめん・・・俺、お前の声が聞けて・・・本当に嬉しくて、泣いちまったよ・・・恥ずかしいけど・・・これが俺の偽らざる気持ちなんだ・・・」

と、イズミは言葉にしていた。

「涙を拭いたら、お前をピックアップしにいく。真紅のアルファ・ロメオだ。駅の南口を降りて、交差点の横断歩道の前にいてくれ、すぐにピックアップする」

と、イズミは言うと、

「美緒、俺を好きだと言ってくれ」

と、イズミはおねだりした。

「イズミさん、だーーーーい好き!好き好き好き好き、だーーーーい好き!」

と、美緒は言葉にしてくれた。

「よし、すぐ行くからな!」

と、イズミは上機嫌で言うと、携帯を切り、涙を拭いて、立ち上がった。


イズミは本当に笑顔だった。


つづく

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