先日、とある飲み屋で。
その時、僕は、46歳の出版社のお偉いさん、隅田さんと、29歳の既婚女性編集者、白咲さんと飲んでいました。
「いやあ、最近、僕は結婚について、いろいろ考えているんですけど、いろいろ教えてもらってもいいですか?」
と、僕が言うと、
「あー、俺なんかでよければ、なんなりと」
と、隅田さんが言ってくれます。
「わたしも、一応結婚していますから、話せることは、何でも話しますよ」
と、白咲さんも、話してくれます。
「まあ、僕は女性の、とある離婚経験者から、「女性の感情のケアが出来ない男性は、だめだ。自分のことばっかり考えている男は駄目だ」と言われたんですけど・・・」
と、話すと、
「あ、それは、わたしもそう思う・・・うちの旦那は、いつも気遣ってくれるから、ほんと助かるもの・・・」
と、話す白咲さんです。
「隅田さんは、どう思います。その考え方・・・」
と、僕が話を振ると、
「そうだなあ。まあ、耳が痛い話かなあ・・・ほら、俺たちの世代は、サラリーマンとして、日々忙しい時代になっちゃっているから、そのあたり、どうもね・・・」
と、隅田さんは、居心地が悪そうに話します。
「うちの旦那も忙しそうにしていますけど、やっぱり家庭に戻ると、いろいろ気遣ってくれるんで、助かるんですけど」
と、白咲さんは話します。
「白咲さんの旦那さんって、確かベンチャー企業の社長でしたよね」
と、僕が聞くと、
「そう。元々は不動産屋の若社長だったんだけど、中堅企業の町工場なんかとコラボするようになって、起業したの」
と、白咲さんは、話します。
「そうか・・・そこが、サラリーマンである隅田さんと違うところなのかなあ」
と、僕が言うと、
「そりゃあ、サラリーマンとベンチャーの社長とは、雲泥の差があるんじゃないか?だって、社長なら、自分のやりたいように出来るから、不満があまり残らないんじゃないか?」
と、隅田さんは指摘します。
「なあるほど、不満が残らない分、かみさんの感情のケアも余裕を持ってできるということ?」
と、僕が白咲さんに言うと、
「うーん、確かにうちの旦那、起業してからの方が、楽しそうに仕事しているわ・・・私に気を回せるようになったのは、そこかもしれない」
と、白咲さんは、話します。
「でも、隅田さんだって、大出版社のお偉いさんじゃないですか?」
と、僕が話すと、
「はっはっは。サラリーマンのお偉いさんなんて、責任ばかり重くてな・・・合議制だから、やりたいように出来るわけじゃないし・・・」
と、不満を漏らす隅田さんです。
「でも、隅田さんの家庭は、うまくいっているんでしょう?隅田さんも、ちゃんとかみさんや家族に気が使えているってことじゃないですか」
と、僕が言うと、
「まあ、そりゃあ、僕だって家族を不幸にしたくはないからね。かみさんや子供の感情には、気を配っているさ」
と、話す隅田さんです。
「ただ、なんていうのかな、サラリーマンの性だから、しょうがないが、仕事をさせられている感というのは、やっぱりあるよ」
と、話す隅田さんです。
「強制させられている感じですか?」
と、僕が聞くと、
「そう。そうだ・・・俺なんかから見たら、好きな仕事の出来るゆるちょくんや、白咲くんの旦那さんは、うらやましいよ」
と、話す隅田さんです。
「へー・・・そういうもんですかねー」
と、僕はなんとなく、そういう感じです。
「だってさ、やっぱり男は、好きなこと、したいもんだろ・・・家族のためとは言え、サラリーマンっていうのは、所詮、飼い犬みたいなもんで、鎖につながれているんだよ」
と、ぼやく隅田さんです。
「白咲くんの旦那さんだって、うれしそうに働いていないかい?」
と、白咲さんに聞く隅田さんです。
「そうですねー。疲れてはいるけれど、毎日、やりきった感を感じているみたいです」
と、白咲さんも話します。
「男って、そこなんだよなー。そこが大事だって、最近気づいたよ」
と、隅田さんは話します。
「自分のやりたい仕事を、一生懸命やって、結果に満足する・・・それが男なんだよ。やらなきゃいけない仕事をこなしているだけじゃ、不満なんだよな」
と、隅田さんは、ゆっくりとウイスキーを飲みながら、話します。
「それ、編集の第一線に戻りたいってことですか?」
と、僕が聞くと、
「まあ、そうだな・・・管理職に祭りあげられちゃうと、編集の仕事なんて出来ないし、やっちゃいけないことだからな」
と、隅田さんは、ぼやきます。
「俺は編集の仕事がほんとに好きだったんだなって、この歳になって、改めて、思うよ」
と、ウイスキーを飲み干す、隅田さんです。
「うちの旦那も、不動産屋の社長なんて、やりたくなかったんだそうです・・・でも、今は毎日うれしそうです。根っからああいうモノ作りの仕事は好きらしくて」
と、話してくれる白咲さんです。
「男は、好きなことをやっている時間が長ければ長いだけ、しあわせになっていくんじゃないかな」
と、隅田さんは、話します。
「好きなことを仕事として出来るなんて、こんなしあわせなことは、ないと思うよ」
と、隅田さんは話します。
「そっか。うちの旦那は好きな仕事をしているから、あんなに毎日笑顔なんだ・・・だから、私達にも心遣いが出来るのね・・・」
と、白咲さんは、つぶやくように話します。
「でも、隅田さんの家庭もしあわせなんですよね?」
と、僕が振ると、
「うーん、もう、うちの子供達も大きいからなー。上の男の子は、23歳で、もう、社会に出てるし、下の娘も大学3年生だ・・・だから、大人なんだ、皆」
と、話す隅田さんです。
「だから、俺が少しくらい自分勝手なことをやろうと、大目に見てくれるんだよ。長い間の信頼があるから、そうなってる」
と、話す隅田さんです。
「だから、かみさんのケアや子供のケアが必要なのは、かみさんが若い時や子供が小さい時なんじゃないかな・・・ある程度の年齢になったら、もう、大丈夫なんじゃないか」
と、隅田さんは、自分の経験から、話しています。
「どれくらいまで、感情のケアが必要なんでしょうかね?」
と、僕が聞くと、
「そうだなあ・・・子供が思春期を越えるくらいまでかな・・・かみさんはかみさんで成長するからな。そのうち、自立する。俺のケアなんていらなくなるさ」
と、話す隅田さんです。
「でも・・・わたし、いくつになっても、旦那さんから、ケアしてもらいたい、気遣ってもらいたいと思っていますよ」
と、白咲さんが、反論すると、
「年齢を重ねたからって、ケアしなくなるわけじゃないさ・・・若い頃程、頻繁にしなくてもよくなるって、ことだよ。たまにケアしてあげると喜ぶしな」
と、隅田さんは説明してくれます。
「ただ、俺たちの世代は、サラリーマンは、むちゃくちゃ忙しいんでな。そこを子供たちも、かみさんもわかってくれてる・・・そういうことじゃないかな」
と、隅田さんは話してくれます。
「子供達も大人になってくるから、さらに奥さんも・・・だから、今度は逆に、父親に気遣うことが出来るようになるって、ことですね」
と、僕が隅田さんに話すと、
「そうだ。そういうこと。お互い気遣うようになれれば、もう、大丈夫ってことだよ。家族が大人になって、完成したってことじゃないかな、それは」
と、隅田さんは言います。
「そうか・・・わたしも子供も、旦那を気遣えるようになれた時、私達家族は、完成するのか・・・」
と、白咲さんも話します。
「なるほど・・・お父さんばかり気遣っているのは、かみさんや子供がまだ幼い時で・・・逆に大人になれば、お父さんを気遣えるようになるのか・・・」
と、僕も納得します。
「しかし、一生現場にいられる仕事って、いいなあ・・・ほーんと俺もそうなりたい・・・ゆるちょくんがうらやましい」
と、隅田さんが話します。
「わたしも、旦那さんをそういう目で見ることにします。彼は好きなことをしているから、輝いているんだなって」
と、うれしそうに白咲さんが話します。
「まあでも、確かに、ストレスフリーなところがありますね。第一線の現場で、好きな仕事をしているってことは」
と、僕が言うと、
「そういうことをしれっと言うのが、君だな。ゆるちょくん」
と、隅田さんは笑います。
「ゆるちょさんって、うちの旦那と同じ匂いがします。だから、話しやすいのかも」
と、白咲さんも笑います。
「もうすぐ、春ですね」
と、僕は、都会の夕景を見ながら話すのでした。
隅田さんも、白咲さんも、なんとなく、うれしそうに、夕景を眺めているのでした。
その時、僕は、46歳の出版社のお偉いさん、隅田さんと、29歳の既婚女性編集者、白咲さんと飲んでいました。
「いやあ、最近、僕は結婚について、いろいろ考えているんですけど、いろいろ教えてもらってもいいですか?」
と、僕が言うと、
「あー、俺なんかでよければ、なんなりと」
と、隅田さんが言ってくれます。
「わたしも、一応結婚していますから、話せることは、何でも話しますよ」
と、白咲さんも、話してくれます。
「まあ、僕は女性の、とある離婚経験者から、「女性の感情のケアが出来ない男性は、だめだ。自分のことばっかり考えている男は駄目だ」と言われたんですけど・・・」
と、話すと、
「あ、それは、わたしもそう思う・・・うちの旦那は、いつも気遣ってくれるから、ほんと助かるもの・・・」
と、話す白咲さんです。
「隅田さんは、どう思います。その考え方・・・」
と、僕が話を振ると、
「そうだなあ。まあ、耳が痛い話かなあ・・・ほら、俺たちの世代は、サラリーマンとして、日々忙しい時代になっちゃっているから、そのあたり、どうもね・・・」
と、隅田さんは、居心地が悪そうに話します。
「うちの旦那も忙しそうにしていますけど、やっぱり家庭に戻ると、いろいろ気遣ってくれるんで、助かるんですけど」
と、白咲さんは話します。
「白咲さんの旦那さんって、確かベンチャー企業の社長でしたよね」
と、僕が聞くと、
「そう。元々は不動産屋の若社長だったんだけど、中堅企業の町工場なんかとコラボするようになって、起業したの」
と、白咲さんは、話します。
「そうか・・・そこが、サラリーマンである隅田さんと違うところなのかなあ」
と、僕が言うと、
「そりゃあ、サラリーマンとベンチャーの社長とは、雲泥の差があるんじゃないか?だって、社長なら、自分のやりたいように出来るから、不満があまり残らないんじゃないか?」
と、隅田さんは指摘します。
「なあるほど、不満が残らない分、かみさんの感情のケアも余裕を持ってできるということ?」
と、僕が白咲さんに言うと、
「うーん、確かにうちの旦那、起業してからの方が、楽しそうに仕事しているわ・・・私に気を回せるようになったのは、そこかもしれない」
と、白咲さんは、話します。
「でも、隅田さんだって、大出版社のお偉いさんじゃないですか?」
と、僕が話すと、
「はっはっは。サラリーマンのお偉いさんなんて、責任ばかり重くてな・・・合議制だから、やりたいように出来るわけじゃないし・・・」
と、不満を漏らす隅田さんです。
「でも、隅田さんの家庭は、うまくいっているんでしょう?隅田さんも、ちゃんとかみさんや家族に気が使えているってことじゃないですか」
と、僕が言うと、
「まあ、そりゃあ、僕だって家族を不幸にしたくはないからね。かみさんや子供の感情には、気を配っているさ」
と、話す隅田さんです。
「ただ、なんていうのかな、サラリーマンの性だから、しょうがないが、仕事をさせられている感というのは、やっぱりあるよ」
と、話す隅田さんです。
「強制させられている感じですか?」
と、僕が聞くと、
「そう。そうだ・・・俺なんかから見たら、好きな仕事の出来るゆるちょくんや、白咲くんの旦那さんは、うらやましいよ」
と、話す隅田さんです。
「へー・・・そういうもんですかねー」
と、僕はなんとなく、そういう感じです。
「だってさ、やっぱり男は、好きなこと、したいもんだろ・・・家族のためとは言え、サラリーマンっていうのは、所詮、飼い犬みたいなもんで、鎖につながれているんだよ」
と、ぼやく隅田さんです。
「白咲くんの旦那さんだって、うれしそうに働いていないかい?」
と、白咲さんに聞く隅田さんです。
「そうですねー。疲れてはいるけれど、毎日、やりきった感を感じているみたいです」
と、白咲さんも話します。
「男って、そこなんだよなー。そこが大事だって、最近気づいたよ」
と、隅田さんは話します。
「自分のやりたい仕事を、一生懸命やって、結果に満足する・・・それが男なんだよ。やらなきゃいけない仕事をこなしているだけじゃ、不満なんだよな」
と、隅田さんは、ゆっくりとウイスキーを飲みながら、話します。
「それ、編集の第一線に戻りたいってことですか?」
と、僕が聞くと、
「まあ、そうだな・・・管理職に祭りあげられちゃうと、編集の仕事なんて出来ないし、やっちゃいけないことだからな」
と、隅田さんは、ぼやきます。
「俺は編集の仕事がほんとに好きだったんだなって、この歳になって、改めて、思うよ」
と、ウイスキーを飲み干す、隅田さんです。
「うちの旦那も、不動産屋の社長なんて、やりたくなかったんだそうです・・・でも、今は毎日うれしそうです。根っからああいうモノ作りの仕事は好きらしくて」
と、話してくれる白咲さんです。
「男は、好きなことをやっている時間が長ければ長いだけ、しあわせになっていくんじゃないかな」
と、隅田さんは、話します。
「好きなことを仕事として出来るなんて、こんなしあわせなことは、ないと思うよ」
と、隅田さんは話します。
「そっか。うちの旦那は好きな仕事をしているから、あんなに毎日笑顔なんだ・・・だから、私達にも心遣いが出来るのね・・・」
と、白咲さんは、つぶやくように話します。
「でも、隅田さんの家庭もしあわせなんですよね?」
と、僕が振ると、
「うーん、もう、うちの子供達も大きいからなー。上の男の子は、23歳で、もう、社会に出てるし、下の娘も大学3年生だ・・・だから、大人なんだ、皆」
と、話す隅田さんです。
「だから、俺が少しくらい自分勝手なことをやろうと、大目に見てくれるんだよ。長い間の信頼があるから、そうなってる」
と、話す隅田さんです。
「だから、かみさんのケアや子供のケアが必要なのは、かみさんが若い時や子供が小さい時なんじゃないかな・・・ある程度の年齢になったら、もう、大丈夫なんじゃないか」
と、隅田さんは、自分の経験から、話しています。
「どれくらいまで、感情のケアが必要なんでしょうかね?」
と、僕が聞くと、
「そうだなあ・・・子供が思春期を越えるくらいまでかな・・・かみさんはかみさんで成長するからな。そのうち、自立する。俺のケアなんていらなくなるさ」
と、話す隅田さんです。
「でも・・・わたし、いくつになっても、旦那さんから、ケアしてもらいたい、気遣ってもらいたいと思っていますよ」
と、白咲さんが、反論すると、
「年齢を重ねたからって、ケアしなくなるわけじゃないさ・・・若い頃程、頻繁にしなくてもよくなるって、ことだよ。たまにケアしてあげると喜ぶしな」
と、隅田さんは説明してくれます。
「ただ、俺たちの世代は、サラリーマンは、むちゃくちゃ忙しいんでな。そこを子供たちも、かみさんもわかってくれてる・・・そういうことじゃないかな」
と、隅田さんは話してくれます。
「子供達も大人になってくるから、さらに奥さんも・・・だから、今度は逆に、父親に気遣うことが出来るようになるって、ことですね」
と、僕が隅田さんに話すと、
「そうだ。そういうこと。お互い気遣うようになれれば、もう、大丈夫ってことだよ。家族が大人になって、完成したってことじゃないかな、それは」
と、隅田さんは言います。
「そうか・・・わたしも子供も、旦那を気遣えるようになれた時、私達家族は、完成するのか・・・」
と、白咲さんも話します。
「なるほど・・・お父さんばかり気遣っているのは、かみさんや子供がまだ幼い時で・・・逆に大人になれば、お父さんを気遣えるようになるのか・・・」
と、僕も納得します。
「しかし、一生現場にいられる仕事って、いいなあ・・・ほーんと俺もそうなりたい・・・ゆるちょくんがうらやましい」
と、隅田さんが話します。
「わたしも、旦那さんをそういう目で見ることにします。彼は好きなことをしているから、輝いているんだなって」
と、うれしそうに白咲さんが話します。
「まあでも、確かに、ストレスフリーなところがありますね。第一線の現場で、好きな仕事をしているってことは」
と、僕が言うと、
「そういうことをしれっと言うのが、君だな。ゆるちょくん」
と、隅田さんは笑います。
「ゆるちょさんって、うちの旦那と同じ匂いがします。だから、話しやすいのかも」
と、白咲さんも笑います。
「もうすぐ、春ですね」
と、僕は、都会の夕景を見ながら話すのでした。
隅田さんも、白咲さんも、なんとなく、うれしそうに、夕景を眺めているのでした。