「しかし、ショウコさんって、すごいなあ」
と、タケルは、アイリの横で、そんな風につぶやいている。
4月上旬の日曜日の朝・・・アイリのベッドの中でタケルは、裸のまま、そんな風につぶやいていた。
アイリはタケルの肩にもたれ・・・満足感に浸っていた・・・。
「僕、思ったんだけどさ・・・このところのショウコさんとイズミのやりとり・・・これ、ショウコさんとイズミの代理戦争だったんじゃないかなーって」
と、タケルは言う。
「まあ、結局、最後はイズミのやり方に憤慨したショウコさんが、イズミの恋愛を子供の恋と決め付け、「そんな子供は相手にならないわ」って切り捨てたからね」
と、タケル。
「そうね・・・ショウコさんは、社内でも、誰も敵に回さない、ある意味怖いひとだから・・・社長だって、一目も二目も置いている、すごいひとよ・・・」
と、アイリ。
「僕は普段イズミに接していて、「こいつは、どれだけ女性のことを知っているんだ?」と舌を巻いていたんだけど・・・その上を行ったからね、ショウコさんは」
と、タケルは、普通にショウコの手腕に驚いている。
「あのイズミが、赤子の手をひねるように、あっけなくやられて・・・驚くね、ほんとに」
と、タケルは、素直に言っている。
「ショウコさんは、余程、イズミさんのやり口に憤慨したのね・・・ま、女性はオバサン!と言われるのが、一番いやだから・・・」
と、アイリ。
「まあ、そのあたりは、イズミも確かに子供だよ・・・ショウコさんは、美しいし、何より話していて、話しがいのある、大人の美しい女性だもの・・・」
と、タケル。
「そのショウコさんの価値のわからないイズミは・・・女性にしろ、男性にしろ、年齢じゃなく、あり方だってことに、気づいているのが、大人の男性であり、女性だよ」
と、タケル。
「そうね・・・ショウコさんは、本当に美しくなったもの・・・あれなら、すぐにでも、パートナーを見つけそうね」
と、アイリ。
「そうかな・・・まあ、僕はヒデさんのことは、全然知らないけれど・・・相当ポテンシャルの高いひとだったんじゃないかな・・・そういうひとって、なかなかいないじゃない」
と、タケル。
「だからこそ、あんなに美しいショウコさんでさえ・・・10年もの間、漂流してたんだろ?」
と、タケル。
「そうか・・・そうよね・・・ちょっとわたしも安易に言い過ぎたかな」
と、少し苦笑するアイリ。
「でも、アイリの気持ちはわかるよ。早く・・・長いことアンハッピーだったショウコさんにしあわせになって貰いたい・・・そういう気持ちだからでしょ?」
と、タケル。
「うん。そうよ・・・タケルも、わたしの心を見抜けるようになったわね」
と、嬉しそうにするアイリ。
「ショウコさんと対決して・・・相当勉強になったからね・・・それにアイリはいつもそばにいてくれるから・・・その気持ちもわかるようになってきたのさ」
と、嬉しそうにタケルも話す。
「ありがとう・・・タケルにそう言ってもらうと、ほんとに、嬉しいの・・・尽くしているかいがあるわ」
と、アイリ。
「尽くしがいのある大人の男に・・・早くならなっくちゃね、僕も」
と、素直に言う、タケル。
「タケル、相当、おとなの男になっていると思うけど・・・でも、少年な部分も残しておいてね」
と、アイリ。
「ああ・・・アイリを抱く時は、少年に戻るよ」
と、タケルは言いながら、アイリを抱き始める。
「うれしい・・・」
アイリはそんなタケルの愛撫を受けながら、しあわせそうに、言った。
「でも・・・わたし気になっているのは、イズミさんのことかな・・・」
と、音楽を流しながら、ベッドの上で、のんびりと裸で過ごしているアイリは言った。
「イズミのこと?」
と、タケルも、アイリの横に寝ながら、言う。
「うん・・・こう言うとあれだけど・・・ショウコさんは、余程イズミさんのやり口に憤慨していたんだと思うの・・・」
と、アイリ。
「まあ、そうだね・・・切り捨て方が、すごかった」
と、タケル。
「わたしも、イズミさんのやり口は・・・前から気になっていたけど・・・正直言うけど、女性を上から目線で見下している姿勢が、女性にわかっちゃうのよね」
と、アイリ。
「だから、大人の女性は、いくらイズミさんが、イケメンでも・・・普通に嫌うのよ・・・子供じみているから」
と、アイリ。
「彼は大人として女性に無償の愛を与えられない・・・その欠点が露わになるから・・・彼の元から、女性が次々と去っていく・・・そういう状況なんじゃないかしら」
と、アイリは、大人の女性として、鋭く見抜く。
「ほう、なるほど・・・たまには、女性の意見も聞いてみるもんだな・・・いや、俺はいつもイズミの口から別れの理由を聞いていたから・・・そういうことか」
と、タケル。
「え、イズミさんは、別れの理由をどう説明していたの?」
と、アイリ。
「ん?ああ・・・「俺がやさしくしなくなるから・・・女どもは結婚だの子供がほしいだの言い出して・・・面倒くさいから切る」・・・あくまで、イズミ主導の話だった」
と、タケル。
「まあ、相手にも依るとは思うけれど・・・イズミさんは思っている程、モテないと思う・・・大人の女性は敬遠するし・・・」
と、アイリ。
「その説明も・・・あくまで、イズミさんの主張だから・・・」
と、アイリ。
「なるほど・・・裏をとったわけではないから・・・裏の取ってない話として扱うべき・・・そう言いたいんだな、アイリ」
と、タケル。
「うん・・・まあ、イズミさんを信じないわけではないけど・・・ショウコさんの話を信じるなら・・・イズミさんは、今のままでは、本当の愛は見つけられないわ」
と、アイリ。
「13歳の子供のままでは・・・ね」
と、アイリ。
「そうだな・・・というか、イズミは、最初からショウコさんの怖さを知っていて・・・それで逃げたのかもしれないな・・・オバサンはパス!とか言って」
と、タケル。
「どう考えても、ショウコさんとイズミじゃあ・・・喧嘩になるしか、なさそうだからな・・・相性は最悪って、感じがしない?アイリ」
と、少し笑ってしまうタケル。
「そうね・・・確かに、そうなりそうね・・・イズミさんとショウコさんじゃあ」
と、アイリも少し笑う。
「イズミは、そうやって、いつも逃げてるのかもしれないな・・・自分の正体を女性に知られたくないのかもしれない・・・だから、長続きしないんじゃないか?女性と」
と、タケルは言う。
「自分の正体を隠そうと逃げる男性・・・自分に自信がないから、逃げるのかしら、そういう男性って・・・」
と、アイリは、素直に疑問。
「あいつ・・・どうも、説明と実際が、違うような気がするな・・・」
と、タケルは言う。
「どういうこと?」
と、アイリ。
「あいつは、自分のわがままを聞いてくれる、大らかな女性を探していると言ってるんだけど・・・だったら、自分をさらけ出すだろ、普通」
と、タケル。
「自分をさらけ出して、相手に見せて、それを受け入れてくれる女性を彼女にするはずだろ・・・だけど、イズミのやってることは、正反対だ」
と、タケル。
「自分に自信がなくて、女性から逃げ回っている・・・だったら、女性はどう思う?アイリ」
と、タケル。
「余程好きなら別だけど・・・普通、諦めるんじゃない・・・だって、女性は、かまってくれるから、愛しくなるんだもん。そして、そういう男性を支えたいと思うの」
と、アイリ。
「そして、強い大人の男性になろうと努力している男性を、応援していくの・・・最初から逃げているような男は・・・正直駄目ね」
と、アイリは結論付ける。
「うーん、だいたいわかってきた・・・つまり、イズミはイケメンだからこそ、最初はモテる。彼女も出来る・・・だけど、自分に自信がないから、逃げまわる・・・」
と、タケルは説明する。
「逃げるイズミに気がついた彼女は・・・そこで、自分に自信のないイズミの本当の姿に気がついて・・・愛想を尽かして、別れる・・・これの繰り返しだったんだよ。イズミは」
と、タケルは説明する。
「だから、ショウコさんの存在を知った時・・・ショウコさんなら、イズミの正体を見ぬいてしまうことを知っていたイズミは、逃げを打った・・・そういうことだ」
と、タケルは説明し、自分の説明に驚く。
「あいつ、そんな自分を隠していたんだ・・・さも、モテるイケメンという物語を作って・・・そういうことだったのか・・・」
と、タケルは悲しく結論を言う・・・。
「ある意味、悲しい話だ・・・ま、でも、強い大人な自分を作れない悲劇だろうな・・・それは」
と、タケルは言う。
「イズミ自身がそれに気づいて、乗り越えて行かなければいけない壁・・・それは俺たちにも、どうすることも出来ない・・・そういうことだろうな」
と、タケルは言う。
「それって、ショウコさんの目がいかに正しいかってことの証明よね?」
と、アイリ。
「だって、ショウコさんは、激しくイズミさんを嫌い、タケルを恩人のように愛している」
と、アイリ。
「って言ったって、あのシナリオの多くの部分はイズミが書いたんだぜ」
と、タケル。
「でも・・・大切なのはシナリオじゃないと思う・・・ショウコさんの前で、プレゼンしたタケルにこそ、意味があったんだと思う」
と、アイリ。
「タケルの人間性が・・・ショウコさんを信じさせ、説得したから、ショウコさんは、10年の不幸から、抜け出られたんだもの」
と、アイリ。
「あの時、タケルでなくて、イズミさんが、プレゼンしたら、どういう結果になったか、タケルだって、想像出来るでしょ?」
と、アイリ。
「まあ、そーだな・・・ショウコさんは、イズミのことを激しく嫌うだろうから・・・事態は最悪な結果になってただろうな」
と、タケル。
「大事なのは、他人を信じさせる、説得出来る、プレゼンターの人間性なのよ・・・タケルの人間性にこそ、価値があったの・・・それは認めてくれても、いいでしょ?」
と、アイリ。
「ちょっとこそばゆいけどね・・・まあ、そうかもしれないな・・・以前ガオにも似たようなことを言われたよ「パパは皆に好かれてるから何も心配しないで大丈夫」ってね」
と、頭を掻きながら、タケル。
「私としては、ショウコさんが、価値を認める男・・・鈴木タケルを支える仕事が出来て・・・こんなに誇らしい仕事はないって、思ってるわ」
と、アイリ。
「確かに・・・ショウコさんの洞察力は、半端無いからな・・・僕の周りを見回しても・・・ね」
と、タケル。
「わたしは、タケルの洞察力もすごいと思うけどな・・・でも、ショウコさんは、その上をいくもん・・・信じないわけにはいかないわ」
と、アイリ。
「ショウコさんに、タケルとわたしの写真をはじめて見せた時・・・それだけで、わたしたちを認めてくれた・・・あの瞬間から、すべては始まっていたのねー」
と、アイリは感慨深そうに言う。
「いや、いい知り合いが出来たよ・・・ショウコさん・・・なにかと二人の力になって貰おう・・・激闘の日々をこれから進んでいくためにも、ね」
と、タケル。
「心強い味方でしょ?ショウコさん」
と、アイリはうれしそう。
「ああ・・・いいひとを紹介してくれたよ・・・と言って、イズミもガオも、俺の評価は変わらないけどね」
と、タケル。
「うん。二人共個性的で、いいひとだと、わたしも思うわ」
と、アイリ。
「まあ、でも、楽しいよ・・・アイリといると、いろいろな冒険が出来るから」
と、タケル。
「わたしも、タケルといると、いろいろな冒険が楽しめて、ほんとに、楽しい」
と、アイリ。
「さ、そろそろ起きるか・・・お腹すいちゃった」
と、タケル。
「そうね。今日はブランチって感じかしらね・・・ワインでも飲む?」
と、笑顔のアイリ。
「ああ・・・今日はここに泊まれるからな・・・楽しい時間を過ごそう」
と、笑顔のタケル。
「うん・・・じゃ、タケル、キスして」
と、笑顔で、頬を出すアイリ。
「チュ!」
という音が響いて、楽しい日曜日が始まっていった。
(つづく)
→前回へ
→物語の初回へ
と、タケルは、アイリの横で、そんな風につぶやいている。
4月上旬の日曜日の朝・・・アイリのベッドの中でタケルは、裸のまま、そんな風につぶやいていた。
アイリはタケルの肩にもたれ・・・満足感に浸っていた・・・。
「僕、思ったんだけどさ・・・このところのショウコさんとイズミのやりとり・・・これ、ショウコさんとイズミの代理戦争だったんじゃないかなーって」
と、タケルは言う。
「まあ、結局、最後はイズミのやり方に憤慨したショウコさんが、イズミの恋愛を子供の恋と決め付け、「そんな子供は相手にならないわ」って切り捨てたからね」
と、タケル。
「そうね・・・ショウコさんは、社内でも、誰も敵に回さない、ある意味怖いひとだから・・・社長だって、一目も二目も置いている、すごいひとよ・・・」
と、アイリ。
「僕は普段イズミに接していて、「こいつは、どれだけ女性のことを知っているんだ?」と舌を巻いていたんだけど・・・その上を行ったからね、ショウコさんは」
と、タケルは、普通にショウコの手腕に驚いている。
「あのイズミが、赤子の手をひねるように、あっけなくやられて・・・驚くね、ほんとに」
と、タケルは、素直に言っている。
「ショウコさんは、余程、イズミさんのやり口に憤慨したのね・・・ま、女性はオバサン!と言われるのが、一番いやだから・・・」
と、アイリ。
「まあ、そのあたりは、イズミも確かに子供だよ・・・ショウコさんは、美しいし、何より話していて、話しがいのある、大人の美しい女性だもの・・・」
と、タケル。
「そのショウコさんの価値のわからないイズミは・・・女性にしろ、男性にしろ、年齢じゃなく、あり方だってことに、気づいているのが、大人の男性であり、女性だよ」
と、タケル。
「そうね・・・ショウコさんは、本当に美しくなったもの・・・あれなら、すぐにでも、パートナーを見つけそうね」
と、アイリ。
「そうかな・・・まあ、僕はヒデさんのことは、全然知らないけれど・・・相当ポテンシャルの高いひとだったんじゃないかな・・・そういうひとって、なかなかいないじゃない」
と、タケル。
「だからこそ、あんなに美しいショウコさんでさえ・・・10年もの間、漂流してたんだろ?」
と、タケル。
「そうか・・・そうよね・・・ちょっとわたしも安易に言い過ぎたかな」
と、少し苦笑するアイリ。
「でも、アイリの気持ちはわかるよ。早く・・・長いことアンハッピーだったショウコさんにしあわせになって貰いたい・・・そういう気持ちだからでしょ?」
と、タケル。
「うん。そうよ・・・タケルも、わたしの心を見抜けるようになったわね」
と、嬉しそうにするアイリ。
「ショウコさんと対決して・・・相当勉強になったからね・・・それにアイリはいつもそばにいてくれるから・・・その気持ちもわかるようになってきたのさ」
と、嬉しそうにタケルも話す。
「ありがとう・・・タケルにそう言ってもらうと、ほんとに、嬉しいの・・・尽くしているかいがあるわ」
と、アイリ。
「尽くしがいのある大人の男に・・・早くならなっくちゃね、僕も」
と、素直に言う、タケル。
「タケル、相当、おとなの男になっていると思うけど・・・でも、少年な部分も残しておいてね」
と、アイリ。
「ああ・・・アイリを抱く時は、少年に戻るよ」
と、タケルは言いながら、アイリを抱き始める。
「うれしい・・・」
アイリはそんなタケルの愛撫を受けながら、しあわせそうに、言った。
「でも・・・わたし気になっているのは、イズミさんのことかな・・・」
と、音楽を流しながら、ベッドの上で、のんびりと裸で過ごしているアイリは言った。
「イズミのこと?」
と、タケルも、アイリの横に寝ながら、言う。
「うん・・・こう言うとあれだけど・・・ショウコさんは、余程イズミさんのやり口に憤慨していたんだと思うの・・・」
と、アイリ。
「まあ、そうだね・・・切り捨て方が、すごかった」
と、タケル。
「わたしも、イズミさんのやり口は・・・前から気になっていたけど・・・正直言うけど、女性を上から目線で見下している姿勢が、女性にわかっちゃうのよね」
と、アイリ。
「だから、大人の女性は、いくらイズミさんが、イケメンでも・・・普通に嫌うのよ・・・子供じみているから」
と、アイリ。
「彼は大人として女性に無償の愛を与えられない・・・その欠点が露わになるから・・・彼の元から、女性が次々と去っていく・・・そういう状況なんじゃないかしら」
と、アイリは、大人の女性として、鋭く見抜く。
「ほう、なるほど・・・たまには、女性の意見も聞いてみるもんだな・・・いや、俺はいつもイズミの口から別れの理由を聞いていたから・・・そういうことか」
と、タケル。
「え、イズミさんは、別れの理由をどう説明していたの?」
と、アイリ。
「ん?ああ・・・「俺がやさしくしなくなるから・・・女どもは結婚だの子供がほしいだの言い出して・・・面倒くさいから切る」・・・あくまで、イズミ主導の話だった」
と、タケル。
「まあ、相手にも依るとは思うけれど・・・イズミさんは思っている程、モテないと思う・・・大人の女性は敬遠するし・・・」
と、アイリ。
「その説明も・・・あくまで、イズミさんの主張だから・・・」
と、アイリ。
「なるほど・・・裏をとったわけではないから・・・裏の取ってない話として扱うべき・・・そう言いたいんだな、アイリ」
と、タケル。
「うん・・・まあ、イズミさんを信じないわけではないけど・・・ショウコさんの話を信じるなら・・・イズミさんは、今のままでは、本当の愛は見つけられないわ」
と、アイリ。
「13歳の子供のままでは・・・ね」
と、アイリ。
「そうだな・・・というか、イズミは、最初からショウコさんの怖さを知っていて・・・それで逃げたのかもしれないな・・・オバサンはパス!とか言って」
と、タケル。
「どう考えても、ショウコさんとイズミじゃあ・・・喧嘩になるしか、なさそうだからな・・・相性は最悪って、感じがしない?アイリ」
と、少し笑ってしまうタケル。
「そうね・・・確かに、そうなりそうね・・・イズミさんとショウコさんじゃあ」
と、アイリも少し笑う。
「イズミは、そうやって、いつも逃げてるのかもしれないな・・・自分の正体を女性に知られたくないのかもしれない・・・だから、長続きしないんじゃないか?女性と」
と、タケルは言う。
「自分の正体を隠そうと逃げる男性・・・自分に自信がないから、逃げるのかしら、そういう男性って・・・」
と、アイリは、素直に疑問。
「あいつ・・・どうも、説明と実際が、違うような気がするな・・・」
と、タケルは言う。
「どういうこと?」
と、アイリ。
「あいつは、自分のわがままを聞いてくれる、大らかな女性を探していると言ってるんだけど・・・だったら、自分をさらけ出すだろ、普通」
と、タケル。
「自分をさらけ出して、相手に見せて、それを受け入れてくれる女性を彼女にするはずだろ・・・だけど、イズミのやってることは、正反対だ」
と、タケル。
「自分に自信がなくて、女性から逃げ回っている・・・だったら、女性はどう思う?アイリ」
と、タケル。
「余程好きなら別だけど・・・普通、諦めるんじゃない・・・だって、女性は、かまってくれるから、愛しくなるんだもん。そして、そういう男性を支えたいと思うの」
と、アイリ。
「そして、強い大人の男性になろうと努力している男性を、応援していくの・・・最初から逃げているような男は・・・正直駄目ね」
と、アイリは結論付ける。
「うーん、だいたいわかってきた・・・つまり、イズミはイケメンだからこそ、最初はモテる。彼女も出来る・・・だけど、自分に自信がないから、逃げまわる・・・」
と、タケルは説明する。
「逃げるイズミに気がついた彼女は・・・そこで、自分に自信のないイズミの本当の姿に気がついて・・・愛想を尽かして、別れる・・・これの繰り返しだったんだよ。イズミは」
と、タケルは説明する。
「だから、ショウコさんの存在を知った時・・・ショウコさんなら、イズミの正体を見ぬいてしまうことを知っていたイズミは、逃げを打った・・・そういうことだ」
と、タケルは説明し、自分の説明に驚く。
「あいつ、そんな自分を隠していたんだ・・・さも、モテるイケメンという物語を作って・・・そういうことだったのか・・・」
と、タケルは悲しく結論を言う・・・。
「ある意味、悲しい話だ・・・ま、でも、強い大人な自分を作れない悲劇だろうな・・・それは」
と、タケルは言う。
「イズミ自身がそれに気づいて、乗り越えて行かなければいけない壁・・・それは俺たちにも、どうすることも出来ない・・・そういうことだろうな」
と、タケルは言う。
「それって、ショウコさんの目がいかに正しいかってことの証明よね?」
と、アイリ。
「だって、ショウコさんは、激しくイズミさんを嫌い、タケルを恩人のように愛している」
と、アイリ。
「って言ったって、あのシナリオの多くの部分はイズミが書いたんだぜ」
と、タケル。
「でも・・・大切なのはシナリオじゃないと思う・・・ショウコさんの前で、プレゼンしたタケルにこそ、意味があったんだと思う」
と、アイリ。
「タケルの人間性が・・・ショウコさんを信じさせ、説得したから、ショウコさんは、10年の不幸から、抜け出られたんだもの」
と、アイリ。
「あの時、タケルでなくて、イズミさんが、プレゼンしたら、どういう結果になったか、タケルだって、想像出来るでしょ?」
と、アイリ。
「まあ、そーだな・・・ショウコさんは、イズミのことを激しく嫌うだろうから・・・事態は最悪な結果になってただろうな」
と、タケル。
「大事なのは、他人を信じさせる、説得出来る、プレゼンターの人間性なのよ・・・タケルの人間性にこそ、価値があったの・・・それは認めてくれても、いいでしょ?」
と、アイリ。
「ちょっとこそばゆいけどね・・・まあ、そうかもしれないな・・・以前ガオにも似たようなことを言われたよ「パパは皆に好かれてるから何も心配しないで大丈夫」ってね」
と、頭を掻きながら、タケル。
「私としては、ショウコさんが、価値を認める男・・・鈴木タケルを支える仕事が出来て・・・こんなに誇らしい仕事はないって、思ってるわ」
と、アイリ。
「確かに・・・ショウコさんの洞察力は、半端無いからな・・・僕の周りを見回しても・・・ね」
と、タケル。
「わたしは、タケルの洞察力もすごいと思うけどな・・・でも、ショウコさんは、その上をいくもん・・・信じないわけにはいかないわ」
と、アイリ。
「ショウコさんに、タケルとわたしの写真をはじめて見せた時・・・それだけで、わたしたちを認めてくれた・・・あの瞬間から、すべては始まっていたのねー」
と、アイリは感慨深そうに言う。
「いや、いい知り合いが出来たよ・・・ショウコさん・・・なにかと二人の力になって貰おう・・・激闘の日々をこれから進んでいくためにも、ね」
と、タケル。
「心強い味方でしょ?ショウコさん」
と、アイリはうれしそう。
「ああ・・・いいひとを紹介してくれたよ・・・と言って、イズミもガオも、俺の評価は変わらないけどね」
と、タケル。
「うん。二人共個性的で、いいひとだと、わたしも思うわ」
と、アイリ。
「まあ、でも、楽しいよ・・・アイリといると、いろいろな冒険が出来るから」
と、タケル。
「わたしも、タケルといると、いろいろな冒険が楽しめて、ほんとに、楽しい」
と、アイリ。
「さ、そろそろ起きるか・・・お腹すいちゃった」
と、タケル。
「そうね。今日はブランチって感じかしらね・・・ワインでも飲む?」
と、笑顔のアイリ。
「ああ・・・今日はここに泊まれるからな・・・楽しい時間を過ごそう」
と、笑顔のタケル。
「うん・・・じゃ、タケル、キスして」
と、笑顔で、頬を出すアイリ。
「チュ!」
という音が響いて、楽しい日曜日が始まっていった。
(つづく)
→前回へ
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