「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス!」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(1)

2013年11月23日 | 過去の物語
12月に入った、とある夜。

とある家庭では、若い母親が、5歳の女の子の為に、お話を聞かせていた。

「12月になると、この世のすべてのモノに、魔法がかかるのよ・・・」

と、ママが言うと、布団の中で聞いている5歳の女の子が、

「魔法が、かかるの?どんな魔法?」

と、聞いている。

「最初は、心の中が少し寒くなるの・・・でも、やがて、暖かくしてくれる誰かが現れるのよ・・・そして、皆、やさしい暖かい笑顔になるの・・・」

と、ママは笑顔で話してくれる。

「そういう魔法が、もうすぐ、かかるのよ・・・」

と、ママが言うと、

「それって、わたしにもかかる?ママにも、かかる?」

と、女の子は、真剣に聞く。

「大丈夫、あなたにも、ママにも、ちゃんとかかるから・・・」

と、ママは言う。

「ふーん、それってすごい楽しみ・・・ママも楽しみでしょ?」

と、女の子はうれしそうに言う・・・。

「うん、今から、楽しみなの・・・」

と、ママは、やわらかい表情を見せていた・・・。


季節は、12月を迎えていた・・・。


「ねーえー・・・私の舌、気持ちよかった?」

と、髪の毛の長い、美しい女性が、言葉にしている。


スラリと身長の高い、細身の、色白の美形の女性が、ベッドの上、裸で、笑顔になっている。その横に、裸の男性が、いる。


「キスの味は、どうだった?私の唇、少し、ぽってりしているから、やわらかいって評判なのよ」

と、女性は機嫌良さそうに話している。

「キスの途中で、舌をからませた時・・・わたし、嬉しいの・・・恍惚としちゃうもの・・・あなた、上手いから・・・」

と、笑顔の女性は、横にいる裸の男性に、裸の身体を密着させている。

その豊かな胸を押し付けるように・・・感じさせるように。

「あなたは、上手いわ・・・わたし、今日、何度もイっちゃった・・・ほら、こんなに濡れて・・・触ってみる?ねえ」

と、女性が濡れた表情で話しても、男は、無表情のままだった。

「おまえ、そのセリフ、言い慣れてるな・・・今まで、何人の男と寝てきたんだ?業界ナンバー1のコンパニオン・ガールとして、さ」

と、色白の端正な表情の男が言葉にする。


その男は、沢村イズミ(24)だった。

八津菱電機の2年目のシステムエンジニアにして、鎌倉市にある八津菱電機華厳寮203号室に住む独身の男性だった。


「お前がいくら濡れた表情をしても、イク演技をしても、俺にはわかる・・・お前は一度もイッてない・・・それはお前のやさしさとは違う・・・何か違うものだ」

と、イズミは静かに言う。

「お前は、何か大事なものを無くしている・・・演技すれば、大抵の男は騙せる・・・そう思った瞬間に、大事なものを無くしたんだ・・・」

と、イズミは言うと、立ち上がり、下着をつけ、服を着始めた。

「なあに・・・今日は泊まっていくんじゃなかったの?どうしたの、イズミ・・・」

と、慌てるコンパニオン・ガール。

「もう終りにしよう・・・俺はもう、こういう道は歩かない・・・俺まで、ダメになる前に・・・俺は立ち直るんだ。だから、俺はもうお前とは終わりにするんだ」

と、イズミは無表情で言うと、コンパニオン・ガールは急に立ち上がって、強引にイズミにキスをしながら、裸の身体をイズミに押し付ける。

と、次の瞬間、

「あん!」

と、コンパニオン・ガールは、驚いて身体を離す。

イズミは、中指を差し込み、少し強引に動かしたのだった。

「じゃあな。今のが、最後のサービスさ」

と、イズミは言うと、部屋を出ていった。


コンパニオン・ガールは、裸のまま、立ち尽くしていた。


イズミは歩きながら、中指の匂いを嗅いでいた。

「フランスの本場のチーズの匂いよりキツイや・・・今日はそういう日だったんだろうな」

と、イズミは冷静に言葉にすると、近くの山手線の駅に入っていった。


その日は、12月中旬の金曜日。時刻は、夜の10時を回った頃・・・イズミがホームに出ると、横から、

「イズミさんじゃありませんか・・・ゼミの1年後輩の武見ですよ・・・イズミさん、懐かしい」

と、一人の細身の男が声をかけた。

「お・・・ああ、武見か。久しぶりだなあ・・・」

と、右手で握手しようとして、すぐに左手に変えるイズミだった。

「あれ、イズミさん、左利きでしたっけ?」

と、不審顔の武見。

「いや、ちょっと手首ひねっちゃって、右、痛いんだ、今」

と、適当に言い訳するイズミ。もちろん、女性の匂いを察せられるわけには、いかないからだった。手洗っとけよ。

「いやー、偶然っていうか、イズミさん、覚えてます?明日、ゼミの鍋大会ですよ・・・先輩たちがたくさん顔を出してくださる。昼間の飲み会・・・」

と、武見の説明するイベントをイズミは懐かしく思い出していた。

「そうか・・・今年は明日か、師走鍋は・・・。昨年は仕事が忙しくていけなかったから・・・ぜひ行きたいな」

と、イズミは素直に母校のゼミを懐かしく思っていた。

「よかったー。昨年イズミさん来られなかったから、今年も会えないかなーって思っていたんですよ。明日ゆっくり飲みましょう。夜も飲みますよね。イズミさん」

と、はしゃぐ武見。

「ああ・・・そうだな。たまには学生時代に戻って、先生達にも挨拶しに行くか!」

と、うれしそうにするイズミだった。

「明日は、師走鍋の日かあ・・・今年もクリスマスが近づくなー」

と、イズミはポッケに手を入れながら、少し寒さに震えていた。


その頃、東堂エイイチの妹、リョウコ(26)は、都内のバーで、静かに飲んでいた。

公安の仕事をしているリョウコは、今日の激闘を思いながら、ひとり、ニコラシカを飲んでいた。

黒いパンツスーツ姿のリョウコは、いかにも公安警察という雰囲気だった。

「今年も年末にかけて緊急配備が続きそうね・・・たまにゆっくり出来る夜くらい、しっかり飲みたい・・・そうじゃなきゃ、ストレス解消出来ないもの」

と、今日の夜は非番のリョウコだった。

と、そこへ・・・。

「あれ・・・リョウコちゃん?東堂リョウコちゃんじゃない?」

と、親しげに後ろから声をかける男がいる。

「え?その声は・・・」

と、リョウコが振り向くと、そこには、デカイ身体をした、田島ガオ(28)がいた。

田島ガオは、イズミと同期の男で、八津菱電機の研究所で研究員をしていた。数年前までイズミが今いる華厳寮で相部屋だったが、

今は独立して、華厳寮からそう遠くないアパートに一人で住んでいた。

「ガオさん・・・なんですか?ここらへん・・・って、仕事でしょうねー、やっぱり」

と、リョウコはガオの黒いスーツ姿に、軽く推理する。

「そうそう・・・この近くに協力会社があってね。仕事の話がまとまって、気分いいから、ちょっと飲もうと思って・・・」

と、黒いスーツケースを持って、リョウコの隣に座り直す、ガオだった。

「しかし、久しぶりだなあ。大学の時、柔道部とテコンドー部の合同合宿が最後にあった時・・・あの時飲んで以来か・・・」

と、ガオは懐かしそうに話す。

「ガオさんは、4年の春・・・わたしは3年生になったばかりの頃でしたから・・・けっこう経ってますねー」

と、リョウコは話す。

「リョウコちゃんは、国家公務員になったんだって?八津菱電機の俺から見れば、お得意様筋だ・・・いつ顧客になってもおかしくない・・・なんか笑っちゃうけど」

と、ガオは平和な顔して話している。

「まあ、国家公務員ですけどね・・・そうか、ガオさん、八津菱電機だったんですね・・・私も最近、八津菱電機のシステムエンジニアの方に大変お世話になって・・・」

と、リョウコは気にかけていることを話した。

「へえ。そうなんだ・・・リョウコちゃんにありがたがられる人間が、うちの会社にも、いたんだなあ」

と、民間の会社だと言うことを少し卑下するガオ。

「それは、ガオさんだって就職した会社ですもん・・・すごい人一杯いるんじゃないですか?」

と、リョウコ。

「うーん、俺が見る所、こいつはすげーって思える人間は、今のところ、たった二人・・・それだけだけどなあ」

と、ガオ。

「でも、ガオさんの周りだけでも、二人いるってことは、会社全体で見れば・・・割りと多いんじゃありません?」

と、頭の回転の速いリョウコ。

「まあ、そうかもな・・・確かにリョウコちゃんの言うとおりだ。リョウコちゃんは、女性にしておくのが勿体無いくらい策士的な頭の回り方をするからなあ」

と、苦笑するガオ。

「それより・・・ガオさんは、今、彼女の方はどうなっているんですか?まだ、美咲さんとうまくいってるとか?クリスマスシーズンですし・・・どうなってるかなって」

と、リョウコは女性っぽく、話の方向を変える。

「ああ、それね・・・美咲とは別れて・・・いろいろあったけど、今はフリー。彼女見つけてる最中なんだ」

と、ガオは過去も気にすることもなく、さらりと話している。

「ああ・・・そうだったんですか。実は今から、私の尊敬する女性が、ここに来るんです・・・ただ、この女性、既婚ですから、勘違いしないで、くださいね」

と、リョウコは上手い話の仕方をしている。

「ああ、リョウコちゃん、その女性と、二人で飲む予定だったの?だったら、俺、退散しようか?」

と、ガオ。

「ううん、いいんです。ガオさんがいた方が、きっと彼女も喜ぶし・・・旦那さんが長くフランスに単身赴任しているんで・・・彼女、若い男性と話したいと思いますから」

と、如才ないところを見せるリョウコ。

「そう。それなら、いいけど・・・年上なのかな、その女性は・・・」

と、ガオ。

「ええ・・・今年30歳になる女性で・・・すごく仕事が出来て、美しい女性なんです・・・だから、癒してあげてください。彼女、少し疲れてますから」

と、リョウコ。

「年上の女性か・・・今、俺もあこがれている年上の女性がいてね・・・」

「すっげー美人で、笑顔がかわいくて・・・でも、友達の彼女なんだ・・・だから、ちょっとせつなくてね」

と、苦笑するガオ。

「へー・・・ガオさんって、大学の時は、友達の彼女だって、「これは運命だ!」って言って、がんばったりしてなかったでしたっけ?」

と、目が点になるリョウコ。

「あの頃は、学生だったし、まだ、俺も子供だったよ・・・今は八津菱電機のれっきとした社員だし、立場もある・・・」

と、真面目顔のガオ。

「それに・・・その友達のことを俺自身、尊敬しているからな・・・手を出すなんて、考えられないよ」

と、苦笑するガオ。

「へえ・・・ガオさん、大学時代から相当変わりましたね・・・天上天下唯我独尊みたいだったガオさんが・・・」

と、こちらも苦笑するリョウコ。

「東大にいた頃は、外の世界を知らなかったよ・・・東大だけが世界のテッペンだと思っているほど、馬鹿だったのさ、俺は。社会に出てみて、それがよーくわかったんだ」

と、素直な笑顔で話すガオ。

「ガオさんの近くにも、ガオさんを変える程、すごい人がいるってことですね」

と、リョウコが笑顔で言った時、ドアが開き、重富リサ(30)が入ってくる。

「あら、リョウコ、こんな彼氏がいたの?なかなか、マッチョで魅力的じゃない?」

と、170センチ程のスラリと背の高い、それでいて、筋肉質のスポーツ・ウーマンタイプの女性が、黒いトレンチコート姿で入ってくる。

「いえ・・・こちら、八津菱電機の田島ガオさん・・・大学時代の先輩です。私がテコンドー部、彼が柔道部で、合宿なんかでご一緒してたので、その関係です」

と、リョウコはさらりと説明する。

「たまたま、今日ここで、ばったり会って・・・大学時代も、それほど、親しかったわけでもなくて・・・会ったら挨拶する程度の関係でした」

と、リョウコは淀みなく、説明する。

「どうも・・・お二人で飲むところをお邪魔しちゃったみたいで・・・帰ろうかって言ったんですけど、居てくれた方が、いい、みたいなことを言われまして・・・」

と、ガオは頭を掻きながら話す。

「八津菱電機の田島ガオです。研究所の方で、情報機器のガジェットの研究をしておりまして・・・はい」

と、ガオは自己紹介する。

「情報機器のガジェットの開発ですって・・・そう、私たちも無関係ではないらしいわね・・・でも、田島くん・・・元柔道部だけあって、いい身体してるのね」

と、リサは、笑顔。

「リサさんは、マッチョ好きだから」

と、リョウコが小声で応援。

「はあ・・・今は藤沢にいる関係で、毎週末、サーフィンで波に乗ってます・・・大自然との格闘で・・・ナンパなスポーツでは決してないんですよ。サーフィンは・・・」

と、ガオは真面目な顔で話している。

「ふーん、サーフィンもやってるの、田島くん・・・ますます魅力的ねー。一度、波乗りしているところ、見てみたいわね・・・」

と、笑顔のリサは、ガオに夢中・・・そして、ガオも知的でスポーツウーマンなリサに夢中・・・その雰囲気に気づいたリョウコは・・・数十分後、その場を後にしていた。


「まあ、リサさんは、大人だから、大丈夫だとは、思うけど・・・ま、ガオさんも大人になったみたいだし・・・私、リサさんのストレス解消に一役買ったみたいね」

と、リョウコは、足取り軽く歩いていった。


街では、クリスマスナンバーが華やかに流れていた。

「もうすぐ、クリスマスか・・・」

と、つぶやくと、リョウコの胸が痛んだ。

「あのひとの、笑顔が、見たい・・・」

ふと、つぶやくと、リョウコは、思わず携帯電話を手にしていた。

「あ、もしもし・・・アイリさん・・・金曜日の夜にごめんなさい・・・」

と、リョウコはアイリに電話をかけていた・・・。


「いいのよ。リョウコちゃん・・・タケルは今月と来月アメリカだから・・・うん。だから、寂しいものよ・・・今日も、寂しいから、もう寝ちゃおうかと思ってたの」

と、アイリ(29)は嬉しそうに電話に出ている。


アイリは、リョウコにとって、いとこにあたり、リョウコにとっては、アイリは伯父の娘ということになる。

アイリは、東京にある出版社の、女性向け雑誌の雑誌記者をしていた。


「今から、来る?うん、いいわよ。一緒にお酒でも飲もうか・・・オンナの愚痴大会やる?楽しそう・・・このところ、タケルがいないから、ストレス溜まっちゃって」

と、アイリは楽しそうに話している。

「うん。じゃ、待ってる・・・30分程ね。パーティーの準備しながら、待ってるわ。じゃ!」

と、アイリは電話を切ると、

「さ、今日は久しぶりに、飲んじゃお。料理は・・・ホワイトシチューでも、作ろうか。さ、忙しくなるなる・・・」

と、嬉しそうにするアイリだった。


冬の夜は、静かに更けていくのだった。


つづく

→物語の主要登場人物

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