「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

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いつか、桜の樹の下で(13)

2013年04月05日 | アホな自分
レイカとアキコとユカリは、大学近くのカフェ「すばる」で楽しくおしゃべりしていた。


「へえー。上品を絵に描いたようなレイカでも、恋に落ちるとそんな風になっちゃうんだー」

と、アキコが意外そうな表情でレイカに言う。

「でもさー、妄想ってするよねえー。その気持ち、わたし、よくわかるぅー」

と、ユカリも言葉にしてくれる。

「まさか、自分でも恋する相手のことばかり考えちゃったり、その恋の相手とのエッチな夢で・・・濡れちゃうなんて、思わなかったわ」

と、レイカは少しトーンを落として話している。

「ふふふ。レイカのそういう話って、ドキドキしちゃうわ・・・」

と、アキコが言う。

「そうね。上品で美人なレイカが・・・真昼間から、「濡れちゃう」なんて・・・大人ぁー」

と、レイカも多いにドキドキしている。

「でも、実際、そうなんだもん・・・自分でも驚いているわ。でも・・・それが当然のことのように、最近思えてきて・・・」

と、レイカは冷静に話している。

「毎日のように、濡れるのが当然なの・・・レイカ!」

と、アキコは驚くように言葉を出す。

「多分、彼と付き合いだしたら・・・だって、毎日のように抱かれるんだから・・・当然かなって」

と、レイカはポカンとした表情でアキコに言葉を出す。

「処女のわたしには、考えられないわあー。そういう話ってえー」

と、ユカリが少し顔を赤らめて言葉にする。

「まあ、そう言われればそうだけど・・・わたしもそういう経験がないから、ちょっと恥ずかしく感じるわ」

と、アキコも顔を赤らめている。

「お姉ちゃんに言われたのよ・・・あなた、恋人のモノを自分のヴァギナに受け入れることが出来るの?って・・・」

と、レイカは言葉にする。

「うわあ・・・マミカさん、さすがに大人の女性だけあるなー」

と、思わず笑ってしまうアキコだった。

「ほんと・・・ちょっと衝撃的ぃ!」

と、ユカリもびっくりしている。

「わたしはもちろん、覚悟はしているって、言ったけど・・・最近、ほんとに覚悟出来ているのかなって、思うようになって・・・」

と、レイカは言葉にしている。

「うーん、それは、言葉としては言えるけど・・・実際の覚悟は、ねー・・・だって、初めはものすごく痛いって言うじゃない?」

と、アキコが言葉にしている。

「うんうん。わたしもよく聞く・・・とっても痛いって・・・鼻からスイカ?・・・それは出産かあ・・・でも、それに近いって言ってるひと、いたよぉー」

と、ユカリが言葉にしている。

「出血するって、言うわよね・・・だから、わたしも、少し怖いの・・・でも・・・」

と、レイカは言葉を切る・・・。

「でも?」

と、アキコが聞く。

「恋する彼が・・・彼がそれで気持ちよくなれるなら・・・それは嬉しいことかなって、最近、思えるようになってきて・・・」

と、レイカが答える。

「農工大の水野さんかあ・・・確かに、彼、魅力的よね・・・」

と、アキコが言う。

「あのひと、おもしろーい。飲むとあんなに大人な男性になるのに・・・普段、あんなに真面目な・・・女性と口聞けない感じのひとになっちゃうだもん・・・」

と、ユカリも言う。

「彼って、今はほんとに小さくって、でも、多分、毎日一生懸命生きているひとなんだと思うの。それに会ってる時は、すごくわたしに気を使ってくれるの・・・」

と、レイカ。

「また、あの飲み会を体験出来たんだ・・・水野さん、相変わらずだった?」

と、アキコ。

「うん。すっごく相変わらずなの。飲みだすと、大人のオトコになっちゃうのよ。この間と同じだったわ」

と、レイカは機嫌良さそうに話す。

「あ、レイカ、恋しているいい笑顔ぉ・・・目が思い切り笑っているもーん」

と、ユカリが鋭く指摘する。

「うん。彼のことを思い描くと・・・つい笑顔になれるから・・・」

と、レイカは上機嫌で話している。


「でも・・・彼がわたしを抱いている夢を見た時・・・わたし、本当に嬉しかったの・・・涙が出るくらい・・・」

と、レイカは話す。

「だって、シラフに戻った彼は、本当に小さくて、女性を抱けるような頼りがいのある男性には、思えないから・・・」

と、レイカは話す。

「だから・・・無理なのかなって、思う時も正直あるわ・・・」

と、レイカは話す。

「わたしは、恋には奥手だし、その経験もないけど・・・」

と、アキコが話す。

「アキコはファンが一杯いるじゃないぃー。東大の田中さんとかぁ、東大マスターの井上さんとかぁ・・・」

と、ユカリがツッコむ。

「わたし、勉強しか出来ないひとは、駄目なの・・・一緒にスポーツが出来たり、話していて自然に笑顔になれるひとでないと・・・」

と、アキコは話す。

「わたし、だから・・・水野さんって、とっても魅力的に見えたわ。もちろん、レイカにお似合いだと思うけど、惹かれたのは、確か」

と、アキコが話す。

「アキコ・・・」

と、レイカ。

「っでも、あれはぁー、反則ワザに近いんじゃなーいぃ。飲んであんなにおもしろくって、頼り甲斐出しちゃうひとは、それは女性に人気になるわよぉ・・・」

と、ユカリ。

「そうよね・・・反則ワザよね・・・でも、そこに惚れてしまったから・・・もう、どうしようもないの・・・」

と、レイカは言う。

「恋に落ちると・・・女性はどうしようもないのかー・・・・上品でエレガントで、いつも強気なレイカでさえ、メロメロになっちゃうのね・・・」

と、アキコが言う。

「わたし、姉に好きなオトコのモノを舐められるか?って聞かれたの・・・」

と、レイカは明かす。

「えーーーーー、そんなことまで、言われたのーーーーマミカさん、オトコマエー」

と、アキコがびっくりしている。

「うぇーーーーちょっとそれぇ、ぐろーいぃ」

と、ユカリはひっくりかえりそうになっている。

「でも、わたし・・・今のわたしなら、出来るの・・・というか、正直、舐めたい・・・そう、素直に思う、自分がいるの・・・」

と、レイカは少し顔を赤くしながら白状している。

「ほんとに、舐めたいの?レイカ・・・」

と、アキコがびっくりしながら聞いている。

レイカはコクリと頷いて・・・顔を赤らめる・・・。

「ふう~ん。恋って、ひとの気持ちまで、変えちゃうのかしらぁー。だって、学級委員みたいだった、上品なレイカが、こんなことを言うなんてぇ、考えられないぃー」

と、ユカリは正直な感想を言っている。

「でも、それが恋・・・なのかもしれない。レイカの気持ち、わたしだって、なんとなく、わかるもの・・・女性って、そういう生き物よね?」

と、アキコはわかってくれる。

「それに、彼がそれで気持ちよく感じてくれるなら・・・わたしで良ければ、いくらでもしてあげたいもの・・・彼を笑顔に出来るのなら、何度でも・・・」

と、レイカは笑顔で言う。

「レイカ、水野さんの顔を思い浮かべると、ほんとに目の笑った、いい笑顔をするんだから・・・わたしたちの負けね」

と、アキコ。

「わたしが裸になることで、彼が笑顔になれるのなら・・・いくらだって彼の前で裸になるわ・・・そんなことで良ければ・・・」

と、レイカ。

「レイカって、マミカさんに似て、オトコマエなのねぇ。なんか、好きなひとの為ならば、自分なんて、どうなったっていいって考えてるぅ~」

と、ユカリ。

「農工大の水野さんが・・・わたしを大人の女性に成長させてるの・・・彼へのわたしの恋ゴコロが・・・わたしを成長させてるの・・・」

と、レイカは言い切った。

アキコとユカリは顔を見合わせた。

「がんばってね、レイカ」「がんばるんだよぉー、レイカ」

と、二人は同時に言葉にした。

「うん。この恋に全力で、がんばるの・・・わたし」

と、レイカは言うと、目の笑ったとってもいい笑顔になるのだった。


「じゃあね」「じゃあね」

と、二人とカフェ「すばる」の入り口で別れたレイカは、なんとなく嬉しくなってスキップしてしまう。

「なんだか、心の中を正直に打ち明けたら・・・ココロが軽くなったみたい・・・」

と、レイカは嬉しそうに笑顔になる。

「よ!お姉ちゃん、いい笑顔をするんだなー。こっちまで、しあわせな気分になるわい。これ、特売の蜜柑だけど、一個やるから、家で食いな」

と、熊五郎みたいな、八百屋のおじさんが、いい笑顔で蜜柑を一個レイカの手のひらに乗せてくれる。

「ありがとう、おじさん!」

と、もう一度いい笑顔になったレイカは、スキップしながら、家路を帰っていった。


(つづく)

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いつか、桜の樹の下で(12)

2013年04月04日 | アホな自分
会津は東山温泉から帰ってきた夜、レイカは自分の部屋で、ゆっくりと考え事をしていた。

「あなたは、恋してる身体そのものだわ・・・成熟してきた証拠。多分、あなたのヴァギナはもう、水野くんを受け入れる用意が出来ているわ」

マミカが、レイカに言った言葉をレイカは思い出していた。

「女性の身体は恋に敏感だと言うけれど・・・まさか、そんなに敏感だとは、思っていなかったわ、わたし・・・」

と、ベッドに寝っ転がりながら、レイカは考えている。白ベースの花がらチェニックに、コーラルレッドのレギンス姿のレイカだった。

「やっぱり、お姉ちゃんは、経験が違うわ・・・でも、わたしも経験する時が来たのよ・・・水野さんに抱かれる時が・・・」

と、ふと思うレイカだった。

「水野さんは、どんな風にわたしを抱いてくれるのかしら・・・」

と、レイカはふと思う。

「水野さんの部屋かしら・・・それとも、ここか、どっちかね・・・」

と、レイカは思う。

「お姉ちゃんがフライトに出てる日なら、ここに夜泊まって貰う事もできるわ・・・」

と、レイカは考えている。

「二人で、裸で、しかも最高の笑顔で、このベットに眠れたら・・・最高なのにな・・・」

と、レイカは考えている。

「出血しても・・・少しくらい痛くても構わない。あの水野さんが、気持ちよくさえ、なってくれれば・・・」

と、レイカは考えている。

「笑顔にさえ、なってくれるなら・・・」

と、レイカは考えている。


ふと、水野の全裸のシーンが頭の中によみがえる。


水野が全裸で、レイカのヴァギナをやさしく舐めている。

レイカは恥ずかしがりながら、目をつぶって、快感に身を横たえている。

水野は右の中指で、レイカのヴァギナをやさしくかき回し、舌でクリトリスをやさしく刺激している。

レイカは快感に翻弄され・・・一気にエクスタシーに上り詰めてしまう。


その瞬間、水野がやさしい笑顔になったように思えた・・・。


「あ!」

とレイカは目を覚ますと・・・案の定そこは濡れていた。しかも、相当・・・。

「わたしって、濡れやすい性質なのかしら・・・いつの間にか眠り込んで・・・水野さんにしてもらう夢を見たのね・・・」

レイカはまず、レギンスを脱ぐと・・・濡れたパンツを脱ぎ・・・洗面所で洗ってから、シャワーを浴びた。


マミカはもう就寝したようだった。


レイカはそこを洗う前に、指で濡れた部分を触り、匂いを嗅いでみた。


ツンとした刺激臭。

「生理が近いせい?」

そうやって、レイカはオンナの身体というものをひとつひとつ理解している。

「ここを水野さんは舐めていた・・・」

むき出しになっているクリトリスに触ってみるレイカ。

「あん」

甘い感触が身体中に広がる。

「駄目・・・水野さんに捧げるまでは、しないの」

と、レイカは誓うと、すぐにそこを洗った。


ボディシャンプーでしっかり洗うとお湯で流した。


ふと、自分の胸を見る。


ツンと上を向いた乳首が恋する気持ちを伝えていた。

「ほんと、お姉ちゃんの言った通り、女性の身体は敏感なのね・・・」


レイカは身体を洗い終わり、髪の毛も洗って風呂場を出た。

身体を拭き、新しいパンツを穿き、レギンスを穿き、チェニックを着た。

自分の部屋に戻り、ベッドの上に座ると、考えを整理するレイカだった。


「つまり、わたしは、本当に恋に落ちちゃっていることなのよ。だから、身体も変わってきちゃったし、濡れたりもするし、水野さんのことが頭から離れられないのよ」


と、レイカは結論を出している。


「恋をしているから、水野さんに無性に会いたいし・・・出来ることなら、早く抱かれたい・・・」


と、レイカは思いを口にしている。


「まあ、でも、とにかく、明日電話出来ることだし・・・」


と、レイカは言葉にしている。


「おんなって恋に落ちると、こんなにも、頭の中って、恋の相手のことばかりになっちゃうのね・・・」


と、レイカは初めてのことに戸惑いながら、それでも、冷静でいようと考えていた。


「水野さん・・・」


レイカの脳裏に水野のやさしい笑顔が映った。


次の日、レイカは午前中は家事をこなし、洗濯機を回し、それをバルコニーで干すと快晴の天気の中で、元気が出たレイカだった。

「奥さんになると、こんな風に笑顔が出せるのかな。水野さんの声が今日聞けるって思っただけで、すごく元気だわ、わたし・・・」

水野の笑顔を思うだけで、思わず、ニッコリとしてしまうレイカだった。

「さて、掃除機もかけちゃいましょう。いい奥さんの修行だわ・・・」

と、鼻歌まじりにルンルンの気分のレイカだった。


午後3時過ぎ・・・レイカはキャンパス近くにあるカフェ「すばる」にやってきていた。

同級生の友利アキコ(21)と君島ユカリ(21)とおしゃべりがしたくて、待ち合わせたのだった。

「二人共もう来てたのね・・・」

と、レイカが言うと、

「わたし、昼過ぎから大学のトラックで走ってたから・・・もう春でしょ、今シーズンのカラダ作りをしてたの」

と、スポーツ少女のアキコは、そんな風に話している。


アキコはセシルマクビーのブルーのデニムにナイキの白のスニーカー、SLYのTシャツに、ヘリーハンセンの白いパーカー姿だった。


「アキコはトライアスロン、目指しているんだっっけ?」

と、レイカが聞くと、

「そう。わたしランとスイムは結構得意だから・・・あとは自転車だけなんだけど、バイト代がもう少しで溜まるから、この春にはスポーツバイクが買えるの」

と、嬉しそうに言うアキコだった。

「ほんと、アキコはスポーツ少女よねえ・・・。わたしなんて、基本、屋内のひとだから・・・恋愛小説とか、少女漫画読んでる方が全然いいな」

と、のんびり言うのは、おしゃれ大好きなのんびり少女、ユカリだった。


ラブ・ボートのピンクのトレンチをアウターに、セシルマクビーのビジュー付きの白の薄手のチェニックに、セシルマクビーの白のレースキュロット、

それにヒールが4センチのピンク色のワンベルトパンプスを合わせ、カーキ色のベレー帽を被ったかわいい系の少女を演出しているユカリだった。


「それにしても、ユカリは、ファッションが命って感じよね・・・」

と、完全に美しい少女の世界を作り上げているユカリを見て、ため息をつくレイカだった。

確かにユカリは美しい少女そのものだった。

「だって、自分を一番いい状態で、男性にプレゼンしたいじゃなあい・・・世の男性は、女性の外見に100%恋に落ちてくるんだからあー」

と、笑顔のユカリは上機嫌で話してくれる。

「まあ、それはわかるけど・・・」

というレイカは、Adam et Ropeのピンクのドレープコンピワンピース姿だ。

「レイカは大人の女性のエレガントって感じね。どこのブランドなの、それ?」

と、アキコはレイカのファッションを買っているひとりだ。

「アダムエロペ・・・白金のファッションブランドね」

と、レイカが説明する。

「へえー、それワンピなんだあー。ピンクのドレープのブラウスに、黒のドレープスカートを合わせたのかと思ったのー」

と、ユカリが言う。

「うん。ワンピだから、楽なのよ。わたし、ドレープ大好きだし・・・」

と、レイカ。

「そのファッション、レイカの茶色の長い髪にすっごく合うと思うわ。わたしは・・・」

と、アキコは満点をくれているよう。

「なんか、大人になりかけのお嬢様って、感じねー。レイカはあー」

と、ユカリは無邪気に言う。

「ユカリのそれ・・・実はけっこう当たっているの・・・」

と、レイカは少し曇りがちの表情で言う・・・。

「え?どうかしたの・・・、レイカ・・・」

と、ユカリが少し動揺して言う。

「いつも元気で強気に攻めるレイカらしくないわね」

と、アキコも言ってくれる。

「わたし、最近、どうも・・・大人の女性になろうとしている・・・みたいなの・・・」

と、レイカが言うと、二人は顔を見合わせる。

「それって、まさか・・・」

と、アキコが言う。

「その・・・まさか!」

と、レイカが言うと、

「え?レイカの恋が実りそうなのお?」

と、ユカリがうれしそうな顔で突っ込んでくる。

「ねえ、相手は誰なの?」「どこまで行ってるのー?」

と、アキコとユカリは嬉しそうな顔で、近寄ってくる。

「それがね・・・」

と、レイカは少し嬉しそうに話し始めるのだった。


春のお茶の時間は、3人にとって、とっても楽しい時間になるのだった。

つづく

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いつか、桜の樹の下で(11)

2013年04月03日 | アホな自分
会津旅行の二日目。二人は朝から露天風呂に入っていた。

「朝の温泉って気持ちいいわねー」

と姉のマミカ(26)が言う。

「ほんと、外が少し冷え加減だから、余計、温泉が有難い感じね」

と、妹のレイカ(21)が言う。

「わたしの肌も白くて美しいって言われるけど、レイカの方が数倍綺麗ね。透き通るようだもの・・・」

とマミカが言ってくれる。

「お姉ちゃんは、何人の男性にその裸が美しいって言われたの?」

と、レイカがツッコむと、

「そうねー。何人かしら?」

と、マミカはとぼけている。

「でも、わたしにだって、ちゃんと基準はあるんだからね」

と、マミカは真面目な顔をして言う。

「どんな基準なんですか?マミカお姉さま!」

と、レイカは機嫌良さそうにマミカに言う。

「まず、スポーツマンであること。紳士であること。知恵のくるくるまわる男性であること。周囲に気を使えるやさしい男性であること・・・」

と、マミカは指を一本ずつ折りながら答えている。

「大人の強い男性であること。目がキラキラしている男性であること。さわやかな笑顔を出せる男性であること。目を合わせても、素敵な笑顔を出せること」

と、マミカは条件をすべて言い尽くした。

「そういう男性よ。わたしが、寝る相手は・・・だから、なかなかいないんだから・・・苦労しているのよ。これでも・・・」

と、マミカはレイカに言う。

「でも、確かにお姉さんのお相手は、素敵な大人の男性ばかりだったわね・・・」

と、レイカはマミカに言う。

「そうでしょ?ただわたしはそういう男を見つけたら、自分から行くの。男性の落とし方なんて簡単なんだから・・・」

と、マミカは言う。

「ねえ、お姉さん、イケメンっていう条件は入っていなかったけど?」

と、レイカが聞く。

「ああ・・・イケメンは勘違いくんが多いから、特に条件には、いれてないの・・・イケメン君って、甘えん坊だったり、独善的だったり、失格な男性が多いから」

と、マミカが言う。

「確かに・・・」

と、レイカの脳裏に、高校の頃、ちょっかいばかり出してきた田口ユウの姿が浮かんだ。

「それより、男性の本質的な落とし方、知りたくない?教えてあげるわよ。ものすごい効果的な男性の落とし方!」

と、マミカが言ってくれる。

「教えて教えて!」

と、レイカも乗る。

「まず、相手の男性が朝、絶対に通る場所を探っておくの。まあ、会社だったり、大学だったり、朝通勤してくる時間帯って必ずあるじゃない。学校なら、通学ね」

と、マミカが言う。

「うん。あるわね。彼は毎日8時半には校門を通過する、みたいなことでしょ?」

と、レイカが言う。

「そうそう。それで、その時間に彼とは逆の方向から歩いて行くの。そして、目を見て、挨拶をするの」

と、マミカが言う。

「それで?」

と、レイカ。

「その時に、相手の目を見ながら、身体全体を相手の視界にいれるように動くの。相手の視界に身体を入れた瞬間の彼の目をチェックするの」

と、マミカ。

「人間は、素敵な異性はずーーーっと視界に入れておきたいと考える動物なの。逆に、興味のない異性は視界に入れたくないの。だから、相手の視界に自分をいれれば?」

と、マミカ。

「目の表情に思っていることが出るってこと?」

と、レイカが返す。

「そ。そういうこと。目が笑えば、自分は相手に気に入られていることがわかるし、不快な表情になるか、視線がはずれたら、相手に気にいられていないことがわかるのよ」

と、マミカは教えてくれる。

「この方法のいいところは、自分の恋が成就していることがすぐにわかることなの。相手の目が笑えば、恋は成就しているってことになるから」

と、マミカが教えてくれる。

「もちろん、自分が相手の視界に入った時、自分の目も笑ってるけどね。好き同志が見つめ合えばいい表情になる、あれよ・・・」

と、マミカが教えてくれる。

「そうか・・・そういうやり方があるんだ・・・」

と、目からウロコのレイカだった。

「農工大の水野くん・・・デートもしたことないんなら、女性の恋の気持ちなんて絶対に気付けないわ・・・あなたはその水野くんをどうやって落とそうと思ってたの?」

と、マミカはレイカに聞く。

「え?・・・そのー、好き好き光線を出そうかな、と・・・」

と、レイカは言う。

「例えば?」

と、マミカ。

「自分が好きなモノをそれとなくプレゼンするとか、自分は姫と呼ばれていたの・・・とか・・・自分のことをそれとなくプレゼンすれば、わかってくれるか、と・・・」

と、レイカ。

「20代前半のおんなは、これだからなー・・・」

と、ため息をつくマミカ。

「まあ、恋愛経験者の大人な男性なら、理解してくれるとは思うけど、水野くんは恋愛初心者でしょ?それは単なる自己紹介だと思うだけよ」

と、マミカは言う。

「だめかな?それじゃあ?甘いかな?」

と、レイカが言う。

「うん。全然大甘」

と、マミカ。

「まあ、最後は、わたしのさっき教えたやり方をやれば、一発でわかるわ。彼の気持ちがね」

と、マミカ。

「彼はわたしのこと、気にいってくれてるのは、わかってるのよ・・・」

と、レイカ。

「え?そうなの?」

と、今度は驚くのはマミカの方。

「だって、彼が酔って、自分に素直になっている時は、わたしのことレイカちゃんって呼ぶし、わたしと一番しゃべりたがるし・・・」

と、レイカは説明する。

「この間なんて、「レイカちゃん、今度いつ手料理作ってくれるの?」なんて聞いてくれたし・・・これって、かなり気にいってる証拠でしょ?」

と、レイカは説明する。

「なーんだ・・・でも、いずれにしろ、あなたが水野くんに恋してることは、シラフの水野くんにわからせなさいよ。どんな手を使ってでも!」

と、マミカはレイカに発破をかける。

「うん。わかった、お姉ちゃん」

と、レイカも真面目に返している。

「シラフの水野くんが、レイカの恋ゴコロを正確に理解すること。そして、それを受け入れる決断をすること・・・そこがこの恋の鍵になるわ。レイカ、がんばりなさい」

と、マミカも真面目に話している。

「うん。お姉ちゃん、アドバイスありがとう。わたし気合いれて、がんばるわ」

と、レイカは真面目に決意した。


二人は温泉旅館の朝食を満喫すると、旅館をチェックアウトし、タクシーで早雲山神社に向かった。


良縁を得ることが出来るという早雲山神社は、全国から多くの参拝者があった。

二人は早速、おみくじを引いた。

「あー、わたしは中吉・・・願い叶うが、雨の日も多しだって・・・涙することも多いってことかなー」

と、マミカは不満そうな顔をしている。

「ええと・・・わたしも中吉だわ。思い伝わるも多難だって・・・なんか、複雑・・・」

と、レイカも不満そうな顔。

「まあ、いいわ。とにかく、お守り買って、参拝して、恋の運気のパワーアップよ!」

と、マミカが言い、レイカも頷く。

二人は恋のお守りを買って、参拝した。

「水野さんとの恋が成就しますように・・・」

レイカは本当に真面目に願った。


二人は、早雲山神社を出ると、タクシーで7日町通りに向かった。

タクシーを降りた二人は、大正レトロな雰囲気の7日町通りに歓声をあげた。

「わたし、こういう雰囲気大好きー」「わたしもー」

と、マミカとレイカは言葉にする。

「へー、雰囲気あるねー。漆器だって、ちょっと見ていこうよ。アクセサリーとか、あるかもしれないし」

と、マミカはさすがにCAだけあって、旅行慣れしている。

「あ、ほんとだ。漆器のアクセサリー」

と、レイカは口にする。

「これが会津塗というのね。やはり、金の蒔絵っていいわあ。こういうレトロモダンな和物がひとつあると、いいんだけどなあ・・・」

と、マミカは言葉にする。

「蒔絵の箱をひとつ持っていたら・・・それは確かに素敵よね・・・でも、お値段もなかなか・・・」

と、レイカも言葉にする。

「確か、実家にある古いお重・・・金の蒔絵だったじゃない・・・」

と、マミカ。

「ああ、そうね・・・お正月と花見の時だけしか使えない・・・なんか、とっても高級だって、なんとなく感じたもの・・・」

と、レイカ。

「わたしも結婚したら、蒔絵のお重をひとつ持ちたいわ・・・」

と、マミカ。

「そうね・・・確かに、それはそう思うわ・・・」

と、レイカ・・・しかし、目の前の蒔絵のお重は、相当な値段だった。


「と、このお店は・・・香ばしい匂いだわ」

と、マミカ。

「味噌田楽を焼いているのね・・・いい匂い」

と、レイカ。

「ちょっと食べていこう。小腹が空いちゃったわ」

と、マミカ。

「そうね。自然なモノだし、女性は好きよね、こういうの」

と、レイカも笑顔。


マミカもレイカも味噌田楽を渡され、二人共それをハフハフ食べている。

「味噌ダレがとっても美味しい」「いろいろな薬味が練りこまれているみたい」

と、二人共嬉しそうに味噌田楽を頂いている。

「お客さんたつは、どっから来なさったね?」

と田楽を焼いてくれている、おばあさんが二人にわざわざ聞いてくれる。

「東京は神楽坂から来たんですよ」

と、マミカが言うと、

「あら、あんたたつ、芸者さんか、なんかかえ?えらくべっぴんさんだと思ったら」

と、おばあさんは、たまげた様子。

「違うんですよ。わたしは、キャビン・アテンダント、彼女はまだ、大学生なの」

と、マミカが言う。

「キャバンアテンダ?」

と、おばあちゃんは目を白黒・・・。

「あ、昔でいうスチュワーデスです。あたし」

と、マミカが説明すると、

「あ、スチュワーデスさんかえ・・・どうりで、ぺっぴんさんだと思ったわ・・・」

と、おばあちゃんは、目が無くなっちゃうくらいの笑顔で、大笑いしてくれました。


二人はかわいいおばあちゃんに、やさしくされながら、もう一本の味噌田楽を食べました。


つづく

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いつか、桜の樹の下で(10)

2013年04月02日 | アホな自分
レイカがシャワーを浴び終わって、白ベースの花がらのチェニックに、黒のニットを合わせて、コーラルレッドのレギンス姿で出てくると、

姉のマミカが赤の大きめのパーカーチェニックに黒のレギンス姿で、リビングのソファーに腰を下ろして、スムース・ジャズのコンピレーション・アルバムを聞いていた。

「やっぱり、大人の音楽ね。スムース・ジャズは・・・」

と、マミカは、すでに、スパークリングワインを飲み始めていた。

「お姉ちゃん今日は早上がりだったんだ?」

と、レイカはなんということもなく言葉にする。

「そ。今日は後輩達の教育の日だったから、早くあがれたのよ」

と、マミカ。

「それよりさー。レイカ、明日とあさって、休みとれないかなー。温泉、一緒に行きたいのー」

と、マミカは全力の笑顔で聞いてくる。

「もう、大学は春休みみたいなもんでしょ?」

と、マミカ。

「明日とあさって?いいわよ。特に予定は、ないから」

と、レイカはあっさり答える。

「やったー。もう、温泉行きたくてしょうがなかったんだー」

と、マミカはノートパソコンの画面をレイカに見せる。

「会津の東山温泉に行ってみない?友達がすごくよかったって言ってたの・・・」

と、マミカは、ある温泉旅館のホームページを開いている。

「へー、なかなか素敵なところじゃない。うん、ここにしましょう」

と、レイカはやわらかく答える。

「やったー。レイカはわたしと感覚が一緒だから、嬉しいのよねー」

と、マミカは嬉しがる。

「まあ、血が繋がっているって、こういういいことがあるのよねー」

と、マミカは嬉しそうにしながら、ホームページからその温泉旅館に予約を入れている。

「やっぱり、和モダンなテイストがいいわよね。このお部屋で、どう?」

と、マミカはレイカに聞いてくる。

「うん。いいんじゃない?全然問題なし」

と、レイカが言うと、マミカも笑顔で予約作業を進めている。

「よし、これで、よし。送信!」

と、マミカは作業を終了させ、改めてスパークリングワインを飲むのだった。


次の日、東京を11時に発車する東北新幹線に乗った二人は、はしゃぐマミカと冷静なレイカというコンビになっていた。

「いやあ、駅弁どれにするか迷ってたら乗り遅れそうになっちゃったわねー」

と、はしゃぐマミカ。

「もう、お姉ちゃん何回オーダー変えたのよ。3,4回は変えてたわよ・・・」

と、少しお姉さんのようになっているレイカ。

「だって、欲しくなると火がついたように欲しくなるんだもーん」

と、完全にひとりの少女と化しているマミカだった。

「もう、わたしが決めなかったら、絶対に乗り遅れてたわ・・・」

と、ぶつぶつ言うレイカ。

「ね。もう、食べ始めちゃう?だって、12時20分には、郡山に着いちゃうのよ。この新幹線!」

と、駅弁をがさこそやり始めるマミカ。

「まあ、早い分には、いいけどね・・・」

と、レイカも渋々早弁につきあう。

「ああ。美味しいわ・・・ローストビーフは美味しいわよねー。あ、レイカはフカヒレあんかけチャーハンだっけ。そっちも美味しそう。一口くれる!」

と、大騒ぎのマミカである。

「はい。どうぞ、好きなだけ取っていいわ」

と、レイカは冷静に対応している。

「んじゃ、こんだけ・・・わー、フカヒレだー」

と、マミカは大騒ぎ。

「うん。美味しい。思ったより味もしっかりしてるし・・・」

と、レイカもフカヒレあんかけチャーハンを食べて、嬉しそうな目になっている。

「あー、フカヒレあんかけチャーハンも美味しいし、ローストビーフも美味しいし・・・今日は美味しいものたくさん食べなきゃね!」

と、テンションがかなりハイになっているマミカだった。

「そうね。でも、食べ過ぎには注意するのよ」

と、レイカはお姉さんに早変わりしていた。


東北新幹線を郡山で降りると、磐越西線快速で、1時間ちょっとで会津若松だった。

「うわー、着いたー」「うわー、疲れたー」

2人は背伸びをして、身体を伸ばすのだった。

時刻は2時を過ぎていた。

「3時間かかるのね・・・ま、磐越西線の乗り合わせが悪かったから、仕方ないわね」

と、レイカが言うと、

「タクシーで観光しようか。猪苗代湖見て、五色沼見て、磐梯山が綺麗に見えるところで、写真撮って、鶴ケ城回ろうか」

と、マミカはさすがにCAだけあって、テキパキと観光地の名前をあげた。

「そうね。ま、焦らず回りましょう。せっかくゆっくりしに来たんだから」

と、レイカが言うと、

「それくらい回っても、びくともしないでしょ!さ、行くわよ」

と、ベテランCAモードに突入するマミカだった。

「きっと後輩CAから恐れられてるんだろうな、姉さんは」

と、レイカは苦笑すると、一緒にタクシーに乗るのだった。


「さすがにあれだけ回ると疲れるわね・・・いつもだったら、どうってことないのに・・・やはり仕事という緊張感がないから、疲れちゃうのかしら・・・」

予約した温泉旅館のレストランで、マミカはレイカ相手に夕食を楽しんでいた。

マミカはさすがに疲れたらしく、はしゃぐ様子はまったくなかった。

「でも、この日本酒スッキリしていて飲みやすいわ」

と、お酒には詳しいマミカだった。

「で、さ、レイカ・・・もし、農工大の水野くんが、つきあおうって言ってくれたら、レイカは水野くんに抱かれてもいいって考えてるの?」

と、マミカはド直球で聞いてくる。

「うん。そのつもりだけど?」

と、レイカもそこは腹が座っている。

「お姉さんに聞くけど・・・最初はかなり痛いかしら?」

と、レイカは冷静に聞いている。

「うん。それは痛いわよ。粘膜に初めて異物が入ってくるんだから・・・」

と、マミカは冷静に答えている。

「でも、そのうち、快感に変わってくるの。そうね。1、2ヶ月かかるかしら・・・でも、好きな相手の気持ちよさそうな顔が見れるから、我慢出来るのよ」

と、マミカは自分の経験を元に出来るだけわかりやすく妹の為に説明している。

「そのうち、自分でもエクスタシーを感じられるようになっていくけど、ひとつだけ約束して!」

と、マミカはレイカの目を真正面から見て話す。

「うん。なにかしら?」

と、レイカもマミカの目を真正面から見て話す。

「決して自分の気持ちよさを追求しないで。エッチは相手を気持ちよくさせる行為だから。女性は我欲を持ったら絶対にしあわせになれないから」

と、マミカはレイカに大事な話をしている。

「エッチは、「与える愛」にしなきゃいけないの。相手を気持ちよくさせるつもりで、やるの。それが女性のしあわせに絶対につながるからね」

と、マミカは、マミカなりの「しあわせの哲学」をレイカに伝えたのだった。

「相手を気持ちよくさせるために、エッチはある・・・「与える愛」ね・・・」

レイカはそのことをしっかりと記憶した。しあわせになる為には、哲学が必要なのだ。


「ね、寝る前に、もう一回お風呂に入りに行こうか?」

と、マミカが誘ってくる。

「うん。いいわよ・・・わたしもそう思っていたところ」

と、レイカは機嫌良さそうな笑顔だった。

「さ、行こう行こう」「行こう行こう」

と、マミカとレイカは、浴衣姿で、風呂へ急いだ。

「この時間、誰もいないねー」

と、露天風呂に入るマミカは、言葉にする。

「ほんとだ・・・皆、まだ、飲んでる時間なのね・・・」

と、レイカもマミカの横に入る。

「ねえ、レイカって、Cカップだったっけ?」

と、胸の大きなレイカを見て、マミカが言う。

「姉さんもCカップって、前言ってなかった?」

と、レイカは姉の胸を見ながら言う。

「うん。そうなんだけど、最近、なんかボリュームが少なくなった感が・・・」

と、マミカは自分で胸を触りながら、そんな風に言う。

「そういうことって、あるの?」

と、レイカも、自分の胸を触ってみる。

「わたしは、いつもと同じだけど・・・」

と、レイカ。

「この一年、わたし、恋してないから・・・」

と、マミカがぽつりと言う。

「この一年、男性に愛撫されたことがなかったから、胸のボリュームがダウンしたんだわ。きっと」

と、マミカが言う。

「そんなことって、あるの、お姉ちゃん」

と、レイカが言う。

「あるのよ。だから、女性は恋してないといけないのよ。すぐに不幸せがやってくるんだから・・・」

と、マミカが言う。

「レイカは乳首がツンと上を向いているじゃない?それは恋している証拠よ。あなた、水野くんのことを夢見たりしない?女性は濡れる経験をすると乳首が上向くのよ」

と、マミカが鋭く言う。

「お姉さんすごい・・・確かに、水野くんの夢を見て、濡れた経験があるわ・・・」

と、レイカはマミカの眼力に脱帽する。

「おんなは、恋をすると、身体に敏感に出ちゃうのよ・・・そして、恋をしなくても、敏感に出ちゃうの・・・」

と、マミカは冷静に話している。

「あなたは、恋してる身体そのものだわ・・・成熟してきた証拠。多分、あなたのヴァギナはもう、水野くんを受け入れる用意が出来ているわ」

と、マミカは話してくれる。

「きっと妊娠する用意も・・・あなた、ちゃんと避妊だけはするのよ。まさか、レイカが、そんな危ないことは、しないとは思うけど・・・」

と、マミカは心配してくれる。

「そこは心配しないで。わたしだって、そこは細心の注意を払うわ・・・」

と、レイカは言葉にする。

「それに水野さんは・・・絶対に私に迷惑をかけるようなことはしないわ。それだけは断言出来るわ」

と、レイカは言う。

「断言出来るの・・・」

と、レイカは繰り返した。


会津の月が、そんな二人をやさしく照らしていた。


つづく

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いつか、桜の樹の下で(9)

2013年04月01日 | アホな自分
農工大のジュンイチ達と会った次の日、レイカは大学へ登校した。

春の陽気だったのが嬉しかったレイカは、白ベースのパステルカラーの華やかなワンピース姿だった。

お昼をちょっとだけ回った美術部の部室に顔を出すと、元部長の高橋ユキノ(22)が、いつものように手作りのお弁当を食べようとしていた。

「ユキノさん、一緒にお弁当食べましょう!」

と、レイカも自分のお弁当を広げる。

「あら、レイカ。春らしいワンピース。細身のレイカは、ほんとにワンピースが似合うわねえ」

と、ユキノは思わず笑顔になっている。

「昨日、水野くんといいことがあったんでしょう?・・・白状しちゃいなさいよ、レイカ!」

と、ユキノは自分のセッティングしたデートの結果を楽しみにしていた。

「それが・・・水野さんって、すごく気を使ってくれて・・・お互い後輩をひとり連れて行くことにしよう・・・って、提案されちゃって・・・」

と、レイカは、しっかりと昨日の話を順序よく話そうとした。

「え??・・・水野くんって、確かに、農工大のチカさんが言うように、女性の気持ちのわからないタイプの子のようね・・・ちょっと残念だったわね。レイカ」

と、ユキノは、レイカの気持ちが痛いほどわかるからか、そんな風に言葉にした。

「でもー・・・とっても楽しかったです。彼、気は弱いけど、わたしのこと一生懸命考えてくれてるし、彼なりに一生懸命なんだってわかることが出来たから・・・」

と、レイカは笑顔で報告する。

「そう。それはよかったわね。・・・飲み会での彼を見ると、女性の気持ちもわかってる、かなり大きな大人の男のように思えたんだけどなあ、わたしは・・・」

と、ユキノは言葉にする。

「ええ。実際は、大きいんだと思います。彼・・・ただ、シラフに戻ると、弱い弱い彼に戻っちゃうから、一生懸命なんだと思います。いつも・・・」

と、レイカは言葉にする。

「お酒を飲むと気持ち的に開放されて・・・地が出ているのね、彼・・・でも、相当大きな男よ。彼・・・」

と、ユキノは言葉にする。

「ええ。今回も一緒に飲むことは出来たから・・・同じようなことをアイも言ってました」

と、レイカ。

「そう。アイを連れて行ったの・・・彼女、相当やり手だから・・・甘え上手でちょっとした男なら掌の上で転がすくらいの玉だからね」

と、ユキノ。

「それを知っていたから、連れて行ったんですよ。彼女も彼のこと狙ってたみたいで・・・」

と、レイカ。

「あら。挑戦的なことをするのね。というか、アイなら、自分が勝てると思ったの?」

と、ユキノ。

「それもあるけど、アイの目で水野さんを見て貰って、わたしの感じてることが、本当に正しいことを証明したかったんです」

と、レイカ。

「なるほど・・・で、アイはどう言ってた?水野くんを見て・・・」

と、ユキノ。

「愛すべき男性だって・・・そして、女子なら、彼を開放してやるべきだって・・・」

と、レイカ。

「なるほどね・・・でも、確かにそうだわ・・・女性なら、愛すべき彼を絶対に開放してあげるべきだもの・・・それはわたしも同感」

と、ユキノ。

「そして、こうも言ってくれました。水野さんを一番上手に開放してあげられるのは、わたしだって」

と、レイカは言い、笑顔。

「ふふふ・・・あのアイがそう言うなら、間違いないでしょう。あなたも相当、男性をうまく使うタイプだもんね?」

と、ユキノは、目の前のレイカの顔を見ながら、そう言う。

「あなたに気のある男性を、その気持ちを見越して、うまーく動かしてきたものね・・・あなたは」

と、ユキノはニヤニヤしながら、レイカを見る。

「あーーーー・・・あれは、まあ、そういう気を持ってくれるのは有難いから、相手も動きたいかなーって」

と、レイカは少ししどろもどろ。

「まあ、男たちの気持ちを満足させるのもいいけど、そろそろ本気の恋をしたら・・・って言いたかったから、水野くんに本気の恋をしてるなら、私はいいけどね」

と、ユキノ。

「ええ。これは完全に本気の恋です。完全なる本気の恋に落ちてますから、わたし」

と、レイカ。

「なら、いいわ。リアルお嬢様も、本気になる時期が来たようね」

と、ユキノ。

「はい。わたし、毎日が楽しいんです。生まれて初めてくらいに、毎日が輝いていますから!」

と、レイカ。

「本気の恋をしてるって、ことよ。それは・・・うらやましいわ。レイカが」

と、ユキノは言ってくれる。

「ユキノさんだって、会社に入れば、そういう機会はたくさんありますから」

と、レイカが言うと、

「わたしは、自分を試すために会社に入るの。腰掛けではなく、本気で、自分の仕事にする気だもの。そこは本気なの」

と、ユキノは真面目に返す。

「まあ、わたしのことは、いいわ・・・それより、水野くん・・・本気で落としにいかないと、彼、恋の存在すら、理解しないかもしれないわよ・・・」

と、ユキノはレイカに釘を刺す。

「わかってます。わたしだって、今、わたしに出来る限りの手練手管を使う予定ですから、結果を御覧じろです」

と、レイカは自信ありげに話す。

「あのね・・・あなた、これ、初めて男性を本気で落とすんでしょ?それに女性のことをわからない男性は、ほんとに女性の恋を理解しないからね」

と、ユキノは真面目にアドバイス。

「そ、そうでした・・・でも・・・やれるだけのことはやるつもりですから。わたし」

と、レイカはキラキラ光る目で、真面目にそう言った。

「まあ、レイカの本気の恋が成就することを願っているわ・・・」

と、ユキノは、やさしく、そう言ってくれた。


「でも・・・僕には、愛される資格が、まだ・・・」


レイカはジュンイチのこの言葉が気になっていた。


美術部の部室を辞すると、レイカは家まで歩いて帰ることにした。

「1時間くらいは、歩きたいわ。せっかく春の気候になってきたんだし・・・」

レイカは元々歩くのが好きな子だった。

「名古屋では、よく歩いて食べ物屋さんとか行ったっけ。「あんかけパスタ」が懐かしいわ」

と、レイカは「名古屋めし」を懐かしく思い出していた。


「僕は自分にまだ、価値を感じられないんですよ。だから、女性に愛される資格がまだないんです。・・・特に美しい女性には・・・」


「水野さんはあの時、完全にわたしを意識して言葉を出していた・・・彼は恋愛を怖がっているのかしら」

と、レイカは歩きながら、考えていた。


「つーか、レイカちゃん、パスタ料理、俺のために作ってくれるって言ってたじゃん。それいつの予定?」


「彼はそういう言葉も出している。あれは、彼の本音よね、絶対・・・恋は進めたいけど、恋愛は怖い?・・・そういうことかしら・・・」

と、レイカは考えこんでいる。

「普段の気の小さい彼は、それでも、一番にわたしのことを考えてくれている。それはわかるの・・・」

と、レイカは思っている。

「一生懸命、わたしの為に、気を使ってくれているのは、明白だわ・・・気を使いすぎる程に・・・」

と、レイカは思っている。

「でも、本音では、恋を進めたいと思っている・・・きっとそういうことよね。つまり、私に迷惑がかからないように細心の注意を払って、進めようとしているってことだわ」

と、レイカは結論付ける。

「ふふ。良い結論じゃない。だったら、わたしの方から、攻撃をしかけるのみ、ね」

と、レイカは決意した。

「ああ。桜の蕾が膨らんで来ている!春は、もうすぐだわ!」

と、レイカは上機嫌で、笑顔で歩いて行った。


水野さんの笑顔が見える。目が笑っている、とってもいい笑顔。

わたしを上からのぞき込んでいる?彼、裸だわ・・・え?彼が上に乗ってるの?

わたしも裸だわ・・・わたし、彼に抱かれてる?


下腹部がなにか、もやもやして・・・。


「あ、夢・・・」

レイカは自宅のリビングのソファーで、ワンピース姿のまま、眠っていたのだった。

レイカは下腹部の感触に気づき・・・覗いてみると案の定、濡れていた。

「やだ・・・わたし、夢で濡れちゃうなんて・・・それだけ、彼に抱かれたいのかしら・・・」

レイカはパンツを脱いで、洗面所で水に浸してから洗剤で洗った。

「わたしも大人のオンナになりつつあるのね・・・お姉ちゃんがこんなところ見たら、びっくりしちゃうかも・・・」

と、レイカはくすりと笑った。

「わたし、本気で水野さんに抱かれたいんだ・・・水野さんのアソコ、逞しかったもん・・・妄想かしら・・・」

と、レイカは考える。

「確かに、彼のモノがわたしのヴァギナを刺激していたわ。わたしは、快感を感じていたもの・・・完全に妄想ね・・・」

と、レイカは少し苦笑する。

「リアルお姫様も、本能は抑えきれないのね・・・」

と、パンツを洗いながら、苦笑するレイカだった。

「水野さんに処女を捧げたい・・・わたし・・・」

レイカは密かな想いを言葉にしていた。


「リアルお姫さまは、さ、オナニーとか、しないの?」

高校生の頃、レイカが最も嫌っていた明和東高校一のイケメン、田口ユウ(18)が学校帰りに待ちぶせして、突然言ってきたことがあった。

「・・・」

レイカは怒りと恥ずかしさにいっぱいになりながら、無言で田口ユウを無視して歩いて行った。

「オナニーとか、絶対するよな。だって、オンナなんだから・・・快感が大好きなオンナなんだからさ!」

と、田口ユウは大きな声で背中に浴びせてきた。


レイカは肩をピクリともさせずに、怒りを沈め、冷静に歩き去った。


すぐに土岐田トオル(18)が自転車で追いついてきて、

「お前、変なこと言うなよ。相手を誰だと思っているんだよ」

と、田口ユウに言う。

「姫だから、堂々と言ってあげたんじゃないか。あのオンナだって、本性は、他のオンナと一緒だって、そう言ってやっただけじゃないか」

と、田口ユウは、悪びれもせず、そう答えた。

「姫なんて呼ばれてるけど、結局は、他のオンナとなんら変わらない、普通のオンナだよ。イケメンにエッチされたいって、普段から思っている、普通の女さ」

と、田口ユウは、それだけ言うと、どこかへ立ち去っていった。


土岐田トオルは、困惑しながらも、レイカに追いついて、その言葉をレイカにぶつけてみた。


「わたしは、絶対にオナニーなんか、しないわ。処女を好きなひとに捧げるまでは、綺麗にしておきたいの」


と、レイカは怒ることもなく、冷静に言葉にした。

「彼がしようとしていることは、わかったわ。わたしの心を乱し、わたしを普通のおんなと変わらないと言うことで、自分を信用させる。甘い手だわ」

と、レイカは言った。

「ま、彼はこれからも、性懲りもなく、今と同じような、刺激的な言葉を、わたしに向かって、吐き続けるわ。でも、そんなの、私には意味はないわ」

と、レイカは言う。

「確かに私は九条家のお嬢様であることに引け目を感じてる。でも、これとそれとは、違うわ。私にも大切なものがあるし、嫌いなものは嫌いなの」

と、レイカは言った。

「レイカは、強いな」

とだけ、トオルは言った。

「強くなくちゃ、九条家1000年の血を守れないわ」

と、レイカは言うと、ニコリと笑って、トオルと仲良く家路についた。


「オナニーは決してしないけど、夢を見て快感を感じて、濡れちゃうことは、あるのよね・・・」


と、レイカは高校時代より恋愛体質になっている自分をはっきり感じていた。

リビングのソファーに座りながら、レイカは考え事をしていた。パンツは洗ってから、まだ、新しいパンツを穿いていなかった。

「あの頃は、強かったわ・・・でも、今の私は本気で恋する乙女だもん・・・そういうことがあっても、別に問題はないわよね・・・」

と、思うレイカだった。

「本気で水野さんに、恋してるから、身体もこころも成長しているの。それだけのことよ・・・」

と、言葉にするレイカだった。


レイカは静かに立ち上がると、ワンピースを脱ぐ。


自分の全裸を姿見で、見てみる。


色白の細身の体は均整がとれていた。

胸はCカップで、身長は168センチ。体重は48キロで、スリーサイズは、86-58-84だった。

陰毛は少し濃い印象だった。


「水野さんに抱かれる為に、今まで綺麗にしてきたんだから・・・」


と、レイカは言葉にすると、自分自身を抱きしめてみる。

「水野さん、わたしの裸を見て、感じてくれるかな・・・」

と、言いながら、ため息をつくレイカだった。

「なんだか、ドキドキしてきちゃった・・・シャワーでも、浴びよう・・・また、濡れてきたら、困るもん!」

と、そのまま、シャワーを浴びに風呂場へ行くレイカだった。


乙女が恋する春の日は、のんびりと暮れていった。


つづく

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いつか、桜の樹の下で(8)

2013年03月29日 | アホな自分
日曜日の午後9時半頃、レイカは渋谷でジュンイチやケンタ、そして、帰りの電車でアイと別れ、神楽坂の自宅に帰ってきていた。

レイカは今日、飲み会の中でも比較的早い時間にジュンイチに聞いた質問を思い出していた。


「水野さん、同じ渉外同士・・・わたし、水野さんに夜、電話で質問してもいいですか?」

と、レイカは恋を一歩進めるべく攻撃を開始していたのだった。

「え、あ、いいですよ。9時過ぎには自分のアパートに帰ってることが多いので・・・レポートが多くって、書かないと落第しちゃうんですよ。うちの大学」

と、まだ、水野がそれほど酔っていないことは、口調に少し敬語が残っていることで、レイカにもわかった。

「じゃあ、19日の夜、9時頃、電話させてください。いいですか?水野さん」

と、レイカが聞くと、

「19日の夜・・・ええと、ちょっと待って下さい」

と、ジュンイチは、律儀に手帳を取り出すと、その日のスケジュールをチェックしていた。

「春分の日の前日ですね。・・・っといいですよ。特に予定は入っていないから、9時には、自宅にいるようにしますから」

と、ジュンイチは、やさしい笑顔で言ってくれた。


「次は、19日の夜ね。楽しみだわ・・・次は、どうやって、恋を進めようかしら・・・」

と、ニンマリとレイカが笑顔になっているところへ、玄関が開く気配がして、すぐに姉のマミカがリビングに顔を出した。

「あれ、レイカ、お酒飲んだでしょう。白い肌がピンク色に火照ってる。レイカ、気が付かないうちに、大人の色気を出せるようになったのね」

と、マミカは同じ色白の顔をニッコリと笑顔にする。

「はー。疲れちゃった。ちょっとくさくさした気分だから、お姉ちゃんも一緒に飲んでいい?」

と、マミカは聞く。

「うん。いいわよ、もちろん・・・フライト中、何かあったの?いやなことでも・・・」

と、レイカは聞く。

・・・と、マミカは冷蔵庫から、スパークリングワインを持ってきて、細身のワイングラスに、自分の分とレイカの分を注ぐ。

「それがさ、エコノミーが一杯になっちゃって、ビジネスクラスへアップグレードしてもらったお客様がいたのよ。そしたら、あれくれ、これくれって言い出して・・・」

と、うんざりした顔でCAをしているマミカが言う。

「もちろん、エコノミーの値段で、ビジネスクラスを利用出来るわけだから、はしゃぐのはわかるけど・・・外見は割りと若いイケメンだったんだけど、底が見えちゃったわ」

と、男性を見る目は厳しいマミカの結論が出る。

「へー。若いイケメンだったから、期待し過ぎた自分に呆れたってこと?」

と、割りと辛辣にレイカも言う。

「よくわかるわね。だって、誰をアップグレードするかを決めるのは、地上スタッフの権利だから、わたし達は決められないけれど・・・誰と比較したかは、わかるから」

と、しれっとマミカは言う。

「そっか。ダブルブッキングだった場合、2人のうち、どちらかをアップグレードさせるんだものね」

と、なんとなく航空会社の仕事を理解してきたレイカだった。

「そうなの。どちらも同じ年代だったから、イケメンの方を地上スタッフが選んだのは明白だったわ・・・でも、単なる田舎ものだったわ」

と、さらに辛辣なマミカ。

「お姉ちゃんは、ファーストクラスも担当しているから、男性を見る目が肥えすぎなんじゃない?」

と、レイカが言うと、

「それはそうね・・・ファーストクラスはさすがに素敵な男性ばかりですもの。女性も、オトコマエな女性ばかりだし・・・」

と、マミカが言う。

「具体的に言うと、どんな感じなの?ファーストクラス・・・」

と、レイカが聞く。

「そうね・・・まず、わたしたちCAは、お客様の目をしっかり見て、笑顔で挨拶しろって言われてるの。ファーストクラスは特に、ね」

と、マミカが言う。

「でも、日本の男性って、恥ずかしがり屋が多いから、他のクラスでは、視線をずらす方が多いの・・・でも、ファーストクラスでは、そういうことは、ないわ」

と、マミカが言う。

「自分に自信があるのよね。女性が目を合わせてきたら、笑顔で目を合わせてくれる。男性はああでないとね。それに「めぢから」が強い。皆キラキラしてるもの目が・・・」

と、マミカは何かを思い出すように言う。

「ふうん、そういうものなんだ・・・」

と、レイカはいまひとつ、わかっていない。

「ファーストクラスは創業者が多いのよ。仕事で成功しているから、人生に自信があるし・・・自分で自分の時間をコントロールしているから、余裕もあるし、最高よ」

と、マミカは話す。

「ということは、お姉ちゃんは、起業家の男性や創業者の男性とお付き合いしたいってこと?」

と、レイカが振る。

「そうね。実際に、いい男リストを毎日見せられているようなもんだから・・・自然、そういう男性を選びたくなるわね・・・」

と、マミカはため息まじりに言う。

「で、レイカは、今日は飲み会だったの?」

と、マミカがレイカに聞く。

「あら・・・この間言ったじゃない・・・農工大の水野さんと飲む約束をしたって・・・」

と、レイカが言うと、

「あ、あれが今日だったんだ・・・で、どうだった?農工大の愛しの彼は?」

と、マミカは急にテンションがアガる。

「最高だったわ。お酒飲んで開放された水野さんは、恋を知ってる素敵な大人の男性キャラに早変わり・・・っていうか、元に戻るって感じなの」

と、レイカが説明する。

「そのレイカの見方は、合ってると思うわ。男性って、飲むと理性が飛ぶから、自然な自分になれるのね。そうなの・・・恋を知ってる素敵な大人の男性か・・・」

と、マミカは何か遠いところを見るような目つき。

「頭の回転も相当速いし、女性の事をしっかり考えて言葉を選んでくれるし、とにかく、豪快でいて、繊細、野放図に見えて、計算し尽くされた言葉遣いで笑わせてくれるわ」

と、レイカが話す。

「大丈夫かな。大丈夫だよ。だいじょばないかな。だいじょうぶべすとワン!なーんて言ってて、思わず、大笑いしちゃったわ・・・」

と、レイカは上機嫌。

「それは、おもしろいわねー。酔っぱらいながらも、相手のことを考えて、女性を笑かす事が出来るんだから・・・相当頭の回転は速い感じね・・・」

と、マミカも思わず笑っている。

「なんか、男性として、底抜けに大っきいの。それが普段は、全然、恋したこともない感じに弱くなっちゃって。女性とデートしたこともないんですって」

と、レイカは話している。

「へー、そうなの?・・・多分その彼は、血なのよ。代々女性を笑顔にしてきた、血を持っているんだわ。だって、経験もないのに、そんなに楽しいなんて・・・」

と、マミカが話している。

「なるほど・・・血なんだ。だから、お酒で開放されると、あんなに大きな素敵な男性になっちゃうんだ・・・」

と、レイカは新たに得た知識に、びっくりしながら、話している。

「ということはさ・・・その男性、成長すると、そういう男性になるってことよ!」

と、マミカが話している。

「弱い彼は、今の彼。そして、酔って素敵な大人の男性になるのは、未来の彼だわ・・・きっとそうよ!」

と、マミカが結論付ける。

「そっか・・・わたしは、未来の彼に恋したのね・・・でも、今の水野さんは、ものすごく魅力的だわ」

と、レイカは食い下がる。

「女性のことに気を使ってくれて・・・気の小さな彼だけど、その気をいっぱいっぱいになるまで、女性をやさしくすることに使ってくれるの・・・」

と、レイカは説明する。

「わたしの為に使ってくれるの・・・」

と、レイカは愛する彼を思うやわらかな表情で言う。

「それがわかるから・・・つい彼のことを応援したくなるの・・・あの彼を開放させてあげられるのは、わたししか、いないわ」

と、レイカは強い気持ちで言う。

「わたししか、いないの。わたし、しか・・・」

と、強い目をして、言うレイカをマミカは、やさしい笑顔で見つめるのだった。


「女性とデートしたことないって、本当なんですか?水野さーん!」

と、昼間、アイがお昼ごはんを食べている時に、ジュンイチに聞いていたのを思い出す。

「恥ずかしながら・・・僕にはまだ、恋は早いですよ。今は大学の勉強に着いて行くのに、一杯一杯ですから・・・」

と、ジュンイチは、少し赤くなりながら、生真面目に答えている。

「そんなに、忙しいんですか?大学・・・」

と、レイカは本気で心配してジュンイチに質問する。

「はい。何しろ、レポート提出が一週間に5,6本ありますから、放課後は毎日それに専念しないと、物理的に時間がとれませんから、女性と恋する時間なんか、ないんです」

と、ジュンイチは、苦笑気味に生真面目に話してくれる。

「そんなに大変なんですか・・・」

と、レイカは本気で驚いている。

「それに理系の男性は、恋愛が苦手な男性が多いんですよ。人間関係が不得意だから、理系を選んだ人間も多いみたいですし・・・」

と、ジュンイチは生真面目に話してくれる。

「なあ、直江・・・」

と、ジュンイチは、後輩にも話に参加させようと気を配っている。

「先輩のところは、一番キツイクラスとして、うちの大学では、有名なんですよ。僕らのところは、さすがにそこまでは・・・」

と、ケンタはそう話す。

「数理情報工学科は、うちの大学では、農獣医学科に次いで優秀な人間が集まってますから・・・教授陣も企業あがりのひとが多いから、実戦的なんです」

と、ケンタが説明する。

「大学を卒業したら、企業の即戦力になる人材を育てる・・・それがうちの教授陣の合言葉ですからね。ビシビシ厳しくされるのは、しょうがないんですよ」

と、ジュンイチも苦笑した顔で、生真面目に説明する。

「でも・・・女性に愛されたいって、思わないんですか?水野さん・・・」

と、本気でレイカが聞いてみる。

「え?」

と、ジュンイチは、思わず、レイカと目が合ってしまう。

「女性を愛したいって思わないんですか?」

と、強い目の表情で言ってしまうレイカ。

「愛したいですよ。それは・・・もちろん・・・」

と、レイカを見ながら、少し微笑みながら、ジュンイチは言葉にする。

「でも・・・僕には、愛される資格が、まだ・・・」

と、苦笑しながら、ジュンイチは言葉にする。

「どういうことですか?」

と、レイカは真面目に質問する。大事な質問だ。

「僕は自分にまだ、価値を感じられないんですよ。だから、女性に愛される資格がまだないんです。・・・特に美しい女性には・・・」

と、少しうつむき加減で、でも、レイカを見つめながら、ジュンイチは生真面目に言葉にした。


「!」

と、レイカはその言葉にデジャヴを感じていた。


「俺、今の自分に価値を感じられないんだよ・・・」

と、高校生のトオルは言う。

「価値を感じられないうちは、オトコは・・・オンナをしあわせに出来ないと思うんだ」

と、トオルは言う。

「そうなの?」

と、高校生のレイカは聞く。

「ああ。オトコって、そういう生き物なんだよ。自分に価値のないオトコは、女性を好きになってはいけないんだ」

と、トオルは言った。


「男性って、そう考えるモノなの?」

と、レイカは思っていた。

「水野さんは、今、困難にひとりで立ち向かっているように見える・・・一生懸命に、たったひとりで・・・」

と、レイカは感じていた。

「弱くても必死にがんばっている、彼を笑顔にしたいわ・・・彼の生活をサポートして、笑顔にしてあげたいの・・・わたし・・・」

と、レイカは思っていた。


「この恋は、どうなっていくのかしら・・・」

昼間の事を思い出しながら、レイカは静かにスパークリングワインを飲んでいた。

キミカは横のソファーで眠りこんでいた。


日曜日の夜は、静かに更けていった。


つづく

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いつか、桜の樹の下で(7)

2013年03月28日 | アホな自分
次の日の日曜日。レイカとアイ、ジュンイチとケンタは、11時半に待ち合わせて、その脚で昨日と同じイタリアンレストランでそれぞれパスタを頂くと、

渋谷の街を歩き回り、午後3時半頃、おしゃれなカフェに入ると、少し時間をかけて、その場で今後の方針を決めた。

「お茶女と農工大の合同展を年一回ペースでやっていくこと」

「お茶女と農工大の合同コンパを年2回以上開くこと」

「お茶女と農工大の合同裸婦デッサン会を開くこと」

などを決めた。各自それを持ち帰り、ブラッシュアップしてから、再度打ち合わせることも決めた。

「さすがに水野さんは、こういう会議、得意ですね」

と、レイカが言うと、

「いやあ、まあ、司会は得意なんですよ。高校生くらいの頃から意図的にやってきたので」

と、ジュンイチは笑顔で言っている。

「テキパキしていて、出来る大人って感じでした。水野さん!」

と、アイも感激気味だ。

「まあ、将来の部長候補ですもんね。水野さんは!」

と、ケンタもはしゃいでいる。


「さて、もう5時ですか・・・九条さん、「飲み」いきます?」

と、ジュンイチはいい笑顔でレイカに聞いてくる。

「ええ。もちろん・・・水野さんと飲めるのは、とっても楽しいですから」

と、レイカは心から嬉しそうに言う。

「ほーんと、水野さんと飲めるの、楽しみにしてたんですから!」

と、アイも嬉しそうに水野に言う。

「飲み会大魔神ですもんね。水野先輩は!」

と、ケンタもはしゃいでいる。

「じゃ、行こうか!」

と、ジュンイチはいい笑顔で立ち上がった。


渋谷の居酒屋「大五郎」で、ジュンイチはジョッキを持って、立ち上がり、

「かんぱーい!」

と大声をあげる。

「かんぱーい!」「かんぱーい!」「かんぱい!」

と、レイカ、アイ、ケンタ達も盛り上がる。

「でもさー。レイカちゃんが九条家の本流でなくてよかったよ。さすがに本流だったら、僕もめげてた・・・多分。いや、そんなことないかもしれないけど、実際、驚いた」

と、ジュンイチは瞬時に酔って、飲み会大魔神と化している。

「そうですか。でも、よかったわ。水野さんが元気になってくれて」

と、レイカも少しのビールに楽しく酔っている。

「いやだけどさ。実際、九条家の看板って、重くない?いや、重いと思うよ。若い時とか、いろいろなかった?恋人に引かれちゃった、みたいなさー」

と、ジュンイチは絶好調で酔っている。

「ええ。やっぱり、わかります?そういう感じがたくさんあって・・・水野さんもそうなっちゃうかなーって心配で」

と、レイカも普段より饒舌になっている。

「最初はさー、ビビっちゃったけど、よーく考えてみたら、レイカちゃんには、関係のないことじゃん。生まれなんて、自分でコントロール出来ないんだから」

と、ジュンイチは言っている。

「だからね。それでビビるのは、筋違いだろって思ったわけさー。つーか、それはレイカちゃんに失礼だし、せっかく本当のことを真っ先に言ってくれたのになって」

と、ジュンイチはマシンガントークを炸裂させている。

「だから、さ、それを考えたら、対応出来るのは、俺だけじゃね?みたいな感じになってきて、だって、それを期待して、あの時レイカちゃんは真っ先に言ったんでしょ?」

と、ジュンイチ。

「はい。実はそうなんです。水野さんなら、きっと、わかってくれるって・・・」

と、レイカ。

「だしょー。だしょー・・・だから、それがわかったから、やっぱり、俺じゃないとって。そういうことになって、まー、電話したってわけ。だしょだしょでしょ」

と、ジュンイチ。

「まあ、俺もお茶女の美しい女性だったから、基本気を使うけど、でも、本当に相手のことを思ったら、そういう体面じゃなくて、欲しがっているものを考えてあげなきゃ!」

と、ジュンイチ。

「そういうこともあってさー。やっぱり、ほら、女性って、やっぱり一緒にいたい相手といたいから、出てくるわけだからさーねーやっぱりそうっしょ?」

と、ジュンイチ。

「そうですよ。わかってるじゃないですか、水野さーん!」

と、アイ。

「だしょだしょ。だから、そういうのに気を使うんでなく、オトコとオンナは、会って楽しく酒を呑むと!そーれが一番なわけよー。ねえ、レイカちゃーん!」

と、飛ばしに飛ばすジュンイチ。

「はい。そうですよ。水野さん」

と、嬉しそうなレイカ。

「ほら、ケンタ。お前何ひとりでじっくり酒なんか飲んでるんだ!おまえ、アイちゃん接待しろ。オトコなんだから、女性のひとりくらい、笑顔にできなきゃダメだぞ」

と、ジュンイチは、ひとり飲んでいるケンタに発破をかける。

「あ、はい。先輩が言うなら、確かに、そうします。はい」

と、ケンタはあたふたと、アイの前に座り、アイに話しかけだす。

「アイさんって、そのー・・・」

と、やっているケンタを横目で見て、よしと感じたジュンイチは、すかさず、レイカの横に座り直す。

「で、さ、レイカちゃんさー。基本、何、そのー、九条家の支流って言うけど、実家は、お金持ちなわけー?」

と、直接聞いてくるジュンイチだった。

「実家は名古屋にあるんですけど、お茶女に合格したら、父が「東京に一軒家買わなくっちゃ、な」って言ってくれて、買ってくれました一軒家。神楽坂に」

と、レイカは笑顔で素直に話す。

「えー、マジ!!!しかも神楽坂って、あそこ土地代高いよー。ふえー、すげえな。でも、レイカちゃん、そういう女の子なんだー。超リアルお姫様。おもしろそー」

と、ジュンイチはどこまでもハイテンションバリバリ。

「まあ、でもさ。一人暮らしってわけじゃないんでしょ?だって、お嬢様が一人暮らしなんて、あり得ないしー。普通ないしー。わからないしー」

と、ジュンイチは楽しいお酒を過ごしている。

「はい。姉と一緒に暮らしています。姉キャビンアテンダントなんですよ。会いたいですか?美人ですよ」

と、レイカは笑顔で誘っている。

「うん。会いたいねー。会いたいっす。会いたいじゃん・・・つーか、レイカちゃん、パスタ料理、俺のために作ってくれるって言ってたじゃん。それいつの予定?」

と、酒を飲んだジュンイチは、超無敵状態。

「えー、いつでもいいですよ。水野さんの為なら、わたし、いつでも、作ります。パスタ料理・・・」

と、レイカは超笑顔で、ジュンイチに話している。

「そーか、いつでもいいけど、いつがいいかなあ、つーか、それはいつがよろしいんだ、いつ的にどれがよろしいんだ、俺は何をどうしたいんだー・・・」

飲み会はいつまでも続いていた。


4人は、8時半頃、渋谷の駅で別れた。レイカもアイも、ジュンイチもケンタもいい感じに酔い、楽しく別れたのだった。


「しかし・・・水野さん、相変わらず炸裂してたというか・・・ほーんとおもしろいですよねー。なんか別人になっちゃうっていうか・・・」

と、帰りの電車でアイが言う。

「頭の回転がものすごく速くって、それでいて、こっちの本音を瞬時に察知し、言葉にしてくれて、嬉しがらせてくれる・・・あんなひと見たことないわ」

と、レイカも笑顔で言う。

「なんか、先輩、水野さんを家に呼ぶ算段してたじゃないですかー。けっこう、したたかー」

と、アイが笑顔でレイカに肘鉄砲。

「ああ、あれねー。でもねー、水野さんの唯一の弱点があるのよ・・・」

と、レイカが苦笑い。

「え?なんですか、弱点って」

と、アイが聞く。

「一晩明けて、いつもの水野さんに戻ると・・・記憶が消し飛んでるの。飲み会の・・・」

と、レイカが言う。

「そうなんですか?水野さん・・・あれほど、レイカさんと良い感じだったのに?」

と、アイ。

「まあ、わたしは嬉しかったけどね。本音では、水野さん、わたしのこと、相当気に入ってくれてるみたいだから・・・でも、普通に戻ると、そんなこと絶対言わないし・・・」

と、少し寂しそうにするレイカ。

「なーんか、ある意味、いたずら者のジキルとハイドなんですね。水野さんって」

と、言葉にするアイ。

「でも、やっぱり、愛しちゃうのよ・・・お酒を飲んで普通に戻った水野さんを見ると・・・」

と、遠い目をするレイカ。

「そうですね。愛すべきキャラですよ。お酒を飲んだ、水野さんは・・・」

と、笑顔になるアイ。

「多分、水野さんって、お酒を飲むと開放されてるんだと思うの・・・リラックスして普通の自分に戻れるのよ、きっと・・・」

と、レイカは言葉にする。

「だから、本音のマシンガントークだし、多分頭の回転が速いのも、元々水野さんって、瞬時にいろいろなことを考えているんだと思う・・・」

と、レイカは言葉にする。

「水野さんって、普段は、いろいろなことを考えて言葉を出しているんだと思う。私たちのことも一生懸命考えてくれてるんだと思う」

と、レイカは言葉にする。

「だから、あんな慎重な物言いに・・・それってすっごく気を使ってくれてるってことなんだと思うの・・・」

と、レイカは言葉にする。

「だから、一緒にお酒を飲んであげたい・・・彼を開放してあげたい・・・リラックスさせてあげたい・・・そう強く思うの・・・」

と、レイカは言葉にした。


「ほんとですね。水野さんを開放してあげましょうよ。これからも・・・」

と、アイは言葉にする。

「そして、それを一番うまくやれるのは、レイカさん、あなただけですよ・・・」

と、アイは笑顔で、言い切った。

「ありがとう、アイ・・・」

と、レイカは笑顔でアイに言う。


「でも、よかった・・・今日、確実に愛してくれたもの、水野さんは、わたしを・・・」

と、レイカはそんな風に思って、笑顔になるのだった。


地下鉄は夜の東京を突き抜けていった。

つづく

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いつか、桜の樹の下で(6)

2013年03月27日 | アホな自分
渋谷のロフトで数々の雑貨を楽しんだレイカとアイ、ジュンイチとケンタは、ロフトを後にし、道玄坂の中程にある、イタリアンレストランに入っていた。

「水野さん、ここ、なかなか、いいお店ですね。店知らないなんて・・・嘘じゃないですか!」

と、レイカは嬉しそうに笑顔になりながら、ジュンイチにそう言う。

「いやあ、ここは、以前いとこに教わった店で・・・東京にいる、いとこと渋谷で食事した時に使ったんです」

と、ジュンイチは、生真面目にそう応える。

「このペスカトーレ美味しい!・・・いつも食べてるペスカトーレより、何倍も美味しいです。水野さん!」

と、アイは無邪気にそんな風に話している。

「いやあ、僕はあんまり味がよくわからないんですが、いとこに言わせると、東京でも5本の指に入るってことで・・・」

と、ジュンイチは生真面目に答えている。

「水野さんは、ボロネーゼがお好きなんですか?」

と、レイカはボロネーゼを食べているジュンイチに興味深そうに質問する。

「ええ。僕はパスタ料理では、ボロネーゼが一番好きで、大学の学食でも、よく頂くんですが、やっぱり、ここのは、美味しいから」

と、少しリラックスした表情のジュンイチだった。

「わたし、パスタ料理も得意としているんですよ。水野さんに、一度、わたしのボロネーゼも食べて貰いたいわ」

と、レイカは、正面から攻撃をしかけてみる。

「え?九条さんは、料理やるんですか?」

と、ジュンイチは、興味を持ったよう。

「これでも、子供の頃から、母に厳しく躾けられて・・・」

と、レイカは素直に話している。

「へえーそうなんですか・・・」

と、ジュンイチは、素直に興味を持つ。

「わたしの家・・・古い家系なんです。1000年続く家で・・・だから、わたし、高校生の頃は男子に姫って言われていて・・・」

と、レイカはジュンイチへの攻撃を辞めなかった。

「え?1000年続いているんですか?・・・で、姫って言われていたってことは・・・九条さんって、藤原家の流れの、あの九条家の流れですか?」

と、歴史に詳しいジュンイチは、相当驚いている。

「ええ・・・まあ、本流でなく、支流のひとつですけど・・・だから、幼少の頃から、料理は厳しく仕込まれて・・・」

と、レイカはやわらかな笑顔でそう話す。

「はー・・・・っていうか、なんか、緊張してきました、僕・・・」

と、ジュンイチは、少し青ざめた顔でそう言う。

「大丈夫っすか?顔色青いっすよ、先輩」

と、直江ケンタが心配そうに言う。

「いや、おまえ、九条家って、言ったら、すげえんだぜ・・・九条さんがその流れのひととは・・・ちょっと冷や汗出てきた・・・」

と、ジュンイチは、顔色をさらに青くする。

「先輩、今の情報、水野さんには、逆効果だったみたい・・・」

と、アイは、小さな声でレイカに言う。

「ふふ・・・いいのよ、いずれ知られてしまう話だし・・・わたし、この話に少し引け目を感じてるから・・・」

と、少し寂しそうな表情をするレイカだった。


その後、明らかに身体に変調をきたしたジュンイチは・・・完全に調子を失っていた。


店を出て、歩いていても、調子が出ないジュンイチは、直江ケンタと相談すると、

「ちょっと今日は調子悪いんで、別の日にまた、会うことにしましょう。すいません、なんか、僕ダメすね・・・人間小さくて・・・」

と、ジュンイチは言うと、直江ケンタを連れて、渋谷の街を後にしていった。


レイカは悲しかった。中学生の頃から、同じような悲劇には、何度も見舞われたが今回のが一番悲しかった。


レイカはアイと近くのカフェに入り、コーヒーを注文した。

春の日の土曜日は、渋谷は幸せそうなカップルで一杯だった。

それを横目で見ながら、レイカは悲しくコーヒーを飲むしか無かった。

「水野さんって、普段は、生真面目すぎるみたいですね。なんか、女性に気を使いすぎていっぱいいっぱいになっちゃうタイプっていうか・・・」

と、アイは的確にジュンイチを見抜いていた。

「でも、水野さんって、おもしろい・・・飲み会の時は、あんなに豪快に、たくさんの女性たちを一遍に楽しく出来るひとなのに・・・普段は真逆・・・」

と、アイは少し笑顔になりながら、そう話す。

「すごーく真面目になっちゃって、生真面目で、一言話すのにも、かなり女性に気を使って・・・なんか興味を引く男性ですよねー」

と、アイは以前より、さらに水野に興味を持ったよう。

「自分のことなんて、どうでもいい。目の前の女性がしあわせになってくれれば・・・そんな風に思っているひとなのよ。きっと」

と、レイカはジュンイチをそう見ていた。

「だから、早めにあの情報を彼にぶつけてみたの。まあ、予想どおりの反応だったけど・・・」

と、レイカは話す。

「ただ、やさしいだけのひとだったら・・・俺の手には負えない的に身を引いちゃうだろうけど、彼はきっと違うはずだわ・・・」

と、レイカは言葉にする。

「だって、飲み会の時の彼は・・・きっと彼の本性は、あの飲み会の時の豪快で知恵のくるくる回る彼なんだわ・・・だから、絶対に気の小さいだけのひとではないわ」

と、レイカは言葉にする。


「リベンジをしてくる・・・そう言いたいんですか?」

と、アイが半信半疑な様子で言う。


と、そこで、レイカの携帯電話が鳴る。

水野ジュンイチの名前が光る。

「水野さんだわ!」

と、レイカは嬉しそうに電話に出る。

「レイカです!」

と、レイカが思わず叫ぶと、

「九条さん・・・さっきはすみませんでした。でも、俺、ちょっと考えなおして・・・」

と、暖かいジュンイチの声が聞こえる。

「明日、同じメンバーで、もう一度会えませんか?明日は11時半待ち合わせで・・・109の地下一階。リベンジ、お願いします」

と、ジュンイチの暖かい声が響く。

「水野さんが、明日、11時半待ち合わせで、同じメンバーでってリベンジさせてって言ってるけど、アイ、明日大丈夫?」

と、レイカがアイに聞く。

すると、アイは笑顔で、親指を立てる。

「大丈夫です。明日、楽しみにしてますから!」

と、レイカが言うと、

「九条さん、ありがとう!」

と、言って電話は切れた。


「ね。だから、大丈夫って、言ったじゃない」

と、レイカはアイに笑顔で言う。

「立ち直りが早いタイプって言うか・・・水野さん・・・受け入れることが出来たんでしょうね。九条先輩のすごい境遇を・・・」

と、アイが真面目に話す。

「1000年の血筋を引く九条家のお嬢様なんて・・・そんなすごい境遇を支えられる男子って、そんなにいないでしょうからねー」

と、アイが言う。

「ま、でも、あの飲み会での水野さんを考えれば・・・彼なら、悠々と対応出来る・・・あの時の水野さんを考えればいいんだ・・・」

と、アイは笑う。

「そうよ。あの彼を思い出せばいいのよ・・・きっとあれが彼の本性・・・彼ならきっと出来ると思ってた・・・」

と、レイカはほっとすると同時に涙がこみあげてきた。

「先輩・・・」

と、アイがレイカの涙を見て思わず声をかける。

「中学生の頃から、この境遇のせいで、男子に引かれてたの。わたし・・・」

と、レイカが言葉にする。

「好きな男子が出来ても・・・皆引いてた・・・高校生になったら、引かれなくなったけど、今度は明確に好きな男性は出来なかった・・・」

と、レイカは言葉にする。

「唯一心を許せた幼馴染は、やさしかったけれど・・・でも、やっぱり、こころのどこかで、私の境遇を負担にしてた・・・それが明確にわかっていたの。わたし・・・」

と、レイカは言葉にする。

「高校生の頃、なにかあったんですか?先輩」

と、アイが聞く。


「ねえ、トオルくんは、好きなひと、いないの?」

と、高校2年生のレイカは、幼馴染の土岐田トオルに学校帰りに一緒に歩きながら聞いている。

「いないわけじゃないけど・・・俺、恋人は大学に入ってから、作ることにしたんだ」

と、トオルはレイカにそう言った。

「なぜ?」

と、レイカがトオルにそう聞くと、

「俺、今の自分に価値を感じられないんだよ・・・」

と、トオルは言う。

「価値を感じられないうちは、オトコは・・・オンナをしあわせに出来ないと思うんだ」

と、トオルは言う。

「そうなの?」

と、レイカは聞く。

「ああ。オトコって、そういう生き物なんだよ。自分に価値のないオトコは、女性を好きになってはいけないんだ」

と、トオルは言う。

「だから、俺は大学に入って、自分に価値を感じられるようになったら、好きなオンナを作って、恋人にするんだ」

と、トオルは言う。

「だから、今は・・・大学に入るために勉強しているんだ・・・」

と、トオルは言った。

「そういうものなの?」

と、レイカは不思議そうにトオルに言う。

「そういうものなの・・・オトコってそういう生き物なんだ」

と、言うトオルを不思議そうに見ていたレイカだった。


「そんなことがあったんですか・・・」

と、アイはレイカを見ながら、感心したように話す。

「っていうか・・・その話、今日の水野さんの気持ちなんじゃないですか?」

と、アイは指摘する。

「先輩の価値があまりにすごすぎて・・・自分じゃバランスを取れないと思った水野さんは変調をきたして帰った・・・でも、水野さんは何かの価値を自分に見つけたのかも」

と、アイが言う。

「そうよ・・・きっとそうに違いないわ」

と、レイカ。

「でも、オトコって、面倒くさい生き物ですね」

と、アイ。

「そうね・・・でも、だから、かわいいんじゃない・・・」

と、レイカ。

「え?どこがですか?」

と、アイ。

「彼はきっとわたしの価値を飲み込んでくれたのよ。自分のお腹の中に・・・そして、自分の価値も見つけて、わたしたちに明日会いに来てくれるの」

と、レイカ。

「わたしたちを笑顔にするために、明日必死になってやってくるの。水野さんは・・・そこがかわいいの」

と、レイカがやわらかい表情で言うと、

「なるほど・・・必死に、ですか。あの水野さんが。確かに、かわいい・・・」

と、アイも言うのだった。


二人はなんとなくやわらかい笑顔で、微笑み合うのだった。


(つづく)

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いつか、桜の樹の下で(5)

2013年03月26日 | アホな自分
「もしもし、御茶ノ水女子第一大学の九条レイカさんですか?僕、農工大の美術部渉外の水野です・・・」

と、レイカの携帯に農工大の水野から電話が来た。

レイカも心なしか緊張気味で、水野に言葉を返す。

「あ、水野さんですか?わたし、お茶女の渉外になった、九条レイカです。よろしくお願いします」

と、レイカも知らず知らず、普段より幾分やわらかい声音で、丁寧に話している。

「先日は飲み会、ありがとうございました。とっても盛り上がって・・・お茶女の女性たち一同、水野さんの盛り上げ方に感心しちゃたんですよ」

と、レイカはやさしく、そう話す。

「いやあ、そうですか?まあ、僕はただ酔っ払うと、その力で、皆を楽しくしちゃうってだけですから。ただの酔っぱらいです」

と、水野は生真面目に言葉を返してくる。


水野は、普段は少し生真面目で、誠実さの溢れる素敵な青年だった。

その彼もお酒を飲むと、たちまち水野ワールドが炸裂した。


明るく楽しく、それでいて、話題はあっちに行ったかと思うと、全然想定しない側から話を持ってきて、縦横無尽、知識は豊富にして、知恵の深いタイプの男性。

手を縦横に広げながらのボディ・ランゲージは、オーバー過ぎず的確で、賢い女性達をたちまち笑顔にする技を持った・・・今まで見たこともない男性だった。


それが農工大の水野ジュンイチ(21)だった。


たくさんの知恵を使って、酔って、楽しくおしゃべりする水野ジュンイチの笑顔は、とっても暖かだった。

その笑顔にたちまちに恋に落ちた、レイカだった。


水野ジュンイチの笑顔がレイカの脳裏に浮かぶ・・・それだけで、レイカは嬉しかった。


「あの笑顔をずっと見ていたい・・・大好き、水野さん・・・」


レイカは心から笑顔になっていた。


「ところで、うちの部長に言われたんですけど・・・農工大とお茶女の今後の発展の為に・・・何が出来るか、九条さんと直接会って、検討しろって言われたんですけど」


と、ジュンイチは言ってくる。


「ええ。わたしもその話を上の人間から聞いています。水野さんさえ良ければ・・・どこかで会って話しません?」


と、レイカは提案する。


「いや、まあ、僕的には全然いいんですけど・・・九条さんの方こそ、大丈夫なんですか?」


と、ジュンイチは生真面目な雰囲気で聞いてくる。


「ええ。大丈夫です・・・日時、いつにしましょうか・・・」


と、レイカは笑顔になりながら、言葉にする。


「いよいよ、彼と二人きりで会えるんだわ・・・」


と、レイカはこころから笑顔になっていた。


数日後の土曜日。渋谷109の地下1階のエレベーターの出口で、レイカはジュンイチと待ち合わせた。


「恥ずかしい話ですけど、僕、大学に入ってから、女性とデートすら、したことがないので・・・東京の待ち合わせ場所、よく知らないんですよねー」

と、ジュンイチは、そういうところは、何一つ隠さず話してくれた。

「あのー、渋谷109は、わかります?」

と、レイカが親切に聞く。

「ええ。さすがに、そこは、わかりますねー」

と、ジュンイチは嬉しそうに話す。

「そこの入り口にエレベーターがあるので、そのエレベーターの地下1階の入り口で、わたしはよく女友達と待ち合わせるので・・・そこでどうですか?」

と、レイカは提案する。

「お、それはいいですね。そこにしましょう」

と、ジュンイチは一も二も無く決めてくれる。


「時刻は10時半・・・約束の時間にピッタリのはずだわ」

と、白のフリルブラウスに淡いピンクのプリーツスカートを合わせ、その上にベージュのフリルトレンチコートを合わせたレイカはベージュのパンプスを合わせていた。

もちろん、ヒールは7センチをチョイスしていた。

「先輩、待ってくださいよー」

と、後ろから歩いてきたのは、レイカの大学の後輩、大学一年生の姫島アイ(19)だった。

ピンクの花柄のワンピース姿に、ピンクのカットソーのトップスを合わせたアイは、さすがに10代のテイストのおしゃれだった。

ピンクのパンプスも合わせて・・・でもヒールの高さが4センチ程で、そこはレイカの勝ちだった。

「アイ、いいかしら?」

と、一階のエレベーターに乗りながら、レイカが聞いてあげると、

「はい。レイカ先輩!」

と笑顔で返すアイ。

「なんか、この間の合コンの続きみたいですね。水野さんとまた会えるなんて!」

と、アイもこの間の合コンを楽しんだ口だった。

「行くわよ」

と、笑顔で返すレイカは、エレベーターのボタンを押す。


エレベーターは地下1階へ・・・すぐだ。


扉が開くと、そこにやさしい笑顔のジュンイチがもう待っていた。

「おはようございます。水野さん・・・早くに来ていてくれたんですね」

と、レイカは少し感激気味に話している。

「いやあ、女性は待たしちゃいけないって、じーちゃんに幼稚園の頃から躾けられまして・・・女性にモテるじーちゃんだったもんで・・・」

と、ジュンイチは頭を掻きながら、やさしい笑顔で話してくれる。


ジュンイチは、白いデニムパンツに、白いボタンダウンシャツ、真紅に白い小さな水玉模様のネクタイをし、カーキ色のトレンチコートを着ていた。

足元はピンクの靴下にサイドが赤で、トップが白のデッキシューズ・・・なかなかのおしゃれさんだった。


なにより細身の身体のジュンイチに、レイカは笑顔になった。

「ちょっと待って下さいね。うちの連れが緊張しちゃって、トイレに行っちゃって・・・」

と、ジュンイチは両手を合わせて拝むような姿勢で謝っている。


と、そこへ、

「すいません。トイレ行ってたもんで・・・」

と、農工大一年生の直江ケンタ(18)が走ってくる。


「まあ、電話で言った通り、僕は女性とデートしたことがないんで、店知らないんですよ。恥ずかしいですけど・・・」

と、歩き出した四人は、北向きに歩きながら、笑顔で談笑する。

「店なんか知らなくても、飲み会であれくらい笑わせてくれるんだったら、すぐに彼女出来ちゃうんじゃないですかー」

と、気安いアイが話す。


アイも合コン以来、ジュンイチに懐いてしまった口だ。


「いやあ、アイちゃん、そんな簡単にはいかないよ・・・恋って、そんな簡単に手に入らないものだから・・・」

と、生真面目なジュンイチは、アイの軽口にも真面目に答えている。

「水野さん、これ、アイのいつもの手ですから、そんなに生真面目に返さなくてもいいんですよ」

と、生真面目なジュンイチに好感を持つレイカだった。

「は、はあ・・・どうも僕は真面目すぎるのが玉に瑕なんですよね・・・でも、これ、性格ですから・・・」

と、生真面目なジュンイチは、そんなレイカの言葉に、さらに生真面目になるのだった。


それがさらに微笑ましいレイカだった。


「水野先輩・・・とりあえず、これからどうしましょうか?」

と、ジュンイチの後輩、直江ケンタがジュンイチに聞いている。

「そうだなー。とりあえず、ロフトにでも入りませんか?ちょっと雑貨を見ながら、楽しい時間を過ごしたり・・・どうです?」

と、ジュンイチが提案してくる。

「いいですね。わたしもロフト、大好きなんです」

と、レイカが即、言葉にする。レイカは、そんなジュンイチを応援したくて、仕方ない感情になっていた。

「わたしもロフトだーい好き!」

と、負けじと大きな声を出すアイ。

「じゃ、行きましょうロフトへ!」

と、直江ケンタが言うと、

「なんか、雑貨見ていると、ほっとするんですよね。僕・・・」

と、店を知らないといいながら、いい時間の過ごし方は知っていそうなジュンイチだった。


「あのー、2人きりで会うと、ちょっと気まずいんで・・・慣れてないんですよ。僕、女性と二人きりで会うの・・・」

と、あの時、電話の向こうで言ったジュンイチだった。

「わたしとだと、気まずいですか?」

と、そこは少し聞いてみたレイカだった。

「いや、九条さんだから、気まずいんじゃなくて、女性全般と、あまり、なじみがないもので・・・」

と、ジュンイチはそんな風に言う。

「いや、そのー、僕的に言えば、九条さんと二人きりになれたら・・・そしたら、僕どうなっちゃうか、わからないんで・・・」

と、ジュンイチは素直に話す。

「そうなんですか?」

と、レイカは少し落胆しながら、聞く。

「いやあ、これも、九条さんに不快な思いをさせたくない為で・・・そのー、ほら、二人で会ってて、僕と恋人同士なんて、周りに勘違いされても、九条さんに、悪いし・・・」

と、ジュンイチは、焦りながらも、一生懸命話してくれる。

「わたし、悪いなんてひとつも・・・」

と、レイカも必死に食い下がるが、

「だから、お互い後輩をひとり連れて行くことにしましょう。それなら、これが大学と大学のお仕事だって、明確になりますから・・・」

と、ジュンイチは決めてしまう。

「まあ・・・水野さんが、それでいいので、あれば・・・」

と、レイカも渋々ジュンイチの提案を受け入れる。

「いやあ、女性と二人きりなんて、僕の人生的には、まだ、考えられないので、九条さんに迷惑をかけられませんから・・・僕の個人的なことで・・・」

と、生真面目に言うジュンイチだった。

「水野さんは、何事にも、真面目なのね・・・」

と、そんなジュンイチがいじらしいレイカは、そんな風に言葉にする。

「いやあ、そんなこと、ないですけど・・・」

と、ジュンイチは、そんな風に返していた・・・。


「でも・・・なんか、楽しいですね。こんなに美しいお茶女の二人の女性と土曜日を過ごせるなんて・・・」

と、ジュンイチの耳元でこっそり言う直江ケンタだった。

「ん?まあ、そうだけど、あくまで、今日は大学のお仕事だからな。それを忘れるなよ・・・」

と、ジュンイチは言い返す。

「水野さん、真面目すぎなんじゃないですか?いくら何でも・・・」

と、ケンタは不満そうな顔をする。

「だって、女性2人は、あきらかに、デートを楽しむつもりですよ。見てくださいよ、あの笑顔・・・」

と、ケンタに促されて、お茶女の二人を見るジュンイチだった。


「先輩、先輩も水野さん狙いでしょ・・・わたしも負けませんからねー」

と、笑顔で話しているアイだった。

「よし、お手並み拝見・・・わたしも負けないわ」

と、笑顔で微笑むレイカは、ジュンイチの方を見て、さらにやわらかい笑顔になるのだった。

アイも負けじと笑顔でジュンイチを見るのだった。


「ね?」

と、ケンタに言われて・・・少し固まるジュンイチだった。


つづく

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いつか、桜の樹の下で(4)

2013年03月25日 | アホな自分
レイカは部室を後にすると、御茶ノ水駅からJRに乗り、飯田橋駅で、東京メトロ東西線に乗り換えた。

神楽坂駅は、すぐだった。まだ、御茶ノ水駅を出てから、10数分しか経っていなかった。

神楽坂駅から、徒歩で10分もかからない場所に、レイカが姉マミカと共同で住む一軒家があった。


レイカは農工大の水野からの電話を、リラックス出来る自分の家で受けることにしたのだった。


「ただいまー」

と言っても、マミカは仕事に出ていて、家はもぬけの殻だった。

レイカは少し微笑むと、玄関に上がり、一階のリビングに向かう。

レイカは、一階のリビングで、のんびりソファーに腰をかけると、少し多めに息を吐いた。

「水野さんからの電話があるかと思うと・・・なんとなく、緊張しちゃう感じかしら、ね」

と、笑顔になるレイカ。

「何かソフトな音量で、音楽をかけましょう・・・何にしようかしら・・・」

と、レイカは、スピーカーシステムにセットされているウォークマンの音楽リストを調べる。

「うーん、スムース・ジャズというより、春ののんびりした午後に合う楽曲がいいわね・・・」

と、レイカは音楽リストをスライドさせながら、真面目に見ていく。

「あった・・・やっぱり、こんな時は、ゴンチチでしょう!」

と、レイカは流す音楽を決め、セットする。


やわらかい生ギターの音色・・・ゴンチチは、リラックス出来るのんびりとした時間が大好きなレイカの一番のリラックスアイテムだった。


レイカはゴンチチをゆったりとした気持ちで聞きながら、今度は、ダージリンティーの茶葉を出し、温かなダージリンティーをいれる。

春近い、この季節、ゴンチチをのんびり聞きながら、大好きなダージリンティーを楽しむのは、豊かな時間を楽しむための基本!と考えるレイカだった。


「ダージリンティーは、マスカットフレーバーと呼ばれる独特な香りが特徴なんだ」

と、幼馴染のトオルくんが言ってくれた言葉を思い出す。


愛知県立明和東高校に通う、高校生の頃、レイカは、なんとなくこの幼馴染のトオルとウマがあった。

「しかし、さー、レイカは何で俺と放課後にお茶なんか飲んでるんだ?」

と、少し痩せ気味で度付きの黒メガネをかけたトオルが言う。


「姫、姫って、かっこいい奴らに言われている癖に。なんで、そういうイケメンな男とつきあわないんだ?レイカは・・・」

と、トオルは不思議そうな顔をしている。

「うーん、よくわからないけど・・・」

と、レイカはいつも返事に困った。

「わたし、中身のある男性でないと・・・話を聞いていて、知恵のあるひとじゃないと、おもしろく感じられないの・・・」

と、レイカは答えた。

「外見だけで、選ぼうなんて気、これっぽっちもないの」

と、レイカは笑った。

「ふうん・・・ということは、中身があって、外見のかっこいい男性が現れたら、その男性に恋に落ちるってこと?」

と、トオルは言った。

「そうね。でも、わたし的にかっこいいっていうのは、イケメンってことじゃないと思う。どちらかと言うと、笑顔のやさしい、暖かいひとって感じかな」

と、高校生の頃のレイカは、そうトオルに言った。


その言葉をレイカは、懐かしく思い出していた。


「そういうひとにやっと出会えたんだ・・・21歳・・・大学3年生も終わる・・・春の日に・・・」


レイカは、ある種の感慨を持ちながら、ゴンチチと、温かいダージリンティーを楽しんでいた。


「姫・・・そろそろ俺のこと、真剣に考えてくれないか?」

と、高校2年生の秋、明和東高校で最も女子に人気のある男子が声をかけてきた。

放課後の帰り道・・・レイカが一人で歩いている帰り道で。


そんな風にして、男子高校生に声をかけられるのは、慣れていたレイカだった。


高校2年生の田口ユウは・・・たくさんの女子と浮名を流していた。

レイカの友人もユウの毒牙に何人もかかっていた。

ある意味、女性の敵だった。でも、確かにイケメンぶりは、群を抜いていた。


もちろん、レイカの一番嫌いなタイプの男性だった。


「考える余地なんて、どこにも、ないわ。ミクもアリサも、ケイコも、皆泣いていたわ。そんな女性の敵、わたしが相手にするわけないでしょ!」


と、レイカは怒りに燃えながら、生の感情を田口ユウに叩きつけていた。

「ふ。女性は恋をして、また、その恋に敗れる経験をしながら、大人のステキな女性に成長していくんだ。言わば僕はそのお手伝いをしているだけさ」

と、田口ユウは、レイカの生の感情をさらりと交わし、しれっとそういうことを言ってきた。

「そして、僕自身も成長させてもらっている。お互いの為にやっているのさ。お互い恋物語を楽しんでいるんだ。もちろん、恋に破れた彼女達だって、楽しんだんだ」

と、田口ユウは、言う。

「僕はいい経験になったと思うけどね。彼女達にとっても・・・」

と、田口ユウは、甘い表情で言う。

レイカは、その田口ユウを怖い表情で睨みつけている。

「姫はまさか、「処女は大切な男性に捧げるモノ!」なんて、時代遅れの考えをまさか、もっていないよね!」

と、田口ユウは、ズドンと本質を突いてくる。

「ううん」

と、レイカは笑顔で言う。

「そのまさか、よ。わたしは、時代遅れのおんなで結構。少なくとも、あなたのような、イケメンでさえあれば、あとはどうにでもなると思っている男は趣味じゃないわ」

と、レイカは吐き捨てるように言うと、その場を離れた。


「ふうん・・・一筋縄じゃあ、いかないおんなだな。なかなか、賢いみたいだ・・・」


と、田口ユウは、レイカの後ろ姿を眺めながら、つぶやいていた。


「さすが、リアルお姫様・・・ま、落としガイがあるってことだな・・・」

と、田口ユウは、ニヤリと笑って、舌なめずりをした。


その様子を土岐田トオルは少し離れた、後方で目撃していた。


数分後、トオルは、自転車で、レイカに追いついた。

「あいつ、こんなこと、言ってたぜ」

と、トオルは自転車を降り、レイカと肩を並べて歩きながら、今見た情報をレイカに話す。

「大丈夫よ。あんな奴がどんな卑劣な手を使ったとしても、わたしはあいつにだけは、落ちないから。それより・・・」

と、レイカは別のことを気にしている。

「トオルくん、わたしのこと、いつも、後ろから守っていてくれたの?帰り道・・・」

と、レイカはそっちの方が気になっていた。

「え?いやあ、その・・・前に、帰り道、告白してくる男が多くて、いやだわって、レイカが言ってたから、レイカに危ないことがないように、と思ってさ」

と、トオルは素直に白状した。

「そうだったんだ・・・トオルくんって、やさしいのね」

と、笑顔になるレイカだった。

「誤解しないでくれよ。あくまでも、幼馴染として・・・の感情だから。恋愛感情なんて、一切ないんだから」

と、少し青白い表情になったトオルはそう言った。

「それでも、いいのよ。その気持ちがありがたいの」

と、笑顔になったレイカを眩しいモノでも見るように見るトオルだった。


「わかったわ・・・わたし、水野さんに、トオルくんの匂いを感じたのよ・・・だから、こんなに恋しい気持ちが盛り上がっているんだわ」

と、レイカは気づいた。

「彼に抱かれたいって、素直に思えるんだわ」

と、レイカは気づいていた。


高校2年生のトオルは、その後、近所の古武道の道場に通い始めた。


大学進学の為の勉強を本格化していたトオルは、その忙しい時間を割いて、古武道の道に邁進していた。

もちろん、帰り道は・・・レイカの後ろを守りながら、帰宅する日々が続いていた。


レイカに悪い虫がつきそうになると・・・自転車で登場したトオルの古武道が何度も炸裂した。


「トオルくん・・・」

その度にレイカはやわらかい笑顔になったが、

「幼馴染のサービスだよ。僕も大学に入ったら、彼女を作る気だからね。彼女を守ってやれる強い自分になる、これはその予行演習さ」

と、トオルは、はにかんだ笑顔になった。


「トオルくん・・・今頃、どうしているかしら・・・大学に入って、彼女が出来たっていう噂を聞いたけど・・・」

と、懐かしい幼馴染の表情を思い出すレイカだった。

「考えてみれば、わたし、ほんとに、守られて生きてきたんだわ・・・」

と、レイカは思い出す。


姉のキミカ、いとこのタケルさん、部の顧問のユウコさんに、元部長のユキノさん・・・そして、幼馴染のトオルくん・・・。


「ふ・・・だから、今日まで、わたしは、ステキに生きられてきて・・・そして、運命のひと、水野さんに出会った・・・」


と、レイカがそこまで思い至った時、


「ピロリロリロ!」


と、レイカの携帯が鳴り始めた。


「よし!」


と、レイカは気持ち表情を厳しくしながら、携帯電話に出る。


そして、レイカは次の瞬間、笑顔になっていた。


日本の春は、ゆっくりと北上してきていた。


つづく

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