「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(16)

2013年12月13日 | 過去の物語
クリスマスイブ3日前の水曜日の午後8時頃。

トルコ料理屋の「クムファン」にいる、田島ガオ(28)は、重富リサ(30)と、個室で、中東の酒、ラクを一緒に楽しんでいた。

「けっこう強い酒ですね。これ」

と、ガオは少し咳き込みながらリサに話す。

「わたしは、これくらいが、ちょうどいい感じね」

と、妖艶なブルーのチャイナドレス姿のリサは言う。

「ガオくんを見ていると・・・なんだか、小学生の頃に別れた、2つ違いの兄を思い出すわ」

と、リサはそんな話をする。

「え、お兄さん・・・別れたんですか?」

と、ガオ。

「両親が離婚して・・・兄は父に付いていった・・・私は母を守るために母の元へ・・・それが結局、こんな境遇に」

と、リサは、そんな風に話している。

「こんな境遇・・・」

と、ガオは、リサを凝視している。


リサは、その言葉にニコリとすると、ラクを一気に飲み干す。


「私は母を守るために戦っているの。母はある施設に入れられて・・・私が戦わなければ、彼女は自由になれない・・・だから・・・」

と、リサは、少しため息をつきながら、そんな風に話した。

「あら、ごめんなさい・・・そんな話、するつもりも、なかったのにね・・・少し湿っぽくなっちゃったわね」

と、リサは言うと、ラクのお代りを頼む。

「わたしが、あなたを求めるのは、わたしが兄を求めているからかもしれない」

と、リサは言うと、その左手で、ガオの右手をゆっくりと包んできた。


同じ頃、アミとマキは、社の近くにある、イタリアン・レストラン「グラッチェグラッチェ」に来ていた。


「この店のカルツォーネは、ほんとたまらないわー」

と、マキは、白ワインにカルツォーネを合わせながら、美味しそうに食べている。

「この店のカルパッチョも、ほんと、美味しいのよね」

と、アミは牛肉のカルパッチョに、赤ワインを合わせながら、美味しそうに食べている。


クリスマス・シーズンのイタリアン・レストランは、なんとなく華やかで、紳士淑女達は、輝くような笑顔で、やさしい時間を過ごしていた。


「なんか、今日はやけにカップルが多くない?」

と、マキがため息をつくように、アミに言う。

「だって、クリスマス・シーズンだもの・・・そういうものじゃない?」

と、当然のように、アミ。

「でもさー、クリスマスって、イブに盛り上がるもんじゃないの?今日はまだ、イブの3日前よ」

と、マキ。

「イブが仕事って、ひとも、この世には、いっぱいいるのよ・・・」

と、アミ。

「そうか・・・だから、イブの代わりってこと、今日」

と、マキ。

「じゃないの・・・皆、うれしそうに、華やかに、時間を過ごしているみたいだし」

と、アミ。

「なんか、魅せつけられている、かんじ」

と、マキ。

「しょうがないじゃない・・・現に、タケルくんだって、イブも仕事でしょう?」

と、アミ。

「我らが王子様は、遠いニューヨークで、イブもお仕事・・・あの会社、ほんと、タケルくんをこき使うんだから」

と、マキ。

「あらあら、マキは、タケルくんは、アイリの未来の旦那だから、あきらめたんじゃなかったの?」

と、笑顔でツッコむアミ。

「考えなおしたのよ・・・」

と、マキ。

「どんな風に?」

と、アミ。

「確かにタケルくんは、アイリの未来の旦那だけど・・・私達の周りにいる男で、彼程の男はいないわ・・・私の目も彼が基準になっちゃってるのは、昨日わかったし」

と、マキ。

「ふむふむ・・・それで?」

と、嬉しそうなアミ。

「だから、彼程の男が見つかるまでは・・・タケルくんを思うことで、自分を成長させていきたい・・・そう思ったの」

と、マキ。

「彼を見てきて・・・ううん、見てきたからこそ、わたし、成長出来たと思うし・・・そう思わない?アミ」

と、マキ。

「よくできました・・・わたしも、そう思ってるの・・・彼を見てこられたから、知らず知らず、わたしの目も肥えた・・・それを知っているから、私は彼を見てるの」

と、アミ。

「彼を超えるような男が見つかったら・・・わたしはすぐに乗り換えるわ。私もアイリみたいに、愛されたいもの・・・いい男に」

と、アミ。

「そうね・・・やっぱり、おんなは、男に愛されて輝くモノだもんね」

と、マキ。

「そう。輝かなきゃ、わたしたちも・・・」

と、アミはマキをやさしい目で見ている。

「そうね・・・あの瞬間を、いい男と感じたいものね」

と、マキ。

「そういうこと・・・でも、タケルくんだったら・・・一緒にイキたいけれどな・・・」

と、アミ。

「まーた、そういう危険なことを・・・」

と、マキ。

「いいじゃない・・・本音は、誰だってあるでしょう?」

と、アミ。

「ま、今日のところは、いいか。わたしも、タケルくんと、一緒にイッてみたいなー」

と、マキ。

「でしょ・・・それがおんな冥利って、やつだもん」

と、アミが笑顔になって、二人は笑い合うのでした。


クリスマスイブ3日前の水曜日の午後8時半頃。

ガオの左足の腿のあたりを、リサはゆっくりと撫で回していた。

「いい筋肉をしているのねえ・・・ガオくんの足は、理想的な形だわ」

と、リサは、少し紅潮した笑顔で、ガオに話している。

「そ、そうですか・・・まあ、長く柔道やっていたし、今はサーフィンやってるし・・・」

と、ガオは心なしか蒼白な表情をしている。

「なあに、ガオくん・・・緊張してるの・・・女性の手の感触は、嫌い?」

と、リサは思わせぶりに話している。

「いや、もちろん、嫌いじゃないですけど・・・」

と、ガオは言葉を出すのに困っている。

「僕の敏感なあたりにも、指先が来ているんで・・・なんとなく・・・」

と、言葉を濁すガオ。


リサはそのガオの表情を見ると、ニヤリとして、その手を引っ込める。

リサはラクをゆっくりと飲み干すと、お代りを頼み、ガオを見て、ニッコリとする。


「ほんとに、ガオくんは、身体つきといい、表情といい・・・兄を思いださせるわ・・・」

と、リサは言う。

「別れた時、お兄さん、何歳だったんですか?」

と、ガオは聞く。

「小学6年生・・・わたしが、小学4年生の頃だったわ・・・兄は最後までやさしい表情をしてくれた・・・」

と、リサは別れた頃を思い出している。

「それっきり、私達は会うこと無く・・・今はどこで、何をしているんだろう・・・」

と、リサはなんとなく幼げな表情でつぶやく。


「ふ・・・」

と、リサは、唐突に、笑みを浮かべる。

「どうかしました?」

と、ガオが聞くと、

「わたしがこんな女になったのも、実は兄のおかげなの・・・兄がわたしをこんな女にしたのよ・・・」

と、リサは言った。


同じ頃。アメリカはニューヨークのソーホー地区のパティズ・ディッシュで、鈴木タケル(27)は朝のパンケーキを食べていた。


ちなみに、ニューヨークは、朝の6時半だった。

「こんな朝早くから呼び出されて・・・しかも、君とこの国で仕事をさせられるとは、正直、思わなかったな・・・」

と、鈴木タケルは愚痴っていた。

「いいじゃない・・・こんな朝早くから私みたいな超美人とモーニング・ディッシュを楽しめるんだから」

と、白人のアメリカ人女性のマリー・スイフト(30)が話している。

「そりゃあ、日本にいる時は、八津菱のお偉いさんからのゴリ押しで、君と仕事もしたけど・・・ここは、俺も勝手を知らない場所なんだぜ」

と、タケルは苦情を言っている。

「それは、わかってるわ。だから、知恵だけ拝借しているんじゃない。実働部隊は私達が引き受けるから」

と、マリーは涼しい顔をして言っている。

「まあ、そうしてもらいたいね・・・しかし、ガオとリョウコちゃんが、そんなことに巻き込まれているとはね・・・」

と、タケルは真面目な顔で話している。

「リサは、わたしの同期なの・・・東南アジアで、傭兵まがいの訓練をさせられたわ・・・彼女、実技では、群を抜いてた・・・」

と、マリーも真面目に話している。

「コンピューターを扱うのは天才の君からすれば、そのリサって彼女、どう見えたんだい?」

と、タケルは聞く。

「彼女、確かに実技では群を抜いていたけど・・・情緒が不安定な時があって・・・いつも何かから逃げよう逃げようとしているように見えたわ」

と、マリーは遠い目をして話す。

「ふーん、ま、とにかく、そのリサって女を、リョウコちゃんが追っていた、ということになれば・・・ま、その情報をくれた君には感謝しないといけないな」

と、タケル。

「まあ、ちょっとした細工だったけど・・・その名前とあなたが結びついているのは、すぐに分かったし、例のガオって男も・・・」

と、マリー。

「ったく、身内二人が、揃いも揃ってねー・・・ご心配おかけしました。僕から礼を言わなきゃね」

と、タケル。

「それはいいわ。こちらも、あなたにいろいろ知恵を出してもらったし、それはとても参考になった。さすがタケルね・・・あなたは女性を笑顔にさせる天才だわ」

と、マリー。

「へーへー。ったく、こちとら、クリスマスホリデーも仕事だっつーに、さらに、こんな仕事まで、させられて・・・ヘロヘロだよ」

と、愚痴るタケル。

「日本にはクリスマスホリデーという概念がないっていう話、ほんとだったのね」

と、マリー。

「クリスマスホリデーも、こっちにいるなら・・・わたし、つきあってあげようか?なんなら・・・夜を一緒に過ごしてもよくってよ」

と、マリー。

「そんなことしたら、婚約者のアイリに殺されちゃうよ。イブに帰れないだけでも、点数落としてるんだから」

と、タケル。

「わたしは、情報操作のプロよ。あったことをなかったことにするくらい、わけないのよ」

と、食い下がるマリー。

「そんなに、したいの?俺と」

と、笑顔のタケル。

「したいの!」

と、笑顔のマリー。

「君くらい自信家の女性を僕は知らないよ・・・にしても、ガオとリョウコちゃん、大丈夫なの?」

と、はぐらかすタケル。

「大丈夫。そこは、プロの仕事を信頼して。東京には、佐伯もいるし・・・もちろん、タケルは、わたしを信頼してるでしょ?」

と、マリー。

「ああ・・・君の腕なら・・・君を八津菱電機の同僚にしたいくらいだよ」

と、タケル。

「あらあ、わたしたち、もう、同僚じゃない?」

と、肩をすくめるマリー。

「そっちの仕事は、もういいよ・・・だって、怖いもん・・・」

と、苦笑するタケル。

「そんなこと、ひとつも無いくせに・・・まあ、いいわ。大切な助言ありがとう。正直助かったわ。また、仕事しましょう。楽しみにしてるわ」

と、マリーは、ミルクを飲み干すと、2人分の料金を払って出て行った。

「ったく、バイト代くらい、出せって感じだよ。まったく」

と、タケルは、ゆっくりとコーヒーを飲んでいた。


クリスマスイブ3日前の水曜日の午後9時頃。

リサは、ガオの左側にピッタリと身体を寄せ、ラクを飲んでいた。

心なしか身体をガオにもたせかけたリサは、いい感じに酔っていた。

「兄さんのおかげで、こんな女になったって・・・それ、どういう意味ですか、リサさん?」

と、ガオも、いい感じに酔いながら、それでも、真面目に聞いている。

「わたしが小学3年生の時・・・兄と別れる一年前・・・わたし、兄にいたずらされたのよ・・・」

と、リサは、しれっと言っている。

「いたずら・・・」

と、ガオは驚いて言葉にしている。

「ここを、触られたの・・・」

と、突然リサは、ガオの右手を掴むと、チャイナドレスの裾に、引きずり込んだ。

「リサさん、ノーパン・・・」

と、ガオがびっくりして言うと、妖艶に微笑むリサだった。

「わかる?もう、濡れているでしょ・・・だから、履いてこなかったの」

と、リサはゆっくりと微笑んでいる。

リサはガオの手を離そうとしない・・・そこは見る間に溢れでてくる液体でガオの右手を濡らした。

ガオはあまりのことに、目を白黒させている。

「ねえ、そのまま、いじって、ガオくん・・・」

と、リサは妖艶に微笑みながらガオに迫る。

「ねえ・・・」

と、リサがガオに迫った時、ブルルルルと何かの振動音がする。

「ちっ」

と、リサは背中の特別な場所に作ったポケットから、特別製の携帯電話を出すと、

「はい。こちらリサ。はい。わかりました。すぐに行きます。20分」

と、言って、携帯を切った。

「ガオくん、楽しみは、またの機会にとっておきましょう。じゃ、ね」

と、やわらかな笑みを残すと、チャイナドレス姿のリサは、その場を立ち去った。

「はーーーー・・・」

と、ガオは、大きなため息をついていた。


クリスマスイブ3日前の水曜日の午後10時頃。

東堂エイイチは、自宅で、ルンルンな気分でシーバス・リーガルを飲んでいた。

「イブのレストラン予約しちゃった・・・今年のイブは楽しくなるぞー。美田園美奈さんか・・・まあ、背は小柄だったけど、そこもまた、かわいいし、問題ない問題ない」

と、エイイチはルンルンである。

「イブに女の子と過ごすなんて・・・考えてみれば、ひさしぶりだもんな・・・どんな会話しよう・・・」

と、エイイチは楽しそうにしている。

「「美奈さんは、どんな趣味をお持ちで?」・・・これじゃあ、見合いの席か・・・「どんなタイプの男性が好きですか?」・・・やっぱり、これが基本か」

と、エイイチ。

「「わたし、端正な表情をした細身のスポーツマンタイプが大好きなんです」「え、それじゃあ、僕なんかど真ん中じゃないですか!」なーんちって」

と、エイイチは会話のシミュレーションを始めている。

「「いやあ、実は僕も美田園さんが、タイプ中のタイプで」「え、ほんとですか?」「美奈さん」「エイイチさん!」なーんて感じで、やっぱキスだよなー」

と、エイイチは、もう完全に頭の中で、イッてしまっていた。

「そしたら、やっぱり流れで、エッチまで行っちゃうよなー。ま、とにかく、コンドームだけは、持って行こう。使うの久しぶりだけど・・・」

と、エイイチは当日行く為のカバンまで用意し始めている。

「で、コンドーム入れたろ・・・ハンカチとティッシュはいれたし・・・」

なんてやっているところに、エイイチの携帯に電話。

「あ、美奈さん・・・いやあ、今ちょうど美奈さんのことを考えていたところで・・・はい。イブの夜のレストランの予約とっちゃいました。はっはははー。はい」

と、エイイチは気分よく話している。

「え?急に都合が悪くなった?どういうことですか?別れていた彼がよりを戻したい?で、よりを戻したいのは、美奈さんも同じ、むしろ美奈さんの方が・・・はあ」

と、エイイチはドンドントーンダウンする。

「で、イブはその彼と過ごす予定にした・・・だから・・・はあ・・・わかりました・・・それじゃあ・・・」

と、エイイチは気が遠くなりかけている。


エイイチは携帯を切ると、そのまま、その場に座り込んだ。


「そういうことねー・・・・そういうことか・・・」

と、エイイチはうつむきながら、なんとか、言葉を出している。

「は・・・おかしいとは思ったんだ・・・この俺にそんな簡単に楽しい時間が来るはずもない・・・神様もひどいことをするもんだ」

と、エイイチは嘆く。

「美味しい夢を見せて、その刹那地獄に落としこむ・・・それがどんだけつらいことか・・・どんだけきついことか・・・」

と、エイイチは嘆きながら、思わず、涙を流してしまう。

「そうさ・・・俺には永久に春は来ない・・・アイリくんに辛い時間を過ごさせた俺には・・・それが本当なんだ、それでいいんだ・・・」

と、エイイチは涙を流しながら、自分の運命を受け入れようとしていた。

「それでいいんだ・・・それで」

エイイチは、いつまでも、慟哭していた。


つづく

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