「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(12)

2013年12月11日 | 今の物語
えー、江ノ島と僕のロードレーサーですね。塗装は特注でフェラーリレッドを頼みました。

デザインも僕がやったんですけどね。今でも現役です。こいつ。



こんな世界の話です。懐かしいな・・。


日曜日の夕方・・・江ノ島の西浜には、鈴木サトルの姿があった。


近くのコンビニで500ml入りの缶ビールを4本といかくんとうまい棒をいくつか買ったサトルは江ノ島を見ながら、西浜でビールを飲んでいた。

「こうやって、月見ながら二人でビール飲んだこともあったっけ・・・」

と、サトルはつぶやく。

「こうゆう、安っちい飲み会も、あいつ嫌いじゃ無かったもんな。つーか、むしろ好きだったよな・・・」

と、サトルはつぶやいている。

「ミカさんは大人っぽいけど、ミクは、こういう子供っぽい遊びが好きだった・・・」

と、サトルは江ノ島を見ながら、ビールを飲み、つぶやいている。


「あのー、僕、自転車やってみたくて・・・ここなら、いろいろ揃えられるって聞いたんで・・・」

と、25歳のサトルが、葉山の自転車屋「Bonne route」に顔を見せたのは、3月下旬の春が始まる頃の季節だった。

その時、店番をしていたのが、ミクだった。その店はミクの実家の店だった。

「これから、始められるんですか?」

と、長い髪の毛の美しい、すらりとした肢体の美しい御手洗ミク(29)は、初心者の男性ということを頭に入れながら、流れるように説明していく。

「資金的には、どれくらいを考えていらっしゃるんですか?まあ、自転車は揃えるべきアイテムが結構あるんですよね・・・」

と、ミクはそう言いながらも、自転車のカタログを出してきて説明する。

「うちとしては、エントリーモデルとして、ティレックのこのあたりのモデルを推奨しています。これなら、レースにも出れますし、十分戦えるので・・・」

と、ミクはティレックの18万円のモデルを指し示していた。

「資金的には、25万円オーバーくらいまで考えています。ウェアとかメットなども入れて・・・」

と、サトルは言いながら、ミクと相談してズバズバ決めていく。

「決断、速いのね?」

と、ミクが笑顔になると、

「社会に出た男は、こうでなくっちゃ!」

と、サトルが笑顔で言った・・・その時、ミクの目がやさしく笑った・・・。


「アイウェアは別途買ったんだっけ、ま、10万円近くしたからなあ・・・最初はメガネ姿で・・・恥ずかしかったっけ・・・」

と、江ノ島を見ながら、缶ビールを飲み、いろいろ思い出しているサトルだった。


二人は毎週のように会って話しているうちに意気投合し・・・ミクがロードレーサー初心者のサトルを鍛えてくれるようになった。


サイクルウェア姿のミクはとてもチャーミングで、美しかった。

「わたし、結構イケてるでしょ?もう、29歳だけどねー」

と、笑うミクはとても29歳には見えなかった。

「三浦半島を南下してトレーニングしましょ。途中、佐島漁港で、海鮮丼でも食べましょ。あそこ鮮度抜群だから」

と、笑顔のミクは楽しそうに鍛えてくれた。

「ミクさんは、自転車は何年くらいやってるんですか?やっぱり子供の時から?」

と、サトルはミクの後ろについて走りながら、そんな感じで話しかける。

「最初にレーサーに乗ったのは、小学生の頃ね・・・確か父が子供用に作ってくれて・・・。あ、それからわたし双子なのよ。姉は今フランスにいるけどね」

と、ミクはミカについてもその時教えてくれたのだった。

「だから・・・もう20年近くのベテラン・・・安心して尾いて来て」

と、笑顔のミクは、チャーミングな笑顔で前を走って行く。

「綺麗なひとだよな・・・やっぱり・・・」

と、サトルは感じ・・・次に会った時には、もう告白をしていた・・・。


その場所こそ、この江ノ島の西浜だった。


「なあに、話があるって・・・」

と、トレーニング中、わざわざここに来て告白したサトルだった。

「ミクさん、あのー・・・俺、ミクさんに恋しちゃいました。ミクさんに惚れたんです。だからそのー、正式に僕と付き合ってくれませんか?」

と、サトルは単刀直入にミクに話した。


ミクはサトルの目をじっと見て・・・それから目の笑ういい笑顔になって、一言、

「いいわ。わたし、あなたの恋人になってあげる」

と、嬉しそうな表情でミクは言った。

「だから、あなたもわたしの素敵な恋人になって」

と、ミクは言うと、サトルを抱きしめながらキスをした。まだ、昼の12時前だった。


周囲の人間は、「お」という顔をしたが、ミクはそんなことなど気にしていなかった。

「そうと決まれば・・・そうね、まず、腹ごしらえしてから・・・行くべき所へ行きましょ」

と、ミクは言うと、赤いロードレーサーで、先に立って走り始めた。


途中、二人は、三笠會館で洋食のランチを食べると、近所のシティホテルにチェックインし、サトルはミクに抱かれた・・・ミクは上になってサトルをリードし、

ミクの大人の技に翻弄されっぱなしだったサトルは、その日、何度目かの射精をし、果てた・・・。

やさしいミクは舌で、気持ちよくそこを掃除してくれた・・・やさしい大人の女性・・・それがミクだった。


軽い疲れから寝入ったサトルが起きると、ミクがじっと見守っていてくれたことに気づいた。

「見ていてくれたの?ミク」

と、サトルが少し甘えるような声で言うと、

「大丈夫。あなたは私が守ってあげるから。これから、ずっとね・・・」

と、ミクはやさしい笑顔で言った。

サトルはその笑顔に抱きついてキスをすると、ミクもサトルをきつく抱きしめた。

「わたしがあなたを守るの。いつまでも、ね・・・」

こうして、二人の楽しい時間は始まっていった・・・。


「ミクはまるで・・・僕がまだ、中学生の頃に母を病気で亡くしたことを知っていたかのようだった・・・おんなの第六感だったのかな」

と、江ノ島を見ながら、ビールを飲むサトルだった。


それから二人の楽しい時間は続いていった。


ミクは平日は、自転車メーカーの「テレックジャパン」の社員だった。

平日は東京にある彼女のマンションから会社に通い、週末を実家で過ごしていた。


ミクは出来るかぎり週末はサトルと過ごしてくれた。


「大丈夫、わたしがあなたを守ってあげるから・・・」

と、言いながら、サトルを抱きしめるのがミクのいつもの癖だった。


サトルが母を中学生時代に亡くしている事を知ったミクは・・・さらにその言葉を言う機会が多くなった。


「サトル、私が全力で引くから、後ろから着いて来て・・・絶対に切れないでね・・・」

と、ミクは言うと、男性並みの脚力で、前を引いてくれた・・・サトルの脚力はみるみる鍛えられ、レースに出れる程になっていった。


「サトルは鍛えがいがあるわ・・・元々サイクリストの素養があったのね・・・いいお尻してるわ・・・それに肩甲骨のカタチが美しい」

と、言ってミクは時折サトルを抱きしめた・・・身体のデザインや美しさにこだわりがあるのが、サイクリストだった。


もちろん、ミクもそのひとりだった。

ミクはサイクリストとしてのサトルを愛し始めていた。


ミクとサトルはほとんど喧嘩をしたことがなかった・・・サトルはミクの優秀な練習生だったし、ミクはサトルの優秀なトレーナーだった。

「しかし、ミクの身体って完璧じゃないか?後ろで走ってて、そう思うよ。胸も大きいし、尻の筋肉も理想的、それでいて、締まっているところは完璧に締まっているし」

と、サトルは言葉にする。

「あのさ・・・今日も行かない?なんか、ミクの身体のデザイン見てたら、今日も、もよおしてきちゃって・・・」

と、サトルが言うと、

「そ。じゃ、行こうか」

と、笑顔をくれるミクだった。


二人はエッチの相性も良かった。


お互い好奇心旺盛だし、筋肉は鍛えられているし、心肺機能も高いから、高い持続力を保てた。


エッチが終わると、満足そうにミクはサトルの笑顔を眺める。

「気持ちよかった?今日はサービス多めにしてあげたのよ」

と、ミクはいたずらっ子のような表情で言葉にする。

「うん。気持ちよかった・・・もう、何回イッたかわからないよ・・・」

と、サトルは満足げに笑うのが常だった。


「ミク・・・どこにも行かないでね・・・僕はもうミクなしでは行きていけないから・・・ね、約束だよ」

と、サトルは言葉にすることがあった。深夜に突然目を覚まして、ミクが隣にいなかったりすると、サトルは激しく寂しがった。

「わたしにもトイレくらい行かせてよ・・・大丈夫。わたしはどこにもいかないわ。いつもサトルを見守っているから・・・大丈夫」

と、ミクはやさしい暖かい笑顔で言った。


「ミクはそう言ってたのに・・・結局、逝ってしまった・・・」

サトルは少し泣いていた・・・そのシーンが激しく頭の中に点滅している。


「後方で事故、後方で事故・・・集団はスピードを落とせ」

と、集団を全力で引くサトルの無線には、監督の声が響いた・・・稲村ヶ崎を登りきり、鎌倉湾を右に見ながら、由比ヶ浜方向に向かって走っている時だった。


雨が激しく打ち付けていた。


「どのチームに事故者が出たんです?」

と、無線で監督に聞くサトル・・・すぐ後ろにいたカズキも耳を済ませている。集団は少しパニックとなり、急速にスピードを落としていた・・・。


その時、サトルはなにかよくわからない悪寒のようなモノを感じていた。

ある種の虫の知らせのようでもあった。


「ミクだ。ミクが救急車で運ばれたらしい・・・」

監督からの声だった・・・明らかに狼狽している声だった。

「ミクが!」

サトルの記憶はそこで飛んでいる。


「だから・・・もう20年近くのベテラン・・・安心して尾いて来て」

そう笑ったチャーミングな笑顔のミクはもういない・・・。


「そういえば、ここで、二人して、缶ビール飲みながら、江ノ島の上に出る月をよく眺めてたっけ・・・」

と、やっと出てきた江ノ島の月をサトルは懐かしそうに眺めていた。

「相変わらず綺麗だ・・・ミクもこの月が好きだった・・・」

と、サトルは美しい月の風景にしばし見とれていた・・・。

「あ、そうだ・・・デジカメ・・・この風景、押さえておこう・・・」

と、サトルはつぶやく。

「「今日の一枚」ってところかな・・・ミクの思い出と共に・・・」

とつぶやきながら、サトルは、江ノ島上空の月の写真を撮った。


サトルは少し泣いていた。


つづく


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