「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(19)

2013年12月16日 | 今の物語
「俺、大学続けられなくなったって、話したろ?」

と、ヨウコは話を続けている。

ミウとテルコはコクリと頷いた。

「俺んちは・・・米兵だった父親が戦場で死んで・・・その恩給で食べてたんだ」

と、ヨウコは話す。

「それと俺のお袋が横須賀基地で働いていてよ・・・それで俺を大学に行かせてくれたんだが・・・お袋体調崩してよ・・・」

と、ヨウコは話す。

「それが元であっけなく亡くなっちまって・・・だから、親父の恩給も支給停止になるだろ・・・さらにお袋俺に内緒で、けっこうな額の借金していてよ・・・」

と、ヨウコは話す。

「とにかく、いきなり収入は無くなるは、借金はみつかるわで、もうどうにもならなくて・・・大学辞めてソープで働いたんだ」

と、ヨウコは話す。

「これでもナンバー1を何度も取ったんだぜ・・・ま、ひとに言える話じゃねーけどさ」

と、ヨウコは話す。

「東京の有名店は、けっこう回ったよ・・・引き抜き引き抜きでさ・・・だから、客もたくさんいて・・・ファンも多くてさ」

と、ヨウコは話す。

「その頃だよ・・・男に金持ち逃げされたのは・・・まあ、その時点で、残りは600万円以上あったけどな」

と、ヨウコは話す。

「まあ、でも・・・その時にホスト遊びを覚えちまって・・・金なんてすぐに無くなった・・・それでも、自分で稼げばいいって、派手に遊びまわったよ」

と、ヨウコは話す。

「そんな俺が変わったのは、あるサラリーマンに出会った時だ・・・」

と、ヨウコは話す。

「どこか影のある、気の弱いサラリーマンの男でさ・・・そいつが客で来たんだけど・・・そいつ二回目も俺を指名してくれて・・・こっちだって満更じゃなくてさ」

と、ヨウコは話す。

「そいつはひと月に一回、月給が出ると、来てくれるんだよ。そんなに裕福なサラリーマンじゃない・・・むしろ安月給のサラリーマンだよ。着てる服とか見りゃわかる」

と、ヨウコは話す。

「奴にすりゃあ、俺と寝るのは、贅沢な遊びなんだよ。ちまちました奴だけど・・・なんか、ほっこり暖かい奴で・・・来るようになって一年後、始めて客と外で会ったんだ」

と、ヨウコは話す。

「俺の方がそいつを好きになっちまってよ・・・それでつきあってたんだけど・・・エッチだって、してあげてんのに、そいつ義理堅く店に来てくれるんだよ、アホだろ」

と、ヨウコは話す。

「でも、そういう奴が気に入っちまってよ、俺・・・遊びは全部辞めて・・・そいつの為に貯金を始めたんだ・・・でも、そうなってからすぐだったな・・・」

と、ヨウコは話す。

「外で奴とデートしている時に、昔の客に声をかけられちまって・・・俺、こいつと寝たことあるぜって、目の前で堂々と言われて・・・奴もショックだったろうけど・・・」

と、ヨウコは話す。

「それでパーよ。何もかもすべて・・・奴はもちろん、客として来なくなったし、部屋も引き払われていた・・・よっぽどショックだったんだろう・・・」

と、ヨウコは話す。

「俺もそれをきっかけにして、ソープから足を洗ったってこと。で、この街に流れてきたんだ・・・この街なら、静かに隠れていられるかなって思ってな」

と、ヨウコは話す。

「今・・・話しながら、思ったけどよ・・・お前のサトルの今の状態・・・俺を振った男と同じ状態なんだな・・・」

と、ヨウコはミウを見て言葉にする。

「つまり、今の俺とおまえは境遇が一緒ってことだよ・・・ミウ・・・」

と、ヨウコは言葉にした。

「そうだね・・・同じ境遇だね・・・でも、ヨウコの彼は死んでは、いないでしょ?」

と、ミウも言葉にする。

「そうだな・・・ま、可能性がないわけじゃねーけどな・・・」

と、ヨウコも言葉にする。

「だから、ミウ・・・おまえも元気だせよ・・・俺だって空元気だけど、元気な風には見せているんだからよ・・・」

と、ヨウコは言葉にする。

「そうね。うん。元気な風に見せる・・・努力はするわ」

と、少し笑顔の戻るミウだった。

「そっか・・・ヨウコはヨウコなりにわたしを元気付ける為にこの話をしたのか・・・案外この子・・・根はやさしいひとなんじゃない・・・」

と、ミウは思っていた。


「ヨウコとテルさんがいるから・・・私も話しておこうかな・・・」

と、ミウは話しだす。

ヨウコとテルはミウを見る。

「わたし、実は、両親共に亡くしてるの・・・多分、全部わたしが原因・・・」

と、ミウは二人を見ながら話す。

「あれ、だって、姫ちゃん、お母さんが病気だって・・・」

と、テルコは言葉にする。

「あれは、実家でわたしが世話になっていたおばさんが・・・今、病気していて・・・その援助の為のお金で・・・母って言った方が通りがいいかと思って・・・」

と、ミウは言葉にする。

「両親が亡くなってから、そのおばさんに随分世話になって・・・今度はわたしが世話する番だって、思って・・・つい・・・」

と、ミウは言葉にする。

「そのおばさん、よっぽど悪いのか?」

と、ヨウコは言葉にする。

「一時期はかなり悪かったの・・・でも、今は峠は越えたって・・・快方に向かうだろうって、息子さんが連絡してきてくれて・・・」

と、ミウは言葉にする。

「そうか・・・それは・・・少しは朗報があるじゃねえか」

と、ヨウコは言葉にする。

「ええ・・・それだけが朗報かな・・・」

と、ミウは言葉にする。

「姫ちゃん、お父さんもお母さんも亡くなったのか・・・寂しかねえだが?」

と、テルコは言葉にする。

「テルさんとヨウコがいてくれるし・・・それにサトルはわたしの希望だから・・・大丈夫、がんばれます」

と、ミウは言葉にする。

「なんか、死んだ弟が帰ってきてくれたみたいで・・・もう一度、わたし、がんばってみようって思えて・・・だから、がんばれます。わたし」

と、ミウは言葉にする。

「姫ちゃんは強いだが・・・強くなっただが・・・」

と、テルコが言葉にする。


「皆、いろいろあるだが・・・ヨウコはもし、その元カレが・・・ここに訪ねてきたら、どうするだが?」

と、テルコが質問する。

「ふ。来るわけねえじゃん・・・だって、俺がいやで、捨てていったんだぜ、そいつ・・・」

と、ヨウコは一笑に付す。

「だから、もし、来た時の話よ・・・」

と、ミウも言葉にする。

「さあ、その時になってみないと、わからねーな」

と、ヨウコは遠くを見るような目で、そう言った。


同じ頃、八津菱電機鎌倉地区にあるコンピューター製作所の官公システム部第三課課長の飯島コウイチは、携帯電話をかけていた。

「いやあ、久しぶり、わたしだ・・・ちょっといつも忙しいところ、仕事を依頼したくてね・・・うん。まあ、割りと楽しい仕事と言ってもいいかな」

と、飯島コウイチは、久しぶりの相手に楽しそうに電話をしていた。

と、その電話を切った飯島コウイチの背中を叩くのは、官公システム部の部長の林だった。

「例の件、どうだ?」

と、短く聞く林。

「あ、それなら、たった今依頼したところで・・・林さんにも、よろしくとのことでした」

と、飯島コウイチは、笑顔になりながら、話す。

「そうか・・・奴なら、仕事は確実だからな・・・よし、いいだろう」

と、林は納得して、部長室に戻っていく。

「ま、あの一族はそのあたりは優秀だからな」

と、思わず笑顔になる飯島コウイチだった。


藤沢駅南口にある居酒屋「須藤」に鈴木サトルの姿があった・・・その前に座るのは、そのいとこの鈴木タケルだった。

「で、どうだ「鬱病」の方は・・・俺も経験者だから、だいたいわかっちゃいるが・・・ベッドの上での体育座りはもう終わったか?」

と、タケルはサトルに質問している。

「ええ・・・最悪からは随分脱出出来て・・・まあ、他人も怖くなくなりました・・・ただ、八津菱電機の人間だけは、まだ、怖いですね」

と、サトルはタケルに言葉にしている。

「まあ、そんなところだろうな・・・飯島さんから電話が来た時は、ちょっと驚いたけどね。八津菱にいる頃、俺も、ちょっとお世話になったしな」

と、タケルはサトルに言っている。

「タケルさんは、もう八津菱電機からは離れたんですよね?」

と、サトルはタケルに聞いている。

「ああ。今はフリーランスで働いている。まあ、でも、政府の仕事メインで、いろいろやらされているよ」

と、タケルは愚痴るように言う。

「僕、タケルさんにあこがれて、八津菱に入ったんですけどね・・・」

と、サトルは言う。

「だから、システムエンジニアは、人のやる仕事じゃないってあれほど言ったのに・・・」

と、タケルはサトルへ言う。

「でも、遠回りしてでも、コンピューターを学んでおいた方がいいって言ったのもタケルさんですよ」

と、サトルも負けじとタケルに言い返す。

「わかったよ・・・同じ一族なんだから、言い合いはなしにしようや」

と、タケルは言う。

「まあ、でも、せっかく休職させてもらっているんだから、人生について、深く考える時間が出来たじゃん・・・それはよかったんじゃね?」

と、タケルが言う。

「そうですね。それはほんとに、よかったと思います。というか、僕は限界でしたよ・・・あれが・・・」

と、サトルが言う。

「じゃあ、どうする?これから・・・」

と、タケルが聞く。

「わかったのは・・・僕的には主任システムエンジニアには、もうなる気はさらさらない・・・ということです。あれは人のする仕事じゃない」

と、サトルは明確に言う。

「だったら、どうするんだ、これから・・・?」

と、タケルが聞く。

「少しゆっくり考えてみたいと思います。人生について・・・これからの僕の人生について・・・」

と、サトルは言葉にする。

「そうだな。自分の人生なんだから、自分で決めろや・・・責任もってな」

と、タケルは言葉にする。

「そういえば・・・お前、女の方はどうなってる?電話で仲良く話している女性がいるって前回言ってただろ」

と、タケルは言葉にする。

「あ、そうでしたね、前回電話貰った時、話しましたね・・・タケルさん、結構僕の事、心配してくれてたんですね」

と、サトルは言葉にする。

「そりゃ、そうだ・・・主任システムエンジニアなんて、めちゃくちゃ大変だからな。お前がそれに就任したって聞いて、心配になってな」

と、タケルは言葉にする。

「ずっと電話出来ませんでした・・・例の女性」

と、サトルは言葉にする。

「心配しているぜー、そのおんな・・・近々電話してやるんだな・・・迷惑かけたことになるんだから」

と、タケルは言葉にする。

「ええ、それは考えていました・・・僕がある程度元気になったら、説明がてら電話しないとって」

と、サトルは言葉にする。

「ま、今のおまえなら、大丈夫だろうけどな」

と、タケルは言葉にする。


「まあ、サトル・・・言ってくれれば何でも支援するから。人探しから警察的なこと・・・探偵的なこと・・・ガードマン的なこと・・・何でもいいぞ」

と、タケルは言葉にする。

「その気になりゃ、ハッキングだってお手のモノだからな・・・ま、何かあったら、携帯に電話くれや・・・」

と、言っている傍から、タケルの携帯が鳴り出す。

「はい、もしもし・・・え?何それ?マジか・・・わあったわあった・・・それは俺しか出来ないわ・・・1時間くれ、すぐ行く」

と、タケルは携帯を切ると、

「呼ばれちった。また、どっかで、今度はゆっくり飲もう・・・お前が大丈夫そうだってことは、飯島さんに報告しておくから、おまえから報告する必要はないからな」

と、タケルは言いながらバックを担ぐと、

「じゃ、またな」

と、タケルは勘定を払って、店を出て行った。

「お客様・・・先程、お客様に、と・・・この二本のワインをプレゼントするようにと、お代を払っていかれた方が・・・」

と、高そうな白ワインと赤ワインを店員が持ってきてくれる。

「ありがとう」

と、それを受け取ると、

「せっかくだから、腰をすえて飲もう・・・久しぶりの酒だし・・・」

と、静かにワインを飲みだすサトルだった。

「タケルさんは、やっぱりいいな。経験が濃いから、人間がデカイ・・・話しているとこっちまで安心する」

と、サトルは言葉にしている。

「まあ、今日はゆっくり飲もう・・・」

と、サトルは言葉にしていた。


つづく


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