「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス!」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(19)

2013年12月18日 | 過去の物語
クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後6時半頃。イズミは、八津菱電機華厳寮に帰るべく東海道線に乗っていた。


「ほんと、ごめんなさい。今日は帰って・・・」


美緒の言葉が蘇る。

あの時、美緒は泣いていた。

あの明るい美緒が・・・泣きじゃくった後のような、そんな表情だった。


「男・・・だろうな」


と、イズミは冷静に判断を下していた。

「俺にはわかる。相手は・・・美緒が好きで好きでたまらなかった、美緒が大学1年からつきあっていた元カレだ」

と、イズミは冷静に判断していた。

「クリスマスイブが近づき・・・美緒に心を戻した元カレが、美緒を誘いに来た・・・そんなところだろう」

と、イズミは冷静に判断していた。

「美緒の部屋に肌色が見えた・・・まさか、寝ていた?」

と、イズミは驚愕の事実に突き当たる。

「まさか・・・あの美緒が・・・でも・・・」

と、イズミには疑念が広がる。

「肌色が見えるってこと自体・・・寝ていなくても、キスくらいは・・・」

と、イズミにさらに疑念が広がる。

「欲しかったモノがやっと戻ってきた。この手に欲しかったモノが・・・だから、美緒は泣いたのか・・・泣きながら、美緒は元カレを受け入れたのか・・・」

と、イズミはさらに疑念を広げる。

「大事だったモノの大事さを理解したからこそ、美緒は泣きながら、元カレを受け入れたのか。涙ながらに・・・」

と、イズミは理解する。

「少なくとも、相手は裸だった・・・」

と、イズミは理解する。


イズミの頭に、美緒の裸のシーンが浮かぶ。

その裸の美緒が、誰かに抱かれ、涙ながらに、受け入れる。


涙を流す程、うれしがる、美緒・・・。


ツーっと、イズミの頬を涙が流れる。

「ふ。この俺が、涙を?」

と、イズミは、苦笑する。

「ドライなこの俺が・・・おんななんて、星の数ほど、抱いてきた、この俺が?」

と、イズミは苦笑するが、涙はとめどなく流れていく。

「ふ、感情なんて、くだらない・・・」

涙を流すイズミを乗せた東海道線は、力強く闇夜を突き抜けていった。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後7時頃。田島ガオは、自宅アパートに帰宅し、生ハムを食べながら赤ワインを飲んでいた。

「明日は、イブか・・・」

と、ガオはゆっくりと赤ワインを飲み干しながら、考えていた。

「リサさんとの、この恋も・・・明日がクライマックスか・・・」


FMからは、ビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」が流れている。


「明日、俺はこの恋に、どう決着をつけるのだろう・・・」

と、ガオは、思案顔で、赤ワインを、ゆっくり飲んでいる。

「彼女を抱いたら・・・それはそれは、気持ちいいだろうな・・・」

と、ガオは少しだけ股間を熱くしながら、そう思う。

「本当に彼女に旦那がいるのか?・・・それって作り話なんじゃ・・・」

と、思いたくなるガオだった。


「あなたは・・・自分との我慢合戦ね。この恋は、深入りすれば深入りするほど、大きな快感があなたを襲う。どこでUターンするか、あなたが決めることよ」


懐かしいアミの言葉が、こころの中で響いた。

「ふ。アミさんの言うとおりだ・・・どこまでも、アミさんの言うとおりだよ」

と、ガオは苦笑する。

「アミさんは、どこまで、お見通しだったんだ。この「本当の恋」を・・・」

と、ガオは改めて、アミの大人のおんなとしての力量を認めていた。

「そうだな・・・どこでUターンするかは、俺が決めることだ。それも明日・・・」

と、ガオは改めて思った。

「彼女の希望を入れて、思いっきり、抱いてしまうのも、ひとつの手だけどな・・・」

と、ガオは改めて思った。


リサの妖しい表情が、ガオの脳裏に浮かんだ。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後9時頃。アイリは母親の愛美とアイリのマンションで、赤ワインを飲みながら、話していた。

「明日はイブね」

と、アイリは赤ワインに少し陶然となりながら、話している。

「そうねー・・・この時期は、いつも忙しくって、慌ただしいのよね・・・」

と、愛美も赤ワインに陶然となりながら、話している。

「だって、毎年パーティーだったから、それで慌ただしい記憶しかないんじゃない?」

と、アイリ。

「そうね。あのひとが、そういうのが、好きなひとだから・・・仕方ないわ」

と、愛美。

「今年もやるんでしょ?イブのパーティー?」

と、アイリが振ると、

「そうね・・・やるでしょうね・・・あのひとなら・・・」

と、愛美。

「じゃあ、ママ、そのパーティーには、出ないといけないんじゃない?」

と、笑顔のアイリ。

「まあ、そうなるかしらね・・・」

と、苦笑顔の愛美。


アイリは、その愛美の答えに満足そうに微笑んでいる。


「アイリ、あなたはタケルくんとしあわせになりなさいね・・・」

と、愛美が言う。

「ええ。そのつもりよ・・・現に今もしあわせだもん。離れていても」

と、アイリ。

「そのようね・・・彼は、「人間はしあわせになる為に生きている」という大事なことをわかっていると思うわね」

と、愛美。

「人間は、しあわせになる為に生きている?」

と、アイリは聞き返す。

「そう。これを勘違いしているひとが、この世には、多いと思うの、わたし」

と、愛美は言う。

「何より、お仕事第一のひととか、そういうこと?」

と、アイリ。

「そう。うちのパパの素晴らしいところは、それを勘違いしていないところ」

と、愛美。

「確かに、タケルはいつも、「人間はしあわせになる為に生きているんだ。仕事をする為に生きているんじゃないんだぜ」って言ってるわ」

と、アイリ。

「それが大事なのよ。その基本を忘れて、やれ仕事だ、やれ金儲けだってやり出すから、皆、おかしくなるのよ・・・」

と、愛美。

「すべての基本は、「人間はしあわせになる為に生きている」・・・そこから発想するから、タケルは素晴らしく感じられるのかしら」

と、アイリ。

「そうよ・・・発想の基本が、そこにあるから、いつでも、タケルくんは、輝いていれるのよ・・・違う?アイリ」

と、愛美。

「そうかもしれない・・・タケルは、仕事が忙しくても愚痴一つ言ったことないし・・・しあわせになる為にはしょうがないって、思ってるのかも・・・」

と、アイリ。

「そう思えれば、愚痴も出ないでしょ・・・そういうことなんじゃないかな。タケルくんのいつも輝いている秘密って」

と、愛美。

「「人間は、しあわせになる為に生きている」かあ・・・今の私は、「人間はしあわせになる為に、イブを待っている」って感じだけど」

と、アイリが笑うと、

「そうね。明日が楽しみだわ。17歳の二人は、今頃、何を思っているかしらね」

と、愛美は、笑顔で言うのだった。


同じ頃。鈴木優(17)は、自分の部屋の窓から、星空を眺めていた。

雲ひとつ無い、綺麗な星空が、優を魅了していた。

「サンタさんくらい、見えそう」

と、優は笑っていた。それくらい綺麗な星空だった。

「そのひと・・・綺麗なひとだったら、どうしよう・・・」

と、優は思っていた。

「大人な女性・・・なんだろうな・・・タケルさんが、選ぶくらいだから」

と、優は思っていた。


優は少し考えて・・・でも、考えるのを辞めた。


「明日、会ってから、考える。それでいい」

と、優は笑顔になっていた。


同じ頃。滝田祐(17)は、自分の部屋の窓から、星空を眺めていた。

雲ひとつ無い、綺麗な星空が祐を魅了していた。

「サンタさんが今日来てくれたら、見えるんだろうな」

と、祐は思っていた。それくらい綺麗な星空だった。

「とうとう明日か・・・」

と、祐は思っていた。

「がんばろう。そして、優ちゃんを、僕の恋人にするんだ」

と、祐は決意していた。


流れ星が一個、綺麗に流れていった。


クリスマスイブを明日に控えた金曜日の午後10時頃。アミは自宅マンションで静かに白ワインを飲んでいた。

アミは、タケルと二人で撮った写真を眺めながら、キッシュを肴に、白ワインをゆっくりと飲んでいた。

と、その時、アミの携帯に電話が・・・。

「はい。もしもし、アミですけど・・・」

と、アミが出ると・・・アミはたちまち笑顔になり・・・「うん、うん」と頷きながら、楽しい電話は続いた。

アミは、しあわせそうな笑顔のまま、楽しく時間は過ぎていった。


土曜日。クリスマスイブ当日。

街の空は綺麗に晴れ上がっていた。

それぞれにとって、大事な一日が始まろうとしていた。


クリスマスイブ当日の土曜日、午前7時頃。田島ガオはいつものように、鎌倉の街を走っていた。

「・・・」

彼は無言で、身体を奮い立たせるように走っていた。

まるで、今日一日の試験走行をしているように、無言でただただ走り続けていた。

「リサさん・・・今日、決着をつけます。僕は・・・」

と、ガオはつぶやくと、鎌倉のきつい坂を登り始めるのだった。


クリスマスイブ当日の土曜日、午前8時頃。沢村イズミは、八津菱電機華厳寮で、むくむくと起きだし、田中美緒に電話をかけてみる。

部屋の電話機は鳴っているが、誰も出なかった。

「すでに二人で出かけたか・・・」

と、イズミは推測する。

「ふ・・・俺はわかりすぎる程わかってしまう・・・わからない方がしあわせってこともあるのに、な・・・」

と、イズミは自分で自分に傷ついていた。


ふと、そのイズミの目に、一昨日買ってきた、美緒の為に買ってきたクリスマス・プレゼントが見える。

四つ葉のクローバーのモチーフのネックレスだった。その包箱が、見えていた。


落ち込むイズミ・・・。


「へ。神様もきつすぎるぜ・・・イブの日に、失恋なんてさ・・・」

と、イズミは落ち込んでいた。


同じ頃。マキはいつもと同じ通勤電車に乗っていた。

少し心がドキドキしていた。

この時間に青山大輝(45)が、この電車に乗ってくるはずだった。

青山大輝には、この時間にクリスマス・プレゼントを贈ることを予告してあった。

「でも、急な出張とか、入ったら、無理だし・・・でも、今日は土曜日だから、その可能性は低いはず・・・」

と、マキはドキドキしながら、大輝が乗ってくる最寄り駅を待っていた。

「あ、ここだ。大輝さんの最寄り駅・・・」

と、電車がとある駅に滑りこんでいく。

と、いつものように、元気で明るい青山大輝が電車に乗り込んでくる。

「いやあ、マキちゃん・・・なんか、今日は俺、朝からドキドキしちゃったよー。マキちゃんからクリスマス・プレゼントを貰えると思ったら」

と、明るい青山大輝は、彼の方からプレゼントの話を振ってくれた。

「あ、あのう・・・これ」

と、細身の箱を出すマキ。

「ぶ、無難かとは、思ったんですが・・・レジメンタルタイを・・・薄いグリーンと紺の・・・」

と、マキは恥ずかしさで真っ赤になりながら、大輝に箱を渡す。

「ほう、タイか・・・よし、これは会社に置いておこう。会社に着いたら、これに切り替える。これなら、かみさんにも、気取られないな」

と、大輝は頭の回転の速いところを見せる。


「大人の恋」の大原則。それは会社内だけでの恋、ということだ。

会社の中だけの、秘密の恋。大輝はマキの「大人の恋」を受け入れる決意をした、ということだった。


「マキちゃんに会う時は、出来るだけ、このタイをすることにするよ。その方がマキちゃんも、うれしいだろ?な」

と、笑う大輝は、よくわかっている、大人の男だった。

「はい。うれしいです」

と、マキは恥ずかしさとうれしさで真っ赤になりながら、大輝の横で照れていた。


その隣の隣で、しれっと笑顔になっているアミだった。


クリスマスイブ当日の土曜日、午前11時。エイイチは東堂賢一の家にいた。

「まずは、乾杯と行こう・・・ま、男同士、昼間から酒!と洒落込もうじゃないか」

と、東堂賢一は、自ら用意した酒のツマミを食べながら、昼間からシーバス・リーガルを飲んでいる。

「伯父さんに声をかけてもらって助かりました・・・今日はイブでしょ・・・いつものように、夕方からパーティーなんですよね」

と、東堂エイイチは、ごく普通に話している。

「ああ。もっとも愛美が帰ってこないと、料理やその他の用意がな・・・さすがのわたしも、あれほど豪華な料理は作れんのでな」

と、東堂賢一は、割りと困っていた。

「でも、大丈夫でしょう。愛美伯母さんは、責任感の強いひとだから、準備の為に早めに帰ってきますよ」

と、エイイチは、愛美の性格を熟知していた。

「この間、僕が電話した時も、イブの夜の相手になるような女性はいないのか、としきりに聞かれて・・・それでがんばってみたんですけどね・・・」

と、エイイチは、合コンパーティーに出席したことと、美田園美奈との出来事を東堂賢一にすべて話した。

「そうだったのか・・・それで、エイイチは今日はなんか、沈んだ雰囲気だったんだな・・・」

と、割りと涙もろい東堂賢一は、それだけで、うるうるしてしまう。

「わかった。エイイチ、ここは、男だったら我慢時だ。それに今日はパーティーだ。女性もいるから、ひとりきりじゃないぞ、おまえは」

と、東堂賢一は、なんとか、エイイチを慰めようと言葉を出している。

「ええ。まあ・・・こういうの慣れてますし・・・男は、失敗したり我慢するほど、強くなるって言いますし」

と、エイイチは、さわやかな笑顔で静かに笑う。

「うん。うん。よくわかるぞ、その気持ち・・・男には黙って我慢しなけりゃいけないことなんて、それこそ山ほどあるものなー」

と、東堂賢一は、泣きそうになりながら、エイイチの肩を叩いていた。


東堂賢一は、エイイチに、若い頃、恋に苦労していた頃の自分を見ていた。


クリスマスイブ当日の土曜日、午前12時。愛美はアイリのマンションで、アイリと共に昼食をとっていた。

「このポモドーロ美味しいわ・・・アイリも腕上げたわね」

と、愛美は言葉にするが・・・どことなく、うわの空の愛美だった。

「ねえ・・・ママ、パパのことが気になっているんでしょ!」

と、アイリがツッコむと、ドキリとする愛美である。

「今晩のパーティーの料理の準備とか、いろいろ気になっているんでしょー」

と、アイリが言うと、苦笑する愛美である。

「もう、許してあげたら・・・どっちにしろ、今晩のパーティーに出るんなら、そろそろ帰って準備しないと・・・」

と、アイリは、わかりやすい助け舟。

「そうね・・・いつまでも、意地はってないで、帰りましょうか・・・17歳の告白ショーが見れなくて残念だけど」

と、愛美は、もうそのつもりである。

「だったら・・・お買い物して帰りましょう。それくらいは、許されるわよね」

と、愛美は、その気になると、すぐに立ち上がり、帰りの準備である。

「ママは、その気になると、速いんだから」

と、アイリも苦笑顔。


「じゃ、アイリ。今晩はがんばってね。その17歳の告白ショー」

と、帰り支度のすっかり終わった愛美は玄関でアイリにお別れを言う。

「うん。そのあたりは、アミとマキが来てくれるし、リョウコちゃんも来てくれるから・・・大丈夫よ」

と、笑顔のアイリ。

「そう。リョウコちゃんも来るの・・・じゃ、楽しくやってね」

と、愛美は、笑顔で、アイリのマンションを辞していく。


同じ頃。八津菱電機華厳寮で、何回目かの電話を美緒にしたイズミは、誰も出ない電話に、いらいらしていた。

「とにかく、言葉だけでも、聞きたいが・・・と言って、美緒の部屋に行くわけにもいかないし・・・」

と、イズミは、言葉にしていた。

「3時までだ。午後3時まで、ねばってみて、駄目なら・・・今日はもう、酒飲んで、ふて寝だ」

と、イズミは決めていた。


同じ頃。ガオは、デパートのセレクトショップで、女性物のアイテムを探していた。

「細身で背の高いリサさんに合うアイテムとなると・・・うーん、どんな感じかなあ」

と、ガオはうれしそうに探している。


店内には、クリスマスの音楽が流れ、イブの日を盛り上げている。


「こういう、小物使いは、あまりリサさんに合わないな」

と、ガオはいろいろなアクセサリーを見ながら、リサへのクリスマス・プレゼントを探していた。


買い物客の女性たちも幾分華やかで、働いている女性たちも、なんとなく浮き浮きした表情だった。


「うん。なんか、イブっていいな。女性たちが華やいで見える」

と、暖かい笑顔になるガオ。

「何かお探しですか?」

と、美しい女性店員が声をかけてくれる。

「あのー、クリスマス・プレゼントなんですけど・・・」

と、嬉しそうな表情でガオが言うと、その女性店員は、ポッと赤くなる。

「素敵な笑顔ですね」

と、女性店員は、小さな声で言うと、嬉しそうに笑顔になった。

「いやあ、大人の女性へのクリスマス・プレゼントなんで、どんなものがいいかと思って・・・」

と、ガオが言うと、

「お相手はどんな感じの方で?」

と、女性店員が聞いてくれる。

「細身の身体で、スラリと身長が高くて、普段黒いコートが好きな、そんな感じのスポーティーな女性ですね。性格は強くて」

と、ガオが言うと、

「だったら、こちらなんか、いかがでしょう?」

と、店員が指し示したモノに、

「あ、その手がありましたね」

と、ニヤリとするガオだった。


イブの一日は、華やかに時間が過ぎていった。


つづく

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