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「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

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「しあわせとは何ですか?」(1)

2015年01月19日 | 今の物語

「でもさ、結局、人間は一人ぼっちなのよ。だから、日本人はお互い笑顔になれる相手を探しているの」

「それこそ、死ぬまで永遠に、ね・・・」

と、佐々木アスナ(29)は言葉にしていた。


ここはアスナの行きつけのバー「スターダスト」。細身のイケメンのマスター(32)は若い頃、

中東からヨーロッパを放浪したとかで語学に堪能で、外国人のお客も少なくない、静かなバーだった。


「でも、私達みたいなマイノリティは余計、そういう思いが強いわよね」

「あなたはバイセクシャル、わたしはレズビアンだもの・・・一層孤独感はつのるわ」

と、アスナの恋人、出田ソノコ(34)も、アスナの横で言葉にしている。

「そうお?わたしはしあわせよ。わたしにはあなたと言う、れっきとした恋人がいるんだし」

「あなたはわたしがオトコに抱かれることすら、許してくれている。そういうラッキーな人生はそうそうないんじゃない?」

と、アスナはスティンガーを飲みながら、笑顔で言葉にする。

「アスナはわたしひとりだけで専有していい人間じゃないわ」

「それにあなたを笑顔にしておくことこそ、わたしのしあわせなんだし・・・」

と、ソノコはグレープフルーツサワーを飲みながら言葉にしている。

「だってわたし、ただの冴えないオバサンだもの・・・」

と、ソノコは少し涙をうかべた感じで話している。

「ったく、また、酔ったの?しょうがないわね・・・寂しがり屋でイジケグセのあるソノコは・・・」

「いいわ、今日も抱いてあげる。気絶するくらい気持ちよくしてあげるから、見ていなさい」

「さ、あなたのアパートの部屋まで今日も行くわよ・・・」

と、オトコマエなところのあるアスナは言葉にすると、

「マスター、お勘定!」

と、笑顔で言葉にしながら、元気よく立ち上がっていた・・・。


土曜日、朝、ソノコのアパートで簡単な朝食を摂ると、アスナはソノコのアパートを後にしていた。

保険外交員であるソノコは今日も仕事があるとかでそそくさと家を出る支度をしていたからだ。

「保険のおばちゃんの生活も大変らしいわね・・・」

「ソノコ、がんばっているもの・・・わたしにはちょっと無理な仕事だわ・・・」

と、アスナは思っている。


土曜日の朝の風景・・・犬の散歩をしているおばちゃん達・・・なんとなくしあわせそうだ。

「そうかしら。なんとなく、犬を飼う人たちって・・・特におばちゃんは人生がふしあわせって言ってるように思えるわ」

と、アスナは思っている。

「旦那に恋をして結婚したものの、サラリーマンの旦那はただ真面目なだけで、妻をしあわせな思いにすら出来ない」

「子供を産んでみたものの・・・確かに子供はかわいいけれど、反抗期が過ぎればあとは出て行くだけで」

「決して自分を必要とはしてくれない・・・おばちゃんは、あとに残った人生を楽しむためだけに犬を飼って愛情を与える先を」

「確保しているに過ぎない・・・そんな風に思えるわ・・・」

と、アスナは考えている。

「それって決してしあわせな風景じゃないわ・・・」

と、アスナはひとり考えていた・・・。

「しあわせって・・・必要とされるって事なのかしらね・・・愛する相手から・・・」

と、アスナは遠くを走る電車を見つめながら、ひとり物思いにふけっていた・・・。


その日の午後、アスナはあるオトコのアパートにいた。

二人は全裸でオトコの布団の中にいた。


「アスナさんって、本当にいい顔をしますよね。特にイク時なんか・・・」

と、そのオトコ、玉木コウ(21)は言った。

「だって、しあわせを感じるもの・・・そういう時って」

と、アスナはコウを正面から見つめながら言う。

「でも・・・一体全体、しあわせって何なのかしらね・・・」

と、アスナはため息をつくように言葉にする。

「しあわせですか?・・・それって永遠の課題って気がするな」

と、コウは言葉にする。

「僕はこうやってアスナさんと一緒の布団にいれる事がしあわせですけど・・・」

「でも、アスナさんは僕を恋人としては見てくれていないのは・・・わかっていますよ・・・」

「僕、まだ、若いし・・・」

と、コウは言葉にする。

「アスナさんにすれば、僕はセフレみたいなもんなんでしょう?」

と、コウは言葉にする。

「さあ、どうかしら?」

と、アスナははぐらかしている。

「人間、なんでもかんでも言葉にすればいいってモノじゃないわ」

「言葉にしない方がいいものもある・・・だって人間は感情の生き物なんですもの・・・」

と、アスナは言葉にした。

「あやふやにしておいた方がいい・・・そういう事もあるって事?」

と、コウ。

「そうよ。特に女性は毎日生まれ変わる生き物よ・・・昨日はあんな風に思っていても」

「今日になったら、違っていた・・・なんて事はざらにあるわ・・・」

「女性は自由な生き物だから・・・」

と、アスナ。

「だからこそ、男性は翻弄されるんですけどね・・・」

と、コウ。

「だから、女性は結婚になんて本当は向いていないのかもしれない・・・」

「自分に自信のある女性は自ら、魅力的な男性を捕まえる事が出来るから・・・」

「女性の正体こそ、カマキリかもしれない」

と、アスナ。

「え。それって、交尾のあと、オスを食べてしまうカマキリこそ、女性の本性だって言う事を言ってます?」

と、コウ。

「ええ。だから、交尾までは女性は特定の男性を必要とするけど・・・」

「交尾さえしてしまえば・・・別の男性を必要とするのが、女性の正体なんじゃないかしら・・・」

と、アスナ。

「って事は、僕はアスナさんに食べられてしまうかもしれない、カマキリのオス役・・・って事ですか?」

と、コウ。

「冗談よ。でも、今日のコウくんも十分に美味しかったわ」

と言いながら、裸のまま、少し顔を赤らめるアスナだった。


「ふーん、例の大学生とまだ、つきあっていたんだ・・・アスナの事だから、もうとっくに切れたかと思ってた」

と、その夜、ソノコは自分のアパートの6畳の部屋で、アスナとお酒を飲んでいる。

「そうね。いつもだったら、とっくに捨てている状況だけど」

「なぜかコウは捨てるつもりにならないのよね・・・」

と、アスナ。

「アスナはそれこそ、カマキリそのものだもんね。煩わしくなったら、パッと捨てて、すぐに、新しい獲物を捕まえているもの・・・」

と、ソノコ。

「だって、女性は恋する為に生きているのよ・・・交尾の機会はシビアに増やしていかなきゃ・・・損じゃない?」

と、アスナ。

「うーん、でも、それって若くて美貌のアスナだからこそ、出来る生き方でしょう?」

「でも、それってしあわせって事なのかな?」

と、ソノコ。

「わたしはアスナに抱かれる時、もっともしあわせを感じるけど・・・人間ってそれだけがしあわせって事じゃないと思うわ」

「だって、それって即物的過ぎない?エッチ以上にしあわせって事も感じてたような気がするもの・・・過去のわたし・・・」

と、ソノコ。

「そうね。それは確かにそうかもしれないわね・・・と言うか、そのしあわせを探すのが人間の一生と言うものじゃないのかしら・・・」

と、アスナ。ビールのピッチが速い。

「でも、それなら・・・早くにそのしあわせと言うモノを探しておいた方が・・・人生全体のしあわせを増やしていけるような気がするけどな・・・」

と、ソノコ。焼酎の水割りを飲んでいる。

「でもさ・・・今はわたし、アスナに抱かれればそれでいいわ。それだって随分、しあわせだもの・・・」

「ああ、アスナ・・・キスして・・・そして、激しく抱いて・・・」

と、ソノコはアスナの唇を求めた。

「そうね。即物的ではあるけれど・・・これもまた、しあわせを感じる方法なのよ・・・わたし達マイノリティでも、楽しめるしあわせの・・・」

と、アスナは言いながら、ソノコにキスをすると、自分の服を脱ぎ始めるアスナだった。


(つづく)

6月10日 「昭和の闇」シリーズ 第四回 「冬の闇」

2014年06月10日 | 今の物語


おはようございます。

昨日は久しぶりに朝、雨が降っていなくて、朝トレが楽しめましたが、

まあ、梅雨どっぷりな季節になりましたねー。

晴れていたかと思えば、黒雲が突然湧いて出て・・・カミナリが遠くで鳴っているような、

そんな季節でもあります。

ま、これを抜ければ、夏ですけどねー。


さて、火曜日は「昭和の「闇」シリーズ」ということで、

なんとなく、そこにあった「不思議な空間」をテーマに文章を書いています。

ま、いまだに、あれは何だったのか・・・そんな思いの記憶を掘り起こしている感じですかね。


では、始めていきましょう。「昭和の「闇」」・・・今回は第四回目になりますね・・・。


それは、僕がまだ、小学1年生の冬頃の話です。

まだまだ、わからない事の多い、昭和の「闇」の時代・・・そんな頃の話です。


僕はその頃、両親に自転車を買ってもらい・・・ようやく、自転車を自由に乗り回せるようになっていました。

僕はそれまで、自分の街の中だけで、遊んでいましたけど、自転車が乗り回せるようになって・・・少し別の街にも足を伸ばせるようになっていたんですね。


僕はある時・・・学校で仲のよいクラスメイトのMくんのいる街に遠征しました。

Mは・・・男気のある、ちょっとガキ大将タイプの気のいい奴で・・・僕がわざわざ自転車で遊びに行った事に気を良くして、

「よし、Nが、わざわざ、この遠い街まで来てくれたんだから、俺がいいところに連れてってやる。「クニガイ」さんのところだ。オトコだったら、喜ぶところだ」

と、Mは満面の笑みで言いました。

「クニガイ?」

と、僕は聞き慣れない言葉に???な顔をしましたが、その言葉を聞いた瞬間、横にいた・・・これもクラスメイトであるSが嫌な顔をしたことにも、

僕は、気づいていました。


でも、今考えてみれば、それは一種の不安を表した表情だったのかもしれません・・・。


「クニガイさんのところは、日が暮れてから行くのがいいんだ」

と言って・・・僕らはなんということもなく遊びながら、時間を使い・・・5時を過ぎた頃に、そこに向かいました。


冬の夕方・・・とっぷりと暮れて、もう夜でした。


少し離れた場所にある湿地にどうやら、そのクニガイさんの家があるようでした。

昔はよくあった・・・トタンづくりの平屋の家・・・3人は静かにそこへ近づいていきました。


そして、そこには窓があり・・・部屋の電気が漏れていましたが・・・人が動いている気配がします。

「いいか、N、よーく見とけよ」

と、Mは言うと、その窓をガラッと開けたのです。


その向こうに・・・27,8歳の細身の女性が素っ裸で立っていました。

その目は生気を失い・・・びっくりしたわけでもなく、ただ、とろんと僕らを見ているだけでした。


僕はその時、はじめて、女性のすっばだかを見て・・・胸は、たわわな果物のようで、僕はその時初めて女性の局部に毛が生えていることに気づきました。


まあ、一人っ子だし・・・。


その女性は何も言わず、僕らを見ていました。

そこに意思は感じられなかった。

「な、すげーだろ。これが女の裸だよ・・・」

と、Mは言うと、

「なあ、帰ろうぜ。俺、もういいから・・・」

と、Sが言い・・・3人はその場を離れました。


その時、背中の方から、か細い声で、

「・・・がさないから・・・」

と、ちょっとだけ人の声が聞こえました。


二人はその声に気付かなかったようでした。

僕は気分が悪くなって・・・そこから自宅に帰りました。


Mによると・・・その女性・・・「クニガイ」さんは、いつも意識がとろんとしていて、暗くなると、服を脱いでしまう女性なんだそうでした。

「だから、夜に来れば、百発百中で、女の裸が見れるのさ」

と、Mが自慢気に言ったのを覚えています。


その夜、僕は強烈にうなされました。

「クニガイ」さんが夢に出てきて・・・裸のまま、僕を抱き寄せ、抱きついてくるのです。

僕はその瞬間、全身に悪寒が走り、なんとか、その手を振りほどいて、その場を逃げ出しました。


僕はとても汗をかいて、目を覚まし・・・まだ、2時過ぎだったにもかかわらず、それから一睡もせずに朝を迎えました。


また、夢に「クニガイ」さんが出てくるような気がして・・・すごく、いやだったのです。


僕は朝まで、布団の上に体育座りして、寝ずに過ごしました。途中、強烈な眠気に襲われましたが、僕はなんとか寝ずに済みました。


朝、学校に行くと、MとSは学校を休んでいました。


僕はなんとなく、嫌な気持ちになりましたが・・・いつもと変わらず過ごすことが出来ました。

その日の夜は、特になんということもなく、普通に寝ることが出来て・・・いつしか、嫌な記憶は風化しつつありました。


一週間程経った頃・・・まず、Sが亡くなりました。

そして、数日後、Mも亡くなりました。


先生の説明では、ふたりとも流行り病だと言うことで・・・僕は人生で初めてお葬式に出席しました。


二人のお葬式で、共通していたのは・・・二人の死に顔を見れなかったことでした。

遺族の側が・・・それは一切遠慮するということだったので・・・もしかしたら、死に顔があまり見せられたものではなかったのかもしれません。


その記憶もいつしか風化し・・・今に至るわけです。

その後、「クニガイ」さんがどうなったかも、よくわかっていません。


二人の死と「クニガイ」さんが関係するのかも・・・。


ただ、僕があの時、聞いた「クニガイ」さんの声は・・・僕には「絶対に逃さないから・・・」と聞こえていました。


それだけが・・・確かなことです。


(おしまい)


さてさて、昭和は遠くなりにけり、な毎日ですけど、

梅雨というのは、一種のネガティブなんですね。

でも、これを通り抜ければ、僕の好きな夏が来る・・・。


暑いけど、かき氷の美味しい夏が来る。

日焼けした、少年の夏が・・・。


ま、それを楽しみに、生きていきましょう!


ではでは。

ミクシーの記事もよろしくです!

6月3日 「昭和の闇」シリーズ 第三回 「神かくし」

2014年06月03日 | 今の物語


おはようございます。

そろそろ梅雨入りも噂される、この季節。

なんとなく、ボサノヴァを聞きたくなる時期ですね。

アントニオ・カルロス・ジョビンを初めとして、小野リサさんなんかの楽曲も、気付くと、聞いていたりしますね。

なんとなく、さわやかな時間を過ごしたくなる時期・・・紫陽花の季節は、そんな時間かもしれませんね。

で、毎週、火曜日は「昭和の闇」シリーズの朝となります。はい。


それは僕が小学2年生の秋の頃でした。


その頃、僕の家の周りは、まだ、田んぼや畑を住宅地に造成し始めた時代で・・・僕の家の区画の前には住宅地造成用に土がひかれたままの、

造成途中の広場がありました。その頃、僕はまだ身体が小さかったから、かなり広い広場に感じていましたが、

まあ、普通の25メートルプールより、少し広いくらいの、そんな広場だったかもしれません。


その広場には、放課後、街の子供たちが自然と集まってきて、いろいろな事をして遊んでいました。

当時は、幼稚園生くらいから、小学6年生の子供まで、一緒になって遊んでいましたから、自然、幼い子は守る意識が芽生え、

一番上の子がいじめなんかがないように見張る・・・そういう子供のコミュニティが自然と出来上がっていました。


その頃は、そういう年代の男女が合わせて、14,5名くらいは僕の街には、いたでしょうか。皆顔見知りで、その日のメンバー次第で、いろいろ遊びも変わりました。

野球をやることもあれば、「缶けり」をやることもあるし、「だるまさん転んだ」もやれば、「ナス栗かぼちゃ」という遊びをやることもありました。


「ナス栗かぼちゃ」は・・・地面に田んぼの「田」という字を書くことから始まります。


子供達はこの「田」の中から出ないようにして規定の周回をこなせば、勝てるわけですが、それを邪魔する鬼が「田」の中の「+」の字のところを自由に行き来して、

その子供たちにタッチすれば、そのタッチされた子供はアウトになり、外に出て様子を見守るカタチになるという、そういう鬼ごっこでした。


その時の参加メンバーに小学校の低学年や幼稚園生が多ければ、5周で終了になったり、高学年が多ければ10周とか12周になったりして、

そうやって、難易度を調整して、皆で楽しめる鬼ごっこにしていましたねー。


その日、僕は学校から帰ってくると、いつものようにその広場に遊びに出ました。


いつもだったら、とうに広場に来ている、友人達の姿はひとりもいなくて、

・・・端の方で、小学5年生くらいのお姉さん達がその「ナス栗かぼちゃ」をやっているだけでした・・・。


僕はその時、羨ましそうな顔をしたのかもしれません。


そのお姉さんグループのリーダー役のお姉さんが即座に僕と目を合わせ、

「ねえ、お姉さんたちと、一緒に遊ぼうよ!!!」

的に笑顔で手を振ってくれて・・・僕らは一緒に遊ぶことになったんですね。


僕は天にも昇る気持ちで、そのお姉さん達と合流し、「ナス栗かぼちゃ」を思い切り楽しみました。

お姉さん達もキャアキャアいいながら、思い切り楽しそうに遊んでくれたので、僕も相当嬉しかったのを覚えています。


なにしろ、僕は、一人っ子ですから、実はお姉さんが欲しかったんです。

だからかもしれませんが、どうも年上の女性にかわいがられる癖が小さい頃からあったんですね。


ま、今でも、それは変わりませんけどね・・・(笑)。


僕は相当ハイになって、お姉さんたちと「ナス栗かぼちゃ」に熱中していましたが、楽しい時間は速く過ぎるモノ・・・。


その日の夕焼けはまるで血の色のように真っ赤で・・・カラスがしきりに鳴いていました・・・。

ふと不安を覚えた僕の表情に・・・・リーダー役のお姉さんが気づいてくれて・・・。

「もう、遅くなったから、今日はこれくらいにしましょう。じゃあ、またね・・・」

と言ってくれて、僕らは別れました。


僕は家に帰っても、かなりの時間ボーっとしていたのを覚えています。

「まるで、天女たちに遊んでもらったみたいだ・・・天の羽衣を着た天女が降臨して、一緒になって、遊んでもらったみたいだ・・・」

などと、夢見がちな、いたいけな少年は、そんな事を長く思っていたのを覚えています。

「この世の出来事とはまるで、思えない・・・」

その日、僕は随分長くボーっとしたいたのを覚えています。

「それにしても、友人のKやAはどうしたのだろう・・・あいつら「神かくし」にでもあったのかな。あるいは彼らは「異世界」に紛れ込んでいたりして・・・」

などと、ちょっと笑いながら、思っていたのを僕は鮮明に覚えています。


次の日学校で、クラスメイトのKに会うと、いの一番に僕は昨日の事を聞きました。

「K・・・なんで昨日、広場に来なかったんだよ」

と、僕が言うと、

「は?いや、それは、お前の方だろ。昨日、Aや・・・いつものメンバーと野球やって、すごい盛り上がったんだぜ。お前こそ、何やってたんだよ」

と、Kが言うと、

「そうだよ。おまえ、「神かくし」にでも、遭ったんじゃねって、皆で言ってたんだぜ」

と、近くに来ていたAも狐につままれたような表情で言いました。


(おしまい)


6月・・・ジロ・デ・イタリアも終わり・・・7月の自転車の祭典、ツール・ド・フランスに向けて、

サイクリストとしては、気合の入っていく時期でもあります。

改めて、身体作りを見なおして、日々、生き方を模索する日々でも、ありますね。


さ、今日からまた、新たに生きていこう。

仕事充実させながら、ね!


楽しく生きていきましょう!


ではでは。


僕のミクシー記事もよろしくです!

5月27日 「昭和の闇」シリーズ・・・第二回 「誘い」

2014年05月27日 | 今の物語


おはようございます。

今日は朝から雨・・・ということで、朝トレはお休みです。

まあ、朝の時間をのんびり原稿書きで過ごしましょうかね。

今日は一日雨だそうで・・・こちらも一日、原稿書きで過ごす感じですかね。

さ、挑戦の火曜日・・・そんな感じで、行きますか!


えー、火曜日の朝は、少し不思議な風景の記憶・・・「昭和の闇」シリーズの日になってしまいました。

まあ、どんな感じになるか・・・ちょっとやってみましょう。はい、スタートです。



その時の事を、僕はあまりよく覚えていない・・・。


僕は小学1年生か2年生の低学年の頃だった事だけは覚えている。

その時、僕はなぜか一人で学校を早引きすることになり・・・午後たったひとりで学校を後にしたのだった。


いつもなら、一緒に帰ってくれるたくさんの友人達もいない・・・たったひとりで、僕は街をとぼとぼと歩いていた。


天気は曇天・・・低い雲が今にも雨を降らすが如く・・・街はかなり暗かった。


その時、唐突に60代くらいのお爺さんのシーンが現れる。

少し小太りのそのお爺さんは、あまり上手く歩けないような男性だった。


しかも、左手がなかった・・・多分戦争で無くした・・・そういう人が割りと珍しくなかった・・・「昭和」の時代だった。



そのお爺ちゃんが僕をどこかへ連れて行こうとしていた。

僕はそれに抗えず・・・いや、言葉も出せず、ただただ従うだけだったように思う。


多分、言葉にするのが怖かったからだろうと思う。

蛇に睨まれた蛙のように、ただただ、僕は、そのお爺ちゃんに従うだけだった。


似たような経験をいくつか覚えている。僕は当時、それくらい、かわいい坊やだったのだろう。


知らない街をお爺ちゃんに従い僕は歩いていた。


そこに僕より少し年上の女の子が立っていた。

その女の子はそのお爺ちゃんをなじるような表情で見ると、僕の手を取り、一気に走りだした・・・。

そのお爺ちゃんは烈火の如く怒り、追いかけてくる。


でも、そもそも歩くのが苦手・・・すぐにそのお爺ちゃんは見えなくなった。


僕はその事が嬉しくて、その年上の女の子と一緒に手を繋いで走った。

その女の子は足が速かった。僕はそれについていくのだけで精一杯だった。


どれだけ走ったかわからないけれど、とうとう、夕立が降りだした。

女の子は、僕を原っぱにある小さな小屋へ連れて行った。


その小屋は、3畳くらいの畳の部屋で・・・布団と枕が置いてあった。


彼女は僕のお姉さんのように振る舞い、

「風邪をひくから、服とズボンを脱ぎなさい」

と僕に告げた。


僕がパンツ一枚になると、その女の子もパンツ一枚になった。


すると、その女の子は、

「テレビでやってたの。だから、わたし知ってるの・・・こういう時はお互い抱き合うと風邪も引かないし、暖まるんだって」

と、言って、僕を裸のまま抱きしめた・・・確かに暖かだった。


僕もきつく彼女を抱きしめて・・・二人は長い間、そこに座っていた。

彼女の胸は未発達だったけれど、その兆しはあって・・・ほんの少しだけ膨らんでいた・・・。


僕らは夕立があがるまで、そこでそうしていた・・・なぜか、二人は黙っていた・・・まるで、それが神聖な儀式のように感じられていたから・・・。


それから少しして夕立はあがった。

服も乾いていたから、二人は服を着て立ち上がった。


すると、彼女が、

「これ、今日のお礼」

と言って、僕の左頬にキスをした。


その彼女はとても美しかった・・・もしかして、それが僕の初恋だったかもしれない・・・。


「じゃあ、さよなら」


と言って彼女は走って消えた・・・僕はその背中をいつまでも、追っていた。


・・・どこをどう歩いて帰ってきたのか、記憶にはなかった。


でも、僕は夕飯までに、自宅に戻り、夕食を作る母親の笑顔に出会うことが出来た。


でも・・・いつもと何かが違う・・・そんな違和感を、僕は感じていた・・・。


「もしかして、僕はあの少女と出会った時に、自分のいる世界とは違う「異世界」に迷いん混んだんじゃないのか?」

「ここは同じに見えるけど、実はパラレルワールドのような「異世界」なんじゃないだろうか?」


・・・ふと、そんな思いがよぎった。


その時、確かに母親が僕を見て、ニヤリと笑ったように感じた・・・。


僕は少しドキリとした。



その後、二度とその美しい少女に出会うことはなかった。


・・・もしかしたら、彼女は今でもあの姿のままで・・・少年達を「異世界」へ誘っているのかもしれない。


そんな風に思えて、ならなかった。


しかし、彼女を抱きしめたあの感触は・・・未だに肌が、明確に覚えている。


(おしまい)


さて、今日は雨ということで、のんびり家で仕事をしていきましょう。

にしても、仕事は変わらず・・・せこせこ、やっていく感じですかね。

さ、充実充実・・・気持ちのいい一日にしていきましょう!


ではでは。

5月20日 「昭和の闇」シリーズ 第一回 「闇」。

2014年05月20日 | 今の物語


おはようございます。

昨日ものんびりとした初夏の陽気で、いい感じの一日になりましたね。

最近はいろいろ考えが進むので自分でも楽しいですね。

昨日は、「求道者」は「ネコラブ」され、「修行者」は「イヌラブ」され、「逃げ込み者」は「無視ラブ」され、「俺偉い病」は「蛇蝎ヘイト」されるという、

非常にわかりやすい、日本人の関係性を言葉に出来て・・・ま、今の人生のカタチと周囲との関係性を一意的に言葉に出来たので、

「しあわせになる為のオッカムのかみそり」としては、綺麗にまとめることが出来たかなあと自分でも嬉しく思っていますね。


だって、日本人の生き方は、この4つのタイプしかない・・・ってことですからね。皆さんはどのタイプですか?僕は「求道者」やってまーす!(笑)。


だから、日本人はまず子供として生まれますけど「修行者」として、親から「イヌラブ」されて・・・そこから社会に出て「求道者」になるのが、

日本人としての、しあわせになる道なんですね。


それが社会に出て「逃げ込み者」になっちゃえば、「無視ラブ」されるし、「俺偉い病」になっちゃえば「蛇蝎ヘイト」されちゃう・・・。


すべては社会に出てからの生き方次第・・・そういう話です、これは・・・すっきりまとまったな、日本人のしあわせになるやり方が。


さて・・・だからじゃないんですけど、今週から、週に一回程度・・・ちょっと「軽い恐怖」をテーマにした記事をアップしていこうかと思います。

題して「昭和の闇」シリーズ・・・ま、いつまで続くか・・・ネタが続くのか、かなり心配ですが、まあ、新しい試みとして、やっていきたいと思いますね・・・。


それは、僕がまだ、幼稚園生の頃・・・「昭和」の街は今より暗かったように思う。

街の中にまだまだ、僕の知らない「闇」がたくさんあった・・・「昭和」は、今より確実に未知の世界の多かった・・・そんな時代だった・・・。


僕はその頃、母方の祖父母の家に同居しており・・・母の妹さんも同居して皆で下宿屋をやっていたので、僕はサザエさんで言う、タラちゃんの位置にいた。

おかげで僕は、性格的にも素直な人間になったのだけれど・・・祖父は頑固な職人気質の人間だったようで・・・僕にはやさしいお爺ちゃんだったけど、

祖母は祖父のいいつけを絶対守るひとだったように思う。


それが明治に生まれたひとの夫婦のカタチ・・・それを懐かしく僕は覚えている。


その日・・・夕方頃、僕は祖母と居間でのんびりおしゃべりしていたように思う。

祖父の方針で居間にテレビをおかない家だったので・・・祖父は別の部屋で、テレビで相撲の観戦をしていた。

なんとなく薄暗い夕方・・・古い木造家屋だった祖父母の家はその大きさも相まって・・・僕には少し怖い場所でもあった・・・。


その時、急に背後の障子が開き・・・24、5歳の色白の目のくりっとした、細身の女性が・・・赤い着物姿で、そこに立っていた。

その女性の肌は抜けるように白く・・・実際は青ざめた顔だったのかもしれないが・・・とても白い顔が印象に残った。


その女性は・・・赤い着物姿だったけれど、前をはだけていた・・・ブラジャーをつけていなかったから、割りとボリュームのある二つの胸が僕には見えた。

しかし、少し奇怪だったのは、乳首が真っ赤だったことだ。

今から思えば、乳首に紅をさしていたのだろうけど、幼稚園生の僕からすれば、見たこともない光景で、ギョッとする光景だった。


すると、その女性が祖母を見つめ叫びだした。

「ねえ、おとうちゃんはここにいないの?わたしのおとうちゃん!」

と、甘えるような、少しなじるような雰囲気で、その女性は、祖母に訴え始めた。


祖母はその女性をなだめるような口調で言葉を出すと、

「大丈夫だから・・・さ、行きましょ」

という感じで、その彼女を連れて行った。もちろん、はだけた胸もそっと直して・・・。


「昭和」のあの時代・・・どこの街にも、皆で一緒になって隠している「闇」がそこここにあったような気がする。


そのうちに雨が降り出し、外は真っ暗になった。

僕は怖くなって、お爺ちゃんのいる部屋に行った。

相撲観戦をしているお爺ちゃんにすがりつくと、お爺ちゃんはやさしくしてくれた。


季節は夏だったように思う。


「雨降り・・・お婆ちゃん大丈夫かな?」

と、僕がお爺ちゃんは聞くと、

「江戸っ子だからな。夕立くらい、どうってことないだろう」

と、お爺ちゃんは言ってくれた。


でも、僕はその時、とても怖かった。

その女性の目があるいは、怖かったのかもしれない。


目がその場にいなかった。目がどっかに行っていた。

そんな目を見たのは初めてだったからかもしれない・・・。


その時、かなりの恐怖感が僕を支配していたように思う。


少し時間が経ってから、祖母は帰ってきた。


祖母は祖父に何事か報告し、

「そうか、モロカタさんなら、うまくやってくれるだろう」

と、祖父が言うのが聞こえた。


その時、祖母がなんとなく沈鬱な表情をしていたのを僕は覚えている。

祖父と祖母が話していた内容は大人な内容だったので、まだ、小さい僕には理解出来なかった。

だが・・・祖母はやりきれない・・・と言った表情でその場を去り、すぐに夕飯の支度を始めたことだけは覚えている。


その後・・・僕は祖父と相撲観戦をしていたけど・・・突然響いた、動物の鳴き声とも女性の絶叫ともとれる音を聞いた。


それはかすかではあったけど、確かに僕は聞いたのだ・・・。


その時は、もう夕闇が濃くなっている時間だった。


でも、祖父はその事に気づいていないような表情で、楽しそうに相撲観戦をしていた。

僕はその事について、祖父に尋ねようかどうか迷ったけれど・・・なんとなく、その時の祖父の風情で、

「子供は口を出してはいけない事柄なんだ・・・きっと」

と、納得して、言葉にしなかった。


祖父はその後、とても機嫌がよく、僕の両親と一緒に夕飯を食べている席でしきりに僕を褒めた。

「この子はわしが知らん内に大分成長したぞ」

と、しきりに褒めていた・・・僕は何故褒められるのか、さっぱりわからなかったけれど、その時の何かが・・・僕を成長させたに違いがなかった・・・。


その後、僕は、その女性を二度と見ることはなかった・・・人々はそうして皆で「闇」を隠している・・・この思い出を思い出す度に僕はそう思うのだった。


透けるような白い肌と、くりっとしたかわいい目と、細身の身体に似合わない豊満な胸の、乳首にさした紅と・・・そのイメージを僕は未だに強烈に覚えている・・・。


そこには、確実に「昭和」の「闇」があった・・・。


「乳首にさした紅の意味は何だったのだろう?」


と、今でも、僕は、たまに考えたりしている。


(おしまい)


「昭和」という時代はとっくの昔に終わりましたが、考えてみると、そこにはいろいろな「闇」があったような気がします。

その「闇」があったからこそ、しあわせの大事さを感じられていた・・・そんな気もしますね。

さ、今日もしあわせに生きよう。

そんな風に思いながら、いつもの毎日が始まっていきます。

今日を、充実させましょう!


ではでは。

「月夜野純愛物語のあとがき」(最後まで読んで頂いたみなさんへ)

2013年12月25日 | 今の物語
えー、どうも。「月夜野純愛物語」お楽しみ頂けたでしょうか。


えー、僕はこの「月夜野純愛物語」を今日、クリスマスの午前10時くらいまでかかって微調整を続けてきまして、

改めて、今日アップ分の最後の3回分を読みなおしたところ、完全にミウさんの気持ちになってしまって、

最後、終わった時に大きな幸福感に包まれ・・・やっと報われた感に襲われ、マジ泣きしてしまいました。


僕も今までいろいろなストーリーを作ってきましたが、こんなことは、今回が初めてでした。


それだけ今回の作品には、大きな思い入れがあったし、ミウさん大変でしたから・・・まあ、そんなこともいろいろ重なって最後泣けちゃったんでしょうね。


まあ、この作品は、8月末くらいから構想を始めまして、僕自身、三菱電機時代に、夜、独身寮の窓から、江ノ島の上空に浮かんだ月を見ながら、

「僕の人生この先、どうなっちゃうんだろう」

と、まるで、鈴木サトルのように、本当に悩んでいたので・・・月をラッキーアイテムにした完全女性向けのラブストーリーを書くことにしたんですね。

あとは、これはボルに指摘されたんですが、僕はスガシカオさんの「黄金の月」という楽曲が好きで、

そこからも、インスパイヤされたわけです。はい。

この物語に出てくる鈴木サトルは完全に三菱電機時代の僕がモデルで、当時からデパ地下の店員さん達とはすぐ仲良くなる癖があって、

楽しく生きていました。それが中部国際空港の主任システムエンジニアを担当し、ほぼあそこに描かれたような経緯で、

鬱病になっていく・・・あのあたりは、僕的にはもうドキュメンタリーと言っても過言ではないくらい、生々しく表現させて貰いました。


あそこで、苦しんでいた鈴木サトルは、僕そのものでした。鬱病に苦しんでいた僕・・・まあ、出来るだけ刻名に描くようには、しましたけど、

読者の皆さんには、どう映ったでしょうか。


このラブストーリーのもうひとつのキーワードに「生き地獄」という言葉を設定しました。

作品の中では、あまり、この言葉自身は使わないように気をつけましたが、僕自身「生き地獄」を味わったし、

ミウも「生き地獄」を経験した・・・そういう二人の男女が出会うことで、

新しい可能性を掴んでいく・・・そういう成長物語として、僕はこの物語を書きました。


だから、しあわせになる為の知恵を各所に散りばめてあります。


だから、ある意味、しあわせになるとは?という疑問を持ちながら読んでもらえれば、それこそ、しあわせになる為のマニュアル的にも読めるようにしてあります。


「カンダタを助けようとしたお釈迦様は「俺偉い病」だ」


なんて言葉は僕にしか出せません。まあ、芥川龍之介も冥界で驚いているでしょうけど、文士としては、絶対のライバル同志ですから、いいんです。全否定しても。


まあ、いずれにしても、僕のストーリー制作方法は、僕の心の師、池波正太郎大先生と同じで、

「ある環境をまず設定し、登場人物を動かしてみる・・・すると、そのうち、生き生きと自ら動き出す・・・その様子を描くのみ」

という、なんとも大変な方法をとっているので、物語がどこへ行くかなんて、当初はまったくわかりませんからねー。


まあ、でも、今回はうまく流れに乗ってくれたので・・・というか、あとから「あの概念も入れよう」「それを入れるのなら、この概念も」と、

結構欲張って書いてきたので、思ったより随分とボリューミーな内容になってしまいました。


ですが、僕的には、100%満足出来る仕上がりとなりました。


まあ、予定通りにクリスマスに終わることが出来て・・・作者としては、満足ですねー。


まあ、ミウさんもお疲れ様・・・と言ったところでしょうか。


まあ、ですから、このラブストーリーは、ある意味、「しあわせになるマニュアル」とも使えますから、そんな感じで、女性の方達に使って頂けると幸いです。


えーと、最後にくだらないネタをひとつ、この「月夜野純愛物語」ですが、

「月夜の純愛物語」

と言う意味ともかけてたんですね。すいません、くだらないネタで・・・(笑)。


ここまで、お疲れ様でした。


そして、ここまで、読んで頂いたみなさん、ありがとうございました。


それでは、メリー・クリスマス!素敵な夜をお過ごしください!


ではでは。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(35)(最終回)

2013年12月25日 | 今の物語
「月夜野」では、年末年始もあっという間に終り、時間だけが、光速で過ぎていきました。

「朝日ヘルパー」

の年始の初出勤は、1月4日・・・その日、ミウとヨウコは同僚たちの前に立ち、神妙な顔をしていました。


所長の竹島が皆に向かって話します。

「えー、ということで、二人は目出度く結婚退職ということになりました。今まで、いろいろありがとう。二人は特に美しかったから、喜んでくれたご老人の方々も」

「たくさんいたから・・・二人がいなくなると、寂しがる方々も増えるだろうが・・・ま、結婚ということですから、二人共しあわせになってくださいね」

「わたしからは、以上です。これ、少ないけど、退職金代わりだと思って・・・はい」

と、二人に封筒を渡す竹島所長でした。


「所長さん」「所長さん」


と、ミウとヨウコは少し涙ぐみながら、竹島を見る。

「いいかい。もうこの街には戻ってきてはいけないよ。二人共東京で立派に暮らしていけるんだから・・・しあわせになりなさい。ね」

と、竹島は鷹揚なところを見せて、笑顔で二人に言葉にする。


と、同僚仲間からは、テルコが代表して、ミウとヨウコに言葉を出す。


「最初はどうなるかと思ったけれど、二人は仲良くなったし、素敵な笑顔も増えて・・・今じゃあ、二人共美しい大人の女性だが・・・綺麗になっただが、二人共」


と、テルコは言葉にした。


「「月夜野」さ、卒業だが、おめえら」


とテルコが万感の思いを持って、そんな風に二人に言葉にした。


と、ヨウコがその言葉を受けて、言葉を出します。


「えー。俺がこの街に流れてきたのは、俺を知ってるいろいろな男たちから逃げたかったからです。でも、もうその必要はなくなった」

「俺を愛して、見つめてくれるオトコが出来たから・・・。だから俺はそのオトコの為だけにこれからは生きていく。筋を通しながら。それが俺のこれからの人生です」

「同僚の皆さんにはいつも笑顔を貰って、本当にありがたかったです。こんな俺に笑顔をくれるひとなんて・・・今までの人生の中で、いなかったから・・・」

「だから、すげー、ありがたかったです。これらかは、みなさんがくれた笑顔を糧に、日々をしあわせに生きていこうと思います。皆さん本当にありがとうございました」


と、ヨウコは言葉にすると、神妙な顔で深く深く、お辞儀をしました。

皆は一斉に拍手・・・というより、いつもより断然に綺麗になったヨウコのやわらかい笑顔に、皆、しあわせな表情になっていました。


と、ミウがそのヨウコの後を受けて、言葉を出します。


「皆さん、いろいろありがとうございました。わたしも最初にこの「月夜野」の街に来た時は・・・ほんといろいろなモノから逃げていて、身を隠すためでした」

「いろいろな辛い過去から逃げたかったし、わたしもヨウコと同じで・・・わたしを知っている女性や男性達から逃げたかった・・・」

「言わば、人生をリセットするつもりで、逃げてきたんです。でも・・・人生逃げてばかりではいけないということに気づけて・・・改めて一歩を踏み出してみたら」

「いい出会いがあって・・・紆余曲折があったけど・・・なんとか、今につながりました」

と、言った時、ミウの頬をポロポロと涙がこぼれ落ちました。


ミウは万感の思いになり、言葉になりません。


「姫ちゃんがんばるだが!」「そうだ姫ちゃんがんばれ!」「姫ちゃん!」「姫ちゃん!」

と、いつしか、皆、「姫ちゃん」コールになっていました。


「すいません。いろいろ思い出したら、泣けちゃって・・・」

と、ミウは言葉を出します。


ミウは、少し泣いたことで、少し落ち着いたようです。


「皆さんの暖かさ、絶対忘れません。わたしは今日から生まれ変わって絶対にしあわせになります。わたしはわたしの為に強く生きていく」

「そして、わたしを愛してくれる人の為に強く、強く生きていきたいと思います。わたしが笑顔になれていれば、わたしっを愛してくれる人たちも絶対笑顔になってくれるし」

「わたし、これから、ずっと笑顔で生きていきます。今日は本当にありがとうございました」

と、ミウはやわらかな笑顔でお辞儀をすると、皆、万雷の拍手になった。


ヨウコも涙を流しながら、ミウへ拍手をしていた・・・。

そのヨウコをミウはやわらかい笑顔で・・・また、涙を流しながら見つめ、目で頷く・・・それを見たヨウコも頷く。


二人はたくさんの涙を流しながら、近づき、最期には、お互い抱きしめあっていた。


お互いのつらかった胸の内と今のしあわせを誰よりもわかりあっている二人だった。


二人を祝福する万雷の拍手はいつまでも止まなかった。


「姫ちゃん、ヨウコ・・・二人共おめでとうだが」

と、豊島テルコが二人を抱き寄せる。

「二人共東京に行って、しあわせになるだが・・・」

と、テルコは少し感激気味に言葉にする。

「テルさん、ありがとう」「テルさん、ありがとな」

と、二人は少し感激気味に言葉にした。

「それから・・・俺の娘だが・・・来月帰ってくることになっただが・・・」

と、テルコは少し照れるように話す。

「え、どうしたんですか?娘さん・・・確か、ユキさん・・・」

と、ミウが言葉にする。

「ユキの旦那がボストンで日本蕎麦の美味しさに目覚めて・・・脱サラして、日本蕎麦の修行してたんだと、俺達に黙って・・・」

と、テルコは言葉にする。

「で、「月夜野」のそば粉が一番だって言い出して・・・ここ「月夜野」で日本蕎麦屋を開くんだと・・・ユキに親孝行させたいって、言ってくれたんだと、旦那さんが」

と、テルコは言葉にする。

「よかったじゃないですか・・・お孫さんもいるんだし・・・夢が叶いましたね」「そうだよ、テルさん、よかったじゃん」

と、ミウもヨウコも言葉にする。

「ああ、そうだが・・・爺ちゃんがことさら喜んで、ここんとこ毎日ニコニコして上機嫌だが・・・俺にはそれが一番嬉しいだが」

と、テルコは言葉にする。

「人生でこいつだと思った男に尽くしていると、時にいいこともあるんだが」

と、テルコは言葉にすると、少し照れるように笑った・・・。


ミウとヨウコは帰る準備を終え、静かに「朝日ヘルパー」を立ち去ろうとしていた。


その横を通りすぎる一人の若い女性・・・。

「あのー、すいません・・・」

という言葉が聞こえ、所長の竹島に細身の若い女性が大きな荷物を背負って話しかけている。

少し疲れた感じのする、20代後半の女性の姿がそこにあった。


ミウとヨウコは顔を見合わせると、

「この街も変わらねえな」

と、ヨウコが言葉にした。

「ううん、少し前の私達ね」

と、ミウが言葉にする。

「ま、そういうこった」

と、ヨウコが言葉にし、二人は笑顔で「朝日ヘルパー」を後にした。


その日の午前11時過ぎ・・・綺麗な服を着たヨウコの姿が「月夜野」駅のコンコース内にあった。


そのヨウコをミウが見送りに来たのだ。


ヨウコは少しだけ電車の時間を待ちながら、ミウに言葉にする。

「テルさん・・・あの年で、未だに普通に夫婦生活があるんだと・・・」

と、ヨウコは言う。

「俺、最初信じられなかったんだけど「月夜野」で生活していくうちに・・・最もしあわせな夫婦は、テルさんところだって、確信するようになってよ」

と、ヨウコは言う。

「何歳になっても、テルさんは旦那の笑顔が一番嬉しいことだし、多分旦那もテルさんの笑顔が一番嬉しいことなんだよ・・・そういう夫婦になりてえって、俺今思ってる」

と、ヨウコが言う。

「素敵な夫婦だとは、思わねえか、なあ、ミウ」

と、ヨウコが言葉にする。

「うん。わたしも本当にそう思う・・・わたしもテルさん夫婦みたいになるわ、絶対に・・・」

と、ミウは強く口調で言葉にしていた。


と、その時は、来た・・・。


「ミウ・・・今回はいろいろありがとよ」

と、ヨウコは言葉にした。

「ううん・・・わたしは実質何もしてないもの・・・」

と、ミウ。

「まあ、そりゃ、そうだけどよ・・・サトルとタケルさんに俺が随分感謝してたって伝えてくれよ」

と、ヨウコはミウの目を真面目に見て、そう言う。

「わかったわ。それから・・・メールするね。東京でも会いたいし」

と、ミウは言う。

「ああ、そうだな。東京の暮らしでも、お互いこころのケアを、しあおうぜ。そういう間柄だ、俺達は」

と、ヨウコは言う。

「うん。親友だもん。ヨウコは・・・」

と、ミウが言葉にする。

「親友か・・・ありがたいもんだな、親友ってもんは、よ・・・」

と、ヨウコは言葉にすると、

「じゃ、そろそろ行くぜ、俺・・・東京で住む所、決まったら連絡くれよな」

と、ヨウコは言い・・・、

「じゃ、ありがとな・・・俺、行くわ」

という言葉を残すと素敵なやわらかな笑顔になって、ヨウコは、改めて、ミウにお辞儀をすると、振り返らずに改札の向こうに消えていった。


ミウはいつまでも、ヨウコの消えたあたりを見つめていた。


それから、5年の月日が経っていた。


ミウとサトルは、鎌倉の和風カフェ「深吉野」のランチを食べ終わると店から出てくる。


「月夜野純愛物語」でデビューしたサトルは本がベストセラーとなり、それ以後も順調にキャリアアップしてきてた。

「月夜野純愛物語」は映画化もされ、全国的に大ヒットして、サトルの名声はさらに上がっていった。


ミウはフリーの編集者として、活動し、サトル専属のエディターとして、サトルの本の装丁から何から何までサポートに廻り、アイデァを出し、

サトルを素敵な作家にすることに、全力を注いだ。結果、それはサトルのさらなる飛躍につながっていった。


二人は文字通り二人三脚で、この5年間を歩いてきたのだった。


サトルとミウは湘南の風景に魅せられ、高台の素敵な場所に事務所兼自宅を作り、そこに移り住んでいた。

だから、平日のランチは、二人で、のんびりと鎌倉辺りで楽しむことが多くなっていた。


「ミウ・・・江ノ電に乗って、江ノ島の西浜へ行こう。あそこは二人にとって、大事な場所だから」

と、鈴木サトルは相変わらず若々しい表情で、ミウに言った。

「うん。いいわよ。二人にとって大事な場所だったら、なおさら、行かなきゃ駄目よね?」

と、ミウもしあわせそうな笑顔だ。


平日、昼下がりの江ノ電は、それほど混むこともなく平和な風景そのものだ。


「綺麗な海・・・ほんと、相模湾って、綺麗ねー。素敵な場所だわー」

と、ミウは海に見入っている。

「僕的にはまた、湘南で自転車が出来て嬉しいよ。カズキさん夫妻とも仲良く出来てるし、最高だね。湘南での生活は」

と、サトルも言葉にする。

「この間、ミカさんとお茶しちゃった・・・カズキさんとミカさん夫妻の自転車屋さん、カフェも併設してておしゃれだし・・・」

と、ミカは言葉にする。

「カズキさんも脱サラして、今や、自転車屋兼自転車チームの監督だからね。夢叶えちゃうんだから、すごいよ」

と、サトルも楽しそうに話す。

「ミカさんはサトルの事なーんでも知ってるのよね」

と、ミウは海を見つめたまま、そんな風に言葉にする。

「ま、古い知り合いだしね。彼女は・・・」

と、サトルも言葉にする。

「死んだ元カノの双子の姉だもんね」

と、ミウは笑顔で言う。

「まあね。でも、そういう経験があったから、僕はミウを受け止められたんだよ」

と、サトルは涼しい顔して言う。

「あの時、ミウが自分の過去を話してくれて・・・その時、特になんということも無くミウの人生を受け止められたのは・・・ミクのおかげさ。僕はそう思っている」

と、サトルは言う。

「だから、そのありがとうを言いにこれから、西浜に行くのさ」

と、サトルは言う。


ミウはなんとなくやわらかい表情で、そんなサトルを見つめていた。


江ノ島は西浜・・・目の前に江ノ島が見える・・・風はそれほど無く・・・ほんの少しの風が気持ちよく感じられる二人だった。


「ミウが僕としゃべり始める、きっかけになった月の写真・・・それを撮った場所がここだったのさ」

と、サトルは江ノ島を見ながら、説明する。


「だからこの場所は僕達にとっても、大切な場所なんだ。記念の場所なんだよ・・・」

と、サトルは言葉にする。

「だから、僕はそれを君に伝えると共に・・・僕を見守っていてくれたてはずの・・・ミクに言いたかったんだ。ここは僕とミクにとっても大雪な場所だったから」

と、サトルは言葉にする。

「ミクはきっと僕の近くを漂って僕を見守ってくれていたと思う。だけど、今、ここではっきりさせるんだ」

と、サトルは笑顔になる。

「ミク!僕はもう大丈夫だ。完全に元の・・・いや、成長した作家、鈴木サトルになれた。それもこれも、君と・・・そして今の僕のパートナーであるミウのおかけだ」

と、サトルは大きな声で誰かに叫ぶようにしゃべっている。

「だから、ミク。もう俺を置いて、光の国へ行ってくれ。僕には今、このミウがいる。これからは、ミウが僕を全力で守ってくれる。だから、もう、大丈夫なんだ!」

と、サトルはミウの肩を抱き、自分の元に引き寄せる。

「さよなら、元気でな、ミク」

と、叫んだサトルは、遠くを見つめ・・・やがて、視線をミウに戻し・・・ミウの唇にキスをする・・・。


甘い時間が流れる・・・湘南の風景がそんな二人を見守っていてくれる・・・。


「ありがとう、サトル・・・」

口吻が終わると、なぜか、ミウはそんな風に言葉にしてしまう。

「気がかりだったんだよ。ちょっとだけね・・・筋は通さなきゃいけないだろ?」

と、サトルは言葉にする。

「なんだか、ヨウコみたいな事言ってるわ。ヨウコの口癖が伝染ったのね」

と、笑うミウ。

「だって、ヨウコさんの東京の店に頻繁に連れて行くから・・・ミウ」

と、サトルは口を尖らせる。

「でも、ヨウコも店の女将として、もう、普通に出来ているものね・・・」

と、ミウはそんな風に口にする。

「あそこも、いつまでもラブラブだもんね。しかし、あの穏やかで美しいヨウコさんが、昔レディースのヘッドやってたとは・・・今じゃ考えられないよなー」

と、サトルは言葉にする。


二人はベンチに座り、海と江ノ島を眺めている。


「・・・と、そろそろのはずなんだけどな・・・遅れてるのかな?」

と、時計を見ながら、そんな風に言葉にするサトルだった。

「え、どうしたの?何か待ってるの?」

と、ミウが不思議そうな表情をする。


・・・と。

「お、来た来た、あれ、あのリムジン、覚えてる、ミウ?5年前の今日・・・つまり、クリスマスイブの夜の出来事を・・・」

と、サトルは笑顔でミウに言う。

「あ・・・あのリムジンって・・・5年前のイブの夜の・・・タケルさんとアイリさんのリムジンじゃない!」

と、ミウは運転席で機嫌良さそうにしている、タケルとアイリの夫婦の姿を見つける。


「よー、ごめんごめん。君のところのお荷物をピックアップするのに、少し手間取っちゃってさ」

と、タケルはリムジンを停車させ、運転席から出てくると、二人に会釈しながら、そんな風に言葉にする。


と、その刹那、アイリによって、開けられたリムジンのドアから・・・二人の幼子と一人の若く美しい女性が出てくる。


「パパ、ママ!!!」「ママー、パパー」


と走ってくるのは、二人の娘、ナツミ(4)二人の息子、ユウキ(3)だった。

そして、その後ろをお手伝いさんの、水島スズネ(22)が走ってくる。


子供たちは両親に抱きつき、その後ろからズズネが走ってきた。

「サトルさん・・・こういう話は前もって言っておいて頂かないと・・・はい・・・」

と、スズネはサトルに、わかりやすいクレームを入れている。

「あー、ごめんごめん。スズネちゃん、フォローするの、すっかり忘れてて」

と、頭を掻くサトル。

「いやあ、サトルがスズネさんに何も言って無かったから・・・彼女慌てて身支度整える必要があったんで、少し時間がかかっちゃったんだよー」

と、タケルはサトルにわかりやすいクレームをいれている。

「鈴木一族はそういうところをしっかりやらないとダメなんだからね。まあ、大事にはならなかったから、よかったけどさ」

と、タケルは笑顔で言う。


「あのー・・・タケルさん、これはどういう・・・」

と、ミウがタケルとサトルを見ながら、どちらともなく尋ねている。

「これから、箱根の温泉に行こうと思ってさ。明日休みだし、タケルさん夫婦とも温泉に行ければ、楽しいだろ。それに、スズネちゃんにも、温泉旅行させてあげたいし」

と、サトルは今後のことについて説明してくれる。

「えーと、箱根の温泉旅館は「月見野」さんを予約しておいたから・・・サトルの依頼通りに、ね」

と、タケルはニヤリと笑う。

「月は二人にとってのラッキーアイテムなんだってな。ねえ、ミウちゃん?」

と、タケルはミウに聞いてくる。

「ええ、そうなんです。まさしくラッキーアイテムなんです。月が・・・」

と、ミウは笑顔で言う。

「月が二人をここまで、導いてくれたんです」

と、笑顔のミウは誇らしげに言った。


「ま、そういうことらしいので・・・また、ラッキーな場所に行きましょか」

と、タケルが言葉にする。

「さ、クリスマスイブの昼間から、温泉旅行としゃれこもうぜ。さ、皆乗って乗って」

と、タケルは皆を促します。

「ま、俺も久しぶりにアイリと温泉旅行に行けるから、すっごく嬉しいんだけどね」

と、ひとりつぶやく鈴木タケルです。

「クリスマスイブはさ、好きな男と過ごしたいのが女性だもんな」

と、鈴木タケルはニヤリとしました。


「それから、サトル・・・」

と、タケルは言葉にする。


サトル以外の皆は、アイリが笑顔で、開けているドアから、リムジンに乗って行く・・・。


「頼まれていたモノはすべてシートの横のボックスに用意しておいたから・・・うまくやれよ。」

と、タケルは言うと、やわらかな笑顔を残し、リムジンの運転席に消えた。

「発車しまーす」

と、運転席のタケルが言うと、タケルは運転席後部の隔壁を閉めてしまった。


サトルはワイワイ騒いでいる子供たちとその相手になっているスズネとミウを見る。


そして、笑顔になると、サトルはシート脇のボックスから花束を取り出す。


「ミウ、いつもありがとう。今日はそういうわけだから、僕らの新しい記念日になった。名づけて・・・「僕らの新たな旅立ちの記念日」だ」


と、サトルは言うと、驚くミウに花束を贈る。


「あ、ありがとう。今日がそんな日になるとは・・・思ってなかったから、わたし、とっても嬉しい・・・サトル」


と、少し目を潤ませるミウだった。


「それと、これ」


と、サトルが出した皿の上には、少し大きめのハート型のクッキーが3つ置かれてあった。


「女性は自分の人生を選びとっていくものだろう。この3つのクッキーの中から、ひとつを選んで・・・それでミウの運命が決まるから」


と、サトルは目の笑ういい笑顔でミウを見ている。


「って、これ、フォーチュン・クッキー?」


と、ミウは驚いて言葉にする。


「さあ、ミウ、自分の運の良さを信じるんだ」


と、サトルは笑顔で言う。


ミウは迷っていたが、ど真ん中に置いてあったハート型のフォーチュン・クッキーを取り、砕いてみる。


・・・と、中から「C」と書かれた小さな紙が出てくる。


「ほう、「C」はこれだ・・・」


と、サトルは言いながら、青いジュエリーボックスをミウへ渡す。


そのボックスには確かに「C」の付箋紙が貼られていた。


ミウは恐る恐る、その青いジュエリーボックスを開ける・・・そこには、大きめのダイヤモンドの指輪が入っていた。


「お互い忙しくて、これまで、結婚式も披露宴も開けなかったじゃないか。だから5月の新緑の季節にやろう。これは贈れていなかった、エンゲージリング!」


と、サトルは笑顔で言った。


そして、サトルはそのダイヤモンドのエンゲージリングをミウの左手の薬指にはめてくれる。


ミウはそのエンゲージリングのはめられた左手を見て、思わず涙した・・・。


今までの、すべての事が報われた瞬間だった。


「き、綺麗だわ。このダイヤモンドのエンゲージリング・・・」


と、涙ながらにミウは言葉にする。


「綺麗なのは、君の方さ・・・今の君の笑顔はダイヤモンドより、美しい」


と、サトルが言うと、ミウは嬉しさのあまり、サトルの頬に思わずキスをしていた。


その様子を見ていた、子供たちも、スズネもわいわい囃してくれた。


サトルもやわらかい笑顔で、ミウを見ていてくれる。


ミウは、今が最高にしあわせだった。


(おしまい)


→もちろん、エンディングはこれでしょう!


→主要登場人物へ

→前回へ

→物語の初回へ

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(34)

2013年12月25日 | 今の物語
12月最後の土曜日の昼間、ミウは久しぶりに生まれ故郷の茨城県古河市に帰ってきていた。


電車を降りると・・・高い位置にある駅から市街地が一望出来た。

「久しぶりだわ・・・この街に来るのも・・・前に一度ここへ戻ってきてから、一年半くらい経つかしら・・・」

と、ミウは言葉にした。


ミウは生まれてから大学に入学するまで、この街で暮らしていた。

「あの頃が懐かしいわね・・・家族皆でしあわせに暮らしてた時代か・・・」

と、ミウは懐かしい街並みの中を歩きながら、いろいろな事を思い出していた。

「小学校も中学校も高校も・・・わたし、学級委員やってたんだっけ・・・「いい子」やってたなあ、あの頃」

と、そんな昔を懐かしく思い出していた。


と、とある家の玄関の前に立つミウだった。


呼び鈴を鳴らし、誰か出てくるのを待つ。

玄関がガラリと開き、顔を出したのは、ミウの幼なじみで、この街の警察官でもある石田源治(32)だった。

源治は巡査長を拝命していて、責任感のある警察官だった。

「おー、ミウ、よく来た、あがれあがれ・・・というか、今日は正式なお客様だったな」

と、頭を掻きながら中へ入れてくれる源治だった。


と、源治はミウを居間に通してくれる。

「源ちゃん、お久しぶり・・・あの時以来ね・・・」

と、ミウはやわらかい表情で言葉にする。

「あれ・・・なんだか、ちょっと会わないうちに、綺麗になったな、ミウ」

と、源治は笑顔で言ってくれる。

「まあね、いい恋してるから・・・」

と、ミウは笑顔になる。

「なるほど・・・皆のマドンナ、学級委員のミウさんも、そんなお年ごろですか」

と、笑う源治。

「今、うちの奴、実家に戻ってるんだ。なんか地域のお祭りの手伝いとかって奴でさ」

と、源治。

源治の奥さんは同じ街の花屋の娘さんで、花を売ってるその娘に源治が一目惚れして二人は結ばれたのだった。

「え、それじゃあ、なんか、迷惑かけたんじゃない?そんな日に来ちゃって・・・」

と、ミウが言うと、

「いいの、いいの。結婚すると一人きりにしてあげるのも、思いやりになるからさ。あいつ、今頃せいせいした顔して、元気にやってるよ」

と、源治は大人な考えを披露する。

「それに俺も今日、あとから、行くから・・・特に問題なしさ・・・」

と、源治は笑顔で話す。

「今、おふくろ、呼んでくるから、お茶飲んで待ってて・・・」

と、源治はミウにお茶を注ぐと居間を出て行った。


小さい頃からミウが何度も来た家・・・リフォームされて、昔の面影は少なかった。


「ミウさん・・・その節はお世話になりました・・・」

と、源治の母、石田友梨恵(51)が現れる。病気回復直後だけに、痩せた感の感じられる身体だった。

「いいえ、その後、お加減はどうですか?病気になられたと聞いた時はびっくりしちゃって」

と、ミウは言葉にする。

「今回も入院中にいろいろお金まで、送ってもらって・・・本当にありがたかったです・・・片親になって、本当はわたしが頑張らなくてはいけない立場だったのに・・・」

と、友梨恵も言葉にする。

「わたしがあの時、受けた恩義にすれば・・・こんなこと、たやすいことですから・・・わたしの方があの時・・・もっともっと深い恩義を受けましたから・・・」

と、ミウは言葉にする。

「ミウの家が火事になってから、1年と5ヶ月か・・・まさに、光陰矢の如しだよな・・・」

と、源治は言葉にしながら、遠い目をしていた・・・。


1年5ヶ月前・・・ミウの実家は焼失していた。

台所から出火した火は瞬く間にミウの実家を焼き、中で寝ていたと思われるミウの母親、姫島ナツコ(55)は2階の寝室で焼死体となって発見された。


ナツコは、就寝中に火事にあったと判断された。


ミウが連絡を受けて、急いでかけつけた時に、実家は・・・建物のほとんどが焼け落ちた・・・火事の現場でしかなかった。


ミウはそこで、現場の整理をしていた源治に会い・・・源治は駆けつけてくるミウを待っていたのだった。

源治はパニックを起こしかけていたミウに冷静になるように説得した。

そして、焼死体となった、ミウの母親には会えないことを説明し、自宅に泊めてあげたのだった。


「あの時、ここで、二人で飲んだのが、運の尽きだったな」

と、源治が言う。

「あの時、つい、幼なじみのミウとひさしぶりに会えて、俺的には少しはしゃいじゃって・・・家の中が資金的に火の車だって白状しちゃったんだよな」

と、源治が言う。

「ううん。よかったわよ。すぐに火災保険が降りるはずだったし・・・あの頃のわたしがそんな多額なお金を持っていても・・・「死に金」だったもの・・・」

と、ミウは言う。

「正直、あの金は本当に助かったよ。警察だから、前借りも出来ないし、オヤジもまさか、リフォーム直後に殉職しちゃうなんて思っていなかったし・・・」

と、源治が言う。

「ミウのお父さんが亡くなる、ちょっと前だったからな・・・オヤジが殉職したの・・・で、ミウのお父さんの話で新たな話が出てきたんだ。それを今日話したかったんだ」

と、源治は言う。


ミウは源治の方を改めて見る。


「ミウ、驚くなよ・・・先日のことだ。5歳くらいの女の子を連れた30代前半くらいの奥さんが交番にやってきて、こう、告げたんだ」

と、源治はミウを正面から見ながら話している。

「一年半前の雨の日、その女の子が不用意に道路に走って出てしまった為に、それを避けようとした自動車が道路脇の壁に激突して炎上したって、その奥さんは言った」

と、源治は言葉にする。

「早速、署で調べた・・・その交通事故こそ、ミウのお父さんの車の事故だった・・・」

と、源治は言葉にする。

「だが・・・お父さんの事故は自損事故でもう片がついている・・・その娘さんだってわざとじゃない・・・なので、その話は一部の人間しか知らない話になっている」

と、源治は言葉にする。

「だから、お父さんの事故・・・あれは自殺じゃなかったんだ・・・」

と、源治は言葉にした。


ミウはあまりのことに、すぐに言葉が出なかった・・・源治をただ見つめるだけだった。


「どうした、ミウ・・・固まっているぞ」

と、源治に言われて、初めて気づけたミウだった。

「ううん・・・嬉しくて、つい・・・そう、お父さんはその少女を守るために・・・自分を犠牲にしたのね・・・そういう暖かいお父さんだった・・・お父さん・・・」

と、ミウは声を殺して泣いた・・・顔を手で覆い・・・静かに泣いた。


「ミウは大人になったら、どんな男のお嫁さんになるんだ?」

と、ミウの父、姫島ショウゾウ(40)は高校2年生のミウにそんな風に聞いた。

「そうね。お父さんみたいに女性にやさしく出来る男性がいいな。周囲の女性が自然と笑顔になっちゃうような」

と、セーラー服姿のミウは答えていた。少し遠いところにある、利根川沿いの土手まで散歩がてら、二人で歩いて行った時のことだ。


あれは確か春の日・・・ポカポカする陽気の中、利根川の流れを見ている時だった。


「あの時もお父さん、笑顔だった。お父さんの周りの女性は皆笑顔になっていた・・・やさしいお父さんだった・・・」

と、ミウは父親の面影を思い出しながら、涙を流していた・・・。


「よかったな、ミウ・・・お父さん、自殺じゃなくて・・・」

と、源治に言われて、コクリと頷くミウだった。


「ミウちゃんのお母さんのナツコさんね・・・ミウちゃんが出て行ってから、寂しそうにしていたのよ・・・」

と、石田友梨恵が言葉にする。

「なんで、ミウちゃんの母親として振る舞えなかったのかって・・・そう言ってたわ。もう、母一人子一人になったのにって・・・」

と、友梨恵は話している。

「でも、わたしは思うの。ナツコさん・・・本当に旦那さんと仲良かったから、旦那さんが向こうから呼んだんじゃないかって・・・」

と、友梨恵は話している。

「だから、ナツコさん・・・ある意味、本望だったんじゃないかって・・・わたしはそう思ってる」

と、友梨恵は話している。

「そうですね・・・確かに、父と母はそれはそれは、愛し合っていたし・・・母は絶対に父には逆らわなかったし・・・」

と、ミウは言葉にする。

「母にとって、父は自慢の旦那さんだったし、愛情は濃かったです。二人共」

と、ミウが言葉にした時・・・家族中が笑顔だった頃の記憶が蘇った。


父と母と弟と自分とで晩御飯を食べる・・・夜ごはんではテレビを消す習慣のあった姫島家では、父がたくさんのおもしろ話をしてくれた。


父と母の出会いのストーリーからデートの様子、父が大好きなカレーを作ってる様子、母がそれを待ってる様子、二人の新婚旅行などなど、

父はそれはそれはたくさんの夫婦のラブストーリーを聞かせてくれ、ミウは毎晩、弟と共に満面の笑顔で、両親のラブ・ストーリーを楽しんだものだった。


「お父さんもお母さんも本当にラブラブで・・・」


それが普通の両親の姿だと、ミウは信じて疑わなかった。それがこの街に住んでいる頃のミウの楽しい思い出だった。


「そうですよね・・・うん、きっとそうに違いない・・・きっと今頃、両親は天国でも仲良くしていますよ。うん、それがわかった。うん、よーくわかりました」

と、ミウは言葉にした。


と、友梨恵はタンスの中から、茶色い紙袋を出してくる。

「これ、1年半前にお借りした200万円・・・それと今回、わたしの病気見舞いで送ってくれた計50万円・・・合計250万円・・・お返ししますわ」

と、友梨恵は言葉にする。

「本当にありがとうございました・・・このお金がどれだけ励みになったか・・・この子が小学生の頃からミウちゃんのお世話になっていたのに、さらにこんなことまで」

と、友梨恵はお辞儀しながら、お金をミウに渡す。

「この子がグレた時も、ミウちゃんに一喝されて・・・それで心機一転、真面目に勉強するようになって、警察官目指せたのも、元はと言えば、ミウちゃんのおかげ」

と、友梨恵は言葉にする。

「本当、何から、何まで、ありがとうございました」

と、友梨恵はもう一回、今度は、深く深くお辞儀をする。

「いや、いいんですよ。幼なじみの心配をするのは、当たり前ですし、お金だって・・・」

と、ミウは言葉にする。

「実家が燃えた時、わたしを匿ってくれて、やさしくしてくれた、あの時の事を思えば・・・こんなお金、どうってことないんです。あの時の私には「死に金」だったし」

と、ミウは言葉にする。

「ってことは、今度はこのお金、「生き金」に出来るってことだな。男出来たんだろ・・・そいつとの生活に、がーんと使ってやるこったな」

と、源治が言葉にする。

「うん。源ちゃんの言うとおりだわ・・・ガーンと使って、「生き金」にするわ。ううん、してみせるわ」

と、ミウは言葉にする。

「ミウは小学生の頃から変わらないよ。相変わらず、オトコマエだ」

と、源治が言うと、ミウは笑顔になった。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(33)

2013年12月25日 | 今の物語
二人はクリスマス当日、ミウのアパートに二人で帰ってきました。

ミウはたまたま、イブの前の日に掃除をしていたので・・・特に差し支えはありませんでした。


二人で、ミウのアパートの炬燵に入ってお茶を飲んでいると・・・じんわりとしあわせを感じるミウなのでした。


「で、ミウへのクリスマス・プレゼントなんだけどさ」


と、サトルは自分のバックをがさごそ探しています。

「ミウって、酔っ払って僕の携帯に何度も電話かけてきたじゃん?」

と、サトルは言います。

「え?わたし、そんなことしてた?」

と、ミウはびっくりします。なにしろ、記憶に無いのですから。

「やっぱり・・・相当飲んでたからな・・・一度や二度じゃないよ・・・けっこうな回数だよ」

と、サトルは言葉にします。

「あちゃー・・・・あまりに寂しくて、つい、電話しちゃったのね・・・全然覚えていないけど・・・それが怖いわ・・」

と、ミウは言葉にします。

「ミウは口癖のように、「わたしは編集者に戻りたい。素敵な原稿をモノにして、高峰編集長に直談判して、フリーの編集者として、復活したい」って言ってたから」

と、サトルは言葉にします。

「・・・で、それが現実の夢になるか、わからないんだけど・・・完全女性向けのクリスマス向けのラブストーリーを僕も書いてみたんだ」

と、サトルはバックから原稿を出してきます。

「この間も、ミウが言ってくれたじゃん。女性向けの恋愛小説家になるなら、ミウが完全にバックアップ出来るって」

と、サトルは言葉にします。

「・・・題して「月夜野純愛物語」・・・それ本にできないかな?とりあえず、プロの目で読んでみてよ。一応、自信はあるんだ。好きなストーリーだし」

と、サトルは笑顔で言います。


ミウは真面目にその原稿を読み進めます。

ミウとサトルがこれまで辿ってきた純愛物語が、そこには綴られていました。


「これって、私たちの恋物語・・・じゃない。実際にあったことが書かれている」

と、ミウはびっくりします。

「実際に遭った事をベースに少し夢物語的に書いてみたんだ。まあ、その原稿がミウの夢を叶えてくれるかどうかわからないけど、努力はしてみた・・・そんなところかな」

と、サトルは笑顔になります。

「ミウの為に書いたんだ。そのラブストーリーは。ミウの為だけに、ね」

と、サトルはミウを見ながら、さわやかに笑います。


少しの時間をかけて、その原稿を読み終えたミウは真面目な顔で、サトルを見ました。それは、決意を持った表情のミウでした。


「ねえ、サトル・・・サトルは、今日この部屋で休んでて・・・わたし東京の清潮社に行ってくる。高峰さんにこの原稿を見せて・・・自分を試したいの」

と、ミウは真面目な表情で言った。

「ああ・・・そういう流れになると思ってたよ。僕としても、その原稿が本になれば、作家に転身出来るからね。僕の夢も叶う・・・僕もクリスマス・プレゼントが欲しい」

と、サトルは真面目な顔でミウに言った。

「うん。わかった・・・サトルの為にも、全力で高峰さんと交渉するわ・・・サトル待ってて」

と、ミウはすぐに黒いスカートスーツに着替え・・・ネクタイは赤をチョイスすると、強い目でサトルを見てから、

「じゃ、行ってくる!」

と、サトルの原稿をバックにいれて、部屋を出て行った。

「さて・・・結果を御覧じろ・・・ってところかな。二人はしあわせになれるのか、それともなれないのか・・・それを楽しみに、今は昼寝でもしておこう」

と、炬燵に入ったまま、寝っ転がるサトルでした。


「負けられない戦いだわ・・・」

と、ミウは駅までの道を急ぎながら、そんな風に思っていた。

「わたしの為にも、サトルの為にも・・・わたしは人生勝ちにいくの・・・この原稿がわたしとサトルの人生を変えてくれる。そのチカラをこの原稿は持っているわ」

と、ミウは強く思っていた。


「わたし、人生を勝ちにいくの・・・」

ミウはそう強く思いながら、駅への道を急ぐのでした・・・。


数時間後、ミウは東京は新宿区にある清潮社の受付に来ていた。

「懐かしい・・・若い頃、ここでがんばっていたものね・・・わたし」

と、建物を見ながら、受付に声をかける。

「わたし、フリーの編集者で以前ここの社員だった姫島ミウと言います。雑誌「Bon Voyage」の編集長高峰ショウイチさんに姫島が原稿を持って来たと伝えてくれませんか」

と、受付の女性に言葉を出した。

「わかりました。雑誌「Bon Voyage」の編集長高峰ショウイチさんですね」

と、受付の女性は笑顔になりながら、内線で相手とやりとりをしている。

「5階の第3会議室まで来てくれとのことです。エレベーターはあちらになります」

と、受付の女性はさわやかに笑い、右手でエレベーターの場所を指し示した。

「ありがとう」

と、ミウは言うと、

「エレベーターの場所くらい、覚えているけどね」

と、苦笑しながら、かつて知ったる自分の職場に向かうミウだった。


清潮社5階の第3会議室に入ったミウは、

「ここで何度も会議をしたわよね・・・喧々諤々・・・いろいろな議論をしたっけ・・・遠い昔の話だけど・・・」

と、ひとりごちていると、ドアが開き、かつての同僚・・・潮田ユカ(32)と小菅ミキ(32)が入ってくる。

「ユカ、ミキ」

と、ミウが懐かしそうに言葉にすると、

「ミウ」「ミウ」

と抱き合う3人だった。

「ミウ・・・少し痩せた?っていうか・・・美しくなったじゃない、ミウ・・・」

と、潮田ユカが驚く。

「さては、ミウ・・・新しい恋人が出来たでしょ?」

と、小菅ミキがにやりとしながら冷静に言葉を出す。

「へへー、内緒」

と、笑顔のミウに、二人共恋人の存在を確信するのだった。

「高峰編集長に原稿を持ってきたんだって?」

と、小菅ミキが聞く。

「うん。これ・・・ミキも読んでみる?編集長最優先ではあるけれど・・・」

と、ミウが言う。

「今、編集長は来客中だから・・・それが終わったら、すぐ来るって言ってたから、15分くらいはかかりそうよ」

と、潮田ユカが言葉にする。

「じゃあ、先に読んで・・・編集者としての感想も聞きたいし」

と、ミウは原稿を一部ずつ、二人に渡す。

「「月夜野純愛物語」か・・・ラブ・ストーリーね」

と、小菅ミキが言葉にする。

「なんとなく、幻想的な、女性が好きそうな題名ね」

と、潮田ユカも言葉にする。

「じゃ、読んでみるわ。なんか題名からしておもしろそう」

と、小菅ミキが言葉にする。

「うん。完全に女性向けね・・・」

と、潮田ユカも言葉にした。


さすがに本を読むことを仕事にしている二人は15分ほどで、すべてを読み終えてしまう。


「これ、事実をベースに、書いてあるでしょ?」

と、まず、小菅ミキが真面目な顔して、ミウに聞く。

「うん。説得力半端ないもんね。創作というより、ドキュメントって感じがする。とても読ませる内容よね」

と、潮田ユカも言葉にした。

「いろいろな経験から出た言葉が書いてある・・・しあわせになる原理みたいなものも書いてあるじゃない」

と、小菅ミキも言葉にする。

「うん。深い内容だわ・・・たくさん経験を経てないと書けない内容・・・創作とは違うものだわ」

と、潮田ユカが言葉にする。

「これ・・・ミウが素敵に輝くようになった理由はこういう経験だったのね?」

と、小菅ミキが、言葉にする。

「まあ、そういうことかな」

と、ミウが笑顔になったところに、雑誌「Bon Voyage」の編集長高峰ショウイチが第3会議室にどたばたと入ってくる。


そこには少し細身になり、すっかり美しい大人の女性になった元の部下で、ショウイチが将来を最も期待していた、若手編集者姫島ミウの大人の女性に成長した姿があった。


「姫島・・・おまえ、すっかり大人の・・・いい女になったな」

と、ショウイチはどこか涙ぐみそうな雰囲気があった。

「ショウさん・・・」

と、ミウも感慨深かった。最も目をかけてくれ・・・最後までミウを守ろうとしてくれた部下思いの元上司・・・ミウは彼に感謝していた。

「っと、この原稿か?姫島?」

と、ショウイチは小菅ミキが差し出した原稿をひったくるように手に取るとパイプ椅子に座り、気迫を見せて読み始めた。


たちまち20分近くの時間が過ぎ・・・最後にため息をひとつついたショウイチは、ミウを正面から見た。その目は怒っているようでもあった。

「何かまずかったかしら?」

とミウは思ったが、もうどうしようもない。


と、次の瞬間、ショウイチは満面の笑みをたたえて、立ち上がると、ミウに握手を求めた。

「姫島、よく帰ってきた。この原稿、人を本気にさせて読ませるいい原稿だ・・・こんな原稿発掘出来たのは、おまえの才能だ」

と、ショウイチは手放しの褒めようだ。

「あの時、この二人が、おまえに自主退職を薦めたろ。あれは俺が二人に頼んでやった芝居だ。俺はお前を千尋の谷に突き落とすつもりで、仕方なくあれをやった」

と、ショウイチはミウの自主退職は、実は自分が仕組んだモノだったことを白状した。

「お前がうちの営業部にいつまでも燻っているのは、もったいなかった。他で編集者として修行させたかったのが、俺の本意だ。そして、おまえはその修業を終えた」

と、ショウイチは目を細める。

「お帰り、姫島・・・おまえと、フリーランスの編集者として、わが編集部は契約を結びたい。編集者として現役復帰だ。姫島よかったな・・・」

と、ショウイチはミウの手と何度も握手して、笑顔になる。

「また、一緒に仕事が出来るね、ミウ」「ほんと、また、一緒に仕事出来るのね、よかったわ、ミウ」

と、潮田ユカと小菅ミキも、満面の笑みを見せる。

「でも、わたしが戻ると・・・この会社、まずいんじゃ?」

と、ミウがショウイチに聞く。

「え、何が、だ?」

と、ショウイチは、わからない。

「葉山クミコさんがまた・・・会社に圧力をかけるんじゃ、ありません?」

と、ミウは恐る恐るショウイチに聞いてみる。

「お前、知らなかったのか?エジプトでの、あの事故・・・葉山クミコも池澤ユウマも、もうこの世にはおらんよ」

と、ショウイチは言った。

「へ?」

と、ミウは一瞬固まる。

「あの二人、亡くなったんですか?」

と、ミウの中には、いろいろな感慨が駆け巡った。

しかし、一瞬でミウはこころの態勢を立て直す。

「ま、でも、そういうことなら・・・わたし、一時期、ひどい生活してたから・・・新聞も読んでなかった時期があったし・・・」

と、ミウは言葉にした。

「半年くらい前だよ。エジプト旅行中の池澤夫妻は地元のトラックに後ろから追突され・・・完全にぺしゃんこで、死を意識する時間もなかっただろうとのことだ」

と、ショウイチが説明した。

「そうですか・・・痛みも感じず、瞬間的に天国へ行ったんですか。それなら、彼も・・・」

と、ミウは言葉にする。

「ということだから・・・年明けから正式に来てくれ・・・編集の方、また、頼むからな」

と、ショウゾウは笑顔で言い、もう一度、

「お帰り、姫島」

と言いながら、ミウを抱きしめた。


ミウは少しこそばゆかったが、顔は満面の笑みだった。

潮田ユカと小菅ミキも笑顔でその様子を見守っていた。


クリスマスの夕方5時過ぎになって、ミウは自宅アパートに到着した。

「サトルー、帰ってきたわよー」

と、ミウは自分の部屋の戸を明ける。

「おー、ミウ、お帰り・・・その笑顔・・・どうやらうまくいったみたいだね」

と、熱心に本を読んでいたサトルは顔をあげて笑顔になる。

「サトルの原稿、えらく激賞されちゃって・・・まあ、一部手直しの必要があるけど、全体的には問題ないって。サトル、作家デビュー出来るわよ。よかったわねー」

と、ミウはサトルに抱きついて、そういう言葉にする。

「そうか・・・そうか・・・夢が叶ったのか・・・僕の夢が・・・」

と、サトルも感慨深げ。

「すべてはミウのおかげだよ・・・あの時、ミウが僕のブログにコメントしてくれて・・・それが夢の実現のきっかけにつながったんだ」

と、サトルは言葉にする。

「ううん・・・わたしは、サトルの肩甲骨のカタチに惹かれて・・・それがわたしをあの地獄から救い出す結果になってくれたの」

と、ミウは言葉にする。

「すべてはサトル・・・あなたが、月の世界の王子様になってくれたから・・・月の世界の王子様・・・」

と、ミウは言うと、サトルの唇にくちづけした。


サトルはそんなミウを抱きしめて・・・さらに長い時間キッスをした。


窓の外に見える、「月夜野」の月が、そんな二人をやさしく照らしていた。


「・・・と、お腹すいたよ、ミウ。僕、昼も抜き出し・・・」

と、サトルのお腹がキスの途中で鳴り・・・サトルはミウに甘えた。

「あ、ごめん・・・いろいろ買ってきたから、夜ご飯すぐ作るね・・・」

と、ミウは立ち上がり、キッチンに立つ。


真っ赤なかわいいエプロンをしたミウはキッチンで手早く食事を作っている。

「とりあえず、これでビールでも飲んでいて・・・」

と、瓶ビールとガラスのコップ、キムチの乗った冷奴を出すミウ。

「ほう。男の好きな酒の肴を知ってるね、ミウは・・・」

と、サトルは喜ぶ。

「はい、最初くらいお酌するわ」

と、サトルのビールを甲斐甲斐しく注ぐミウ。

「ありがとう」

と言うと、ビールを飲むサトル。

「美味い・・・空きっ腹に冷たいビールはめちゃくちゃ美味い!」

と、サトルは、はしゃぐ。


ミウはひとりでキッチンに立ち、夕飯を用意している。今日は手軽に出来るちゃんこ鍋だ。

と、一生懸命用意しているミウの後ろからサトルがミウを抱きしめる。

「サトル・・・」

と、笑うミウ。

「暖かいな、ミウ・・・こうしているとしみじみと幸福・・・」

と、言葉にするサトル。

「いっその事、一緒に暮らし始めちゃおうか?それもありじゃね?」

と、笑ったサトルだった。


と、ミウは満面の笑顔で、包丁を置いて、後ろを向くと、サトルの唇にキスをする。

サトルもミウにくちづけをして・・・二人はまた抱きしめ合うのだった。


ミウは最高の笑顔だった。


「月夜野」の月がそんな二人をやさしく照らしていた。


つづく


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「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(32)

2013年12月24日 | 今の物語
「あー、それで、サトルとミウさん用には、俺、リムジン持ってきたからよ」

と、タケルが言ってる所にひとりの女性がやってくる。


色白で、細身でスラリとした肢体のその女性は、やさしい笑顔をミウとサトルに向けながら、挨拶する。


「すいません。タケルがやりたい放題で・・・わたし、タケルの家内の鈴木アイリと言います」


と、やわらかい笑顔のその女性は皆に頭を下げる。

「アイリさんは、タケルさんの恋女房で・・・結婚して何年になるんだっけ?」

と、サトルはタケルに質問する。

「その辺は恥ずかしいから、いいよ。それより、リムジンで・・・そろそろ出かけねーか?」

と、タケルは言葉にする。

「そういうことなら・・・俺達もそろそろ出かけるか?あのバンで二人で・・・」

と、ヨウコが言葉にする。

「ああ・・・そうだな」

と、タカシも言葉にする。

「タケルさん・・・今回の事は本当にありがとうございました。僕の人生・・・やっと明るく出来ます」

と、タカシはタケルにお辞儀する。

「ヨウコこそが、僕の人生を明るくしてくれるんです。僕は、こいつじゃないと、やっぱり、駄目なんです」

と、タカシは涙ぐんだ。


ヨウコもそのタカシの涙を見て・・・涙ぐんだ。


「あんだけ、美味い料理を作れれば・・・あんたの板前としての技量は天下一品だ。それは俺が保証するぜ」

と、鈴木タケルも言葉にした。

「じゃあな・・・しあわせになれよ」

と、タケルが言う。

「ミウ・・・わたしたち絶対にしあわせになるから・・・イブを、サトルと楽しめよ」

と、ヨウコはミウに言った・・・涙ながらに。

「ありがとう、ヨウコ・・・ヨウコもイブを楽しんでね」

と、ミウも言葉にした。


ヨウコとタカシは最後に皆に深いお辞儀をして、去っていった。


「あの二人は絶対にしあわせになれるな・・・さて、サトル、そして、ミウさん、こっちへ、せっかく用意したリムジンに乗って下さい。二人のイブを始めましょう」

と、運転手姿の鈴木タケルはタクシー帽を被り直し・・・二人を駅前に停めてあるリムジンへ誘った。


ヨウコの運転する朝日ヘルパーのバンは「月夜野」町内を走っている。助手席に田中タカシの姿がある。


「とりあえずこのバン、明日まで借りちまおう。あとで所長に電話するから・・・しかし、まさか、タカシがイブの晩に俺を迎えに来るとはなー」

と、ヨウコは嬉しそうに言葉にする。

「タケルさんが店に来てくれたのは3日前だ・・・ま、3日あれば、この街に来る準備くらい軽く出来たからな」

と、タカシは言葉にする。

「それより、これからどこへ行くんだ?俺たち」

と、タカシがヨウコに聞く。

「俺の知り合いのシェフがやってるフランス料理のレストランがあるんだよ。昔、俺がレディースのヘッドだった頃に小競り合いをしてた、言わば敵のヘッドだけどよ」

と、ヨウコは言葉にする。

「ある時、ばったりこの街で出会ってよ・・・俺は仕事で市場に出向いたんだけどよ、奴は買い出しで市場に来ててよ・・・それで久しぶりってことでよ」

と、ヨウコは言葉にする。

「まあ、筋通して生きてる女だからな。まだ、独身だけど、美味い料理食わせてくれるんで、俺、たまに行ってたんだ。いい感じの店だぜ」

と、ヨウコは言葉にする。

「だけど今日はイブだぜ。混んでるだろうに・・・美味しい店なら、なおさら・・・満席なんじゃないか?」

と、タカシは不安そうに言う。

「奴の店には個室もあって・・・そのうち1つは絶対に空室にしてあるんだ。・・・なぜだかわかるか?」

と、ヨウコは笑顔で聞く。

「いや・・・大事なお客様が突然来た時・・・用にか?」

と、そこは客商売の人間であるタカシもわかった。

「そいつミサコって言うおんなだけどよ・・・ミサコが俺用に開けておいてくれてるのよ・・・何かあった時の為にってな・・・」

と、ヨウコは言葉にする。

「さすがレディースのヘッド同士・・・絆は完璧って奴か・・・お互い筋通して生きてきたからこそ・・・だな」

と、タカシは感心する。

「そ。この日本じゃ、しあわせになるなら、筋を通して生きなきゃなんねーのさ」

と、ヨウコは言葉にする。と、ヨウコは人通りの少ない交差点を前に、車を左に寄せ・・・。

「そういや、お前とのキスがまだだったからよ」

と、言うと、ヨウコはタカシと熱いキスをした。ヨウコはしあわせそうな笑顔だった。


ミウとサトルを乗せたリムジンが「月夜野」駅前から走りだす。

運転席と客席の間には敷居が設けられ運転席はミウやサトルからは、見えなかった。


「上毛高原に行って月を二人で見てから・・・ホテルに届けるから・・・その役目を終えたら俺たちは退散するからよ・・・ま、二人で楽しんでくれ」

と、タケルは言った。そして、サトルにだけ聞こえるような小さな声で、

「お前、リムジンの中で、エッチだけはするなよ。汚したらけっこう高いお金取られちゃうからよ」

と、タケルは真顔でサトルに言うと、二人をリムジンに乗せ、自分は妻のアイリと運転席に退散したのだった。


「いい方ね、タケルさん・・・サトルのいとこなんでしょ?」

と、ミウが言葉にする。

「ああ・・・いつも万全の気を使ってくれるやさしいひとだよ・・・あのひとがいたから、僕は八津菱電機に入ったんだけど・・・タケルさんはもう別の仕事してる」

と、サトルが言葉にする。

「へー、どんな仕事?」

と、ミウが興味深そうに聞く。

「よくわからないけど・・・公安警察を動かしちゃうくらいだから・・・高みにいるんだろうなって、思うよ・・・日本社会の中でも・・・」

と、サトルは不思議そうな顔で、そんな風に言葉にする。


「そう言えば、シャンパン飲んでろって、タケルさん言ってたな・・・と、これだ」

と、サトルは備え付けの小型のワイン・カーブから、シャンパンを引っ張りだす。

「へー、桜色のカバだ・・・スペインのスパークリングワインかあ。ピンク色だなんて、ドンペリみたいだね」

と、サトルははしゃぐ。

「でも、女性としては嬉しいわ。ピンク色のシャンパンなんて・・・おしゃれね」

と、ミウも喜ぶ。

「じゃあ、二人の出会いに・・・乾杯」「乾杯」

と、サトルもミウも笑顔いっぱいの表情で、乾杯をする。

「美味しい・・・いいイブの夜になりそうね」

と、ミウは少しはしゃぎ気味。

「そうだね。僕ら、絶対にしあわせになろう」

と、サトルも言葉にした。


リムジンは20分程走り・・・上毛高原の公園の前で停車する。


「サトル様、ミウ様・・・あちらに静かな展望台があります。イブの夜にカップルであの場所から月を見ますと・・・カップルで永遠の愛を誓える・・・んだそうです」

と、タケルはリムジンのドアを開けながら、タクシーの運転手姿で言葉にする。

「今日から、あなた方二人がそういう伝説を創るのです。いいですね。それでは私達はここでお待ちしておりますので、存分に楽しんでおいでになってください」

と、タケルはそんな言葉遣いで、二人を展望公園へと誘う。


「ありがとうタケルさん・・・何から何まで・・・」

と、サトルが言うと、

「ああ。存分にロマンティックな夜を楽しんで来い。俺はこのリムジンの運転席で、アイリと二人、イブの晩の素敵な月を楽しむから・・・」

と、タケルはウインクをする。

「わかりました。少し寒いから・・・でも15分くらいは、かかると思いますから・・・タケルさんもアイリさんと楽しい時間を過ごしてください」

と、サトルもウインクする。

「おまえもだいぶ気が回るようになったな。うちの一族はそうでないとな」

と、笑うタケルだった。


ミウとサトルは、静かに歩き出した。

「月夜野」の美しいほっそりとした三日月が・・・そんな二人を照らしていた。


「綺麗ね・・・ほら、わたしが言った通りでしょ・・・「月夜野」の月は美しい・・・息を飲むようでしょ」

と、ミウが言葉にする。

「うん・・・本当だ・・・素敵な月だねー」

と、サトルも言葉にする。

「サトルとイブの晩に、ふたりきりでこの月を見れるなんて・・・夢のようだわ・・・」

と、ミウは感激して言葉にする。

「僕も同じさ・・・ミウ・・・」

と、サトルはミウを見つめながら言葉にする。

「この月の下だからこそ、言わせて欲しいことがあるんだ。もう、ずっと前に決めていた事なんだけど・・・」

と、サトルはミウを真正面から見つめる。

「ミウ・・・僕のお嫁さんになってください・・・僕にはあなたしかもう見えない・・・女性はミウ・・・君しか見えない・・・だから」

と、サトルはミウの肩をつかむ。

「お金も貯めなくちゃいけないし・・・結婚式がいつあげられるかわからないけれど・・・」

と、サトルは言葉にする。

「ミウ姫・・・僕と結婚してください。そして、僕のかわいいお嫁さんになってください・・・お願いします」

と、サトルは深く頭を下げる・・・。


そして、笑顔で顔をあげると、ミウを真正面から見つめ、手を大きく広げた。


ミウは突然の出来事に驚き・・・口を押さえていた・・・でも、次の瞬間、喜びが胸を一杯にした。


ミウには、サトルがお伽話の王子様そのものに見えたのだ。


「サトル・・・」

と、声を出したミウは、とっさにサトルの唇にキスをしていた・・・。

サトルもミウの唇を吸い・・・二人は強く抱きしめ合った・・・。


抱きしめ合った二人はお伽話の王子様とお姫様そのものになっていた。


その二人の光景を月が静かに見下ろしていた・・・。


「綺麗な月ね・・・」

と、リムジンの運転席の助手席で、アイリがつぶやく。

「この月を君に見せたくてね・・・リムジンの運転席から見る、イブの「月夜野」の月も、また、ロマンティックだろ、アイリ」

と、タケルはつぶやく。

「ありがとう・・・タケルは女性をロマンティックな気分にさせる天才だわ」

と、アイリが笑顔でタケルにささやく。

「女性じゃないよ。僕はアイリの気持ちしか考えていないから。僕にとって、女性はアイリひとりきりだから」

と、タケルがささやくと、アイリは笑顔でタケルにキスをする。

タケルも笑顔で、アイリにキスをして・・・二人共抱きしめあっていた。


リムジンは「月夜野」ビューホテルの玄関に滑りこんでいた。


「じゃ、サトルとミウさん・・・ここディナーも最高だから、部屋はロイヤルスィートを取ってある。もちろん、お金はすべて払ってあるから」

と、鈴木タケルは、リムジンのドアを開け、二人をホテルに誘いながら、そんな言葉にする。

「それから、これはサトルへの餞別。10万円入ってるから、まあ、自由に使ってくれ」

と、鈴木タケルは、サトルへ封筒を渡す。

「ここベッドも最高だからな。うまくやれよ。俺たち夫婦で昨日、ロイヤルスィートに泊まったから、よーくわかってんだ」

と、鈴木タケルは、小声でサトルに話した。

「じゃーなー」

と、クラクションを鳴らしながら、鈴木タケルはリムジンを発車させた。助手席から、アイリも笑顔でサトルとミウに手を振っていた。


リムジンはイブの闇に消えていった。


「さて、ミウ姫、僕らもイブの続きを楽しみましょうか」

と、サトルは言葉にした。

「はい。サトル王子様、喜んで」

と、ミウは笑顔だった。


サトルも負けないくらい素敵な笑顔だった。


二人はシャンパンを楽しみながら、クリスマスディナーを楽しんだ。


「月夜野」ビューホテルの1階の高級フレンチレストラン「belle mois」(フランス語で「美しい月」の意味)でクリスマスディナーを楽しむ二人は笑顔だった。

シャンパンも美味しくて、料理も最高で、二人は最高な気分を味わっていた。


「ごめん、ちょっとワイン飲み過ぎちゃったかな」


と、ミウは中座してトイレに立った。


と、向こうからヨウコが歩いてくる。

「あれ?ミウ・・・このホテルに泊まるんだ?奇遇だな。俺たちもここに泊まることにしたんだ」

と、ヨウコは笑顔で話している。かなりシャンパンを過ごしているようだ。

「ここ美味しいだろ、料理・・・なにしろ、シェフは俺のダチだからな・・・そうか、ミウもここでクリスマスディナーか・・・よし、俺、一言言っておいてやらあ」

と、ヨウコは言うだけ言って、帰っていった。


テーブルに戻ると、すぐにシェフが登場・・・ふくよかでやさしい目をした、それでいて毅然としたところのある、大きな女性だった。

「ヨウコから聞きました。なんでもお客様はヨウコに素敵なクリスマスプレゼントをしてくれた方だとか・・・それを聞いては黙っていられません」

と、シェフは話してくれる。

「メインのお肉を・・・お客様のメインのお肉だけA5ランクの松阪牛に差し替えました。日本でも最高級のお肉をゆっくりとご堪能ください」

と、シェフは静かに言いながら、微笑むと、

「ありがとうございます」「ありがとうございます」

という二人に、

「では、ごゆっくり」

と会釈してから、厨房へ戻っていく。


「え、どういうこと、ミウ?」

と、サトルは不思議そうな顔をする。

「ここのシェフ・・・ヨウコの古い友だちなんだって・・・」

と、ミウは言葉にする。

「さっきヨウコにトイレで会ったの・・・それで、ヨウコ、気を利かせてくれたみたいね」

と、ミウは言葉にする。

「へー・・・にしても、素敵なクリスマスプレゼントだよ・・・僕A5ランクの松阪牛なんて、食べたことないもん」

と、サトルは言う。

「普段の心がけがいいと・・・皆がドンドンしあわせにしてくれるんだねー」

と、サトルは言う。

「ミウの人徳だよ」

と、サトルは言葉にした。


ミウはそれを聞いて笑顔になった。


ミウとサトルは、それから、心ゆくまで、クリスマスディナーを楽しんだ。

シャンパンもたくさん飲んだ・・・。


二人は最高なイブのディナーを心ゆくまで楽しんだ・・・。


二人がロイヤルスィートに戻ると・・・大きな窓から、「月夜野」の美しい月が見えた。


「服を脱ごうか・・・月の見ている前で・・・ミウの美しい身体を月のひかりの下で見てみたい・・・」

と、サトルは、ミウにねだった。

「いいわよ・・・わたしの裸でいいのなら・・・」

と、ミウは答えた。


サトルは照明のスイッチを消し、照明を、月のひかりだけにした。


二人は月明かりの元、美しい身体をさらしあった。


ミウの色白の身体はまるで、大理石を思わるような美しさだった。

「ミロのビーナスみたいだ。ボディラインも胸も皆すべてが美しい」

と、サトルは言葉にしていた。

「毛の感じが素敵だな。ミウのそこは芸術品のように、美しい」

と、サトルは心から言葉にしていた。


サトルの身体も鍛えられたサイクリスト的に美しかった。


「サトルの身体も美しいわ。ボディラインも美しいし、特に脚の筋肉も肩甲骨のカタチも、膝のカタチもパーフェクトだわ」

と、ミウも言葉にしていた。

「それに太くて、大きいわ・・・わたし、それを見ただけで、たくさん、濡れちゃう・・・」

と、ミウは言葉にした。


サトルのモノは大きく力強く屹立していた。

ミウはそれを見て、少しくらくらしていた。


ミウは思わず近寄ると、それを舐めてあげた。

上下に舐めると・・・それは口の中でさらに硬さを増していく。


サトルは何も言わず、気持ちよさそうな顔をしている。


ミウは自分のそこが溢れる程に濡れてくるのを感じていた。


サトルは態勢を入れ替えて、ミウのクリトリスを舐めてあげながら、指でやさしくヴァギナを抜き差ししてあげた。

「ミウのクリも勃起してる。ほら、いじってあげると・・・うわ、すごい濡れてきたよ。溢れてきてる」

と、サトルも言葉にした。

「ミウの勃起したクリ・・・かわいいね」

と、サトルは言葉にしながら、やさしく舐めていく。


ミウも思わず、気持ちのいい表情になっていく。


「ほら、指でヴァギナを抜き差しすると気持ちいいでしょ?ほら、子宮口に届くくらい、激しく攻めるね」

と、サトルは、ミウのヴァギナを激しく攻め立てる。


ミウのヴァギナはたくさん濡れた・・・まるで、滴り落ちる程に濡れた・・・普段あまり経験したことがないくらいミウは興奮していた。


「やっぱり、出会った最初は正常位からだよね?」

と、笑うサトルは、押し倒したカタチのミウを上から覗き込む。

「ミウのヴァギナ、随分と濡れて・・・パックリ開いて来たから・・・もういいかな・・・ミウ、いれるよ」

と、サトルは言葉にすると、大きくなったモノをそこにねじ込んだ。


ぐーっと大きなモノがヴァギナの中に入ってくる、引き攣れるような素敵な感覚にミウは恍惚とした表情を浮かべた。


「大きい・・・そして硬いわ・・・」


と、ミウは自然に言葉にしていた。


やがて、チカラ強い抜き差しが始まると・・・その度に身体を快感が駆け抜けていく。

ミウのヴァギナはグチョグチョに濡れ、抜き差しされる度にどんどん濡れていった。


ミウのヴァギナの快感はどんどん身体中に広がっていった。


「ほら、子宮口にぶつかるくらい動かすよ。奥まで突くから、ミウ思い切り感じて・・・声もあげて」


と、サトルは言い、サトルの動きはさらに激しくなった。

ミウのヴァギナはぐちょぐちょに濡れ、サトルのモノをきつく締め上げていく。


「ミウ、気もちいいよ。このまま、激しくするから、ミウも一緒に行こう」


とサトルは言うと、さらに激しく動いてくれた。

ミウのヴァギナの官能が最高潮に達した時、サトルも同時に最高潮に達し・・・ヴァギナの奥が熱い液体で満たされるのを感じる。


「イク・・・」


と、ミウは言葉にしていた。ミウの足はサトルの腰に絡みつき、サトルのモノをヴァギナの奥深くとらえて離さなかった。


ヴァギナの快感はそれでも、去らなかった。


サトルのモノは収縮せずにさらに硬さを増し・・・さらに激しくヴァギナを抜き差ししたかと思ったら、再度液体を排出した・・・。


その瞬間、ミウは悶絶するほどの快感をヴァギナの奥で感じていた・・・。


大きな官能が身体を貫いていく・・・二人は同時に果てた・・・。


ミウはすぐに立ち上がるとサトルのモノを舐めてあげた。


やさしく舐め上げてあげると、サトルは気持ち良さそうな表情をした・・・。

「サトル・・・若くて逞しいわ・・・」

と、ミウが言うと、

「ミウって、上手いんだね・・・」

と、サトルは笑った。


ミウはその瞬間しあわせを感じ、満面の笑顔になるのでした。


美しい月が、そんな二人をやさしく照らしていました。


つづく


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