Yahooスポーツより
<男子ゴルフ:つるやオープン>◇2日目◇21日◇兵庫・山の原GC山の原C(6778ヤード、パー71)◇賞金総額1億円(優勝2000万円)
ドンが「世界新」だ! 68歳の杉原輝雄(フリー)が5年ぶりにレギュラーツアーで予選通過した。小技がさえて4バーディー、2ボギーの69と、ツアー史上初のエージシュートまでもあと1打。通算4オーバーの53位で、01年静岡オープン以来58試合ぶりに予選を突破した。自身が持つ国内最年長通過記録を更新し、サム・スニードの67歳2カ月の米ツアー記録も上回るギネス級の快挙となった。室田淳(50)が通算6アンダーで首位に立った。
かつてマムシと呼ばれた勝負師の魂が、よみがえった。杉原が迎えた最終9番は489ヤードの最長ミドル。残り212ヤードから3番ウッドで2オンし、全神経を6メートルのパットに注いだ。
ねじ込めば日本ツアー史上初となる年齢と同じ打数のエージシュート。カップとボールの間を2周してラインを読む。カメラマンを見つけ「邪魔やで! 緊張してんねんから」と笑い飛ばした後、運命の1打がカップ左を通り抜けた。それでも顔をしわくちゃにして、60センチのパーパットを沈めた。堂々の69。5年ぶり、58試合ぶりにレギュラーツアーで予選を突破した。
杉原「予選通過? そんなことより、エージシュートにあと1ストロークか。惜しかったなあ。でも、よう頑張った」。
「女子に負けてられへん。盛り上がってくれれば、ええと思ったんや」。スタート前から快挙を目指していた。15番で5メートル、16番では15メートルを放り込み連続バーディー。後半の2番ではグリーン手前からチップイン。5番では隣のホールまでショットを曲げながら、最後は5メートルのパーパットを決めた。プロ生活50年で培った技を出し尽くした。
今季初戦となる今大会開幕前、1週間ほど風邪で寝込んだ。ラウンド数も10回ほどと例年の半分。5年前に「克服」したはずの前立腺がんの数値(PAP)も倍近く上がっていた。月1度の血液検査、ホルモン注射は欠かせない。だが、勝負根性は健在だった。
杉原「トップの座から遠のいてるけど、カムバックしたい未練がある。あきらめ切れない、割り切れない心が、僕のゴルフと人生を支えてくれてる」。
加圧式トレーニングで必死に体力を維持、がんに効くと言われるアガリスクなど2種類の健康飲料を1日に5度以上も飲む。6人の孫がいる「おじいちゃん」の意地がある。
口も達者だ。会見でいきなり「通訳呼んでや」。気力の源は? と聞かれ「お金がないからね」。残り2日は? と聞かれ「もう彼女を帰らせてしまったからなあ」。2日間の平均飛距離218ヤードは出場選手で最下位。だが、162センチの小さな体には、心と技がまだまだ詰まっている。【木村有三】
亡くなった私の親父が大好きなプロゴルファーで、ゴルフ界の「ドン」と呼ばれる杉原輝雄選手がなんと68歳の身ながらもツアーでの予選を通過した。
これは世界最年長記録なんだとか。
とにかく、私の親父は杉原選手が全盛のころは毎週日曜日になると競馬中継のあとはゴルフ中継を見て、そのたびごとに、
「杉原!杉原!」
と「うるさかった」。
ま、彼がシニアの年齢に達したとき私が、
「杉原の爺様、まだやっとるんか?」
というと、
「アホか!杉原は永久現役やぞ!」
「まだあのクソ尾崎(将司)なんかに負けるかい!」
と執拗以上の「ファン」ぶり。
でも杉原選手といえば、今は公式戦ではなくなった関西オープン9回、関西プロ8回の優勝などツアー53勝を誇り、当初は「関西のドン」と言われたが、やがて関東の中村寅吉らが第一線が退くと、
「ゴルフ界のドン」
と称され、今もなお第一線に君臨するスーパープレイヤーだ。
しかし、身長は162センチという小柄さ。とてもプロの選手とは思えないほどの体つきだ。したがって距離は女子プロよりも「飛ばない」選手としても有名。
だが、ショットは実に正確。絶対に「曲がらない」ことで定評があり、杉原のような正確なショットは今のプロ選手で真似できる選手はいないといわれるほど。
さらに接戦に滅茶苦茶強い選手でも有名だった。
いつだったか、ジャンボ尾崎をヒタヒタと追い詰め、最後の18ホールでのこと。
追い詰められたジャンボは顔を引きつらせ、
「またあのオッサン、追い詰めてきたのか?」
とイヤイヤの表情。つまりプレーする前から「負けていた」ということ。
結局そのホールで杉原が逆転で優勝を果たしたが、こんなケースは1回だけではなかった。
よく頑張るね。やはり親父が言ってたけど、
「永久現役選手」なんだね。