昨年のディープインパクトのような抜きん出ているような馬がいない反面、有力馬が多く混戦ムードが予想された今年の皐月賞。
重賞3勝と実績では文句なしの15・アドマイヤムーンが1番人気。重賞初挑戦ながらも4戦全勝でこの皐月賞に挑んできた6・フサイチジャンクが2番人気であったが、ともにこの皐月賞前までは武豊が主戦で、武豊は実績のあるアドマイヤムーンを選択。フサイチジャンクは岩田康誠に乗り替わった。3番人気は昨年の2歳王者、1・フサイチリシャール。以下、4・サクラメガワンダー、16・ジャリスコライト、5・メイショウサムソンの人気順。
3・ナイアガラがまず前に出るが、11・ステキシンスケクンがナイアガラを交わして思い切ってハナを奪い、フサイチリシャールが2番手。メイショウサムソンが5番手ぐらいの位置。その後ろの集団にジャリスコライト、中団の位置に2・ドリームパスポート。ジャンクとムーンは後方から4~5番手の競馬。さらにその後ろにサクラ。
3~4角にかけて逃げいたステキシンスケクンをリシャールが交わして早くも先頭。これをメイショウサムソンが追う形で直線へ。一方、アドマイヤムーンはその3~4角あたりで武豊の手が動き、少々ピンチの様相。
坂の手前でやや一杯になり加減のリシャールを、サムソンが交わして先頭。しかしインを突いてドリームパスポートが伸びてきて、さらに漸く人気どころのムーン、ジャンクが追いすがってくるも、メイショウサムソンが押し切って優勝。石橋守騎手はデビュー22年目で涙のG1初制覇。2着にドリームパスポート。
人気となったフサイチジャンクは3着、アドマイヤムーンは4着、フサイチリシャールは5着となった。
前走のスプリングステークスでは、一旦はドリームパスポートに交わされながらも執念の差し返しを見せてほとんど「奇跡的な」逆転勝利を収めたメイショウサムソン。
その勝負根性に加え、4勝の実績があることから穴人気にはなっていたが、どちらかというと弥生賞出走組のほうが高い評価をされ、さらに「黄金の馬」と形容されていたフサイチジャンクの話題性が強く、地味な印象しか与えていなかった。
今回は、前が思い切って行ってくれたことも幸いした格好だが、逆にそうなった場合にはスプリングステークスで見せたような勝負根性が発揮しやすい馬なのかもしれない。フサイチリシャールが先頭に立ったときに、そのリシャールを目標に競馬を進め、そのまま押し切った。ジョッキーの好判断も光った。
鞍上の石橋守騎手は関西ではすっかりベテランの域に達しているジョッキーだが、これまでG1では90年・エリザベス女王杯でトウショウアイに騎乗して1番人気になった以外はほとんど人気馬に乗って騎乗することがなく、そのエリザベス女王杯でも直線半ばで先頭に立ちながらもキョウエイタップの末脚に屈して2着に終わっていた。その他にG1では、97年のオークスでナナヨーウイングに騎乗して2着がある程度だった。
一方でダート統一グレード制実施前にダートの王者として君臨したライブリマウントの主戦騎手でもあり、そのライブリマウントでダート交流重賞6連勝を果たした他、96年の第一回ドバイワールドカップにそのライブリマウントで騎乗している(6着)。
レースが終わった後、石橋騎手は感涙にむせび、涙をこらえるのがやっとという思いでインタビューを受けていた。馬の勝利も立派だが、今回は「守コール」がファンの口から出るなど騎手への賞賛の声も高かった一戦となった。
また、瀬戸口勉調教師は来年定年を迎え、これが最後の皐月賞チャレンジとなったが、2003年のネオユニヴァース以来2度目の同レース制覇を見事「最後の皐月賞」で射止めた。
メイショウサムソンについては、父・オペラハウスの血統からいっても距離が伸びても十分対応できる馬であり、とりわけ、追い較べになった際にはかなりの勝負根性を発揮するものと思われる。十分、日本ダービーでも期待できよう。
ドリームパスポートも鋭い伸び脚を見せたが、惜しくも届かず2着だった。
きさらぎ賞ではメイショウサムソンを一蹴し、スプリングステークスでも一旦はサムソンに勝ちかけていたが、逆にスプリングステークスでは勝てるレースを落としたという評価がされて人気を落としていた。しかしながら、ここ3戦ほどは常にサムソンと1・2着を争う競馬を行っており、いい意味でのライバル心が宿っているんであろう。
さて人気となったアドマイヤムーン、フサイチジャンクだが、初手からお互い同じようなポジション関係であり、やや意識しすぎたのかもしれない。そしてフサイチリシャールが早めに先頭に立ったことも結果としては誤算が生じたのかもしれない。
とりわけムーンは3~4角でやや手一杯となり、直線は流れ込むのが精一杯といった感じ。今後もちょっと気になるところ。またジャンクは重賞、しかもG1初挑戦となったキャリアの浅さが露呈した感じで力をほとんど出し切れていない印象がした。