ようこのかまど

おいしいからうれしくなるのかな、うれしいからおいしくなるのかな。

「④焼く―パン釜」 ~ぱんれぽNo.14~

2007年03月27日 | ぱんれぽ~高2夏休みの自由研究
パン窯
醗酵パンを焼くには、前にも述べたようにパン窯が必要である。パン窯は、直火でないというのが、ただのかまどとの大きな違いだ。
原点は地床炉と呼ばれるもので、地面に穴を掘って石を敷き、火をたいて石を熱くして、灰をよけてパン生地を置きその上に灰をかぶせて焼いていた。

今日のパン窯は円筒型とドーム型の2種類に分類される。
1メートルもある円筒型の土器を地中に埋め、そこで火をたいて、窯の内側の壁にパン生地を張りつけて焼くため、薄い生地をたくさん焼ける。側面もしくはいちばん上に開口部を作り、そこからパンを出し入れするようにした。この方法がⅣのタンドールで、インドでは今でもこの方法でナンを焼く。こちらの方が燃料が少なくすむ。
それに対して、欧米のパン窯へと発展したのが、石板の上で火をたき、その熱い石の上にパン生地を載せて、鉢をさかさまにした蓋をして焼くという方法である。この様子は、古代都市ウルで発見された紀元前2900~2330年頃のくさび形文字の粘土板にも書かれている。
またエジプト人の王の墓の壁画には円錐形の土器の壺を使って焼いている様子が描かれている。内部をあらかじめ熱しておいた壺に生地を入れ、やはり内側を熱しておいた同形の壺をかぶせ、逆さにしておき、その余熱で焼き上げる。逆さにすれば生地の上部に熱気のこもる空間ができるから、ふくらむ余裕がある。
このときから、人々にはドーム型に近い形にする知恵があったのだ。
ギリシャ人はというと、周辺の国々のパン文化を取り込みながら、いろいろなことを試してきている。
まずは灰焼き、しかしこれでは焦げや生焼けがまじるし、小枝やら葉の燃え残りやら灰がついている。そこで串焼きを思いついたが、これは火加減が悪いとガリガリか、真っ黒焦げになる。網に載せて焼いても、同じようにじか焦げが起こるし、生地の水分や熱を逃してしまうからふっくらとはしない。直火では、口当たりのよいパンは焼けないのだ。そこで、やはりカバーをかぶせることにした。パン生地を足つきの皿に載せ、あのエジプト人の壺にも似た形の鉢をかぶせて焼けば、生地の真下と周囲全面に同時に熱が加わるし、ふくらむ空間の余裕もある。また、水を吸った素焼きは熱せられると蒸気を出すから、鉢の内部はパン焼きにとても良い環境になった。
ローマでは、Ⅵの釣り鐘型のカバーをかけて焼いていた。内部と床を熱しておき、灰を脇へどかしてカバーを生地にかぶせ、さらにその上と周囲に燃料を置く。今でもクロアチアのポガチャなどを焼くときに使われている。

後に、円形の耐火レンガの床に、半球形の天井をかぶせた格好が一般的になった。Ⅶにあたる。外壁は石、粘土、灰でかためられた。焚き口はパンの出し入れ口と兼用で、窯床の高さにある。内部を熱してからパン生地を水平な窯床に並べ、密封して余熱で焼き上げる。古代からヨーロッパ全域に普及していったが、保温力のある堅固な石窯として完成したのローマ時代だ。パンの需要が増えて、紀元200年ごろに世界初のパン屋が誕生しているローマ市内にある多くパン屋には大規模な設備が必要になった。1世紀のポンペイ遺跡のパン屋のパン窯では直径20cmのパンが一度に130個も焼けるそうだ。構造、使用法とも現代の薪用パン窯と変わりがない。もちろん、今は電気オーブンが主流ではあるが。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。