花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

羅勒(らろく)

2019-08-12 | 漢方の世界


「羅勒(らろく)」は、バジル、学名Ocimum basilicum L.の全草から得られる生薬である。バジルはメボウキ属、しそ科の一年草で、夏季に小さな白い花の穂状花序をつけ黒緑色に結実する。「羅勒」の薬性は、辛、温、帰経は肺経、脾経、胃経である。効能は疏風行気、化湿和中、散瘀止痛、解毒消腫(風邪による緒証を緩和し、気を巡らせ湿滞を除き脾胃の機能を調える。気血を巡らせ瘀血気滞の疼痛を改善する。解毒作用を有し腫脹を解消する。)である。気虚血燥(血燥は血虚により滋潤作用が失われて生じる諸症状の総称)の証には慎重な使用が求められる。

種子は水分を吸収すると膨張しゼリー状の物質で覆われる。。江戸後期の本草学者、岩崎灌園(いわさきかんえん)が著した『本草図譜』第四十七菜部葷菜類、「蘭香菜(らんかうさい)」、「羅艻(らろく)」の章に、車前子に似た黒色種子を眼中に入れると暫くして形成された白膜が出てくるが故に「めほ(本)うき」(目箒)と言うと記載されている。かつてはこの性質を用いて結膜や角膜異物の摘除が試みられたようであるが、現代では勿論、眼科受診による治療が必定である。

羅勒:味苦、辛、温、平、澁、無毒。消停水、散毒気。不可久食、澁栄衛諸気。
(千金方・巻二十六 食治・菜蔬第三)