花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

白露の養生

2015-09-08 | 二十四節気の養生


白露(9月8日)は、二十四節気の第15番目の節気である。夜間や明け方の気温低下がさらに加速する時節であり、地面に接した空気の温度が露点以下に低下すると大気中の水蒸気が水滴となり、草木の葉の上などに白く光る朝露が観察されるようになるために「白露」と呼ぶ。ようやく炎熱の太陽にさらされた夏が去り、まさに秋高気爽、秋空が高く澄み渡りさわやかな、秋の気候の到来が実感できる節気となる。
 四季の気候の特徴は、春温、夏熱、秋凉、冬寒であり、人体の陽気の盛衰もこの規律に従っている。秋が深まるとともに、中高年者や虚弱な人では全身や四肢末端の冷え、排尿回数の増加、腰痛、倦怠感や月経困難症などの症状が生じる。さらに一日の内で陽気が最も衰える五更の時候(午前3-5時頃)に水様性の下痢、腹痛が出現することがあり、これを五更瀉と称する。これらは陽虚(脾腎陽虚)の症状で、体の陽気の根本である腎陽が衰えて全身に陽気を散布して温める機能が失われるためである。五更瀉は脾の陽気が損なわれて運化失調(飲食物の消化・吸収、および水液の吸収・輸送の機能不全)を来すために発生する。秋の涼気に対しては、腰部、腹部や下肢などの下半身を冷やさないように留意することが大切である。腰部(下焦)には生命活動、陰陽の根本である腎が存在する。腹部、とくに臍部には皮下脂肪、筋肉組織がなく外邪侵入の門戸となりやすい。下半身の保温は、寒涼の邪の体内への侵襲から気血の運行や臓腑機能を守る養生の手立てとなる。

秋萩の 枝もとををに 置く露の 消なば消ぬとも 色に出でめやも    万葉集 巻第八 大伴宿禰像見