そのままVon

おもに31文字の語呂合わせ日記

俳句の解釈 13

2017年10月07日 | 俳句

2017/10/07

「130.
撃たれたる鹿青年の顔をもつ
(小室善弘
/言われれば鹿の表情青年の目はぱっちりと体締まれり
/人間の生と重ねていると思う大きなる目で睨むが怖い)」

「131.
打水の流るる先の生きてをり
(上野泰
/打ち水の流れの先が行く先ををちこち変えて意志を持つごと
/雲なども時に生きるものに見え想像力を喚起させらる)」

「132.
うつくしきあぎととあへり能登時雨
(飴山實
/あぎととは顎のことだというけれど意味わからない能登時雨かな
/道行きに美人と能登を旅ゆきてぬれる時雨も乙なものかな)」

「133.
美しき距離白鷺が蝶に見ゆ
(山口誓子
/白鷺が蝶に見ゆるはどんなとき美しき距離あると言うけど
/白鷺が遠景の中飛び立って羽直角になれば見えるか)」

「134.
美しき声の揃ひて夏座敷
(伊藤敬子
/夏座敷酒飲みたればだみ声も時に入るもそれはないかな
/京女まわりで鈴がなるように話せば粋な夏座敷にと)」

「135.
美しき緑走れり夏料理
(星野立子
/夏料理緑がはしるは本当かそんな料理をもってこんかい
/ベタなりし『美しき』とはいかがかな飾り緑につい口にせし)」

「136.
空蝉のいづれも力抜かずゐる
(阿部みどり女
/幾匹の蝉のぼりきて殻脱げるいづれも力抜かず踏ん張り
/空蝉は殻ではあるが生きていて時制も過去にしてはおらずて)」

「137.
空蝉のなほ苦しみを負ふかたち
(鷹羽狩行
/前足を引っかけ木肌にとりつくも力に抗い苦しそうなり
/念力の効薄れれば空蝉も木から落ちては一生終える)」

「138.
空蝉の涙の如き眼かな
(上野泰
/空蝉の眼が涙に見えるとふ指摘されればごもっともかな
/蝉殻に収まれるとき目の玉は無視ができない大事な臓器)」

「139.
空蝉を机上に置けば飼ふごとし
(山田弘子
/死してなお動けるやうな力ありあたかも飼えるようだといえり
/それぞれの足に動きがありまして観察すれば動くようだと)」


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