では、前編の続き。
【ナツミ】
原作初登場 3時間目「マケナシ」
TVアニメ初登場 3時間目「ノリノリ」(画像は「アメフリ」から。理由は後述)
TVアニメを見終わってから原作を読むと、このナツミの扱いが一番もったいないと感じる。
リョータとの勝負(「マケナシ」、「ウトウト」)、無防備と言うか無頓着なところ(「キセカエ」、「セクラベ」)、天然で軽い嘘を信じ込んでしまうところ(「アマアマ」)と色々使える要素が出ているのに、それらのほとんどが導入や中途のネタのみで終わってしまっていて、話のメインになっていかない。だから原作でのナツミは脇を固めるだけのキャラで終わっている。
これは言い方を変えれば、ナツミは最もポテンシャルを引き出しきれていないキャラクターだということができる。ということはそれを引き出すようなオリジナルさえ用意してやればナツミのキャラはどんどん立っていくということになる。
おそらくスタッフはその事を完全に理解していたのだろう。
リョータとの言い争いに端を発し、無防備属性をオチに据えた「ウエシタ」
「マケナシ」の続編の形をとり、リョータとの対決に焦点を当てた「カチマケ」
ナツミの天然さを話のメインに置いた「ギュウニュウ」
これらのナツミをメインに据えたオリジナルエピソードはナツミが持っていたポテンシャルを100%、いや120%以上引き出して見せた。そして脇を固めるキャラクターとしても八面六臂の活躍を見せた。
PV的なエピソードである、「ヒトハ」まで用意してもらえる優遇振りである。
ただ、TVアニメでの登場のさせかたは少し首をひねる。
「ノリノリ」ではゴミ箱を運んでいただけなので、実質的な初登場は次の「アメフリ」からなのだが、この「アメフリ」はやはり初登場に使うべきエピソードではなかった。やはり「マケナシ」を初登場エピソードにして、ナツミのキャラを示してから「アメフリ」をやったほうが、「アメフリ」のメインともいえる
このシーンがもっと印象的なものとなったのではあるまいか。(しかも原作の最後のコマにあった「もてあそばれました」という言葉がカットされている為に、どこまでが冗談だか分かりにくくなっている)
同じボーイッシュキャラであっても自分を女の子だと意識しているか、完全に男であろうとしているのかの差が「ボク」と「オレ」の差なのかな、とナツミとトウマを比較して思う。
【カズミ】
原作初登場 1時間目「グラグラ」
TVアニメ初登場 同上
原作と登場のさせ方は変わらないが、最も面白い進化をしたのがこのカズミだろう。メインではないんだけどおいしい所を持っていく、そんな感じの進化を遂げた。それが最初に出てきたのが「ウエシタ」だ。
「ウエシタ」のメインは前述の通りナツミとリョータの言い争いだが、状況を動かす役割をことごとくカズミが担っている。
その他にも、
雷雨の中ヘソ出しで遊んでいるナツミを心配して飛び出し、派手に転ぶ(「ユウダチ」)
エピソードのオチ担当(「アタタメテ」)
脚本およびナレーション担当の自称”不思議な妖精”(「メルヘンII」)
雑学で論争を解決に導こうとする(「コンコン」)などなどボケ、ツッコミ、オチと大活躍だ。これだけおいしい所を持っていくなら、メインヒロインではなくても最初に登場させるのは納得だ。ラブコメ的な側面からも援護射撃担当として重要な役割を担っている。(「ナガレボシ」「カンサツニッキ」「ウトウト」「メルヘンII」「ユビキリ」)
ふぁんぶっくの対談の中でチカ役の下田麻美さんが「カズミもリョータのことが好きなんじゃないか」という疑問を抱き、原作者さんにこの疑問をぶつけた事があると述べている。答えは頂けなかったそうだけど、もしそうならカズミはさらにこの世界の中での重要度は増す。
小学生限定だとこのタイプってのは記憶に無い。思えば当然で「ライジンオー」や「ゴウザウラー」のようなクラスの団結を謳う作品の場合、こういうキャラがいると一人浮いてしまう可能性が高い。事実「5の2」においても、チカ以外のキャラはカズミのことを「相原さん」もしくは「相原」と呼んでいる。無口キャラが「萌え属性」として認識されたのもつい最近の事だ。
OVAでのCVは能登麻美子さんだそうだが、一般的に期待されている能登声(「ネギま!」の宮崎のどか、「スクールランブル」の塚本八雲など)ではこのTVアニメバージョンのカズミをやるには弱すぎるんじゃないかな。特に「カモ」での
「何でコバヤシなんだ?」
「コバヤシだから」
この一切の反論を許さないような断言に説得力を持たせられないと思う。(全くできないとは言わないけどね)
【メグミ】
原作初登場 4時間目「メモリ」
TVアニメ初登場 2時間目「スーパーボール」(良いのが無いので、「ヌレギヌ」から)
メインヒロインであるチカ、まとめと進行役であるユウキ、属性が追加されていったカズミやナツミに対して、このメグミは完全に出遅れてしまった感がある。こうなってしまうと結局残っているのは不幸要員、オチ要員としての立ち位置しかない。原作でもそういう立ち位置だったしね。こういうキャラの宿命とでも言うべきか。あとラブコメという流れから完全にハブられてしまったのも大きい。
しかも後ろからは原作では完全なサブキャラにもかかわらず、アニメになってメインキャラばりに猛追してくる田中ハルカの存在もある。(田中ハルカについては次のサブキャラ編で)
むしろユウキよりもかわいそうな扱いを受けているのかもしれない。
「メモリ」は初登場用のエピソードというよりは、キャラ固めのエピソードという感じがする。初登場用としてはむしろ「ヌレギヌ」の方がふさわしかったんじゃないかな。
少しいじればチカやコウジ達抜きでも話は成立させられるし。サブキャラ的に手早く紹介するなら「スーパーボール」も答えの一つではある。
メグミのようなキャラは確かにお約束ではあるんだけど、私の記憶ライブラリからは小学生でのタイプってあまり出てこないんだよなぁ。
次回はこの世界を固めていったサブキャラたちを取り上げる。