うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読む48

2010-03-18 05:16:34 | 日記

日本列島東も西も惨<o:p></o:p>

<o:p> </o:p>

 三月十三日(火)曇<o:p></o:p>

 ……。加藤さんの話によれば、先夜の惨は、加藤さんも経験ある大正の大震災どころではなかったという。都庁も司法省も焼けたという。本郷の医書店、南山堂も南江堂も焼けたらしい。<o:p></o:p>

 夜十時半、敵大編隊東方海上より本土に近接中との横鎮情報、十二時解除。<o:p></o:p>

 三月十四日(水)曇<o:p></o:p>

 昨夜のB29大編隊は大阪を爆撃したるとなり。相当の被害ありし模様。<o:p></o:p>

 先日敵の撒布せるビラには、十五日夜また参上します。東京のあと半分はそのときに片付けます、とあった由。或はアメリカは鷲百羽、日本は雀二羽。どうして勝てますか、など書いてあった由。(まさに猫が捕らえた鼠をもてあそぶような、アメリカの傲慢さ、非情さがありありですが、それに対してなす術もない、軍部や政府の無策ぶりには腹立たしい限りです。風太郎氏も切歯扼腕、歯切りしが聞こえて来そうであります。)<o:p></o:p>

 ふざけ放題にふざけるべし。日本人はまじめなり。<o:p></o:p>

 大西比島方面海軍航空部隊司令官、特攻隊に対する訓示は、すなわち全日本人に告ぐる言葉なり。アメリカ人を殺せ、一人でも多く殺せ、日本人は腰をすえ、冷徹無比の心を以って、如何にせば一人でも多くアメリカ人を殺し得べきや研究せよ、彼らの血と肉を以って戦争の悲惨さを思い知らすべしと。先日、余が空襲の焼跡に立ちて思いしこと、符牒を合わせるがごとし。その訓示中、「殺せ」という単語いくばくぞ。その声、その叫び、ただアメリカ人を殺せという一念につらぬかれ、まさに陰鬼の咆哮のごとし。九十九里浜、十二キロの深さにわたりて民家の立ち退きを命ぜられたりと。近いうちに戒厳令発せらる由噂あり。(米軍の本土上陸作戦、いよいよ現実味を帯びてきたということでしょうか。九十九里浜とは唖然とします。)


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (志村 建世)
2010-03-18 22:21:50
千葉の親戚は九十九里浜に近い八日市場だったので、立ち退きの話は聞きました。老人と子供は退避させ、壮年者は逆に移動を禁じられるという話でした。ただし不徹底なうちに終戦を迎えたようです。
返信する
Unknown (うたのすけ)
2010-03-19 05:20:14
志村さんへ。
お早うございます。
軍部は本土決戦を真剣に目論んでいたのですね。
恐ろしいことです。
こうなると原子爆弾云々の議論が出ますが、東京大空襲で、国民の戦意は消失していたと思います。
返信する

コメントを投稿