うたのすけの日常

日々の単なる日記等

旅への想い

2006-04-04 09:30:07 | エッセー
 
 旅はよく人生に例えられる。 結婚式の披露宴での仲人の挨拶にも、山あり谷あ
り、人生棘の道であると説く。実際の旅も旅行会社お仕着せのものでは、安穏無事で終わるかも知れぬがどこか物足りぬ。
 旅が人生なれば、波乱万丈は必死であろう。古希を過ぎ、振り返れば我が人生、戦争を挟み、軍国少年、学童集団疎開、戦後の飢餓、しかしこれらは、好むと好まざるにかかわらずお仕着せの波瀾だ。しかし、旅の起点としては最高のお膳立てであった。その後の道程の険しい山も、いかに深い谷も、物の数ではなかった筈だと思う。
 勉学、挫折、酒、恋、闘病、奮起、結婚、家庭と、人生の旅も詰めに入った今、思い出す字句は、峠の茶屋での一服の茶のように懐かしい。だが御茶請けに、孫の一字が加わるとなんともほろ苦い。孫に手を引いたり引かれたりの旅もいいが、なぜか先を急かれるような気分になる。旅は気ままがいい。そして気に入った場所での長逗留モ悪くない。
 定年、還暦、古稀とこの時期、あたしは住んでいる街のアマチュア劇団に参加して、そこにじっくり腰を据え、旅の醍醐味を満喫している。あたしの年頃が重宝がられてのこととは思うが、芝居のいろはも分からぬ入団時から、公演の都度役を頂いている。と 数えれば、黒子からお婆さん、やくざ、バーのママ、棟梁等‥。
 いうなれば山間は百花繚乱。緩やかな斜面を愛でつ眺めつ、行きつ戻りつ途中下車した街を、貪欲に探索しては、未知の世界に遭遇し、、それに対決し驚きと喜びを見出す日々に居る。
 旅も終わりに近づきつつあるあたしにとってこの旅程は、遅きに失した感がないではないが悔いはない。
 願わくは終着駅に到達したとき、ホームのアナウンスを祝着駅……、と聞きたい。

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