うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読む55

2010-03-25 05:56:50 | 日記

敵機の侵入情報に翻弄される<o:p></o:p>

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(風太郎氏、いささか軍管区情報に焦燥ちをおぼえ、東部軍に噛み付きます。)<o:p></o:p>

 余は思いたり。それはそれとして東部軍余り親切すぎて、かえってこちらに恐怖心を起さしむと。<o:p></o:p>

 而してまた、戦局の真相を国民に知らしめよ、たとえそれがいかに恐るべきものなりといえども、それを恐るごとき日本人にあらずとの声高きも、これと同様にて、余り細密に知らしめるは、意志薄弱なる愚集大半なる国民には、結局恐怖心を起さしむるの害なしとせず、政府が或は実相を覆い、真実をかくすはやはり一理ありといわざるべからずと思いたり。(「意志薄弱なる愚集大半なる国民…」とは恐れ入りました。このこと理解の他としか言いようがありません。)<o:p></o:p>

 敵二機静岡地区に近接中、間もなく本土に到達する見込みなりとて、甲駿地区に空襲警報発せらる。(この時期軍の防空システムが機能していたのには驚きです。しかしもうそろそろ馬脚を現すのは、時間の問題とみます。)<o:p></o:p>

 しかるにそれより、十分たつも二十分たつも、ウンともスンとも音沙汰なし。十日の朝のごとく、敵の動き不明となりたるにはあらずやと不安なり。(敵機の追尾がそろそろ怪しくなってきたようであります。)<o:p></o:p>

 ややありてラジオ曰く、静岡地区に近接中なりし敵二機は、いまだ本土に侵入することなく洋上を旋回中なるもののごとく、目下のところ東部軍管区内に敵機あらざる模様なりと、どうも確信なげなる頼りなき報道なり。<o:p></o:p>

 ソーラ始まった、あいつが危ないのだ、と高須さん不安がる。この十日も敵数機、房総沖にてわが電波探知機をまんまと煙にまき、突如京浜上空に出現せりとの噂高ければなり。やがて後続部隊は遠州灘を旋回せるのち逐次南方に去りつつありという。どうも危ないなあ、それじゃ何のために飛んで来たか分からんではないか……。