徹底抗戦の構えか<o:p></o:p>
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学校の図書室本館に移転作業、大いに疲る。本館周辺にある柔道場、相撲道場、航空医学研究所等も近いうち取り壊す由なり。<o:p></o:p>
三月十日以来、登校せざる学友数名あり。焼死せしが如し。<o:p></o:p>
鏡花を読む。<o:p></o:p>
三月十五日(木)曇<o:p></o:p>
午前中第三学年の仮卒業式。彼らは近いうち、軍医学校に移る。<o:p></o:p>
(国家存亡の危機に見舞われている最中、まだまだこうした行政が存続していることに、少なからず驚きを感じます。その上学校長の過激な演説にはこれまた愕然とします。)<o:p></o:p>
余は少し遅刻したれば校長の演説をきかざれども、何でも、この時に及んでなお学校を休んでいる学生あり、国家に対して面目なきゆえ、これらの連中は断乎退校せしめ、校長みずからも職を退かんと、声調激越なりし由。<o:p></o:p>
朝八時警報、昨夜来敵艦隊、硫黄島より本土にかけて何事かを企画しあるもののごとく厳戒中なりと。<o:p></o:p>
チエホフの短編集を読む。<o:p></o:p>
三月十六日(金)曇<o:p></o:p>
午後学校事務所の金庫三個を本館に運ぶ。<o:p></o:p>
七個師団を搭載せる米大輸送船団本土近海を徘徊中なりと。<o:p></o:p>
昨夜、米機の機銃掃射にて、背より討ちぬかれたる夢を見る。夢の中まで米機を背負っていてはやりきれず。<o:p></o:p>
チエホフを読む。<o:p></o:p>
三月十七日(土)曇<o:p></o:p>
このごろ東京都民ことごとく戦々兢々として、仕事も何も上の空なり。東を向くも西を向くも敗戦論ばかり。日本が勝つというのは大臣と新聞の社説と神がかりと馬鹿ばかりのごとし。