観測にまつわる問題

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インフラツーリズムの勘所と間口の広げ方

2018-12-30 13:49:31 | 日本地理観光
四ツ木「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」東京スカイツリー #01(【無料】写真・壁紙・素材フリーダウンロードサイト)

12月9日の前回の記事に続き、インフラツーリズムの記事。

モデル地区選定し社会実験 19年度着手 訪日需要に対応へ インフラツーリズム有識者会議(旬刊旅行新聞)2018年12月25日

>年度内には手引きをとりまとめる。「誘客」「受入環境整備」「持続的な展開」を念頭に、各インフラツーリズムの「勘所(好事例のポイント)」を整理する。勘所を踏まえ、プロジェクトの推進をはかる。国交省の総合政策局栗田卓也氏は冒頭、「現実的に『なにをどう動かせるのか』を議論していきたい」と述べ、実効性の担保を重要視した。

>現状報告として、事務局からインフラ施設のランク分けについて説明があった。年間来訪者数が1万人以上はAランク(構成比3%)とし、巨大地下神殿と称される埼玉県の首都圏外郭放水路などを例に挙げた。1千人以上1万人未満がBランク(同11%)、1千人未満がCランク(同86%)となる。

>実際の来場者数をみると、Aが約28万人(同60%)、Bが10万3千人(同22%)、Cが8万5千人(同18%)となった。

>Aランクだけで来場者数全体の約6割(28万人)を占め、ほとんどが大都市圏近郊に集中している。ツアーが平日に偏っているといった傾向も浮き彫りになった。施設公開の約8割が施設管理者の主催となり、管理者・自治体の約7割が平日のみしか開催していない。旅行会社のツアーは1割程度にとどまる。

インフラツーリズムの拡大に向けて(国土交通省)

>Aランクの施設 来訪者数 特徴等
宮ヶ瀬ダム 101千人 観光放流の予定の周知 ◯ ◯ ◯ 東京近傍
八ツ場ダム 29千人 建設中の多彩な見学ツアー ◯ ◯ ◯ 草津温泉の近傍
利根導水路 28千人 地域の小学校の社会科見学を受入◯ 東京近傍
天ヶ瀬ダム 26千人 駅から近いダム ◯ ◯ ◯ 京阪宇治駅から約3km 世界遺産平等院近傍
湯西川ダム 22千人 水陸両用バスツアー ◯ ◯ ◯ 東京近郊の温泉地(湯西川・川治・鬼怒川温泉等)
首都圏外郭放水路 20千人 インスタ映えする防災地下 神殿 ◯ ◯ ◯ 東京の近傍
中部国際空港 18千人 空港見学ツアー ◯ ◯ ◯ 名古屋の近傍
関西国際空港 14千人 空港見学ツアー ◯ ◯ ◯ 大阪の近傍
明石海峡大橋 12千人 巨大つり橋の主塔登頂ツアー ◯ ◯ ◯ 神戸の近傍
津軽ダム 10千人 水陸両用バスツアー ◯ ◯ 世界遺産の白神山地への入口

>○ ダムカード・マンホールカード等のインフラカードがコレクターを中心に高い人気。
>○ ダムをモチーフにしたダムカレーを提供するお店が全国で増えている。

インフラツーリズムの勘所は、ビジュアルだとかインスタ映えとか見た目のインパクトではないかと筆者は感じています。やはり首都圏外郭放水路なんかが典型なんですよね。古代の王様は巨大な墓を建設し威信財としましたが(ピラミッド等)、それは現代においても観光の主力だったりします。観光の何が魅力かと考えた時、凄いものを見たいという感情は確かにありますし、観光という字義からして、素晴らしい風景(ビジュアル)を見たいというのが基本とも言えると思います。土木は古代より権力と結びつき、権威的なものであったように思います。

観光の間口を広げることを考えた時、インフラへの理解は重要でしょうが、あえて言い切れば二の次でいいとも思えます。マニアックな知識の収集も楽しいとも思いますが、さすがに裾野は狭くならざるを得ません。それでは観光の柱に成り得るはずもありません。解説なんかは関心のある人への質問に答えられれば、要所を押さえたもの・軽いもの・導入的なもの・フレーバー(味・風味)的なものでいい。

そう考えると、インフラツーリズムの概念が国土交通省の枠組みに収まるか疑問もあります。電波塔(東京スカイツリー・東京タワー)なんかも立派なインフラではないかと。東京都庁なんかもインフラと言えるかもしれません。つまり公共の建築物は全てインフラツーリズムの対象に成り得ると筆者は思います。こうして間口を広げた方が旅行者が楽しめるツアーが組め、民間での普及も進むと思うんですよね。やはり商売は顧客本位でなくてはなりません。別に国土交通省とかダムとか縦割りを否定しませんが、セクション横断も最初から同時に進めるべきなんだろうと思います。インフラへの深い理解にはならないかもしれませんが、それはそれで興味がある人を対象にやれば良いのであって、軽い解説で雰囲気を味わえればいいと考えれば、民間の旅行会社に任せて十分だと思います。

また、ダムカードの配布なんかがコレクターに受けているというのは個人旅行の潮流の気配を感じます。多分好きなマニアが時間のある時に収集しているのでしょう。神社で言えば御朱印集めがそうと言えるかもしれません。国内旅行者が主たるターゲットでしょうが、コレクター意識を刺激し、旅行する理由をつくってあげるのも、インフラツーリズムに限らず、観光促進には有効なんだろうと思います。コレクションするものは、カードや印に限らず、メダルや模型(3Dプリンタで簡単につくれるものでもいい)なんかでもいいし、対象は橋・トンネル(青函トンネル・関門トンネル・東京湾アクアライン・山手トンネル・関越トンネル・飛騨トンネル・恵那山トンネル)・城・寺・塔・産業遺産(鉱山採石場・砲台等軍事遺産等)・近現代建築・古民家等幾らでも考えられると思います。環境整備して興味がある人が観光して関心を深めることで結果的に理解が進み更なる発展に繋がる部分もあるだろうと思います。

ダムカレーとはダムをモチーフにしたカレーらしく、やはり見た目で興味を引く感じになっていると思います。誰が考えたか知りませんが(笑)。



場が盛り上がると思わぬ派生物もあるのかもしれませんね。

ところで一番人気とされる宮ヶ瀬ダムなんかはインフラツーリズムというより、自然を楽しむというかエコツーリズム・公園に近いのかなと思います。インフラツーリズムは人工物が対象ですが、元より人工と自然を明快に分けられる訳ではありません。ため池なんかも人工物でもあり自然でもあり、里山は自然に見えますが人の手が入らない自然は原生林ぐらいのものです。宮ヶ瀬ダムは素晴らしいとは思いますが、インフラツーリズムの角度で断トツトップと捉えるには違和感があります。ダムだからインフラで観光客が多いから素晴らしいではなく、インフラの価値そのものに着目した切り口が必要だと筆者は思います。首都圏に近いから客が多いとか、自然に癒されるために来ているのであってダムを見に来た訳ではないとかそんな感じであるようにも見えます。ダムカードはその点、スペックが記載されているところが面白いんだろうと思います。

利根導水路なんかは逆にインフラツーリズムの視点を掘り下げてストーリーで売り出すこともできるかもしれません。利根導水路は「利根川上流のダム群により開発した都市用水を武蔵水路及び荒川を経由して東京・埼玉に導水する」ものですが、元々利根川は東京湾に注いでおり、江戸時代の利根川東遷事業で流れを変えて太平洋に直接注ぐようにした訳です。関東には渡良瀬遊水地や首都圏外郭放水路もあって、それぞれの影響等のシミュレーションなんかをCGで見られれば面白いかもしれませんよね。インフラとは人工物ですが、環境の改変に着目したら面白そうです。

東海道は元々三浦半島→上総ルートだったというネタもあります。東京湾の沼沢地が開拓されてルートが変わったはずなんですよね。縄文海進の地図を見れば、東京湾沿いのルートこそ有り得ないことが直感的に分かるだろうと思います。道路は主要インフラであるものの、道路を見る観光というのは中々想像しにくいところがありますが、関東の古代ルートというのは現代的視点でちょっと面白いんじゃないかと思います。エコツーリズムなんかもあわせて、環境の変化を巡る旅というのも有り得るかもしれません。

ややインフラの概念から外れますが、他に江戸のBefore Afterという切り口もあるでしょう。

江戸幕府以前の江戸(江戸東京探訪シリーズ)

日本の歴史においてこれほど劇的な「首都」移転効果は他に見られるものではありません。人間活動と建築・自然への影響を調べ学ぶのも楽しいものではないでしょうか。

空港なんかは空港を見る目的というよりは、ショッピング(免税店・レストラン・土産)かなという気もしますが、ハブ空港なんかの路線図なんかのCGとかちょっと面白いかもしれませんよね。鉄道オタクがいるのですから、それに倣ってみることもできそうです。空港ランキングと言えば、満足度であることが多いように思いますが、鉄道のように「乗降客数」や路線数に着目し、どのパイプが太いかみたいなことをビジュアルで表現してみると、空港パワーが一目瞭然である訳です。これは道路や港にも言えることであり、鉄道もあわせて全てを総合すれば、物流の一大マップが完成します。(電気の使用に関連して)北朝鮮が暗い地図とかありますが、ああいう感じで人の流れ・物の流れを地図で表現した上で、交通インフラの力を感覚的に理解できれば、インフラを見る目も変ってくるのかもしれません。

城だったら、攻略難度を考えてみるとか、軍事遺産も同様に攻撃力や防御力で換算すると面白いのかもしれません。インフラツーリズムとは機能美でもあると思う訳です。城はまぁ威信財でもありますから、装飾の要素もあって、ちょっとインフラの概念には馴染まないところもあるかもしれませんが。

近現代建築や古民家も同様に機能の視点と装飾(デザイン)の視点がありそうですが、インフラツーリズムの観点で評価するなら、やはり機能に着目したいところです。インフラストラクチャーとは下部構造で経済・福祉を下支えするものであり、本来的に機能的なものだと思います。例えば、耐震性の変遷・耐火性の変遷・耐風性・耐雪性等々、防災の観点から見ることもできますし、密閉度(室温に着目)や広さと世帯人数の関係等住環境の視点で見ることも出来ると思います。機能を知れば、何が凄いか分かってくる訳で、目立たないが凄いものに着目するというのは、日本人に合っているところもあるような気がします。

鉱山採石場なんかは雰囲気あって、ある意味観光に適していると思うんですよね。鍾乳洞とか主要観光地だったりするじゃないですか。安全確保が重要で下手に産業遺産になったらいじれない部分もあるのかもしれませんが、洞窟探検に自然も人工もないと思う訳です。松代大本営・人吉海軍航空隊なんかもそうですが、建築とは結局工事ですし、国土交通省とセクションは違うかもしれませんが、かなり親和性があるんじゃないかと思います。土木技術の変遷を踏まえれば、歴史の深い理解に繋がるのかもしれません。スマホって暗いところで写真も撮れるようで、開拓すればポテンシャルはありそうです。海外からの注目を軸にした逆輸入型もいいんですが、国内需要の創出→インバウンドの流れが本来的な筋とも言えるのかもしれません。

先日、富士山の観光を含む記事を書きましたが、ビジュアル重視を踏まえると、富士山観光サイト・団体でそうしているように、写真コンテストやビューポイントの紹介なんかがあっていいのかもしれません。富士山は日本を代表する定番ですが、新しい定番をつくるのような。

最後に国交省ではないと思いますが、東京スカイツリーを。高い電波塔は観光施設でもありますが、電波塔自体、典型的なインフラであるとも言えます。ですが、機能にあまり着目が無かったように思います。そもそも東京タワーがあったところに世界一の高さの電波塔を建てた理由は、既存の電波塔の東京タワーが位置する都心部では、超高層建築物が林立して影となる部分に電波が届きにくくなっていたほか、ワンセグやマルチメディア放送といった携帯機器向けの放送を快適に視聴できるようにすることにあったようです(ウィキペディア「東京スカイツリー」2018/12/30参照)。

要は高層化の対応と、送信データの大規模化に対する対応だったのでしょう。検索してみると、スマホでワンセグも見られるようなんですよね。ならば、既存インフラを活かさない手はない訳で、東京はスマホでワンセグを活かした街づくりを志向すればその大規模性とあわせて他の追随を許さない文化を生み出せるのかもしれません。一度文化が形成されてしまえば、旅行者にワンセグチューナーを貸し出す展開にも繋がるかもしれません。そうして東京スカイツリーが最大限活かされた街づくりが出来れば、東京スカイツリーを見る目もまた違ったものになるのかもしれません。


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