観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「保険」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「国民年金」「住宅」を考察する予定。

憲法改正(教育充実)及び家庭の問題など

2019-03-04 17:12:28 | 憲法・法務・司法・立法
今回の(下村博文自民党憲法改正推進本部長のえひめ政策セミナーを受けての)憲法改正シリーズ4案の最後「教育充実」ですが、簡単に触れておきます(他の考えられる案や世論喚起についてはまた別の機会にやるかもしれません)。

自民党の現行案は二つで一つ目は第二十六条に3項「国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。」を追加する案のようです。

第1項は教育を受ける権利、第2項は教育を受けさせる義務および義務教育の無償になりますが、第3項追加の狙いは義務教育でない普通教育(高等学校等)や高等教育、専門教育、職業教育を国民一人一人の幸福の追求に欠かせないものと定め、経済的理由にかかわらず教育を受けられるよう国に教育環境の整備を促すことだと考えられます。逆に言えば、これまではそれが出来ていなかったということなのでしょう。

子供の貧困が社会問題化して久しく、その要因は一人親家庭が増えていることのようです(一人親世帯の増加 データえっせい)。要は日本はこれまでこうした急激な少子高齢化に十分対応できていなかったのでしょう。機会の平等はあると言ったところで、親を選んで生まれることも出来ません。経済的理由で子供に必要最低限の教育を受けさせられない家庭があるようですから(というかそういう家庭が増えているようですから)、国の支援を義務付けていくことで、日本はこうした問題を解消していこうということだと思います。当たり前化している普通教育は勿論、あくまで教育ですから高等教育等も視野に入っているんだろうと筆者は考えています。学歴は仕事に関係ないと言いますが、現実的には学歴によって生涯年収に差がつく現実もあって(学歴別の年収・収入格差データ 年収ガイド)、能力があるのに経済的理由で適切な教育を受けられない人が日本に多いのだとしたら、日本の損失だと捉えることも出来るのでしょう。

最近児童虐待の話題が国会でもありますが、母子世帯などひとり親世帯は虐待の発生率が高いことが指摘されているようです(母子世帯と子どもへの虐待 山野良一 社会保障研究 2017, vol. 2, no. 1, pp. 45-59.)。児童相談所充実も考えられますが、片親世帯(特に母子家庭)の教育を支援することで経済的負担を軽減すれば、児童虐待の発生も抑えられるかもしれません。義務教育は既に無償と思うかもしれませんが、幼稚園も教育でしょうし、年長の兄弟の教育を支援ことで親が楽になるとも考えられます。

教育に関連して片親の問題に触れたので、ここで都会と地方の事情の違いを確認してみます(シングル親が多い都道府県ランキング【47都道府県掲載・完全版】 2017.10.24 和泉虎太郎 ダイヤモンドオンライン)。

>親権については、さらに驚く数字がある。女性が親権を持つ比率は戦後一貫して高くなっているのだが、1965年までは男性の方が多かったということだ。シングルマザーの比率が顕著に高くなるのは80年代以降のことなのである。※2p

親権って女性が持つイメージがあって現在において間違いないのですが、1965年まで男性の方が多かったという事実があったのだとすると驚きます。これは元々の傾向が経済的理由で隠れていたのだと考えられると思います。恐らく1965年までは女性は親権を持ちたくても経済的理由で難しかったのでしょう。女性の社会進出が進むに従って、女性が子供を育てる元々の傾向が出てきたように見えます(近頃はイクメンという言葉もありますが、まだまだ普及しているとは言えないのかもしれません)。いずれにせよ、女性の社会的進出が進めば、離婚も増えるのでしょうし、母子家庭が増えるなら、教育にお金をかけられず子供の可能性が狭まってしまうことも増えるのでしょう。だからと言って、女性の労働力の活用なくして経済成長は全くの不可能ですから、そうした国(女性の社会進出を阻む国)を目指すことは亡国の道だと思いますが、歪が出てきた部分は対応しなければなりません。親権のような一見心の問題に見える問題も結構経済問題の影響が大きいことは認識されてもいいのでしょう。教育も然りだと言え、それを踏まえた改正案だと思います。

>京都や大阪府、神奈川県といった大都市圏では、住宅事情が厳しかったり、就業の構造、幼児保育の未整備の問題のために、そもそも同居なしの母子父子家庭を維持するのが困難なのではないだろうか。そして特に父子家庭にその傾向が高いということだ。※4p

大都市圏で幼児保育未整備等の問題があるため、同居なしの母子父子家庭を維持するのが困難はその通りのように思いますが、特に父子家庭にその傾向が高いというのは、男の職場ほど子育て支援などないという事実を示しているんだろうと思います。これまで通り女性が多い職場(及び周辺)での子育て支援策を進めると共に、男の職場でも万一の際に子育てできるよう支援が必要ではないかと思います。女性の方が経済厳しいで男性の方が引き受けた方がいいにも関わらず、男性が職場環境の問題で子供を引き受けるのが不可能なケースで子供が貧困になる可能性もあるんでしょう。大都市が人口ブラックホール(人を吸引するものの自らは人口を増やさない)なのは昔からだと思いますが、今は地方の人口増加力が衰えている問題があって厳しいところがあると思います。ただそれは問題意識が薄く対策も無かった昔の話で傾向があってもそれが永続すると限りません。要は企業を含め大都市がコストをかけて対策することです。大都市は自らの人口ブラックホール現象に向き合う責任もあるんじゃないでしょうか?これに対し地方は待機児童問題も深刻ではありませんし、親に子供をみてもらえるケースも大都会よりあって、子育ての環境は現時点で逼迫していませんから、新たな負担は少なくて済みそうです。企業がこうした問題意識をもって解決を目指して真剣に取り組む時、コスト面で地方が相対的に有利になりますから、あるいは東京一極集中の流れも変わっていくのかもしれません。

>もうひとつの仮説は、親族の支援がないシングルでの子育てが困難と知って、離婚を踏みとどまっているケースだ。

あるいは支援してしまうとじゃあ離婚できるなで離婚が増えるケースも考えられます。これはあまり望ましくない事態ではありますが、例えばDV癖がある夫に対して経済的理由で(子供は自分で育てられないけどDV親に放置するのも可哀相と踏みとどまるかもしれません)離婚できないと仮定すると、離婚できるなら離婚した方が幸せになれる人が多くなるだろうと考えることも出来ます。また少なくとも離婚カードが存在しないならば、パートナー(妻のDVの可能性がゼロではないんでしょう)の横暴を牽制できないとも考えられるんじゃないでしょうか?反省して改善する可能性が潰れていると見ることも出来るかもしれません。

>給料が高いところは、母子父子家庭が少ないのである。

旦那の給料が低いから離婚!があるある世知辛い世の中です。憲法改正で教育支援されるならば、低所得家庭の離婚もあるいは減って、皆幸せになれるかもしれません。この旦那では子供を高卒にしなければいけないと思いつめた嫁が三行半をつきつけるのはありそうな話です。最初から分かってて結婚したのではないかと言われるにしても、たまたま倒産・たまたま人員整理だってないとは言えない世の中です。

家庭の問題に関連して無戸籍問題を(離婚やDV増のツケ…無戸籍者「全国に最低でも1万人はいる」 2016.12.1 iza 産経新聞)。

>子供が無戸籍になる理由はいくつかある。もっとも多いのは「嫡出推定」の制度が壁となるものだ。嫡出推定は民法772条で規定され、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定。法律的に前夫の子と推定されるのを避けるために、出生届を出さないケースが多い。

明治の頃につくられた法律がDNA鑑定を想定してない問題のようです。嫡出子とは法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことで相続で優遇されますが、つまり実子じゃなくてもいいということで浮気を奨励していると見ることも出来るのかもしれません。裏切られた方はたまったものではありませんね。「やってない」「少ない」「素行が」「念のため」で怪しいと思えば今は調べられる時代ですから、実子でなければ非嫡出子にできるならば、裏切りもあるいは減るのかもしれません。まぁ今の時代は不作為で(時代の変化に応じた法改正をしないことで)詐欺師有利、カッコウ有利な世の中と言えるのかもしれません。

>暴力から必死で逃げてきたのに、離婚のために連絡を取れば居場所がばれる。が、そのまま出生届を出せば、法的に元夫の子となってしまうからだという。

児童相談所の強化だけで問題が解決するとは限りませんね。子供に暴力を振るう人は妻(夫)にも暴力をふるっているかもしれません。また、この場合安易に逃げるという対応にも問題があるように思います。何故かというと、安易に逃げて逃げた側の言い分を丸呑みする社会にしてしまうと、それを逆利用されて無茶苦茶した側が逃げて無茶を通すケースが想定されるからです。例えば浮気がバレた専業主婦(仕事があれば逃げにくいという以上の意味はありません)が逃げてDVされたと作り話する可能性もないとは言えません。

今はDV相談できる窓口もありますし、緊急時以外は相談から始めるべきなのでしょう。この場合、DV夫はスマホをチェックしているとも考えられますから、発信者番号の消去もあわせて教えるべきかもしれません(それが出来ない電話は使うべきではないでしょう)。そう考えるとDV相談もそうですが児童相談所も緊急のもの以外は日本全国何処に設けてもいいのかもしれません。

非正規の問題で格差拡大の話もありますが、過ぎた時間が戻ることはありません。そう考えると、やはり教育とお金の問題を何とかしておくことも重要だろうと考えられます。育てられないから産まない・従って結婚しないを選択するのが少子化の一因だと仮定すると(結婚する前から子供を大学に行かせられないと分かっていたらどうでしょう?)、これが厳しい少子化解消の一助になるとも考えられます。

次に第八十九条ですが、私学助成を禁じてるように読める文面です。「公の支配に属しない」を「公の監督が及ばない」に変えて(私学は支配されてなくても監督はされています(文科省の管轄下にはあります)。公立は公の指揮下にあるのですから支配されていると言えます)、誰が読んでも私学助成ができるようにしていこうという話です。

改正しなくてもいいじゃないかと思うかもしれませんが、そうではないと思います。憲法とは立憲主義で国を縛るものとしてのみ見るのは一面的に過ぎます。比較憲法学の西修教授の指摘ですが、スイス憲法やフィンランド憲法など世界の多くの国で国民に責務も課し、国民と公共機関が相携えて良好な環境づくりをするための根拠規定に憲法はなっているようです。憲法を国を縛るか国民を縛るかの二項対立で見る民主党的見方こそ時代錯誤のようですが、国民と公共機関が協力するのであれば、国民が普通に読んで理解できないような文面は修正するべきとしか言いようがありません。そんなに難しいことでしょうか?話し合ってちょちょいで出来そうな話です。一々それだけのために国民投票をするのは大変ですが、いろいろセットでやればいい話です。そんなことをする政治家・官僚もいないと信じますが、この文面を悪用して私学に脅しをかけることも出来るのかもしれません。少なくとも変えるに越したことはないものを変えないという結論は無さそうだと思います。

関連して第九十九条憲法尊重擁護義務は書いてませんが国民も当然あると読むべきなのだそうです。権力者は濫用するかもしれないから特に規定を設けただけで書いてないから憲法制定権者である国民が憲法を尊重し擁護しなくていいということにはならないのだとか。前文とか9条を尊重し擁護するのかと暗澹たる気持ちになりはしますが、まぁ第96条の改正規定があるのですから、ここを変えろで理由を言うのは構わないとは言えそうです。つまり一国民であっても、憲法改正自体に反対(護憲派とその仲間達)は第99条及び96条違反で歩く憲法違反ということになりそうですし(安倍政権下での~も法の下の平等に反した上で憲法改正に反対し憲法を擁護していませんからアウトのようです)、私学助成に関して言えば論理的に詰められたケースで(誰がそれをするのか知りませんが)「言い訳」が準備されていないと論破されて現時点で私学助成アウトと言わざるを得ないんじゃないかということになりそうです。どうでもいいようですが、どうでもいいことで絡まれないための改正も必要かと思います。

憲法遵守義務はイタリア始め諸国の憲法に書かれているようですが、アメリカとフランス憲法には書かれていないと主張する人もいるようです。ところが少なくともアメリカにおいては連邦最高裁判所が1879年の判決で合衆国の憲法及び法律は国の最高法規であって個人の資格であろうと公的な資格であろうと従うことは合衆国民の義務であると明確に判断を下しているようです。要は当たり前のことが書いている訳だから国民皆守りましょうということだと思います。そして時代にあわないと思えば改正すればいい訳です。そしてそれを提起するのが国会議員の仕事でしょう。国会議員も国民に理解されないと(選挙に勝てないと)議員になれませんから、そうした問題意識を持つ政治家を選ぶことが重要なんだろうと思います。その判断基準は無条件で憲法議論ができるかどうか(少なくとも憲法審査会を力ずくで止めたりしないか)だと考えますが、筆者はとにかく否決されてもいいので発議を目指したらどうなのかと思っています。何故なら発議を目指さないと誰が消極的か分かりにくいからです。発議可能な能力を持ちその意志を示してきた安倍政権の間に何らかの結論はほしく、有耶無耶にはなってほしくないですね(9条改正が反対として国民投票で否決すればいいだけと思うのですが議論自体否定の意味が分かりません)。また、この唯一の例外として憲法改正自体に反対した護憲派とその仲間達の憲法改正議論には応じるべきではないとだけは書いておきます。野党の間は徹底反対するから与党になったら賛成してねのような議論を認めることはテロリストを育てるのと同義です。日本をテロを称揚するお隣のような国にしたくはありません。政権とったられば、一度やらせてみせてくださいでどうなったか、民主党が民主党ではない民進党なのだと通り名ロンダリングしただけではないのかよく考えてみるべきだろうと思います。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿