観測にまつわる問題

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生産性向上に必要な権限委譲と抽象思考、責任の問題(企業統治改革)

2017-11-25 14:54:25 | 政策関連メモ
企業統治改革でgoogle検索すると、現時点で首相官邸ホームページの我が国の企業統治改革、企業法制改革のリアルな課題という資料が2番目で出てきます。

蒼々たる面々が1年前に検討したみたいですね。ざっと流し読みしましたが、まぁなるほどと思います。ただ、プロが検討したものにああだこうだ言えるだけの知識も経験もありませんが、一点気になったのは日本の低生産性の指摘で、筆者は最近は日本の大企業って低生産性なのかな?って疑問はあります。一週間前にそのようなことを書きましたが、どうも(日本特有の転勤慣行で)女性のキャリアが分断されて低生産性のパートに止まっているとか、急速な高齢化で人口の大きな部分を占める高齢者の労働力が現時点で機能していないとか、そういう要素を抜くと実際は(コアとなる)部分では優秀である可能性もありそうな気はします。前にも書きましたが、大企業はアメリカより教育投資しているというデータも以前取り上げましたし、(RPAなど)先進的な取り組みをする企業も実際に結構あるようです。Iotとか電気自動車とかそういう部分を見ると日本の企業は新しい分野で投資していないイメージですが、強いといわれた製造業が為替問題に集中しすぎて技術動向をちょっと軽視していたところがあるのはあるかもしれません。いずれにせよ、生産性を上げるに越したことはありませんし、重要分野で勝つ取り組みをするとともに、伸び代が大きい部分を伸ばすのが結果を出すコツではないだろうかと思います。

ところでここからが本題ですが、日本企業の生産性を伸ばすために筆者が重視したいのは、適切な権限委譲です。これは筆者の経験から導き出した答えですが、日本企業の生産性が上がりにくいのは、日本の企業(組織)が権力闘争(人事)と個人的なノウハウに偏り過ぎており、抽象的な思考があまりに欠けていることに原因があるような気がしています。多分一社員の技術(生産性)を比較すれば、米国に劣っていないと思うんですけどね(ただし女性がパートであるとか高齢者の再雇用問題除く)。

例えば社長が人件費(労働時間)を削ってくれと店長に指示するとします。普通に考えるとそこで行われるのは、今現在の仕事を点検して重要度が低い仕事を削っていくことです。しかしそれが行われる企業が少ないのだとしたら、本質的に絶対に100%の確率で企業の生産性が上がることはありません。人件費を減らせという指示と新たなる仕事の指示は基本的に矛盾します。勿論、それが間違いなく重要なのであれば新しい仕事も必要です。ですが、その新しい仕事にかかった時間以上に、重要でない仕事を削らないと、人件費(労働時間)の削減はできません。店長が超ウルトラ優秀なスーパーマンなのであれば、部下の意見など何も聞かずに指示を出してただ従えでいいと思いますが、部下の仕事を必ずしも把握していないのであれば、部下の意見を聞くことも重要です。特に部下の方がその問題に関して専門家であるという往々にしてあるケースでは、ただ上の指示に従えばいいという態度で適切な指示が出る道理がありません。

特定のお気に入りの人の意見だけを聞くという態度も狭い社会では問題があります。大組織で全員の意見を聞くことは物理的に不可能ですし、インターネットで全ての情報を網羅するのも勿論物理的に不可能ですが、小規模組織で全員の問題で全員の意見を聞くことは十分可能です。寧ろそれをやらないトップに問題があるでしょう。例えば特定の人が気に入らないからといって、特定の人だけに適用されるルールがあるのだとすれば、ルールを見てその組織を判断するのは不可能です(中小企業にありがちなトップの気分次第で発動されるルールも問題で、それは組織の生産性に直接は貢献せず、組織の長の支配に貢献していると思います)。それは結局のところ、ルールを弄って組織を変えることも不可能になります。気に入らない特定の人を追い込んで「自発的な」退職に追い込むことは可能かもしれません。会社にとって不利な会社都合退職を避け、会社にとって有利な自己都合退職を創っていくのもひとつのテクニックなのでしょう。典型的なのは肩たたきですね。肩たたきが上手な人が優秀な人と会社は見ている可能性があると思います。でも肩たたきの作業自体、本来非生産的な作業です。例えばそのために閑職をつくるぐらいだったら、さっさとクビにした方がよほど生産的でしょう?まぁよほどの馬鹿ではない限り、気に入らない人を辞めさせる時は、仕事がなく人が要らない時か、肩たたきの手間暇・人材募集にかかるコスト・仕事に穴が開くデメリット・引継ぎにかかるコストを埋める実力があって更により仕事ができる人が確保できる時など別にちゃんとした理由があると思いますが、もしもよほどの馬鹿がトップだったらその組織の生産性が上がることはありません。今の時代少子化で人手不足と言われて久しいですし、欠点があっても欠点がある人を上手く使える上司の方が生産性は高いんじゃないかと筆者は思わなくもないですね。

問題解決の鍵が権限委譲にあるのではないかと指摘したのはこういう理由です。例えば具体的な仕事内容の指図を経営陣はなるべく控えた方がいいのではないかと思います。その事業所の仕事内容の把握と指示はその事業所の長に任せるべきでしょう。権限ないところに責任はありません。責任がないところに責任を問うこともできません。結果とプロセスをチェックしそれを問うのが経営陣の仕事だと考えられます。あるいは厳密にマニュアル化してそれを実行する組織にするのも一案です。どちらのやり方も一長一短あると思いますが、半端なやり方で結果が出るとは思えません。

また、部下の仕事には自分でやっててこれは要らないのでは?という作業もあります。これはこうした方がいいだろうという作業もあります。部下自身の信用の問題はありますが、上司と部下で(表立ってはなくとも)対立があれば、部下のノウハウが活用されることはありません。議論する時間・説明する時間もタダではありませんし、良し悪しはあると思いますが、兎に角上の指示に従えの強権的な上司というのは、軍隊組織なら優秀な部類だと思いますが、世の中軍隊組織に不向きな仕事もありますし、世の中の組織全てを軍隊組織にする訳にもいかない訳ですから、良く考えてみるべきなんだろうと思います。

リーダー教育に批判は多いみたいですが、日本のように一般に全くリーダーに必要な資質や機能が重視されない(ように見える)のも疑問でしょう。日本のリーダーの多くはリーダー教育で言われるようなことが分かっていて否定しているのではなく、単に知識がないというか分かっていないからやれないという可能性があると思います。筆者は単に兵士として優秀な人を出世させて上のポストを報酬で出すというシステムでは組織全体の生産性が上がることはないだろうと思います。少なくとも時代の変化の流れに対応することは出来ず、ガラパゴス日本は緩慢な死を迎えることになるのではないでしょうか?日本は日本流でいいと思いますが、それは何も変えないことを意味しません。ちゃんと時代の流れを見て自分(達の組織)を検証し顧客のことを考え利潤を追求する努力をしてこそ「変わらず」いられるのではないでしょうか?日本人が努力したその努力の結果に一定の傾向があれば、それこそが結果的に日本流と呼ばれるものになると思います。

パターナリズム(ウィキペディア)(家族主義、温情主義、父権主義を言う)(>強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう)も良し悪しで筆者は批判しませんが、日本でパターナリズムが強い傾向にあるのは否定できないような気はします(外国の事情は知りません)。もしかしたらパターナリズムは日本では弱いのかもしれませんが、それでも全くないとは言えず、結構あるのは否めないでしょう(自民党の憲法草案に家族条項があったところにその傾向が伺えます)。筆者は悪い部分もあるだろうパターナリズムに関する改革を抽象的に考え革命で行う考えはありません(長年政治を行ってきた自民党のパターナリズムに対して、統治経験のない下からの革命を対置させて「問題」を解決することを考えていません)。そういうことを重視していたら、保守を名乗ることもなく、改革派などを名乗っていたでしょうし、政権交代「革命」の嵐の中、自民党を支持することも無かったでしょう。筆者の考えはパターナリズムの悪い部分は上からの「改革」で改善していけるのではないかということです。まぁ自民党は憲法草案の家族条項は今回の憲法議論にのせるつもりはないみたいですし、そんなにゴリゴリのパターナリズムと思っていないところはあります。大体筆者は日本では思想的にガチガチにこうと結論を決める方がレアケースだと思っています。ともあれ、何でも上の指示が絶対、「みんな」で決めたことが絶対で、問題の当事者当人の意志・考えを無視し活かさないような手法では、生産性の向上に限界がある分野は多いんじゃないでしょうか?そんな気がします。

最終的にはこういうことが日本でもっと議論され学校教育・社会人教育に反映されていくことが日本を強くするんじゃないでしょうか?一人で考えられること一人でやれることには限界があるのですから。


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