観測にまつわる問題

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沖縄を守る人々

2019-04-21 17:37:09 | レビュー/感想
「沖縄を守る人々」(竹中明洋/扶桑社)の感想(ツイッターの再録+α)

2018年1月12日に海上自衛隊は中国との「戦争」に勝っていた。中国初の原子力潜水艦漢級は大きな音を発しますが、後継機の商級はロシアの技術をもとに静粛性を格段に高めています。1月10日から11日にかけて商級が日本の領海の接続水域に侵入。これは重大な挑発行為に当たります。海自P3Cはこれを完全に追尾し、ついに12日午後中国原潜は公海上で浮上し五星紅旗を掲げました。P3Cの哨戒力は世界一とも言われますが、その哨戒力は日本人の職人芸に支えられているとか。沖縄の安全保障の実態を知る一冊。これを読まずして語る勿れ。

辺野古ですが、将来的に軍民共用の可能性を探ることも出来るかもしれません。沖縄における空港の需要は高いですし、北部の空港が使えると非常に便利です。道路も造ってますが、沖縄は渋滞しがちと言いますし、普天間移設抜きで考えても拡張はした方がいいんじゃないかと思います。港で言えば、那覇軍港の移設の話もありますが、日本の資源を狙っている盗賊団を追い払うための拠点が気になりますね。まさか名護の漁港を使うという話にはならないんでしょうが。平和に関して言えば、盗賊団の侵入に対してガードマンを置かない態度が盗賊団の暴走を招きます(例えば小笠原の珊瑚)。

沖縄の島々(尖閣諸島)をうろつくならず者がいるようですが、「沖縄を守る人々」(扶桑社)31p~33pによると、1987年に航空自衛隊史上で一度だけスクランブルで出動した戦闘機が警告射撃したことがあるようです。ただ、実はこの時空自の戦闘機に領空侵犯機を撃墜する権限は与えられていませんでした。(普天間移設にも係る)守屋武昌氏の日本防衛秘録によると、撃墜する権限に関して防衛庁でも反対する異論が噴出したようです。これを収めたのが大蔵省から出向していた畠山防衛審議官でパイロットを危険に晒して理想論を言うのはシビリアン・コントロールではないと指摘したようです。結果、国際基準同様に国籍不明機の飛行方向に政治、経済、社会生活上、重要な施設がある場合は射撃するとなったようです。あの国の海洋侵略を同列に扱っていいか分かりませんが、退去してくださいって叫ぶだけのガードマンならば怖くはないんで、大丈夫かなとは思ってます(放水はあるにせよ)。海保の基地は沖縄本島西那覇市の新港にあるようですが、海自の存在感が薄いような。海保・海自の連携が日本の海を守ると思うのですが。尖閣諸島は石垣市ですが大正島なんかは古くは久米赤島といって、尖閣諸島の他の島からはかなり離れており、宮古列島の多良間島・水納島からはほぼ真北に位置します。

以上、ツイッターの再録。以下、気になる箇所をピックアップして感想。

宮古島の下地島空港に関しては軍事利用はしないとする屋良覚書があって、政府見解では県に権限があるようです。ですから、左翼運動系知事が県知事をやる間は1ミリたりとも動かないと思います。ですから次の県知事選で安倍自民党のような保守派が推す知事が勝つまで、軍民共用の話は動かないでしょう。県知事選で佐喜真候補を推してくれた宮古島市の方には申し訳ないんですけど、反対派が権限を握っている以上、少なくとも軍民共用の話は手も足も出ないとしか言いようがありません。宮古島市はクルーズ船が伸びているようですが、クルーズ船が伸びているところは博多・長崎・那覇で中国からのショートクルーズが伸びており、数の割には地元にメリットがないという指摘もあります(クルーズ船観光客の行動に関する考察 嘉瀬英昭 高千穂大学商学部)。観光政策に詳しい宮崎県選出の自民党の武井俊輔議員に愛媛県の勉強会で教えてもらったような気もしますが、クルーズ船にそれほど大きな経済効果がある訳ではないようです。

その時はないよりあった方がとか思っていたのですが、今回の補選でクルーズ船政策を考えるに当たって、「クルーズ船寄港が大幅減 石垣港」八重山毎日新聞社(2018年12月28日)のようなニュース(知事選で石垣島は伸び悩み、陸自配備で苦戦してます)を振り返り、宮古島のクルーズ船増加と弾薬庫の件を意識すると、中国のショートクルーズが沖縄で増えることと安全保障政策の進展は普通に負の相関関係があることを強く意識せざるを得ません。他のところならまだしもなんですが、沖縄は難しいなと改めて思ったところです(別に筆者が選挙戦で中国推しをした訳ではありませんが。最終的には知事選で勝たなければ政策が動かないことを強く意識しており、知事選で勝つということは安全保障政策の足を引っ張らない知事に勝ってもらうということなんで、この点に関して(中国推しをしなかったことについて)反省点は全くありません)(補選は左翼運動家が当選)。今にして思えば、さすがに専門分野がある政策派の議員さんの言うことは為になるのであって、もうちょっと何とかならなかったかな(何故中国推ししないのかもう少し説明できれば良かったか)と思わないでもないですが、まぁ観光政策を後回しにしたのも故無いことではないですし、選挙区のことは選挙直前に力を入れるしかないんで、まぁこの辺のことはしゃあなしレベルとやはり自己弁護しておきます。

陸自与那国島配備のケースですが、家族持ちの隊員向け官舎は島内の3つある集落にそれぞれ分散されて設置されたため、統合が検討されていた小中学校が維持され、祖納集落にある小学校では異なる学年が一度に授業を受ける複式学級が解消され、メリットは予想以上だったようです(54p)。過疎地で自衛隊はプラスの側面が基本的に大きいところはあると思います。沖縄も例外ではないようですから、今後も住民の方の理解が得られればいろいろな展開もあるんじゃないかと思います。また、地上戦の経験から軍事的なものへの抵抗があるようですが、2等陸尉がハーリーに参加する等、自衛隊は「思った以上に溶け込んでくれている」と町長に評価されたようです(54~55p)。ハーリーに関してよろしければ拙稿「ハーリーブニ(ハレブネ/競漕舟)の沖縄(糸満)文化(小舟を並べて漕ぎ走らせくらべがフナハラシ)と龍舟(龙舟/lóngzhōu/ドラゴンボート)の中国文化

陸上自衛隊の重要な仕事に不発弾処理があって、国内に4つある不発弾処理隊のなかで、第101不発弾処理隊(那覇駐屯地)は群を抜いて出動回数が多く、全国の約8割を占めるとか。自分(日本軍)が撒いた種とは言え、危険な仕事に頭が下がります(59p~62p)。自衛隊を違憲の疑いありとし、安全保障の議論・国の最高法規である憲法の議論を然したる理由もなくただただ停滞させている左翼とは一体何なのか。溜め息しか出ません。

NHKが復帰翌年の73年に県内で実施した調査で、自衛隊が「必要」と答えたのは22.9%。「不要」は60.1%に上ったのだそうです(64p)。今はさすがにそういうこともないんでしょうが、唯一の地上戦を経験した沖縄の軍事に対する厳しい姿勢が伺えます。沖縄を守るために安全保障があるのであって、理解を広げる活動をしていかなければなりません。残念なのは、基地負担の軽減を進める現行案に対する理解が広がらないことです。沖縄を牛耳る左派マスコミが問題なんでしょうが、しばらくは安全保障政策に関して理解を広げる活動に専念せざるを得ません。安全保障政策に対する国と地方の対立の解消が政策を加速させる前提は当然です。希望は八重山にありが筆者の信念です。

本土復帰(1972年5月15)後の1977年、復帰運動の中心だった沖縄県祖国復帰協議会(復帰協)はその役割を終えて解散しました(71p)(復帰協は沖縄自由民主党を除く各政党と、沖縄教職員会などの諸団体が母体となって結成されましたが、ベトナム情勢の悪化の世界的情勢を受け、復帰運動は反米・反戦色を強めるようになったようです)。復帰後に自衛隊は復帰協の反自衛隊闘争をよそに民生協力を地道にこなしていったようで、米軍や自衛隊に否定的であるものの、極めて現実的な沖縄人の経済重視の意識が反自衛隊闘争を沈静に導いたようです。自衛隊や米軍に対して理解を得る活動が現在無いとは思いませんし、沖縄に対する協力活動が現在無いとも思いませんが、中国が軍事を飛躍的に発展させながら台頭しているのは間違いなく、現在の自衛隊・米軍に対する闘争を何とか沈静化させる方策を考えなければならないと考えています。ただ、難しいのは反対闘争が県庁を乗っ取り、国との対立を煽ってくることであり(負担軽減策を負担増と呼び変える戦術を採っています)、現状で打開策は見えてきません。話し合おうにも同じ事を負担軽減か負担増かで水掛け論になるのですから、もう全く話のしようもないんですよね。憲法改正もそうですが、天邪鬼が日本を滅ぼすような気がしています。

石垣海上保安部のトップの方の説明では、海上保安庁の対応を強調していますが(78p)、筆者は海上自衛隊の役割も重要ではないかと思っています。航空自衛隊のスクランブルと警告射撃もそうですが(実力行使カードが平和を生んだと思っていますが)、このままだと尖閣を盗られる怖さがありますし、現に中国の侵略は止っていません。補選で勝てなかった原因に尖閣での打開策の見えなさが無いとも言えないような気が個人的にはしますね。世論調査でそういうのは出ないでしょうが(左派が勝ったところで打開できる訳ではないからです)(候補者・政党要因は支援者・党員の立場で言及しませんが、普天間移設問題はマスコミの問題もあって負担減を訴え切れなかった。経済・県民生活に関しては知事を取られていることもあって、国政とのパイプの重要性を訴えきれなかったというところでしょうか)。

尖閣での漁が行うことが困難な(81p)モヤモヤ感も安全保障を訴える安倍政権が沖縄で飛躍しきれないひとつの要因のような気がします。

民主党政権時の尖閣体当たり事件に関して言えば(85p)、非常に不味い対応だったとは思いますが、それを現与党が今更訴えたところでどうなるという訳でもありません。現実に沖縄で(民主党系を含む革新派に)知事選・補選と勝てていませんから。

元在沖縄米四軍調整官のウォレス・グレグソン氏の主張(98p~100p)は、基地は日米共同使用にすべきだ、日米が同じオペレーションに同時に参加すべきだで、筆者はその方が無駄がないし、日本・沖縄の安全も高まると考えています。実際問題核抑止力の絡みもあって、完全に自立的な安全保障は非常に困難で、それを目指すと日本・沖縄の安全は低下するのではないでしょうか。地位協定に関しては「日本の憲法と同じ」で出来ないこともないが、どれほど書き直したい人がいるのか、一般に米軍は協力的だと指摘しています。筆者は日本の憲法の改正は重要と思いますが、地位協定に関しては不勉強で今後の課題としたいと思います。

米軍に関連して辺野古を拡張しても、普天間は移設されないというデマがあって、今現時点でも検索すると上位で引っかかりますが(辺野古へ移設しても普天間は返還されない 2019.2.22)、>懸案となっているのは、(4)「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」である。・・・ということですから、那覇空港を使わせないと言う「オール沖縄」含む左派が知事である限り返還されないというマッチポンプでしかありません。衝撃だとか何とか書いていますが、基地反対闘争が生き甲斐の(?)自分達が知事をやる限りは普天間は返還されないことから来る誤解なのであって、緊急時に那覇空港が使えればいいだけですから(沖縄・日本を守るのも重要な仕事のひとつである米軍が何故緊急時でも沖縄の民間空港を使えないんでしょうか?逆に基地反対闘争左翼こそフザけるのもいい加減にしろという話です。緊急時でも使わせないよ事故れとでも?あたかも米軍が事故を起こせば反対運動が盛り上がると考えているかのようです)、政府にしてみれば何のことはありません。枠が問題というなら、那覇空港は更なる拡張構想もありますが(大那覇空港構想が浮上! https://saitoshika-west.com/blog-entry-4557.html -再都市化- >オープンパラレル配置の2本の滑走路をフル活用する為には、ターミナルの位置を滑走路の内側に配置する必要があります)、そういうこと抜きに緊急時の使用は認められて当然です。

地盤の関係で辺野古の工事が完成しない説(?)もデマでしょう。工事は続いており、完成の見込みがない工事など有り得ません。外交安全保障は国の仕事であり、国がやると言ったらやりますし、結果的に普天間が早期に返還されるのが現行案です。何処からどう考えても基地反対闘争の遅延行為がなければない方が早く工事は済むとしか言いようがないのであって、牛歩戦術左翼に何故こんなに時間が?と言われても、協力してくださいと言うしかありません。

岩国が軍用機の数で極東最大規模の基地なのだそうです(104p)。人口13万6000人あまりの岩国市ですが、市内の米軍関係者は海兵隊と海軍あわせて1万人を超えるそうです。米軍や自衛隊との共用空港として2012年に開港した岩国錦帯橋空港は広島県西部からも利用客を集め、当初の国の需要予測の年間35万人を大幅に上回り、17年度の利用客は50万人を超えているそう。需要予測を大幅に上回るとは景気のいい話で、その理由はよく分かりませんが、広島観光と併せて岩国錦帯橋空港を利用する観光客が想定以上に多かったということでしょうか。岩国自体も観光地として有名だと思いますが、広島と岩国の中間点に厳島神社(宮島)があって、確かに観光に便利な位置にあります。地方の空港だと大都市ほど過密じゃないでしょうし、軍民共用が進めば無駄がないように思えます。

米海軍の陸上空母離着陸訓練用地に防衛省が取得したのが鹿児島県種子島沖合い12キロの馬毛島です(108p)。国内で2番目に大きい無人島で岩国基地から400キロと近くかなりの適地なのだそうです。着々と日本を守る体制が整備され、なおかつ負担軽減が進んでいるように思えます。

沖縄においても13年に日米が合意した統合計画では、米海兵隊の一部のグアム移転に伴い、嘉手納基地より南の米軍基地が順次返還されることが確認されています(114p)。すでにキャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区は15年に返還されていますが、返還が予定される米軍基地は人口が集中する沖縄本島中南部にあり、沖縄経済の振興に大きい影響があると期待されているようです。特にキャンプキンザー跡地は利用価値が高いとか。計画の着実な実施が重要だと思いますが、受け入れ先のひとつである辺野古に関して言えば、基地反対運動の左翼は工事が終わればいなくなるという地元住民の声もあって、地元はやむなしで概ね容認のようです。また名護市には東西格差もあって、下水道が未整備での東海岸で泳ぐなという地元の声もあるようです。農業と赤土流出の問題もありますが、とにかくお金をかけていろいろ整備しないと青い海を売りにすることひとつをとっても容易に前に進むものではありません。辺野古への移転工事がなくてもいずれはやろうということになるのか知りませんが、寂れてしまっている沖縄北部振興のためには、国費の投入があった方が早いこと疑いありません。誤解してはならないのは、沖縄にはお金を投入しているのであって、他所の県に比べて少なくしか配分してないなんてことは全くありません。ハーリー(沖縄伝統のボート競技)にも米兵は毎年参加しますし、長年共存してきた地元に米兵への偏見はないという話です。アップルタウン(辺野古社交街)はかつて兵士が1万5000人いた頃栄えたそうです。

仲井眞弘元知事が辺野古工事反対派に「普天間はどうするの?」と聞いたら、「辺野古反対」と答えるそうです(123p~124p)。息をするように論点ズラし。ず~~~っと米軍がいる辺野古の拡張工事も何故か(?)新基地建設だと言い張って新聞の大見出しにする癖が抜けないみたいですし。(体力と根気は見上げたものですが)反対運動何とかならないんですか。沖縄の未来のために国と協力できる政治家こそ沖縄県民のためになるのであって、そうした政治家を自民党は送り出さなければならないんだろうと思います。

某国が進出しているのは沖縄県の海域・空域でもあります。日本の防衛のためでもありますが、日本国が某国に軍事をやりたいから侵略してくださいとお願いしている訳では全くありません。沖縄を守るため、日本を守るため、沖縄県と日本国は協調できるはずだと信じます。恐らく先の大戦での地上戦の関係もあって複雑な心理が旧世代ほどあるのかもしれませんが、日本と沖縄の防衛は必ずやらねばなりませんし(侵略者が防衛の準備が整うまでゆっくり待ってくれる訳ではありません)、やらなければならない仕事(沖縄の負担軽減)は早い方がいいことも間違いありません。勿論、足りない部分を補強する必要はありますが(先島諸島等、未整備の空白域が残存します)、必要な防衛力を維持したまま沖縄の負担軽減を実行することは可能ですし、既に実績を着々と積み重ねているところです。


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