観測にまつわる問題

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NHK日曜討論(雇用:2019年1月20日)→インフレ・AI・ベーシックインカム等、マイナス実施の罠

2019-01-20 10:21:28 | メディア
まず定年延長問題ですが、基本的には少子高齢化社会に対応するためには、定年延長の方向性しかありません。高齢化社会は社会保障の増大を招き、少子化は社会保障を支える税収を減らす要因になります。PBの悪化は政府財政の破綻を招きますから、改革改善なくして日本国の持続的成長なしです。

番組でも指摘されていましたが、60歳から65歳で急激に能力が落ちるということはなく、現行の65歳までの定年延長路線に大きな問題はなさそうです。再延長の話は何歳まで問題なく働けるかという話になるんだろうと思います。これは個人差がありますから、際限なく一律でいけるか異論もあるでしょうから、何処かで引き上げに伴いグレーゾーンを設定することになる可能性はあると思います。現状は再雇用で給与を落とす感じですが、60歳になったら大体子育てを終えているでしょうから、妥当のようにも思えます。

大事なことは定年延長に伴い、それでも人件費を高齢者層に偏らせないことだと考えられます。人件費が高齢者層に偏り、若年者層の労働に依存すると(日本には丁稚奉公という言葉があります)、深刻な少子化が益々進む可能性が否定できません。当たり前ですが、給与が少ない若年層の方が節約しているデータもあるようですし(独身層はともかく、家庭を持つ若年層は確実に節約していると思います)、高齢者の死亡→遺産相続の際に高齢者へというサイクルも既に出現しており、需要と景気を考えても、高齢者層の給与の増大は経済的な詰みに直結しかねません。

ただ、対策が難しい訳です。給与下げの決定は基本的に至難で、下方硬直性があります。ですから、答えは基本的にインフレなんだろうと思います(年金は物価に関連し、問題があれば議論して変えることはできます)。インフレがおきている間は配分が大きいところを据え置き、配分の少ないところを物価にあわせてスライドさせれば、抵抗少なく分配を変えることが出来ます。技術の移り変わりが激しい現代において、同じ仕事をただ続けるという前提はもはや成立せず、日本経済の失敗に流動性の低さが指摘もされています。今言われている副業や兼業の解禁も流動性を高める一方策だと思え、経済の活性化を考える上で、流動性や柔軟性は重要な位置をしめるだろうと思います。賃金の下方硬直性の存在を考えると、インフレは経済の柔軟性を増しますから現代社会の経済活性化の条件とも言えると思いますが(実際低成長の日本はデフレ社会と言われてきました)、インフレにデメリットはあれど、この極めて重要なメリットが十分意識されてこなかったことが、日本経済の苦境に直結しているんじゃないかと思います。物価が上がって給与が上がると同じじゃないかと考えてしまうのが罠な訳で、目的はインフレでなくては実施困難な分配の変更にあって、それをやらない経済活性化の答えはまずなさそうだと筆者は考えています。少なくとも先進国一今でも成長しているアメリカは日本のようなデフレ社会ではなく、最先端企業が揃っています。インフレを実現する手法はいろいろ考えなければなりませんが、総論としてはやるしかなく、0%に近い方が望ましいということもなく、メリットを十分意識しながら、デメリットを踏まえ適切なインフレ率を目指すしかないと思います。デフレは貸出先がない貯蓄の補助金でアウトは半分正解ですが、半分不足していたんじゃないかと筆者は思います。

AIが本格的に機能するのは10年後ぐらいだろうけど、仕事の49%代替可能という指摘も重要だと思います。技術的に可能が即実行という訳でもないとも指摘されていましたが、やはりこうしたことは念頭にあるべきです。ただ、直近の政策に直結する訳ではなく、あくまで労働者の心構えだと思います(番組では指摘されていませんでしたが、難度によるもののブルーカラー労働はロボットで代替難しいものが多いように見え(自動運転はありますが)、ブルーカラー系労働の資格が10年後に無効になる割合は少なそうな気もします)。

関連してベーシックインカムの指摘がありましたが、現状では需要を考え適切な政策として理論を構築したとしても、実施困難の類の政策のように思えます。政府支出を一方的に増やすことはできないからです(PBの厳しい現状を考えると増やした分だけ、実施困難な引き算を実施する必要が出て来ます)。民主党政権の子供手当はそれで失敗したとも考えられます。少子高齢化社会が進行する現状では何もしない=危機が深まるの図式があります。現状を維持するだけでも困難がある訳です。インフレがもっとも現実的な経済活性化策であり、例えば少子高齢化傾向がストップするなど調整が進めば、話が変わってくる可能性もありますが、理由はどうあれ配って調整は現状難しいのではないかということになります。ただ、所得税は累進的ですから、格差が広がって社会不安になった時、低所得者層の所得税を下げられないことを考慮する必要はあるかもしれません。負担を下げられなければ、配る以外の選択肢もないはずです。社会主義的で望ましくありませんが、高所得者層に分配が偏り、高所得者層がお金を使わなければ経済は死ぬしかありません。現状では必要ないと思いますが、49%もAIで仕事なくなりましたのような時代が来た時、話が浮上する可能性はあると思います。今現在の日本におけるベーシックインカム論は生活保護を切れない以上、圧倒的かつ確実に破綻していると思っています(例えば国民全員に5万配って生活保護無しにできるでしょうか?そもそもベーシックインカム論は小さな政府で効率化と関係しますが、生活保護水準にあわせて国民全員に20万配るもありえません。実施するとなれば、生活保護を減額して残した上で(小さな政府は実現できないまま)、低所得者層に厚めに配るのような格差是正策になるような気がしており、それはベーシックインカムと言えないのかもしれません)。

メンタルヘルスの指摘がありましたが、メンタルヘルスに関連する労災申請・支給は年々増大しているのだそうです(メンタルヘルス対策、職場で何から取り組めばいいの? M.STAGE 産業保健サポート)。これも今まであまり注目されなかった現代的課題ですが、放置する訳にはいかないんだろうと思います。事故(怪我)がない職場は現状である程度評価されているでしょうが、メンタルヘルスを含め病気がない職場も評価されていく時代が来たのかもしれません。

しかし、経済を考えれば考えるほど、マイナスにできない、あるいはマイナスが困難だから、理論通りにできないの類の罠が結構あることに気付きますね。結局、通行止めが多くて、現代社会において適度なインフレを狙う以外に道はないのではないかという結論です。健全なインフレ率は、人類の経験則から2-3%といわれているともいうそうですが、多分そんなところなのかもしれません。日本はこの点を理解できず、道を外れ時間をロスしたような気がします。


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