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観測にまつわる問題

政治ブログです。「保険」「相続」「国民年金」「AIロボット」「運輸エンタメ長時間労働」「GX」を考察予定。

伊勢神宮と記紀神話の史実性

2019-01-08 08:27:36 | 日本地理観光
天照大御神のイラスト(いらすとや)

天武天皇の娘「初代斎王」宮殿か、建物跡を発見(読売新聞 2019年01月05日)

斎王は伊勢神宮または賀茂神社に巫女として奉仕した未婚の内親王または女王なのだそうですが、記紀神話(日本神話)の皇祖神天照大御神を祀る皇大神宮(内宮)と衣食住の守り神である豊受大御神を祀る豊受大神宮(外宮)の二つの正宮があります。共に女神とされます。近代社格制度では、全ての神社の上に位置する神社として社格の対象外とされ、現代でも内閣総理大臣及び農林水産大臣が年始に参拝することが慣例となっている最重要神社と言えます。江戸時代のお蔭参りのブームは大変なものがあったようです。

中国に比べて文字の成立が遅かった日本ですが、中国の正史三国志の魏志倭人伝の邪馬台国を中心とする倭国の女王卑弥呼が天照大御神(+倭迹迹日百襲姫命)、台与が豊受大御神(豊鍬入姫命)だろうなと筆者は思っており、外国史料で裏がとれた形です。こうした説は現状で必ずしも一般的と言えませんが、女王・女神が重要な位置を占めるという状況は割に特殊で記紀と中国史料の一致が偶然と思えません。中国史料が成立が先で記紀編纂時に参照した可能性がありますが、異論が噴出しているように中国史料の全面的引き写しも考えられないところです。

昔のことですし、日本の史料は伝承の制約、中国の史料は外国人の視点の限界があると思いますが、史料批判を踏まえた上で、基本的には事実を伝えていると考えなければ、歴史をやる意味もありません。古代の皇室の女性の役割は大きいものであり、それは日本の基層文化だったと思います。魏志倭人伝には卑弥呼が鬼道をやっていたとあり、それは伊勢神宮の斎王に符合。箸墓伝説ですが、女性の大規模墓は日本においても珍しいですが、巫女というだけでなく王だったと考えれば納得いきます。記紀で王と扱われていないのは、伝承する内に正確に伝わらなかった部分があるのでは?

卑弥呼の代以前の欠史八代(孝霊天皇以前)も基本的には事実を伝える(つまり2~7代まで大和土着で神武天皇の頃に九州から移民か)とは思っていますが、事跡が少なく外国史料で裏もとれません。ただ南方系ビロウを重視する皇室文化が植生から九州起源を裏づけ、朝鮮起源を否定していると思います。

何故伊勢かは詳らかではないと思いますが、一種の日の出信仰かとは思いますね。大和から東で海に面し距離もそう遠くありません。皇祖神も太陽神ですし、太陽神はしばしば農耕神であるようです。大陸から見て東が日本も意識されたかもしれません。

厳原(対馬)地名考

2018-12-30 21:02:19 | 日本地理観光
対馬島 厳原湾 Saigen Jiro

対馬の中心地というと、厳原なんですが、この地名ってイズ+ハラですよね。ハラはいいとして、イズって何だろうと考えました。静岡県の伊豆や出雲と関係あるでしょうか。

いろいろ考えましたが、イ+津だろうなと直感的に思いました。津のつく地名は内陸部も若干含めて日本全国に広がっていますし、対馬の港湾都市なら津絡みだろうとあたりがつきます。伊豆も山がちで海にグルリと囲まれている感じ似ているところがあります。グーグルブックス「地名 イズ 由来 イ津」の「静岡「地理・地名・地図」の謎 意外と知らない静岡県の歴史を読み解く!」(小和田哲男 2014)を参照すると、熱海に井津という地名があって、温泉のある港でないかという指摘です。厳原にも温泉はあるようです。【名字】井津(名字由来net)

そうなのかもしれませんが、あえて筆者は伊+津説にしたいと思います。というのも中国の史書によると大和が中心になる以前の倭国の中心地は北九州(奴国)ですが、大和と同時代の記述ではあるようですが、伊都国(糸島半島)も古い歴史があり、遺跡もあるようです。この都(ト)がミヤコ(中国語でトと読んだ可能性があるかもしれません)か場所(ヤマトのトと同じ)を意味するとすれば、問題はやはりイです。考えてみれば伊勢もありますし、伊がつく地名は多くその意味が気になるところです。

伊の意味は?名付けのポイントを徹底解説!(一期一名)を参照すると、「伊」はもともと神様を呼び寄せる聖職者を表す漢字なのだそうです。国産み神話のイザナギとイザナミもいますし、伊勢を考えても腑に落ちるところがあります。他に伊都や出雲も何やら宗教と関係ありそうな雰囲気です。伊豆と対馬の関係ですが壱岐(このお隣の島もイ+キでイ絡みです)もあわせて、亀卜を行う卜部は、対馬か壱岐か伊豆出身者だとする史料もあるようです(神坐(いま)す島 対馬・壱岐へ② 島全体が日本神話の世界そのまま 延喜臨時祭式による 個人ホームページ参照)(【連載】天晴れ!開運旅行「第2回 日本中の龍が集まるという壱岐の巻」 延喜式による ゆこたび参照)。

これで大体繋がってきた感じですが、伊=イは音読みで、殷初期の伝説の宰相伊尹(いいん)に因む嘉字のようですが、音読みの漢字の意味をそのまま受け取っていいんだろうかという問題はあります。地名のイが訓で伊が当て字だとすると、漢字の意味をそのまま受け取ってはならない訳です。ただ、あまりに伊という地名が宗教っぽいので、音読みでも伊を宗教的なものと受け取るべきではないかと思ってしまいます。平安京(ヘイアンキョウ)は音読みですが、漢字の意味をそのまま受け取るべきだというのと同じ意味です。トウキョウ・キョウトもそうですね。 亀卜の起源は明らかに殷にありそうだという相場観もあります。

伊津(日本姓氏語源辞典)という地名・人名も実際に存在しているようですが、兵庫県たつの市御津町岩見(旧:伊津(イツ))は奈良時代に「伊都」の表記で記録のある地名だとも。

ですから、厳原は伊+津+原だろうなと。厳がイズというのもよく分かりませんが、古代の当て字って物凄い適当というかよく分からないのが事実だと思います。

対馬は津島でしょうね。魏志倭人伝の倭国の一部ですが、船に乗りて南北に市てき(交易)すとあり、当時から日本の最前線として交易を担っていたようです。これは後の宗氏と同じ図式です。当て字が謎なのは考えても仕方がないんだろうと思います。

ウィキペディア「海神神社」(2018/12/30)を参照すると、「集落の北側にあって神社の鎮座する山を伊豆山と呼ぶが、伊豆はイツク(厳く)の意味で、神がよりつく神聖な山の意味である。」ということですが、検索すると厳くはイカクで荒々しい、勇猛だ、恐ろしいという意味になり、ちょっと違うような気がしないでもありませんが、地元の方言を知る訳ではないので、参考までに。

ちなみに海神神社 [対馬國一宮] (みっこ巫女祐気取り.com)を参考にしましたが、全国の一宮巡りの難所の一つが対馬の海神神社なのだそうです。「ツシマヤマネコ」飛び出し注意の看板も独特ですし、日本人の対馬観光も可能性あるんじゃないかと思います。

インフラツーリズムの勘所と間口の広げ方

2018-12-30 13:49:31 | 日本地理観光
四ツ木「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」東京スカイツリー #01(【無料】写真・壁紙・素材フリーダウンロードサイト)

12月9日の前回の記事に続き、インフラツーリズムの記事。

モデル地区選定し社会実験 19年度着手 訪日需要に対応へ インフラツーリズム有識者会議(旬刊旅行新聞)2018年12月25日

>年度内には手引きをとりまとめる。「誘客」「受入環境整備」「持続的な展開」を念頭に、各インフラツーリズムの「勘所(好事例のポイント)」を整理する。勘所を踏まえ、プロジェクトの推進をはかる。国交省の総合政策局栗田卓也氏は冒頭、「現実的に『なにをどう動かせるのか』を議論していきたい」と述べ、実効性の担保を重要視した。

>現状報告として、事務局からインフラ施設のランク分けについて説明があった。年間来訪者数が1万人以上はAランク(構成比3%)とし、巨大地下神殿と称される埼玉県の首都圏外郭放水路などを例に挙げた。1千人以上1万人未満がBランク(同11%)、1千人未満がCランク(同86%)となる。

>実際の来場者数をみると、Aが約28万人(同60%)、Bが10万3千人(同22%)、Cが8万5千人(同18%)となった。

>Aランクだけで来場者数全体の約6割(28万人)を占め、ほとんどが大都市圏近郊に集中している。ツアーが平日に偏っているといった傾向も浮き彫りになった。施設公開の約8割が施設管理者の主催となり、管理者・自治体の約7割が平日のみしか開催していない。旅行会社のツアーは1割程度にとどまる。

インフラツーリズムの拡大に向けて(国土交通省)

>Aランクの施設 来訪者数 特徴等
宮ヶ瀬ダム 101千人 観光放流の予定の周知 ◯ ◯ ◯ 東京近傍
八ツ場ダム 29千人 建設中の多彩な見学ツアー ◯ ◯ ◯ 草津温泉の近傍
利根導水路 28千人 地域の小学校の社会科見学を受入◯ 東京近傍
天ヶ瀬ダム 26千人 駅から近いダム ◯ ◯ ◯ 京阪宇治駅から約3km 世界遺産平等院近傍
湯西川ダム 22千人 水陸両用バスツアー ◯ ◯ ◯ 東京近郊の温泉地(湯西川・川治・鬼怒川温泉等)
首都圏外郭放水路 20千人 インスタ映えする防災地下 神殿 ◯ ◯ ◯ 東京の近傍
中部国際空港 18千人 空港見学ツアー ◯ ◯ ◯ 名古屋の近傍
関西国際空港 14千人 空港見学ツアー ◯ ◯ ◯ 大阪の近傍
明石海峡大橋 12千人 巨大つり橋の主塔登頂ツアー ◯ ◯ ◯ 神戸の近傍
津軽ダム 10千人 水陸両用バスツアー ◯ ◯ 世界遺産の白神山地への入口

>○ ダムカード・マンホールカード等のインフラカードがコレクターを中心に高い人気。
>○ ダムをモチーフにしたダムカレーを提供するお店が全国で増えている。

インフラツーリズムの勘所は、ビジュアルだとかインスタ映えとか見た目のインパクトではないかと筆者は感じています。やはり首都圏外郭放水路なんかが典型なんですよね。古代の王様は巨大な墓を建設し威信財としましたが(ピラミッド等)、それは現代においても観光の主力だったりします。観光の何が魅力かと考えた時、凄いものを見たいという感情は確かにありますし、観光という字義からして、素晴らしい風景(ビジュアル)を見たいというのが基本とも言えると思います。土木は古代より権力と結びつき、権威的なものであったように思います。

観光の間口を広げることを考えた時、インフラへの理解は重要でしょうが、あえて言い切れば二の次でいいとも思えます。マニアックな知識の収集も楽しいとも思いますが、さすがに裾野は狭くならざるを得ません。それでは観光の柱に成り得るはずもありません。解説なんかは関心のある人への質問に答えられれば、要所を押さえたもの・軽いもの・導入的なもの・フレーバー(味・風味)的なものでいい。

そう考えると、インフラツーリズムの概念が国土交通省の枠組みに収まるか疑問もあります。電波塔(東京スカイツリー・東京タワー)なんかも立派なインフラではないかと。東京都庁なんかもインフラと言えるかもしれません。つまり公共の建築物は全てインフラツーリズムの対象に成り得ると筆者は思います。こうして間口を広げた方が旅行者が楽しめるツアーが組め、民間での普及も進むと思うんですよね。やはり商売は顧客本位でなくてはなりません。別に国土交通省とかダムとか縦割りを否定しませんが、セクション横断も最初から同時に進めるべきなんだろうと思います。インフラへの深い理解にはならないかもしれませんが、それはそれで興味がある人を対象にやれば良いのであって、軽い解説で雰囲気を味わえればいいと考えれば、民間の旅行会社に任せて十分だと思います。

また、ダムカードの配布なんかがコレクターに受けているというのは個人旅行の潮流の気配を感じます。多分好きなマニアが時間のある時に収集しているのでしょう。神社で言えば御朱印集めがそうと言えるかもしれません。国内旅行者が主たるターゲットでしょうが、コレクター意識を刺激し、旅行する理由をつくってあげるのも、インフラツーリズムに限らず、観光促進には有効なんだろうと思います。コレクションするものは、カードや印に限らず、メダルや模型(3Dプリンタで簡単につくれるものでもいい)なんかでもいいし、対象は橋・トンネル(青函トンネル・関門トンネル・東京湾アクアライン・山手トンネル・関越トンネル・飛騨トンネル・恵那山トンネル)・城・寺・塔・産業遺産(鉱山採石場・砲台等軍事遺産等)・近現代建築・古民家等幾らでも考えられると思います。環境整備して興味がある人が観光して関心を深めることで結果的に理解が進み更なる発展に繋がる部分もあるだろうと思います。

ダムカレーとはダムをモチーフにしたカレーらしく、やはり見た目で興味を引く感じになっていると思います。誰が考えたか知りませんが(笑)。



場が盛り上がると思わぬ派生物もあるのかもしれませんね。

ところで一番人気とされる宮ヶ瀬ダムなんかはインフラツーリズムというより、自然を楽しむというかエコツーリズム・公園に近いのかなと思います。インフラツーリズムは人工物が対象ですが、元より人工と自然を明快に分けられる訳ではありません。ため池なんかも人工物でもあり自然でもあり、里山は自然に見えますが人の手が入らない自然は原生林ぐらいのものです。宮ヶ瀬ダムは素晴らしいとは思いますが、インフラツーリズムの角度で断トツトップと捉えるには違和感があります。ダムだからインフラで観光客が多いから素晴らしいではなく、インフラの価値そのものに着目した切り口が必要だと筆者は思います。首都圏に近いから客が多いとか、自然に癒されるために来ているのであってダムを見に来た訳ではないとかそんな感じであるようにも見えます。ダムカードはその点、スペックが記載されているところが面白いんだろうと思います。

利根導水路なんかは逆にインフラツーリズムの視点を掘り下げてストーリーで売り出すこともできるかもしれません。利根導水路は「利根川上流のダム群により開発した都市用水を武蔵水路及び荒川を経由して東京・埼玉に導水する」ものですが、元々利根川は東京湾に注いでおり、江戸時代の利根川東遷事業で流れを変えて太平洋に直接注ぐようにした訳です。関東には渡良瀬遊水地や首都圏外郭放水路もあって、それぞれの影響等のシミュレーションなんかをCGで見られれば面白いかもしれませんよね。インフラとは人工物ですが、環境の改変に着目したら面白そうです。

東海道は元々三浦半島→上総ルートだったというネタもあります。東京湾の沼沢地が開拓されてルートが変わったはずなんですよね。縄文海進の地図を見れば、東京湾沿いのルートこそ有り得ないことが直感的に分かるだろうと思います。道路は主要インフラであるものの、道路を見る観光というのは中々想像しにくいところがありますが、関東の古代ルートというのは現代的視点でちょっと面白いんじゃないかと思います。エコツーリズムなんかもあわせて、環境の変化を巡る旅というのも有り得るかもしれません。

ややインフラの概念から外れますが、他に江戸のBefore Afterという切り口もあるでしょう。

江戸幕府以前の江戸(江戸東京探訪シリーズ)

日本の歴史においてこれほど劇的な「首都」移転効果は他に見られるものではありません。人間活動と建築・自然への影響を調べ学ぶのも楽しいものではないでしょうか。

空港なんかは空港を見る目的というよりは、ショッピング(免税店・レストラン・土産)かなという気もしますが、ハブ空港なんかの路線図なんかのCGとかちょっと面白いかもしれませんよね。鉄道オタクがいるのですから、それに倣ってみることもできそうです。空港ランキングと言えば、満足度であることが多いように思いますが、鉄道のように「乗降客数」や路線数に着目し、どのパイプが太いかみたいなことをビジュアルで表現してみると、空港パワーが一目瞭然である訳です。これは道路や港にも言えることであり、鉄道もあわせて全てを総合すれば、物流の一大マップが完成します。(電気の使用に関連して)北朝鮮が暗い地図とかありますが、ああいう感じで人の流れ・物の流れを地図で表現した上で、交通インフラの力を感覚的に理解できれば、インフラを見る目も変ってくるのかもしれません。

城だったら、攻略難度を考えてみるとか、軍事遺産も同様に攻撃力や防御力で換算すると面白いのかもしれません。インフラツーリズムとは機能美でもあると思う訳です。城はまぁ威信財でもありますから、装飾の要素もあって、ちょっとインフラの概念には馴染まないところもあるかもしれませんが。

近現代建築や古民家も同様に機能の視点と装飾(デザイン)の視点がありそうですが、インフラツーリズムの観点で評価するなら、やはり機能に着目したいところです。インフラストラクチャーとは下部構造で経済・福祉を下支えするものであり、本来的に機能的なものだと思います。例えば、耐震性の変遷・耐火性の変遷・耐風性・耐雪性等々、防災の観点から見ることもできますし、密閉度(室温に着目)や広さと世帯人数の関係等住環境の視点で見ることも出来ると思います。機能を知れば、何が凄いか分かってくる訳で、目立たないが凄いものに着目するというのは、日本人に合っているところもあるような気がします。

鉱山採石場なんかは雰囲気あって、ある意味観光に適していると思うんですよね。鍾乳洞とか主要観光地だったりするじゃないですか。安全確保が重要で下手に産業遺産になったらいじれない部分もあるのかもしれませんが、洞窟探検に自然も人工もないと思う訳です。松代大本営・人吉海軍航空隊なんかもそうですが、建築とは結局工事ですし、国土交通省とセクションは違うかもしれませんが、かなり親和性があるんじゃないかと思います。土木技術の変遷を踏まえれば、歴史の深い理解に繋がるのかもしれません。スマホって暗いところで写真も撮れるようで、開拓すればポテンシャルはありそうです。海外からの注目を軸にした逆輸入型もいいんですが、国内需要の創出→インバウンドの流れが本来的な筋とも言えるのかもしれません。

先日、富士山の観光を含む記事を書きましたが、ビジュアル重視を踏まえると、富士山観光サイト・団体でそうしているように、写真コンテストやビューポイントの紹介なんかがあっていいのかもしれません。富士山は日本を代表する定番ですが、新しい定番をつくるのような。

最後に国交省ではないと思いますが、東京スカイツリーを。高い電波塔は観光施設でもありますが、電波塔自体、典型的なインフラであるとも言えます。ですが、機能にあまり着目が無かったように思います。そもそも東京タワーがあったところに世界一の高さの電波塔を建てた理由は、既存の電波塔の東京タワーが位置する都心部では、超高層建築物が林立して影となる部分に電波が届きにくくなっていたほか、ワンセグやマルチメディア放送といった携帯機器向けの放送を快適に視聴できるようにすることにあったようです(ウィキペディア「東京スカイツリー」2018/12/30参照)。

要は高層化の対応と、送信データの大規模化に対する対応だったのでしょう。検索してみると、スマホでワンセグも見られるようなんですよね。ならば、既存インフラを活かさない手はない訳で、東京はスマホでワンセグを活かした街づくりを志向すればその大規模性とあわせて他の追随を許さない文化を生み出せるのかもしれません。一度文化が形成されてしまえば、旅行者にワンセグチューナーを貸し出す展開にも繋がるかもしれません。そうして東京スカイツリーが最大限活かされた街づくりが出来れば、東京スカイツリーを見る目もまた違ったものになるのかもしれません。

広島×インバウンド

2018-12-29 15:27:08 | 日本地理観光
小原古邨 「安芸の宮島」パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

延び延びにして申し訳ありませんでしたが、ようやく広島×インバウンドを書くこととします。まぁ、自分で納得いく感じにならなかったのが、延期した主たる理由です。自分のポジション的に(安全保障よりの関心)広島の象徴とも言える原爆ドームをどう料理していいか全然分からなかったんですよね。最初は厳島神社とかその他あるしいいやと思っていたのですが。正直に書いておきますが、筆者ははだしのゲンのような漫画を何処か小馬鹿にするところがある子供でした(親が買ってきて家にあって、読むは読んでるけど、別に好きでないというか。ガチガチの左派の家庭とは思いませんが、筆者の子供の頃の愛媛(松山)は結構対岸の広島のテレビの方が映りが良いチャンネルもあって、広島の情報で育っている部分があるというか、広島ローカルのCMも知っていたりするところがあって、親にしてみればはだしのゲンのような漫画も買いやすいところがあったのでしょう)。そういうナチュラルボーンで何故か平和より(左より・リベラルより)の見方を吸収せずに育った筆者だということを踏まえて、原爆ドームを核とした広島のインバウンド記事を見ていただければ幸いです。

「世界が驚愕 外国人観光客を呼ぶ日本の勝ちパターン」(石井至 日経BP 2018/8)という本を書店で先日見かけて、ようやく広島のインバウンドを何となく分かったような気になれたというか、広島はどうも海外で(欧米人相手に)圧倒的な知名度があるようなんです。HIROSIMAは元々ワールドクラス。日本全体のインバウンドは85%がアジアからですが、広島は約半分が欧米人だそうです。この本では欧米豪は長期滞在が多いけど、財布の紐は意外と固いからアジアがいいよみたいな主張のようですが、実際のところ平日の稼働率が産業としての課題なんで、やはり長期滞在でしょという気もしますし、富裕層狙いだとか何とかいろいろ視点はあると思いますが、それはさておき、広島の観光としては欧米人に強いという強みを活かすしかありません(半分がアジアですからそちらも重要は当然)。

ただ、リピーターにならないとか、素通りが多い(関西や福岡に泊まる)という課題があるようです。対策としては泊まることが目的になる宿泊施設を建てるとか、泊まらざるを得ないイベントをするとかだそうですが、イベントは一過性ですから、やはり宿泊施設の方が重要だし、原爆ドームと宮島以外の観光地が鍵ではないかと筆者は思います。リピーターの方はサッパリですが、今度ディズニーにでも聞いて見るかな・・・(つては全然ないんですが、その辺の情報を何となく漁ってみます)。

本からの広島ネタは以上ですが、何故HIROSIMAが欧米人に知名度があるかと言えば、まずやはり原爆投下が世界史的な事件なんでしょうね。そういう意味ではNGASAKIもいけるような気がします。だとしたら、戦略としては、原子力と安全をテーマに徹底した情報発信をするという手があると思います。といっても、核廃絶運動をただ強調すればいいとは筆者は思いません。原爆投下は非常な惨禍ですが、人命が失われたという意味では、他に同等以上の惨禍は幾らもあります。特筆すべきは、原爆が戦争で使われたケースが広島と長崎しかないということだと思います。当事者の複雑な感情は否定しませんが、戦後30年経って生まれた筆者には、その辺はもうお互い様のように思えており、被害を強調するかのような発想は一歩引いて見ています。ともあれ、多大な原爆によって被害を受けた広島も長崎も、他の被災地(日本全国空襲(空爆)はされている)と同様といったら後遺症に苦しんでいる方に失礼かもしれませんが(空襲による後遺症の方もあまり目立たないにせよいるでしょう)、とにかく原爆ドームのような象徴的施設を除いて、見事に復旧・復興したと言えると思います。どのような方が特に広島に関心があるか筆者は知りませんが、そうした歴史に関心がやはりあるんだろうと思います。

その上で何を+αしていくかですが、例えば、原爆の投下が広島・長崎だけとしても、原爆実験はかつて世界中であって、福島の事故で放出された放射能より、中国の核実験で放出された放射能の方が巨大であったという事実があります。砂漠だからといって(地上で)ドンドンやって、風にのって日本にも飛んできたんですよね。単純比較は出来ないにせよ、明らかに適当に地上核実験していた頃が一番ヤバかったでしょうし(それでも甚大な影響があったようには思えません)、福島事故は二度と起こしてはならない惨禍であり、帰還できない地域の方にしてみれば1960年代も何もない訳ですが、徒に害を恐れることは意味がないと思う訳です。

測定データで見る「過去の出来事」(日本の環境放射能と放射線)
1960年代の放射能汚染と今回の汚染との比較 米・ソ・中国が原発実験を繰り返していた頃 熊井章のホームページ)

こうしたことが理解できるのが、実は広島人だったりはしないんでしょうか。まぁお隣でテレビは見ていたにせよ、広島に住んだことのない筆者には分からない話ではあるんですが。「75年間不毛説」とは一体(1945 原爆と中国新聞 <6> 報道と再びの災禍 ヒロシマ平和メディアセンター 中国新聞)? ペンペン草も生えなかったはずの広島ですが、その面影は原爆ドーム以外に見ることは出来ません。

日本は太平洋の国ですが、太平洋の国が核実験の舞台になったという事実もありますし、その関連でも欧米で特に関心が高いとも言えるのかもしれません(英米仏がオセアニアで核実験しています)。

まぁ核不拡散の重要性は勿論ですし(核戦争が起きたら地球が滅びます。核テロの危険性は言うまでもありません)、そうした角度からのものの見方を否定はしませんし、北朝鮮始め現在の国際的潮流は核不拡散の重要性を示しているとも思いますし、筆者も全くの北朝鮮核武装するな派でありそういう言動もしてきたと思いますが(北朝鮮が核武装してくれた方が対抗して核武装できるのような考えは特にありません。何故なら北朝鮮に核武装をさせるような言動そのものが日米同盟の根幹を揺るがし、核武装を遠のかせるというファクターもあるからです。ただ核武装なしで北朝鮮はまだしも中国と対峙ってどうなんだという思いもあります。トランプ大統領を筆者が良いと思うのは、中国に対する安全保障上の積極性が見られるところです)(元々核武装派でその困難性に気付いて言わなくなった経緯があります)(拉致問題の解決も米国の戦略と対立し日本の国益を守りつつ行うことは不可能だと思います)、とにかく反戦非核というような考え方に共感するようには必ずしも育っておらず、原爆ドーム的なムードに共感はまぁ正直ないんですが、広島の立場としては概ねそうなんだろうなという理解はしつつあります。

いずれにせよ、核と安全に関して記憶はあっても現状で少なくとも被災地はないと言える広島だからこそ、核と安全を考える役割が果たせるのかもしれません。現在進行形の被災地ではちょっと。少なくともその象徴は存在し皆関心があることは間違いないんだろうと思います。

厳島神社に関して言えば、やはり特異なビジュアルでしょうね。鳥居というのが原初に何を参考にしたにせよ(多様な説があって筆者にはこれというものは見当たらないような気がします)していないにせよ、日本で独自に発展したことは間違いないと言えますし、中でも厳島神社の鳥居は特徴的です。どうも島自体が御神体だったから、島に建てるのが畏れ多いということのようです(厳島神社はなぜ海の上にあるの?宮島観光スポット「厳島神社」の歴史と雑学 LATTE TRAVEL)。大神神社も山が御神体の磐座祭祀ですが(一帯に最初期の前方後円墳が存在し、大和朝廷=日本国の発祥の地と言えると思います)、(言語学上日本人の一派であることが明らかな)沖縄の御嶽(うたき)も「腰当森(くさてぃむい)」、「拝み山」等と言われるようで、そもそも原初の日本人の信仰は自然崇拝のアニミズムだったように思えてならず、厳島神社の宮島が御神体という発想は原初の形態を残しているように思えます。だからこそ価値があると言えるし、特異な形態を生み出したんでしょうね。(「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の構成資産の一つとして、世界文化遺産に登録された)宗像大社の沖ノ島も島全体が御神体で禁足地にもなっています。

ですから、厳島神社の観光を伸ばすというか価値を高めるひとつの方法としては、自然崇拝の視点を持つことが挙げられるかもしれませんし(そうしたことに関心が深い人が増えれば、他の神社等と共に厳島神社に訪れようとする人が増えるかもしれません)、神戸や博多や日宋貿易との絡みでも平清盛とか、愛媛の大三島神社に行って厳島神社の宝物館とか、 横山大観筆≪屈原≫と足立美術館(島根)とか、厳島神社であれば、ワールドクラス・全国区のポテンシャルって探せばいろいろありそうな気もする訳です。これからの観光は個人の嗜好にどうあわせていき、選ばれるかが重要になってくるのかもしれません。

他にも食なら牡蠣がありますよね。牡蠣好きの人は世界に多いとも考えられ、宿泊やリピーターを考える上で武器にもなるかもしれません。オイスターバーで検索すると、東京ばかりで地方のオイスターバーに目的地になるような店は少ないのかもしれませんが、せっかく地元が産地なんですから、広島ならでの郷土色等あったら面白いんじゃないかと思います。広島とレモン・塩で検索したら色々出てくる訳で、その他地元産の品を使えば、広島ならではのオイスターバーも有り得るんじゃないでしょうか。

西条の酒蔵も日本酒の地位が世界で確立したら、ワイナリーを訪れるワインツアーがあるように、インバウンドにおいても武器に成り得るのかもしれません。これでもうおつまみ選びに困らない!日本酒に合わせると相性抜群なおつまみを蔵元さんに聞いてみた!(KURAND)・・・チーズやアンチョビに合うなら海外需要も開拓できるのかもしれません。日本(広島)に来た時に、試してもらえれば次の可能性も?ただ、空輸だと大変そう。エジプトの米で日本酒つくって欧州で売るとか考えたけど、イスラム教国で酒は不味いか。どうもイタリア米でやってるみたいですね(イタリア米で造った日本酒をミラノ万博に参考出品。現地メディアの取材が数多く見込まれます。 ValuePress!)。クールジャパン戦略。

熊野筆で美容ツーリズムもありえるかと思いましたが、通常医療ツーリズムの一種で整形ツーリズムみたいですね。化粧品会社に対する観光旅行もないみたいですし、モノに対してマニアック過ぎるか。何かないかなとは思ってますが。

観光学に対する着目点

2018-12-29 13:20:26 | 日本地理観光
富士山冬3(フリー素材タウン)

観光学は全く触っていないのですが、個人的には主観的な意志・目的をベースとした分類に基づく分析が今の時代、重要なんじゃないかという気がしています。

例えば、食べるとか宿泊するとか行動別の分類や東京とか大阪とか地域別の分類ではなく(それも必要だと思いますが)、ディズニーランドに行きたいだとか温泉に行きたいだとか、最近はエコツーリズムやアグリツーリズム、インフラツーリズム、ジオツーリズムのようなものもあるかもしれませんが、何を見たいか何をしたいかという意志や目的を重視した分析が重要だと思う訳です。

その理由として、団体旅行から個人旅行の流れがあると思います。団体旅行だと団体割引でリーズナブルかもしれませんが、最大公約数的な観光になってしまうのが否めません。個人の趣向には違いがありますから、自分(達)なりのカスタマイズをするのが楽しい訳です。また少子化という構造要因を踏まえると、どこをどう考えても国内需要(マス)を狙った団体旅行は先細りにならざるを得ません。実際に団体旅行に依存してきた観光地は苦戦傾向にあると思います。

現代の基本的潮流に個人の趣向の細分化があります。日本も必ずしも例外だという訳ではありません。工場も多品種少量生産の傾向ですし、amazonのロングテールだとか、同人誌の興隆、コンビニなんかもスーパーで安いものをまとめがいのアンチ(利便性が高いのが魅力な訳です)と言えるかもしれませんし、ドンキホーテが栄えたりもします。

それはともかく、旅行業界でも個人旅行の傾向は顕著でそれはインバウンドにも言えることだと思います(インバウンドが団体旅行と無縁だとも言いませんが)。団体旅行の場合は個人の意志や目的はあまり関係ありません。これまでの業界は知ってか知らずか団体旅行向けにカスタマイズされている可能性があると思います。しかし、それはそれで良いとしても、それでは個人旅行(仲間内の少人数旅行)の潜在需要を捉えきれない可能性があるんじゃないでしょうか。個人や同じ趣味を持つ仲間の旅行に、特に興味がないものの入る余地はほぼありません。意志・目的が全てです。

温泉地を例にあげると、その温泉を目的に来たのか、(ビジネス等)何かのついでに温泉なのかで、随分様相は違ってくると考えられます。その温泉を目的に来た観光客が多ければ多いほど、強い温泉地だと分かると思います。いったん別目的の人を脇においておかないと、温泉地の正確な分析はできないはずです。強い温泉地を並べてみると、一定の傾向が伺えるかもしれません。その傾向を捉えて長所を伸ばしたり、短所をカバーすることを考える訳です。温泉地でのショッピングもついでなのか、ショッピング自体を楽しみにしてきたのかで違ってくると思います。宿泊所もその宿泊所を狙ってくるぐらいでないと価格競争の泥沼に突っ込んでしまうと考えられます。

地域・地方の立場でも、どの観光地が強いかは分かっているでしょうが、どの程度強くどの程度可能性があるのかに関しては、いったん旅行に関係ない人の流れを切って考えてみるべきなんだろうと思います。

まぁディズニーやUSJが強いに決まっているような気もしますし、あるいは免税店でのショッピングが強いような気もしますが、神社仏閣等文化施設も勿論人気はある訳で、そこに何故行くかということですよね。まぁ旅行自体が楽しみな可能性も多分にありそうですが、それを言っても始まらない訳です。

自動車博物館を最近調べていて、思ったより未整備な気がした訳です。地域の観光施設のひとつとしての博物館という位置づけから脱しきれてなく、全国どころか全世界対象に興味がある人を惹き付けるような博物館であれば、結果として地域にも貢献するのかなと。

後、インスタ映えというキーワードがありますが、だとしたら景観・写真映りが観光のひとつのキモとも言えると思います。元々観光という言葉は景色・風景・光景を観るという意味でしょう。だとしたら、ものになる景観とは何か、それを整えるためにはどうするかで、景観条例等を考えることができます(勿論コスト、費用対効果、防災等の視点もあわせて考えなければなりません)。

体験観光なら、どんな体験が何故受けるかです。遊園地なんかも一種の体験観光と言えるかもしれませんし、それは素直に五感に訴え楽しいんだろうと思います。

正確な分析で投資家が勝算を感じたならば、投資が進み経済が活性化するんだろうと思います。

祭りもいいんですが、産業としては一過性ですよね。どちらかと言えば地元の人のためにあるというか。宣伝効果や広告塔としては機能しそうですが、今の時代、それを核として地域を引っ張るまではいかないのかもしれません。

日本の象徴でもある富士山ですが、近頃では登らない観光も人気だとか(「登らない富士山」が実は玄人に人気!? 目指せ富士山マスター! YAMA HACK)。富士山観光に行って登らないのもどうかで登らないと楽しめないものも幾らもあるでしょうが、インスタ映え等を考え、美しい姿を楽しむという意味の観光であれば、登山を前提としない観光の整備もひとつの柱に成り得る訳です。具体的に各ボイントのアクセスを改善するとか。富士山百景写真コンテスト(富士山観光交流ビューロー)を見ると、様々な美しい景観のアピールはあると思いますが、例えば地図を見て、富士山の風景だけでなく神社等他の風景や食事・休憩も含めて、自分で取捨選択をすることのサポートをするベージなんかもあると良いと自分は思います。まぁ、モデルルートの提示も良いとは思いますが、個人旅行は自分での組み立てが醍醐味ではないでしょうか(ドライブ好きにはそういう人も多いとか)。また、個別の観光施設が各ページにあると、ちょっとどう巡るかを組み立てにくいですよね。富士山ぐらいの観光地であれば、それが出来ると思います。また、季節感があると最高ですよね。何なら高低差で山からみた景色もそこに富士山感があると、わりと面白いかもしれません。例えば、富士五湖を富士山から撮ったり、茶畑や新幹線が撮れたりしないだろうかということです。更にはフジヤマミュージアム(富士急ハイランド)は近現代の著名画家が描いた富士の絵画の数々を展示する美術館のようですが、写真とのコラボとかないんだろうかと思いますし、遊園地というより、自分で写真を撮りに行くのとセットで楽しめないんだろうかと思います。

他の切り口としては、富士登山(富士登山の魅力 やまなし観光推進機構)とか、富士五湖地域だったらテーマパーク観光とか(富士河口湖町の遊園地 ベスト5 トリップアドバイザー)もかなりの力があるでしょうし、世界遺産ということで、信仰・宗教面という切り口ももっとあっていいのかもしれません(富士山が世界遺産に選ばれたわけ 〜 信仰と芸術と構成資産 〜 世界遺産富士山とことんガイド)。これらを併せて強い富士山観光が形づくられているんだろうと思いますが、狙いが違うんで、一端分解して集合体として見ても良いと思いました。そしてこうした訴求力がある富士山観光に例えば山梨県や静岡県がそれぞれ地元物産を生かした食や宿泊・土産物を提供できると面白いみたいな(まぁ富士山の魅力を越えて有名レストランや有名ホテルや免税店のようにそれ自体が目的とは中々いかないかもしれませんが)。医療ツーリズムやジオツーリズムなんかも考えられるかもしれませんが、それはまた別にやることとします。

どうも現状ではこういったことが分かっているようで分かってない感じもあって、筆者はこうした考えをベースに本日は幾つか観光関連の記事を書くつもりです。

「来訪神:仮面・仮装の神々」(ユネスコ無形文化遺産登録)④(宮城)

2018-12-29 06:58:50 | 日本地理観光
写真の出典は下記文化庁報道発表より

米川の水かぶりは、宮城県登米市に伝承され、二月初午に行われる行事である。当地では、この日、藁簑わらみのや被かぶり物を付けた奇怪な姿の者たちが火伏せを願って沿道の家々に水を掛けながら、社寺等を参詣する(報道発表「「来訪神:仮面・仮装の神々」のユネスコ無形文化遺産登録に向けた再提案の決定」より 文化庁)。

初午(はつうま)(日本の行事・暦)

初午行事は本来は、農作業が始まる旧暦の2月に行われていたようです。711年(和銅4年・奈良時代)のこの日に、稲荷社の本社である京都の伏見稲荷大社に稲荷大神が鎮座されたといわれており、稲荷信仰に関係する行事でしょう。ただし米川の水かぶりは火防を願う行事で参詣する社寺は秋葉大権現のようです。

興味深いことに稲荷信仰と秋葉神社には何らかの関連性があり、米川の水かぶりもその一形態と言えそうです。

オタクの聖地・秋葉原にお稲荷様が多い謎を紐解く。そこから見える歴史とは?(mizica)※(秋葉神社がある)秋葉原には稲荷神社が多いとか。
秋葉神社・三座稲荷(神社巡りジャパン)※埼玉県飯能市稲荷町
秋葉稲荷神社(神社人)※所在地:大分県別府市秋葉町1

東日本系で江戸時代に深い関係があるような気がしますが、別府市の一部は幕府領で、火男火売神社が存在しているのが注目されます。

お稲荷さんは元々五穀豊穣を願う農耕神のようですが、商売繁盛の神に変わっていったようです(お稲荷さんはどうして「五穀豊穣」から「商売繁盛」の神様に変わったのか 和じかん.com)。江戸時代は石高制でしたから、米=金でそのあたりが転機だったのかもしれません。

火伏せの神は火防の神ですが、江戸は度々大火に見舞われたことで知られます。火防の願いが強くなることも当然でしょう。元々は焼畑に関係ある山の信仰という指摘もあるようです。

いずれにせよ、どうもこの二つの結びつきは都市・町の信仰を示すと思います。

登米街道:築館~登米(宮城県の町並みと歴史建築)

秋葉原は江戸で、埼玉県飯能市は秩父街道、大分県別府は温泉場ですね(別府温泉のなぞと歴史 別府市 >江戸時代・元禄7年には、医学者貝原益軒が残した「豊国紀行」にも温泉場の賑わいが記述されています)。

旧暦で農作業の開始に関わる初午行事だということですが、稲荷神が五穀豊穣の神から商売繁盛の変わっていくに従って、火伏せの神と結びつき、原義が忘れられ、新暦に移行したとも考えられます。

平成30年「米川の水かぶり」(登米市)

>宮城県登米市東和町米川の五日町地区に古くから伝わる火伏行事で、毎年2月の初午に行われます。地区の男だけが水かぶりの姿になり行事に参加できます。
>男たちは、裸体の腰と肩に藁で作った「しめなわ」を巻き、「あたま」と「わっか」を頭から被り、足に草鞋を履き、顔に火の神様の印である竈の煤を塗ります。この水かぶり装束を身に着け、男たちは神様の使いに化身します。
水かぶりの一団は大慈寺の秋葉山大権現と諏訪森大慈寺跡に祈願した後、奇声を上げながら町に繰り出し家々の前に用意された水を屋根にかけ、町中の火伏せをします。人々は男達が身に付けた「しめなわ」の藁を抜き取り、自家の火伏せのお守りにします。

注連縄(しめなわ)は神の依り代。水かぶりは神の化身で来訪神行事だということだと思いますが、何故水かぶりというかは良く分かりません。水をかける行事のようにも見えますが、神道の水行と何らかの関係があるのでしょうか。

米川の水かぶり(米川里山だより)を参照すると、八幡神社、若草神社(江戸時代には稲荷大明神宮と称した)にも関係があるそうですが、これ以上の調査は止めておきます。さすがに宮城県登米市東和町のサイトだけあって、詳しいものがあると思います。

火伏せ行事ですが、山伏(やまぶし)との関連が見て取れると思います。伏せとは屈服させるのような意味もあって、折伏(しゃくぶく、しゃくふく)という言葉にも使われていますね。町を破滅させる火事を屈服させる願いをこめた行事が火伏せ行事ではないでしょうか。山伏(山伏とは? スピリチュアルコネクト)ですが、庶民は山を異界として恐れていたようですから、やはり山という異界を屈服させるために山伏は修行しているのではないかと思えます。怨霊を神として祀る御霊信仰もこうした考え方に通じるものがあると思います。恐ろしいものを祀るのはある種屈服させコントロールしたいからなのでしょう。

「来訪神:仮面・仮装の神々」(ユネスコ無形文化遺産登録)③(佐賀)

2018-12-20 22:58:53 | 日本地理観光
見島のカセドリ行事(地域文化資産ポータル)

起源は定かでないそうですが、古老の話によれば、鍋島候が蓮池に城を築きその城主になって以来、およそ350年続いていると言われているとのこと。

見島のカセドリ(佐賀県佐賀市)は小正月行事ですが、カセドリとは神から使わされた雌雄のつがいのニワトリなのだとか(星野紘・芳賀日出男監修 『日本の祭り文化事典』 東京書籍、2006年、758-759頁 ウィキペディア「見島のカセドリ」2018/12/20からの孫引き)。

カセドリの語源ですが、稼ぎ鳥で卵を産むニワトリという説が妥当なんだろうと思います。ニワトリ(ウィキペディア 2018/12/20)を参照しましたが、江戸時代に採卵用としてニワトリが飼われるようになったそうで、時期は一致するんじゃないかと思います。また、佐賀藩の『諫早家日記』貞享4年(1687年)には長崎へ送られるニワトリについて記され、その食べ方は水炊きと考えられている「水煮」と記されているのだそうです。

弥生時代にニワトリの骨は出土するようですが、食用ではなく、鳴き声で朝の到来を告げる「時告げ鳥」としての利用だったようです。また、日本書紀や古事記に記される天岩戸伝説において、常世長鳴鶏を集めて鳴かせたという記述があり、時を告げる鳥として神聖視されたようです。ニワトリの名前ですが、古名では鳴き声から来たカケなのだそうです。カケ鳥と稼ぎ鳥をかけたのがカセドリなのかもしれません。見島のカセドリ行事は小正月行事であり(小正月行事に関しては拙稿「「来訪神:仮面・仮装の神々」(ユネスコ無形文化遺産登録)②(東北・北陸)」参照。中国式の太陰暦が導入される以前、一月の満月(望)が正月だったようです)、カセドリがニワトリだとすると、時告げ鳥だから年の始まりの来訪神だったのかもしれません。

その後も日本は仏教国となりやはり食用になることはなかったようです。戦国時代にはキリスト教徒のポルトガル人が西日本へ来航し、カステラやボーロ、鶏卵素麺など鶏卵を用いた南蛮菓子をもたらしたとのこと。南蛮菓子は珍重されたでしょうし、九州は言うまでも無く南蛮文化が入った最前線でした。

以上ですが、江戸時代に卵が珍重されるようにもなって、尚更有難みが増したニワトリ=カセドリが時告げ鳥として正月の来訪神になったということなのかもしれません。

インフラツーリズム

2018-12-09 15:59:01 | 日本地理観光
国土交通省江戸川河川事務所 首都圏外郭放水路

インバウンドにおける観光資源としてのダムの可能性(Kuriyama Go Travel)

スイスのダムをめぐるツアーもあって、インフラツーリズムへの注目があるんだそう。アルプスを貫くゴッタルド・ベーストンネル(スイス政府観光局)は青函トンネルの3倍の長さ。スイス、意外とパねえな。

青函トンネルは体験坑道(青函トンネル記念館)で対抗するべきかもしれません。日本一短い私鉄「青函トンネル竜飛斜坑線 もぐら号」で坑道へGo。ドーバー海峡のユーロトンネルも同程度の長さのようですが、難工事で言えば青函トンネルの方が上のようです。無茶なところに穴を掘る技術で世界一ということをアピールすべきだと思います。

ユーロトンネルはカートレインで車を通すらしい。青函トンネルはフェリーのみですが、倣ってカートレインも面白いんじゃないかと考えたものの、鉄道でも3~4時間かかってしまい、フェリーと所要時間は大差ないらしい。JRがペイすればやればいい程度なのかも。ドライブ振興なら、フェリーで大間ー函館(1.5時間)(津軽海峡フェリー/大間-函館‎)が下北半島ドライブ(おすすめドライブコース 下北ナビ)も楽しめそう。青森陸奥湾のイルカもありますが(イルカ・インフォメーション むつ湾フェリー)、確率が高い季節は4月下旬から6月下旬にかけてとのこと。

少し話は逸れますが、長いトンネルって結局換気・排気が問題で列車しかできないんでしょうね。そして列車だと建設費を考えるとフェリーでわりと対抗できるのかもしれません(ユーロトンネルは経営破たん)。豊予ルートの道は険しい。

トンネルに対して橋の博物館は明石海峡大橋のお膝元神戸にあって、橋の科学館というようです。インフラツーリズムを振興するなら要注目なのかもしれませんね。

日本のダムと言えば、第一に黒部ダム(富山県)を思い浮かべる人が多いと思いますが、他に奥只見ダム(福島県)がインフラツーリズムとしては盛りだくさんで面白そう(雪と森の秘境|奥只見 - 奥只見丸山 奥只見観光株式会社)。ダムの他に奥只見シルバーライン(19のトンネルが続き、全長22kmのうち18kmがトンネル。ゴツゴツした岩肌を残す)、スロープカー、奥只見電力館、奥只見乗船場。

青森の水陸両用バス(【青森】バスに乗ったまま湖へGO!東北初の水陸両用バスが話題のバスツアーがスタート おんせんニュース 2017年5月13日)も広い意味でインフラツーリズムか。白川山地の北麓青森県西目屋村ですが、世界遺産白神山地ビジターセンターも。

神妙な気持ちになりますが、田老の防潮堤(三陸ジオパーク)もインフラと言えばインフラ。

インフラツーリズムと言えば、首都圏外郭放水路(埼玉県)も忘れてはなりませんね。洪水防止目的の地下放水路で普段は空堀状態。その手があったか。治水の常識は地下放水路になっていくのかもしれません。

インフラツーリズムもまだ始まったばかりで、ダムなんかはダムカード(国土交通省水管理・国土保全局)や日本の灯台50選(公益社団法人 燈光会)の取り組みがありますが、全国に散らばってますし、ややマニアックなので、これといったものを纏めてインフラツーリズムとして売り出してみるのが面白いのかもしれません。

今なら新幹線、将来的にはリニアが観光対象にもなるのかもしれませんが、シンガポールチャンギ空港なんかは、それ自体が観光の対象とも言いますよね(チャンギ国際空港を遊びつくせ!(Changi Air Port) 旅行観光.com )。エキナカが充実してきた今、駅を観光対象にしてみるとか。鉄道博物館(埼玉県さいたま市)もありますが。

道の駅は観光対象でしょうが、SAやPAも高速道路の収益の柱と言います(海ほたるが特徴あるかと思います)。橋で言えば横浜ベイブリッジ(首都高ドライバーズサイト)も。Honda Collection Hall(ツインリンクもてぎ内)(みんなののりもの)(栃木県茂木町)ではHondaの歴代の市販製品やレーシングマシン展示が。観光ではありませんが、茨城県の自動車安全運転センター 中央研修所ではドライビング・シミュレーターがあって、インフラツーリズムで本気で体験観光をやるなら、何か参考になるのかもしれません。

スカイツリー東京タワーは電波塔。ならば、テレビ局も放送でインフラと言えなくないのかもしれません。ショッピングモールで放送局の様子を見せたりするじゃないですか。築地が観光になったのだから、食のインフラで豊洲もやればいいと思います。

以上、関東・東北中心にインフラツーリズムの記事をまとめてみました。

なまはげだけじゃない秋田県男鹿半島とツーリング、ジオツーリズム、しょっつる

2018-12-09 11:37:42 | 日本地理観光
第33警戒隊 加茂分屯基地|防衛省 [JASDF] 航空自衛隊

男鹿国定公園(あきたファン・ドッと・コム)

>半島一帯には海、山、湖の景勝地が点在し、変化に富む周遊が楽しめる。主な観光ポイントとしては、全山芝生に覆われ眺望が素晴らしい寒風山、断崖絶壁続く西海岸、珍しい爆裂火口湖(マール湖)の一、二、三の目潟と男鹿水族館のある戸賀湾、半島最北端の入道崎、男鹿温泉郷などがある。

入道崎(男鹿なび)

>ツーリングの定番目的地でもあり、夏は大勢のバイクが駐車場に並びます。

バイクで訪日需要を喚起、官民連携で推進へ(旬刊旅行新聞 2017年11月6日)

>オートバイのレンタルサービス「レンタル819」を全国展開するキズキレンタルサービス(松崎一成社長、埼玉県川口市)と広告会社のアドフロンテ(木村謙吉代表、東京都港区)はこのほど、日本政府観光局(JNTO)が行う「ツーリングなどを通じた日本各地の魅力発信による訪日旅行促進事業」を受託した。

>整備された高速道路や、英語表示の道路標識、島国ならではの海沿いの道、自然の表情豊かな山間部のカーブが続く道などコースの魅力は多い。

賀曽利隆の「東北ツーリングで行きたい絶景ルート10選」(ウェビック バイクニュース)

男鹿半島は見所の多い景勝地であり、ドライブもいいでしょうが、ツーリングの対象としても面白いんじゃないかと思います。潜在需要としてはやはりインバウンドでしょう。渋滞も少なく、風光明媚な東北地方こそ、あるいは北海道よりポテンシャルがあるのかもしれません。というのも、陸奥と出羽に分かれた東北地方こそ魅力的な観光地を周遊しやすいからです。ただし、日本は多雨ですから、雨対策が必要なことは事前に周知された方が良いかもしれません(ライダーに聞く、雨の日のツーリング事情 マイナビニュース 2013/05/20)。

訪日外国人向け『NAVITIME for Japan Travel』、徒歩ルートの音声ナビゲーションと、カーナビゲーション機能を追加(NAVITIME JAPAN)を参照すると、訪日外国人向けのカーナビも存在するようです。ガソリンスタンドや食事・宿泊等、環境整備を行って旅行者のストレスを軽減し、周知していけば、潜在需要を開拓できるのかもしれません。東北には八幡平国立公園等、雄大で美しい自然も多いのですから、それを活かさない手はありません。

男鹿目潟火山群一ノ目潟(男鹿市)

>一ノ目潟は安山岩中にマントル起源の捕獲岩を含んだ噴出物のあった火山として、世界で初めて知られ、世界的に注目を受けています。

男鹿半島・大潟ジオパークは当地ですが、スペインのジオパークとジオツーリズム(ResearchGate)によると、ヨーロッパでは一般の観光客にも、ジオツーリズムの人気は高く、先進地域はドイツ、オーストリア、スペインだとか。日本は火山も多く特有の地質環境にありますので、ジオツーリズムのファンがつけば、また違った可能性もあるのかもしれません。

男鹿半島は半島のように見えるかもしれませんが、本来は島だったと言います。北側から米代川、南側から雄物川による土砂堆積によって2本の砂州で繋がったようですが、八郎潟はかつて琵琶湖に継ぐ2番目の大きさの湖だったようです。それが干拓されて今の半島の風景になりました。

食や土産物としては秋田県の県魚ハタハタが挙げられますね。

ハタハタ博物館(男鹿水族館GAO)

当地ならではの魚醤がしょっつるです。かつてはハタハタが主に使われていましたが、漁獲高の激減で別の魚を使っていた時期もあるそうです。現在では秋田県平成4~7年の全面禁漁のおかげでしょう、漁獲量がやや回復し(ハタハタ日本海北部系群の漁獲量推移(水産庁))、近年は再びハタハタも使われているようです。漁獲高の変動があるのは当然ですが、それでも獲り過ぎを防止し、一定以上の漁獲高を確保することで、ブランド価値はつくられていくんだろうと思います。原料が安定しなければ、ブランドも何もあったものではありませんから。観光がてらに試食してもらい、気に入ってくれれば、その場で配送でお届けみたいなシステムがどの程度整備されているかは知りません。公共交通を利用した観光やツーリング・サイクリング・インバウンドも重要ですから、(荷物を積み込める)自家用車だけを想定した観光政策は成り立たないと考えられます。amazon並に安く配達できれば身軽な旅行が実現するかも。ネットでポチッもいいですが、やはり現地で試すことができるのが、旅行の醍醐味だと考えられます。

外国の魚醤としては、ベトナムのヌクマム、タイのナンプラー、本場イングランドのウスターソース(リーペリン)が挙げられるようです。アレルギーは有り得るので、特にインバウンド絡みでは表示等その辺の配慮は必要かもしれません。

関連して醤油(大豆、小麦、塩が原料)に関して言えば、アメリカ中部ウィスコンシン州でも生産し、肉にもあうと認知度は上がっているようです(キッコーマンもうけの7割は海外 名誉会長が語る日本の味「しょうゆ」が世界に広がったワケ 産経ニュース 2017.10.29)。資金は銀行に借りたとか。海外投資ですが、醤油の認知度が上がれば、和食の認知度も上がり、インバウンドにおける武器にもなるかもしれません。

「来訪神:仮面・仮装の神々」(ユネスコ無形文化遺産登録)②(東北・北陸)

2018-12-09 05:08:04 | 日本地理観光
農林水産省東北農政局 秋田県庁提供

アマメハギ(ウィキペディア 2018/12/09)によると、「囲炉裏や火鉢に長くあたっているとできる火だこ(温熱性紅斑)のことをアマメと言い、怠け者の証しとされている。これを剥ぎ取る妖怪がアマメハギである。」類似の行事は日本各地に伝わっており特に日本海側に多いとのこと。登録された10件の内、「男鹿のナマハゲ」(秋田県男鹿市)、「能登のアマメハギ」(石川県輪島市・能登町)、「遊佐の小正月行事(アマハゲ)」(山形県遊佐町)がこれにあたるようです。

アマメの語源ですが、火だでピンと来ましたが、ア+マメなんでしょうね(疑問氷解 手にできる「タコ」と「マメ」の違いは何?(毎日小学生新聞 2018年5月1日)によると、マメは水膨みずぶくれ、タコは厚あつい角質なんだそうです)。アの語源は自分にはサッパリ分からないのですが。

鬼が来ると子供を叱ることがあって(子どもを叱るときに「鬼がくるよ!」「お化けが出るよ!」と脅すのはアリ? ベネッセ)、アマメハギの祭りはその一類型なんじゃないかと思います。包丁は「アマメ」を剥ぐ小道具で、子供を脅かすためのものなのでしょう。

鬼面・古代鬼面(タツミ)を参照しましたが、「角のついたリアルな鬼の面は江戸時代頃からで、古くから魔よけとして建物を守ってきた」のだそうです。だとすると、鬼面をかぶる形式は江戸時代に始まったと思えます。

蓑は雪蓑らしく、節分に行う能登町を除き、北陸・東北の小正月(1月15日)の行事のようです。また、吉浜のスネカ(岩手県大船渡市)も言葉こそ違うものの、小正月行事で(イヌのような)鬼面・蓑のような衣装・囲炉裏に入ってばかりで怠けている子供の脛に付いた火の斑を剥ぎ取る祭りだそうですから、全て日本北部の小正月行事と言えるのかもしれません。正月ですから、この来訪神とは年神の一種なのでしょう。日本海側と少し言葉が違うのは、青森県下北半島尻屋崎沖が海の難所だったことに関係するのかもしれません。

小正月の由来ですが、「中国式の太陰太陽暦が導入される以前、望の日を月初としていたことの名残りと考えられている」(ウィキペディア「小正月」(2018/12/09)(西角井正慶編, ed (1958-5-23). 年中行事事典 (初 ed.). 東京堂出版. p. 305.))とのことです。前回の記事の薩摩硫黄島のメンドンは八朔(はっさく:八月の朔)に登場し、朔(さく)とはついたちで新月ですが、どうもかつては一月の満月(望)が正月だったようです。正月に餅の風習は望(もち:例えば望月)にかけたのかもしれません。そう考えると、僻地(失礼)での分布は古い伝統が残った証と思えます。