愛媛県とくに松山市周辺では、「帰ります」を「いんでこうわい」という。
同僚が仕事を終えて、先に帰るときに「いんでこうわい」。
はて?帰ってくる?家に帰るのか、はたまた休憩して再度職場に戻ってくるのか?
「いんでこうわい」と言われた側は、また職場に戻るのだろうかと思って、
逆に帰りづらくなる。職場を施錠して帰ろうにも、
「いんでこうわい」と言った同僚はなかなか帰ってこない。
結局、家に帰ってしまっているのである。これが恐怖の松山言葉「いんでこうわい」。
「いんでこうわい」。これは「いぬ」つまり去る、帰るの意味。
日本国語大辞典では「ある場所から立ち去って、他の場所へ行く。また、もと居た所へ帰る」とある。
この辞典の説明も2つの意味がごちゃまぜになっている。
AからBに行く。これだけではなく「もと居た所へ帰る」
この「もと居た所」ってどこ?? Aなのか、それともBなのか。
Aを職場、Bを家に例えると、
「もと居た」はAでもBでも構わないように受け取ることができる。
でも、松山言葉「いんでこうわい」の帰る先はBの家である。
つまり「もと居た所」イコール家。
松山の人が、職場よりも家を大事にしている? それは別として、
自分の本拠が家であると強く認識している証左かもしれない。
こんなことを考えていると、愛媛の各地で「いぬる」という方言を使っていたことを思い出した。
「いぬ」じゃなくて「いぬる」である。
動詞としての「いぬる」。これ日本国語大辞典にも出ていない。
出ているの「いぬる」は、「いぬ」の連体形である。動詞ではない。
と思っていたら、『日葡辞書』にこう書いてあった。
「Ini, uru, inda(イヌル)<訳>去る、または元に帰る」
『日葡辞書』が編纂されたのは西暦1603年。
このときのイヌルとか inda つまりインダは、愛媛でも頻繁に使われている方言である。
「いぬ」自体は、古事記、万葉集にも出てくる古語である。
これに、わざわざ「る」を付けて「いぬる」という動詞を作り上げられたのだろう。
ちなみに、いぬ、いんだの方言は、日本国語大辞典で紹介されているのは、
福井県遠敷郡の事例だけある。
愛媛にもあるが、全国さがせば、他の地域にもあるのだろう。
しかし、「いぬ」、「いぬる」の方言の分布、地域差は
もしかしたら、言語変化の時代差かもしれない。
古い「いぬ」、新しい「いぬる」、そしてそれが使われなくなる時代、そして地域。
松山の「いんでこうわい」や愛媛各地の「いぬる」という方言は、
日本語の変遷を考える上で、結構、面白い題材なのかもしれない
と思ってしまった。
同僚が仕事を終えて、先に帰るときに「いんでこうわい」。
はて?帰ってくる?家に帰るのか、はたまた休憩して再度職場に戻ってくるのか?
「いんでこうわい」と言われた側は、また職場に戻るのだろうかと思って、
逆に帰りづらくなる。職場を施錠して帰ろうにも、
「いんでこうわい」と言った同僚はなかなか帰ってこない。
結局、家に帰ってしまっているのである。これが恐怖の松山言葉「いんでこうわい」。
「いんでこうわい」。これは「いぬ」つまり去る、帰るの意味。
日本国語大辞典では「ある場所から立ち去って、他の場所へ行く。また、もと居た所へ帰る」とある。
この辞典の説明も2つの意味がごちゃまぜになっている。
AからBに行く。これだけではなく「もと居た所へ帰る」
この「もと居た所」ってどこ?? Aなのか、それともBなのか。
Aを職場、Bを家に例えると、
「もと居た」はAでもBでも構わないように受け取ることができる。
でも、松山言葉「いんでこうわい」の帰る先はBの家である。
つまり「もと居た所」イコール家。
松山の人が、職場よりも家を大事にしている? それは別として、
自分の本拠が家であると強く認識している証左かもしれない。
こんなことを考えていると、愛媛の各地で「いぬる」という方言を使っていたことを思い出した。
「いぬ」じゃなくて「いぬる」である。
動詞としての「いぬる」。これ日本国語大辞典にも出ていない。
出ているの「いぬる」は、「いぬ」の連体形である。動詞ではない。
と思っていたら、『日葡辞書』にこう書いてあった。
「Ini, uru, inda(イヌル)<訳>去る、または元に帰る」
『日葡辞書』が編纂されたのは西暦1603年。
このときのイヌルとか inda つまりインダは、愛媛でも頻繁に使われている方言である。
「いぬ」自体は、古事記、万葉集にも出てくる古語である。
これに、わざわざ「る」を付けて「いぬる」という動詞を作り上げられたのだろう。
ちなみに、いぬ、いんだの方言は、日本国語大辞典で紹介されているのは、
福井県遠敷郡の事例だけある。
愛媛にもあるが、全国さがせば、他の地域にもあるのだろう。
しかし、「いぬ」、「いぬる」の方言の分布、地域差は
もしかしたら、言語変化の時代差かもしれない。
古い「いぬ」、新しい「いぬる」、そしてそれが使われなくなる時代、そして地域。
松山の「いんでこうわい」や愛媛各地の「いぬる」という方言は、
日本語の変遷を考える上で、結構、面白い題材なのかもしれない
と思ってしまった。