愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

「ぬし(主)」という言葉

2011年07月16日 | 口頭伝承
「ぬし」という言葉が頭を離れない。先日、旧知の県内某企業の社長さんから「日本の伝統的なリーダー論を教えてほしい。ついては若い職員をそちらに派遣するので30分でもいいので話をしてやってほしい。」という電話をいただき、「リーダー論なんて無理!無理!」と答えつつ、押しの強さに負けて若い職員さんがやってきた。電話の翌日のことである。まったく準備もしていない私であったが、雑談程度に30分ほど会話をした。会話の内容は、地域社会での年齢階梯制についてが主であった。いかにムラ社会の中で一人前になっていくのかという話と、隠居、定年といった話で、リーダー論とはほど遠い内容だった。ご期待には到底沿えないもので、世間話の類いになってしまった。

そのときに、ふと日本語の「リーダー」にあたる言葉を思い浮かべて並べてみた。「おさ」、「あるじ」、「ぬし」などなど。話をしているうちに、これは面白いとも思えるようになってきた。漢字では「長」とか「主」と表記できるが、それぞれの語源はいかなるものか気になった。たとえば、村の「おさ」と村の「ぬし」であれば、意味が違う。「おさ」は直接の権力執行のリーダーであり、「ぬし」は権力執行というよりも権威の象徴の意味合いを帯びてくる。例えばある会社で「この職場のおさ(長)」と「この職場のぬし(主)」とであれば、これが同じ人物を指すとは限らない。「ぬし」には単なるリーダーではない「何か」が込められている。「神主」というが「神長」とはいわない。「持ち主」というように所有物の主体者を指す。この主体性がキーポイントかもしれないと思いつつ、そういえば「天之御中主神」も「ぬし」がついていると思って、この神が神々の中の「おさ(長)」ではなく「ぬし(主)」であることが象徴的だとも思った次第。さらには「おさ」は組織のリーダーであって、「ぬし」は構造上のリーダー(というよりも中心存在)なのかもしれないと思い始めると、いろんな事例に飛び火しそうで、ここ数日、「ぬし」の語源やら用例が頭を離れない。(だけど、まだ何も調べてはいない。)





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