「上の方から君たちの取材にストップをかけるようにお達しが来た」
「...........」
「私の経験から言うと、これは君たちが事の敏感な部分に触れたことを意味している」
「............」
「注意して取材を続けろ。くれぐれもだ。失敗は許されんぞ。行け」
と編集長が発破をかけた二人の記者の名前はボブ・ウッドワードとカール・バーンスタイン。
もしかすると記憶に間違いがあるかも知れないがロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが主演した映画「大統領の陰謀」の1シーンだった。
本人が金欲しさで告白することにより「ディープ・スロートとは誰だなんだ?」という長年の謎が解き明かされ、今年再びちょっと話題になったのがウォーターゲート事件だ。
この事件はワシントンポスト紙の二人の記者によって真相が暴かれ、合衆国史上初めて大統領が途中辞任するという事態に発展。
これこそジャーナリズムが守った自由と民主主義の象徴的な出来事だった。
ところで、これを現在の中国で再現するとどうなるのか、というのが次の会話である。(作:私)
「上の方から君たちの取材をストップさせるよう、命令が来た」
「...........。」
「君たちは国家の重大機密を漏えいした容疑で解雇だ」
「!!!!!」
その明くる日、二人の記者は公安に逮捕され、人民裁判にかけられ「死刑」または「無期懲役」の刑が科せられる。そして無期刑の記者もやがて行方不明となりその後の消息は杳として知れない。
また取材活動を容認していたかどで新聞社は解体、廃業。
しかもそういう処分をしたということは一切外部へ報道されることはない。
NY在住の中国人ジャーナリスト、何清漣の著書「中国の嘘」は、上述した嘘のような話が現実に存在し、しかもそれが現在の中国の基幹を成しているという恐怖の真実を描いた、驚愕のノンフィクションである。
共産中国という国はその発足以来、情報を操作することを国是とし、共産独裁主義に対する反対意見を封じ込めることに努めてきた。
近年経済が急速に発展し、自由主義の仲間入りをしようと試みているように見かけられるが実態は、党の意向にそぐわないものは、個人、団体、国内組織、海外からの組織にいかんに関わらず問答無用で処分する恐ろしい国であることを本書は実例を紹介しながら論理的に証言している。
地方政府の役人はごろつきと化し、必要であれば法律をねじ曲げ、あるいは新しい法律をでっち上げ、自分たちに対する意見を封じ込める。
私たち自由主義の国であればごく当たり前の記事(役人の汚職、公害問題、経済問題など)でも特定の人物の気に召さなければ、記事はもとより、それを書いた記者や会社までが処分されてしまうという暗黒社会顔負けの実態が今の中国なのだ。
最も興味深いのは、本書の後半で詳細に記されていたインターネットについてのフィルタリングである。
たとえば、台湾、チベット、ウィグル、法輪講というキーワードが含まれているメールあるいはホームページは自動的にアクセスができなくなる技術や、そういうワードを用いてのサイトの製作やBBSへの書き込みを監視し、書き込んだその人物を特定するシステムを構築しているなど、まるでSF映画のようなサイバー警察による思想言論の弾圧世界が現実になりつつあるのだ。
しかも、そのシステム構築には欧米、そして日本という自由世界の技術が不可欠で、システムそのものを構築する作業には旧西側のハイテク企業が手を貸しているのだという。
「思想にとらわれて、ビジネス上のビッグチャンスを逃してはならない」
という倫理観の欠如した信じられないような理由で、中国政府の人権弾圧に手を貸しているのだ。
9.11同時多発テロ事件のニュースに狂喜した中国民衆。
全ての政治的失態は「日本とアメリカの責任である」と発表する政府。
日本やアメリカに留学経験のあるものまでが、自由に物事を考えることに蓋をして、中共の卑劣極まる思考に同調する。
孟子が唱えた愚民政策の行き着く先が中国にあり、「話せばわかる」と思い込んでいる日本人の政治家、社会活動か諸氏に是非とも目を通していただきた、戦慄の一冊なのである。
~「中国の嘘」何清漣著 扶桑社刊~
「...........」
「私の経験から言うと、これは君たちが事の敏感な部分に触れたことを意味している」
「............」
「注意して取材を続けろ。くれぐれもだ。失敗は許されんぞ。行け」
と編集長が発破をかけた二人の記者の名前はボブ・ウッドワードとカール・バーンスタイン。
もしかすると記憶に間違いがあるかも知れないがロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが主演した映画「大統領の陰謀」の1シーンだった。
本人が金欲しさで告白することにより「ディープ・スロートとは誰だなんだ?」という長年の謎が解き明かされ、今年再びちょっと話題になったのがウォーターゲート事件だ。
この事件はワシントンポスト紙の二人の記者によって真相が暴かれ、合衆国史上初めて大統領が途中辞任するという事態に発展。
これこそジャーナリズムが守った自由と民主主義の象徴的な出来事だった。
ところで、これを現在の中国で再現するとどうなるのか、というのが次の会話である。(作:私)
「上の方から君たちの取材をストップさせるよう、命令が来た」
「...........。」
「君たちは国家の重大機密を漏えいした容疑で解雇だ」
「!!!!!」
その明くる日、二人の記者は公安に逮捕され、人民裁判にかけられ「死刑」または「無期懲役」の刑が科せられる。そして無期刑の記者もやがて行方不明となりその後の消息は杳として知れない。
また取材活動を容認していたかどで新聞社は解体、廃業。
しかもそういう処分をしたということは一切外部へ報道されることはない。
NY在住の中国人ジャーナリスト、何清漣の著書「中国の嘘」は、上述した嘘のような話が現実に存在し、しかもそれが現在の中国の基幹を成しているという恐怖の真実を描いた、驚愕のノンフィクションである。
共産中国という国はその発足以来、情報を操作することを国是とし、共産独裁主義に対する反対意見を封じ込めることに努めてきた。
近年経済が急速に発展し、自由主義の仲間入りをしようと試みているように見かけられるが実態は、党の意向にそぐわないものは、個人、団体、国内組織、海外からの組織にいかんに関わらず問答無用で処分する恐ろしい国であることを本書は実例を紹介しながら論理的に証言している。
地方政府の役人はごろつきと化し、必要であれば法律をねじ曲げ、あるいは新しい法律をでっち上げ、自分たちに対する意見を封じ込める。
私たち自由主義の国であればごく当たり前の記事(役人の汚職、公害問題、経済問題など)でも特定の人物の気に召さなければ、記事はもとより、それを書いた記者や会社までが処分されてしまうという暗黒社会顔負けの実態が今の中国なのだ。
最も興味深いのは、本書の後半で詳細に記されていたインターネットについてのフィルタリングである。
たとえば、台湾、チベット、ウィグル、法輪講というキーワードが含まれているメールあるいはホームページは自動的にアクセスができなくなる技術や、そういうワードを用いてのサイトの製作やBBSへの書き込みを監視し、書き込んだその人物を特定するシステムを構築しているなど、まるでSF映画のようなサイバー警察による思想言論の弾圧世界が現実になりつつあるのだ。
しかも、そのシステム構築には欧米、そして日本という自由世界の技術が不可欠で、システムそのものを構築する作業には旧西側のハイテク企業が手を貸しているのだという。
「思想にとらわれて、ビジネス上のビッグチャンスを逃してはならない」
という倫理観の欠如した信じられないような理由で、中国政府の人権弾圧に手を貸しているのだ。
9.11同時多発テロ事件のニュースに狂喜した中国民衆。
全ての政治的失態は「日本とアメリカの責任である」と発表する政府。
日本やアメリカに留学経験のあるものまでが、自由に物事を考えることに蓋をして、中共の卑劣極まる思考に同調する。
孟子が唱えた愚民政策の行き着く先が中国にあり、「話せばわかる」と思い込んでいる日本人の政治家、社会活動か諸氏に是非とも目を通していただきた、戦慄の一冊なのである。
~「中国の嘘」何清漣著 扶桑社刊~
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