かなり前になるが、NHK-BSの紀行番組「地球に好奇心」で、アラスカを舞台にする犬ぞりレースの模様が放送されていた。
「アイディタロッド犬ぞりレース」
摂氏マイナス30度以下の中。全長1000km以上もの極寒の大地に敷かれたコースを疾走するレースだ。
50以上のチームが犬ぞりを編成し、到着順を競うという極寒のサファリレースなのだ。
テレビを見ていて刺激的で冒険性に溢れたレースだと感じたことを覚えている。
日本ではあまり知られていないこのレースは1970年代に始まった。
そしてこれは世界で唯一の犬ぞりレースであり、今や世界で最も有名なレースのひとつでもある。
毎年3月に開催されるこのレースには数多くの有名企業がスポンサーにつき、レースの模様は様々なメディアによって刻一刻と伝えられる。
コースは大会委員会において整備され、メジャーな競技として万全の対策がなされている。
1925年、犬ぞりレースが始まる遥か昔、整備などされているはずもないこのルートを命がけで疾走した犬ぞりチームたちがいた。
一つの街を疫病から救うため、マイナス50度を越える極低温の世界を血清を抱え、走り抜けた男達と犬たちがいたのだ。
「ユーコンの疾走」はベーリング海峡を臨むアラスカの町ノームで発生した伝染病「ジフテリア」から人々の命を救うために、血清を抱えてリレー搬送した犬ぞりチームたちを題材にしたノンフィクションだ。
この時代、氷に閉ざされた冬の大地の輸送手段は犬ぞりしかなかった。
航空機は複葉機の時代で、とても零下数十度の気温の中を飛行できる代物ではなかった。
ジフテリアという恐ろしい伝染病が発生したノームという街は、ゴールドラッシュで開けた町で、今でも市販の世界地図を広げると北極圏の最果てに、その位置を確認することが出来る。
この街にジフテリアが発生したのは船の運航ができないまさしく真冬の時期で、街には医師と看護婦が一人づつしかおらず、しかも治癒させるための血清がまったく無いといっていいくらい不足していたのだ。
血清を運ばなければならない。
そしてその唯一の方法が犬ぞりだったのだ。
本書ではその経過が人間模様とともに細かく描かれているわけだが、とりわけ人間と犬の関係が大いに興味をそそる。そして彼らの無欲とも言っていい義務意識に感銘を覚えずにはいられないのだ。
「人を助けるのはあたりまえのこと」
と考え、命を賭けて氷とブリザード吹き荒れる大地を走り抜ける彼らの姿に、私たちは純粋に感動することになる。
ともすれば「売名行為ではないか」と思わざるを得ないような昨今のNGOやNPOなどと呼ばれる団体の献身活動に対して、痛烈な批判を投げ掛けられているようにさえ思える。
「あなたのおかげで、今、私はこうして生きていることができます」
事件後数年を経過し、ある夫人にそう話しかけられたネイティブ・アメリカンの犬ぞりドライバーは、その言葉をたったひとつの勲章に人生を送ったという。
アイディタロッド犬ぞりレースは、ノームへの血清リレーを記念したレースでもあるのだ。
~「ユーコンの疾走」ゲイ&レニー・ソールズベリー著 山本光伸訳 光文社文庫~
「アイディタロッド犬ぞりレース」
摂氏マイナス30度以下の中。全長1000km以上もの極寒の大地に敷かれたコースを疾走するレースだ。
50以上のチームが犬ぞりを編成し、到着順を競うという極寒のサファリレースなのだ。
テレビを見ていて刺激的で冒険性に溢れたレースだと感じたことを覚えている。
日本ではあまり知られていないこのレースは1970年代に始まった。
そしてこれは世界で唯一の犬ぞりレースであり、今や世界で最も有名なレースのひとつでもある。
毎年3月に開催されるこのレースには数多くの有名企業がスポンサーにつき、レースの模様は様々なメディアによって刻一刻と伝えられる。
コースは大会委員会において整備され、メジャーな競技として万全の対策がなされている。
1925年、犬ぞりレースが始まる遥か昔、整備などされているはずもないこのルートを命がけで疾走した犬ぞりチームたちがいた。
一つの街を疫病から救うため、マイナス50度を越える極低温の世界を血清を抱え、走り抜けた男達と犬たちがいたのだ。
「ユーコンの疾走」はベーリング海峡を臨むアラスカの町ノームで発生した伝染病「ジフテリア」から人々の命を救うために、血清を抱えてリレー搬送した犬ぞりチームたちを題材にしたノンフィクションだ。
この時代、氷に閉ざされた冬の大地の輸送手段は犬ぞりしかなかった。
航空機は複葉機の時代で、とても零下数十度の気温の中を飛行できる代物ではなかった。
ジフテリアという恐ろしい伝染病が発生したノームという街は、ゴールドラッシュで開けた町で、今でも市販の世界地図を広げると北極圏の最果てに、その位置を確認することが出来る。
この街にジフテリアが発生したのは船の運航ができないまさしく真冬の時期で、街には医師と看護婦が一人づつしかおらず、しかも治癒させるための血清がまったく無いといっていいくらい不足していたのだ。
血清を運ばなければならない。
そしてその唯一の方法が犬ぞりだったのだ。
本書ではその経過が人間模様とともに細かく描かれているわけだが、とりわけ人間と犬の関係が大いに興味をそそる。そして彼らの無欲とも言っていい義務意識に感銘を覚えずにはいられないのだ。
「人を助けるのはあたりまえのこと」
と考え、命を賭けて氷とブリザード吹き荒れる大地を走り抜ける彼らの姿に、私たちは純粋に感動することになる。
ともすれば「売名行為ではないか」と思わざるを得ないような昨今のNGOやNPOなどと呼ばれる団体の献身活動に対して、痛烈な批判を投げ掛けられているようにさえ思える。
「あなたのおかげで、今、私はこうして生きていることができます」
事件後数年を経過し、ある夫人にそう話しかけられたネイティブ・アメリカンの犬ぞりドライバーは、その言葉をたったひとつの勲章に人生を送ったという。
アイディタロッド犬ぞりレースは、ノームへの血清リレーを記念したレースでもあるのだ。
~「ユーコンの疾走」ゲイ&レニー・ソールズベリー著 山本光伸訳 光文社文庫~