人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

飯守泰次郎 ✕ 池田香織・二塚直紀・佐藤泰弘・金子美香他 ✕ 新交響楽団でワーグナー「トリスタンとイゾルデ」(抜粋・演奏会形式)を聴く ~ 新交響楽団第244回演奏会

2019年01月21日 07時20分24秒 | 日記

21日(月)。わが家に来てから今日で1571日目を迎え、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が2月下旬に2回目の首脳会談を開くことが18日発表された というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      政権3年目に入ったトランプが 成果を演出するため 安易な妥協をしなきゃいいが

     

         

 

昨日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで新交響楽団の第244回演奏会を聴きました 曲目はワーグナーの歌劇「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式・抜粋=第1幕への前奏曲、第2幕全曲、第3幕第3場)です 演奏は、トリスタン=二塚直紀、イゾルデ=池田香織、マルケ王=佐藤泰弘、ブランゲーネ=金子美香、クルヴェナール=友清崇、メロート=今尾滋、牧童=宮之原良平、舵取り=小林由樹、管弦楽=新交響楽団、指揮=飯守泰次郎です

 

     

 

自席は2階L列22番、センター左ブロック左通路側です。会場はほぼ満席です

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並びです

飯守氏がゆったりした歩みで指揮台に向かい、さっそく第1幕への前奏曲が開始されます 冒頭、チェロによる「憧れの動機」が奏でられた瞬間から、聴衆は「飯守✕ワーグナー」ワールドに引き込まれます この前奏曲はこの歌劇のエッセンスを凝縮した魅力あふれる音楽です 弦も管も素晴らしい演奏を繰り広げます

前奏曲が終わるとステージの照明が落とされ、薄暗いなかをイゾルデ役の池田香織とブランゲーネ役の金子美香が静かに入場し、ステージ後方の高台にスタンバイします この日の演奏は第1幕が省略されるため第2幕から始まります。第2幕はトリスタンとイゾルデの逢引きの場面、そして その場にマルケ王とメロートが踏み込んでくるシーンを中心に物語が進みます   有難いことにステージの左右には日本語字幕スーパーが表示され、歌手が何を歌っているか分かるようになっています。アマチュア・オケでここまでやるか、と思うほどの力の入れようです


     


イゾルデを歌った池田香織は慶応義塾大学法学部を卒業後、二期会オペラスタジオを修了したという変わり種、またトリスタンを歌った二塚直樹は大阪芸術大学を卒業し、第32回イタリア声楽コンコルソ・ミラノ部門入選などの経歴の持ち主です この二人はワーグナーに求められる声量もあり歌唱力も抜群でした また、マルケ王を歌った佐藤泰弘は東京藝大修士課程を修了していますが、トリスタンの裏切りを嘆く長い歌唱は説得力を持ちました この幕では、バスクラリネットが素晴らしい演奏を展開していました

第3幕第3場で池田香織が歌う「イゾルデの愛の死」を聴いていて 不覚にも涙が流れました   本当に素晴らしい歌唱でした

飯守泰次郎指揮新交響楽団は、トリスタンとイゾルデの陶酔の境地をある程度 節度を持って表現していたように思います

このオペラは、イゾルデの従者ブランゲーネが、イゾルデから死の薬を用意するように命じられたのに媚薬を渡したため、それを飲んだイゾルデとトリスタンが猛烈に愛し合うようになってしまい、最後には二人とも死んでしまうという身も蓋もない内容なので、もし ブランゲーネが命令通り死の薬を渡していればトリスタンもイゾルデも第1幕で即死、はい終わり、なのです それをワーグナーは「薬の取り違え」という要素だけで、正味5時間もかかる歌劇に仕立てあげてしまうのですから針小棒大、誇大妄想ここに極まれりです ワーグナーは毒です。皆さん、気を付けましょう

 

     

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飯森範親 ✕ ジョージ・リー ✕ 東京交響楽団でラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、ベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」を聴く ~ 東響オペラシティシリーズ第108回演奏会

2019年01月20日 07時23分53秒 | 日記

20日(日)。わが家に来てから今日で1570日目を迎え、モスクワでの「トランプタワー」建設事業計画を巡り、トランプ米大統領が元顧問弁護士マイケル・コーエン氏に議会で偽証をするように指示したと 米ニュースサイトのバズフィードが17日、複数の捜査関係者の話として伝えた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       次から次へと疑惑の種が表面化してくる 民主党は弾劾の準備に入ったのかな?

 

         

 

昨日は山形に単身赴任している息子が、東京での研修のため1泊2日で帰京したので、夕食はすき焼きにしました

 

     

 

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団の東京オペラシティシリーズ第108回演奏会を聴きました   プログラムは①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」作品18、②ベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調作品55”英雄”」です   ①のピアノ独奏はジョージ・リー、指揮は飯森範親です

 

     

 

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。コンマスはグレヴ・二キティンです

1曲目はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」作品18です よく知られているように、セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)は、1895年に作曲し1897年に初演した「交響曲第1番」が酷評されたことから、今でいうノイローゼになり作曲活動からしばらく遠ざかっていました しかし、ニコライ・ダ―リ博士の暗示療法が功を奏し、再び作曲意欲が出てきて、1900年から1901年にかけて「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」を作曲し、初演が大成功を収めたと言われています ラフマニノフにとってこの曲は起死回生の1曲と言えるでしょう 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります

2015年チャイコフスキー国際コンクール第2位入賞のジョージ・リーが登場し、飯森氏のタクトにより第1楽章の演奏に入ります 冒頭からロマンティシズム濃厚な演奏で、一気にラフマニノフの世界に引きずり込まれます この楽章ではリーのパワフルな面が前面に出た演奏でしたが、第2楽章に入ると叙情的な演奏が美しく、決してパワーで押し切るタイプのピアニストではないことを示します そして第3楽章に入ると、極めて技巧的なパッセージを何の苦もなく弾き切ります 飯森✕東響のしっかりしたサポートと相まってスケールの大きな演奏を展開しました

鳴り止まない拍手に、リーはメンデルスゾーンの「無言歌」から「ベネツィアの舟歌」を優雅に演奏、次いでリストの「パガニーニ大練習曲」の第1曲「ラ・カンパネッラ」を超絶技巧で演奏し聴衆を圧倒しました


     


プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第3番変ホ長調作品55”英雄”」です この曲は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770‐1827)が1803年から1804年にかけて作曲し、1805年4月7日にウィーンで、フランツ・クレメント指揮アン・デア・ウィーン劇場の管弦楽団で公開初演されました

この曲は、様々な面で交響曲史上画期的な作品と言われています 第2楽章に「葬送行進曲」を持ってきたり、第3楽章に「メヌエット」ではなく「スケルツォ」を持ってきたり、ホルンを3本使ったり、と色々な特徴がありますが、最大の特徴はそのスケールの大きさでしょう 演奏時間にして約50分にも及ぶ作品は当時の交響曲では考えられない規模でした

第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「葬送行進曲:アダージョ・アッサイ」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

飯森氏のタクトで第1楽章が力強い2つの和音によって開始されます かなりの快速テンポで、現代のベートーヴェンを感じさせます 第2楽章は過度に引きずることなく比較的あっさりと進めます この楽章ではオーボエの荒絵理子、フルートの相澤政宏、ファゴットの福士マリ子、クラリネットの吉野亜希菜といった木管楽器群が素晴らしい演奏を展開していました

第3楽章のトリオでは、3本のホルンが力強くも美しい演奏を展開し、堂々たる英雄の雄姿を連想させました そして第4楽章ではオケの総力を挙げた演奏で飯森氏のタクトに応えました

あらためてベートーヴェンの交響曲は素晴らしい と思ったコンサートでした

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山田和樹 ✕ 小菅優 ✕ 読売日響でスクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」、藤倉大:ピアノ協奏曲第3番「インパルス」他を聴く ~ 読売日響第584回定期演奏会

2019年01月19日 07時20分50秒 | 日記

19日(土)。わが家に来てから今日で1569日目を迎え、大相撲の東横綱鶴竜(モンゴル出身)が初場所6日目の18日、右足首の痛みのため休場した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                横綱稀勢の里は引退しちゃうし また白鵬の一人横綱になっちまった 魅力がないな

 

         

 

昨日の夕食は「豚バラ野菜のとんこつ鍋」にしました 寒い冬は鍋ですね

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで読売日響の第584回定期演奏会を聴きました プログラムは①諸井三郎「交響的断章」、②藤倉大:ピアノ協奏曲第3番「インパルス」、③ワーグナー:舞台神聖祭典劇「パルジファル」から第1幕への前奏曲、④スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」作品54です 演奏は、②のピアノ独奏=小菅優、指揮=2018年4月から読響首席客演指揮者の山田和樹です

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの読響の並びです コンマス・長原幸太の対面にヴィオラ首席の柳瀬省太と鈴木康浩が並んでいるのを見ると、なぜか嬉しくなります この3人が揃うと この日のコンサートは絶対 成功裏に終わると確信が持てます

1曲目は諸井三郎の「交響的断章」です   この曲は諸井三郎(1903-1977)が東大を卒業時の1928年に独学により作曲した作品です。名前の通り単一楽章の曲です

山田和樹が指揮台に上がり演奏が開始されます。全体を聴いた印象は、次から次へと思いつくままのメロディーを繋げたような、昭和の香りがする作品でした

ピアノがステージ中央に移動し、すぐそばに、ピアニストの運指を映像で捉えるビデオカメラが設置されます ステージ上には何本かの収音マイクが林立しています。いずれ日本テレビの「読響シンフォニックライブ」で放映するのでしょう

2曲目は藤倉大のピアノ協奏曲第3番「インパルス」です この作品は今や世界的な名声を博している藤倉大(1977~)が、モンテカルロ・フィルとスイス・ロマンド管との共同委嘱作品として2017年から18年にかけて作曲し、18年10月に小菅優のピアノ独奏、山田和樹指揮モンテカルロ・フィルにより世界初演されました 作曲者本人の「プログラム・ノート」によると、「インパルスは、体内の細胞レベルで繰り返される電気信号で、音楽は常にインパルシヴ(衝動的)に動き始め、ピアノがインパルス(信号)としてオーケストラに信号を送り、インパルシヴ(衝動的)にオーケストラが即座に反応する。その後はそのオーケストラのインパルス(信号)としての反応に、ピアノがまた新たなインパルス(信号)をインパルシヴ(衝動的)に発し・・・というのを繰り返す作品」とのことです

ブラウン系の衣装に身を包まれた小菅優が登場、ピアノに向かい、山田の指揮で演奏に入ります 全体を聴いた印象は「煌めく星座」です それにつけても、小菅優というピアニストはモーツアルトを弾き振りしても、ベートーヴェンのソナタを弾いても、時代の最先端を行く藤倉大の作品を演奏しても、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます

演奏後、指揮者に促されて、客席から藤倉大がステージに上がり、大きな拍手を受けました

鳴り止まない拍手に小菅優は藤倉大の「ウェイヴス」という曲を、まるでジャズのインプロヴィゼーション(即興演奏)のように演奏、拍手喝さいを浴びました


     


プログラム後半の1曲目はワーグナー:舞台神聖祭典劇「パルジファル」から第1幕への前奏曲です 「パルジファル」はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1877年から82年にかけて作曲した神秘主義的宗教劇です この曲は「歌劇」でも「楽劇」でもなく、「舞台神聖祭典劇」とワーグナーは名付けましたが、これは「カトリックやプロテスタントだけでなく、東洋思想や仏教までも取り込んだ作品」として位置づけられています

山田和樹の指揮で演奏に入ります。最初は弦楽器で演奏され、管楽器が加わって展開される静かでゆったりした音楽は、ワーグナーの毒を孕んでいます 一度この魅力にはまったら逃れる術がありません ワーグナーは危険です。ワーグナーの音楽は、旋律がどこまでも音の流れとして発展していき、オペラが終わるまで続く「無限旋律」が大きな特徴です したがって、ワーグナーの歌劇や楽劇などを聴く時はコンサートに遅刻してはなりません 第1幕が終わるまで会場に入れてもらえないので1時間以上ロビーで待たされることを覚悟しなければなりません それにしても、この前奏曲は何回聴いても素晴らしいと思います。私はどっぷりワーグナーの毒に浸かっているようです

最後の曲はスクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」作品54です この曲はアレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)が1905年から1907年にかけて作曲した作品です 音楽評論家・西耕一氏による「プログラム・ノート」によると、「スクリャービンは全宇宙の根底にある絶対的な神性と人間は本質的に同一であるという考え方に共感を持つようになり、自分と神との同一性を信じて、芸術によって世界を変革させることさえできると考えて作曲を行った」「『法悦の詩』は単一楽章、序奏付きの自由なソナタ形式。この曲における『法悦』とは、音楽による大きな精神の高揚によって、シャーマンのトランス状態のような感覚、つまり神と一体化して絶対的な境地に至るイメージと解釈できる」とのことです

山田和樹の指揮で演奏に入りますが、全体的な印象は、ワーグナーの無限旋律の影響を大きく受けているような息の長い旋律が色彩感溢れる管弦楽によって演奏されます フィナーレにおけるトランペット、ホルンの咆哮を中心とする管弦楽による音の大伽藍は大地を揺るがすほどです これほど高いテンションの続くフィナーレも珍しいかも知れません。読響は持てる力を出し切ったという感じでした

 

     

 

  

2011年2月15日にtoraブログを開設してから あと1か月弱で満8年となりますが、本日アップしたこのブログが ちょうど 3000本目となりました   これまで懲りずにご愛読いただいた読者の皆さまに感謝いたします。ありがとうございました 取りあえず4000本を目指して毎日休まず書き続けて参りますので、今後ともモコタロともども よろしくお願いいたします

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トゥガン・ソヒエフ✕N響でリムスキー・コルサコフ「シェエラザード」、フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」、ブリテン「シンプル・シンフォニー」を聴く~N響第1904回定期演奏会

2019年01月18日 07時20分06秒 | 日記

18日(金)。わが家に来てから1568日目を迎え、集団で鳴く二ホンアマガエルは、互いの声が重ならないように「輪唱」したり、疲れると一斉に休んだりと一定の法則性があることを、筑波大と大阪大の研究グループが解明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     カエルの歌が 聞こえてくるよ クワッ クワッ ていう輪唱ホントにやってたんだね       

 

         

 

昨日、夕食に「鶏肉と野菜の簡単蒸し」と「豆腐とシメジとモヤシのプチ鍋」を作りました 「鶏肉~」は河野雅子先生のレシピですが、初めてにしては美味しくできました

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールでNHK交響楽団の第1904回定期演奏会(Bプロ)を聴きました プログラムは①フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」作品80、②ブリテン「シンプル・シンフォニー」作品4、③リムスキー・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35です 指揮はトゥガン・ソヒエフです

ソヒエフは1977年北オセチア生まれ、ロシアのサンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシンに、その後ユーリ・テミルカーノフに指揮を学んでいます

楽員が入場し配置に着きますが、どういうわけか N響だけはコンマスが入場しても拍手が起きません   この日は第1コンマスの篠崎史紀氏でしたが、マロであろうがマロンであろうが拍手はありません   N響の、というよりもN響の聴衆のしきたりになっているみたいです  日本のクラシック・コンサート七不思議の一つに挙げたいと思います 残り六つの不思議は何だ?という質問にはお答えできません。国際オリンピック委員会がうるさいので

オケは、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成です ヴィオラの首席に見慣れない女性がスタンバイしています。首席客演の川本嘉子さんではないし、時々N響に客演する新日本フィルの篠崎友美さんでもありません。いったい何者でしょうか

さて1曲目はフォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」作品80です この曲は、ベルギーの詩人・劇作家のモーリス・メーテルリンクが1892年に発表した戯曲「ペレアスとメリザンド」を元にガブリエル・フォーレ(1845‐1924)が1898年に作曲した作品です 物語は、ある国の王子ゴローは泉のほとりで出会ったメリザンドを見初めて妻にしたが、彼女はゴローの異父弟ペレアスと親密な関係になり、嫉妬に狂ったゴローがペレアスを殺し、メリザンドも死ぬという悲劇です

この曲は第1曲「前奏曲」、第2曲「糸を紡ぐ女」、第3曲「シチリア舞曲」、第4曲「メリザンドの死」の4曲から成ります

ソヒエフの指揮で演奏に入りますが、彼はタクトを持ちません 彼の指揮ぶりを見ていると、大きな動作で、まるで楽員たちから音を手繰り寄せるようにしている様子が窺えます ハープに乗せてフルートが美しくも哀しい旋律を奏でる第3曲「シチリア舞曲」はこの曲の白眉です とても素晴らしい演奏でした。全体を通して木管楽器群が冴えた演奏を展開していました

ここで管楽器群が退場し、弦楽器だけが残ります 2曲目はイギリスの作曲家、ベンジャミン・ブリテン(1913-1976)の「シンプル・シンフォニー」作品4です この曲は彼がロンドン王立音楽大学を卒業する目前の1934年に作曲されました。第1楽章「騒々しいブーレ」、第2楽章「たのしいピチカート」、第3楽章「感傷的なサラバンド」、第4楽章「浮かれたフィナーレ」の4楽章から成ります

ソヒエフの指揮で第1楽章の演奏に入った瞬間、私は愕然としました 私の頭の中にあった音楽とまったく違ったからです。冷静に考えてみたら、私はプロコフィエフの「古典交響曲」と、あるいはビゼーの「交響曲第1番ハ長調」と勘違いしていたのです そして、全曲を聴き終わって自覚したのは、「シンプル・シンフォニー」を聴くのはライブでもCDでもこれが初めてかも知れない、という衝撃の事実でした いったい何十年クラシックを聴いてきたのだろうか ブリテンの超有名な曲を聴いたことがないなんて「グレイト・ブリテンよ どこへ行く~」って英国の合意なきEU離脱に便乗して胡麻化している場合ではない

それはともかく、曲を聴く限り、題名の通り 弦楽器だけによる分かりやすいシンプルな音楽で、何よりも良かったのは、楽員が実に楽しそうに演奏していたことです 特に第2楽章「たのしいピチカート」は弦楽器同士の丁々発止のやり取りが楽しく、「シンプル  イズ  ベスト」の演奏でした

 

     


休憩後はリムスキー・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」作品35です この曲はリムスキー・コルサコフ(1844‐1908)が「千一夜物語(アラビアン・ナイト)」を題材にして1888年に作曲した作品です この物語は「女性に不信感を持つシャフリアール王は、毎夜、女性と一夜を共にしては翌朝 殺害してきた。新しく王妃になるシェエラザードは、千一夜の間、王に不思議な物語を聞かせ続け、残忍な考えを捨てさせた」という内容です

この曲は第1楽章「ラルゴ・エ・マエストーソ」、第2楽章「レント」、第3楽章「アンダンティーノ・クワジ・アレグレット」、第4楽章「アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

ソヒエフの指揮で第1楽章が、シャフリアール王の荒々しいテーマで開始され、独奏ヴァイオリンが優美なシェエラザードの主題を奏でます これを聴くと、「ああ、これから音楽物語の航海に出るんだな」と思います。この主題はこの後 何度も出てきますが、篠崎コンマスのヴァイオリン独奏は何とも美しく高貴さを感じさせます ソヒエフはこの曲でも両手で楽員から音を紡ぎ出すような仕草を見せ、スケールの大きな音楽を展開します オーボエ、フルート、クラリネット、ファゴットといった木管楽器群に加えて、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバといった金管楽器群、そしてティンパニを中心とする打楽器群も渾身の演奏を展開し、ソヒエフのタクトに応えていました 第4楽章のフィナーレで篠崎コンマスの独奏ヴァイオリンによってシェエラザードのテーマが優しく演奏された時、「ああ、音楽物語の航海から帰ってきたんだな」と思いました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、何度もカーテンコールが繰り返され、ソヒエフはステージに呼び戻されましたが、よほどN響とは相性が良いのでしょう 今回を含め4シーズン連続の客演です

何よりも、楽員との信頼関係がしっかりと築き上げられているように見えるのが とても良いことだと思います

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葵トリオのチケットを取る(5/1:トッパンホール) / 「運命は踊る」、「判決、ふたつの希望」を観る ~ マーラー「交響曲第5番」の第4楽章「アダージェット」が流れる:ギンレイホール

2019年01月17日 07時25分41秒 | 日記

17日(木)。わが家に来てから今日で1567日目を迎え、英議会下院は15日夜、欧州連合(EU)と合意したEU離脱案を採決し 230票差の圧倒的な反対多数で否決した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     野党の労働党から内閣不信任案が提出されたので メイ首相は一層メイ走しそうだ

 

         

 

昨日、夕食に「豚こまポークケチャップ」と「インゲンの胡麻和え」を作りました 「豚こま~」は簡単で美味しいです

 

     

 

         

 

5月1日(水・祝)午後2時からトッパンホールで開かれる葵トリオ(ミュンヘン国際音楽コンクール「ピアノ・トリオ部門」優勝)のチケットを取りました 葵トリオはヴァイオリン=小川響子、チェロ=伊東裕、ピアノ=秋元孝介の3人から成るユニットです プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第5番ニ長調作品70‐1」、②マルティヌー「ピアノ三重奏曲第3番」、③メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番ハ短調作品66」です 葵トリオの演奏を聴くのは昨年12月14日以来 2度目ですが、今回はメンデルスゾーンに期待します

 

     

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールで「運命は踊る」と「判決、ふたつの希望」の2本立てを観ました

「運命は踊る」はサミュエル・マオズ監督による2017年イスラエル・ドイツ・フランス・スイス合作映画(113分)です

テルアビブのアパートに暮らすミハエルとダフナ夫婦のもとに息子ヨナタンが戦死したという報せが入る 悲しみにくれる中、同姓同名の兵士の死の誤報だったことが分かる 安堵するダフナとは対照的にミハエルは怒りをぶちまけ息子を呼び戻すよう要求する 一方、ヨナタンは仲間の兵士たちとラクダや車が通る検問所で、やや間延びした時間を過ごしている。ある日、若者たち4人を乗せた車がやってくる。いつも通り検問に当たった彼らだが、車のドアから転げ落ちた缶ビールを手榴弾と勘違いしたヨナタンは若者たちに発砲してしまう 上層部の判断で事件は無かったことにされる。父親によって国に呼び戻されるヨナタンが乗る車の前に、急に鹿が飛び出してきたため運転手は急ハンドルを切った。その先は急な崖だった

 

     

 

原題は「FOXTROT」という踊りです。映画の前半で老人たちが踊るシーンがあり、中盤では検問所でヨナタンが踊るシーンがあり、終盤ではミハエルとダフナが踊るシーンがあります 「前へ、前へ、右へ、ストップ。後ろ、後ろ、左へ、ストップ」とステップを踏むと元の場所に戻ってくる つまり、この映画は FOXTROT のごとく、どうあがいても同じところに戻ってくる親子3人の運命を描いています 最後のシーンを観て、やっぱりヨナタンは「誤報」のままでは終わらない運命にあったんだな、と思いました

この映画では、検問所で見張りを続けるヨナタンが、双眼鏡で多くの鳥の群れが飛び交うのを見るシーンで、マーラーの「交響曲第5番」の第4楽章「アダージェット」が流れていました ルキノ・ヴィスコンティ監督「ヴェニスに死す」(1971年)でこの曲が全編を通してテーマ音楽のように流れていたのはあまりにも有名です

この曲で忘れられないことがあります 1980年代のことだったと思います。愛すべきエフゲニー・スヴェトラーノフ(1928-2002)がNHKホールでN響を指揮してマーラーの「交響曲第5番」を演奏した時のことです 第4楽章に入ると、どこからともなく一羽の蝶々が舞い込んできて、ステージ右サイドのコントラバス奏者の頭上から左の方向へ、チェロ、第2ヴァイオリン、そして第1ヴァイオリンの”上空”を横切るように舞っていき、第4楽章が終わるとほぼ同じくらいに客席のどこかに消えていったのです 楽員たちも演奏の合間に上空を舞う蝶々の行方を目で追っていました。蝶々は あたかもこの曲を知っていて オケとの蝶々発止のやり取りを楽しんでいるかのように舞っていました 不思議な体験でしたが、どうやら指揮に専念していたスヴェトラーノフだけが蝶々の存在に気が付かなかったようです

 

         

 

「判決、ふたつの希望」はジアド・ドゥエイリ監督による2017年レバノン・フランス合作映画(113分)です

レバノンの首都ベイルートで、パレエスチナ難民で住宅修繕工事の現場監督ヤーセルは、キリスト教徒で部屋の住人トニーと工事を巡って争いになる トニーの発した侮辱的な言動で傷ついたヤーセルはトニーを殴って怪我を負わせる その後もお互いの言動がエスカレートし、ついには法廷闘争にまで発展する。両者の弁護士が論戦を繰り広げる中、メディアが大々的に取り上げたことから事態は国全土を揺るがす騒乱へと発展していく

 

     

 

この映画を観て 真っ先に感じたのは、特に中東地域に生まれた人々は、民族、宗教、政治など複雑で繊細な問題を抱えながら生きていかなければならない運命にある、ということです 原題はTHE INSULT(侮辱)ですが、この映画は、ちょっとした侮辱的な言葉でも、民族や宗教が違えばとんでもない方向にいってしまうことを教えてくれます。映画で描かれている”事件”は世界のあちこちで現実に起こっているのだと思うと同時に、悲劇の歴史は教訓にならないのか、と もどかしさを感じます

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セルゲイ・エイゼンシュタイン監督「ストライキ」、「戦艦ポチョムキン」を観る~全編に流れるショスタコーヴィチの交響曲第5番、第10番 / 「ショスタコ」 「タコ八」という言い方について考える

2019年01月16日 07時25分35秒 | 日記

16日(水)。わが家に来てから今日で1566日目を迎え、米政府機関の一部閉鎖が続く問題で、トランプ米大統領は14日、政府機関をまず短期間再開したうえで予算を交渉するという与党・共和党のグラム上院議員の提案を拒否したことを明らかにした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      トランプ大統領は 民主党だけでなく 共和党の意見を聞く耳も持たないようだな

     

         

 

昨日、夕食に千葉県勝浦市在住の友人S君が送ってくれたカレイを煮つけ、アサリの味噌汁を作り、買ってきたタラコも用意しました タラコはインスタ映えするように3本出しましたが、健康のため1本しか食べませんでした

 

     

 

         

 

昨日、高田馬場の早稲田松竹でエイゼンシュタイン監督「ストライキ」と「戦艦ポチョムキン」の2本立てを観ました

「ストライキ」はエイゼンシュタイン監督・脚本による1925年ソ連映画(白黒・86分)です

1900年代初め、帝政ロシア治下の ある大きな鉄工場の労働者たちは苛酷な労働条件と低賃金に不満を抱いていた   彼らはロシア社会民主労働党(後の共産党)の組織を中心にストライキの準備を進めていた。不穏な動きを察知した経営者側は警察と軍隊に連絡し対策を協議した スパイが選ばれ、変装して労働者の中へ潜入していく 労働者たちはトイレや河の中、あるいはピクニックを装い討議を続けた。ある日、一人の労働者が道具箱を開けると高価な検尺器が盗まれていた 彼は職工長に報告したが、逆に泥棒の汚名を着せられた。彼は悩み、仲間に「自分は泥棒ではない」と遺書を書き工場内で首を吊る 真相を知った労働者たちの怒りは爆発し”ストライキ”が訴えられる。機械は止まり、工具は投げ出され、集会がもたれた ストライキの第1日目が明けた。闘争の勝利には誰もが楽観的だった。彼らは森で討議し、1日8時間労働、30パーセントの賃上げ等を決議したが、その時から資本家の反撃が始まった 騎馬警官隊が労働者たちを取り囲み、追い散らした。労働者たちは賃金が入らないために飢えが迫り、夫婦のいがみ合いが起こり、家財を売って生計を立てる家庭が出てきた。さらにスパイに見つかり捕らえられて買収される労働者も出てきた 労働者たちがストライキの継続を決めた時、指導者に逮捕状が出された。保安警察はルンペン・プロリタリアートのボス=地下の王様と手を結び、労働者街に放火させた 消防隊のホースは挑発に激高する労働者たちに向けられ、彼らを追い散らし、指導者を打ちのめして逮捕した 弾圧は始まった。騎兵隊が出動し群衆と対峙し、馬の脚の間に迷い込んだ幼児を救おうとした母親が銃の台尻で打ち倒されたことが衝突の口火となった。労働者街に残されたのは廃墟と死体の山だった。逃げ惑う群衆へ軍隊の一斉射撃が始まった。スクリーンに「諸君!この暴虐を忘れるな」の文字が浮かぶ

 

     

 

この作品は労働者と資本家の衝突をテーマに、ストライキが自然発生的な抗議行動から組織的な闘争へと発展するプロセスを描いた作品で、エイゼンシュテインの長編第1作に当たります 主要な登場人物を除き素人の労働者を登場させドキュメンタリーのような映像表現を展開しています

早稲田松竹のホームページに掲載された「セルゲイ・エイゼンゼンテイン特集」の作品解説によると、この映画ではドミトリー・ショスタコーヴィチの作品が使われているようなのですが、私にはたったの1曲も分かりませんでした 少なくとも比較的頻繁にコンサートで演奏される曲(交響曲であれ別の作品であれ)は使われていないように思います

 

         

 

「戦艦ポチョムキン」はエイゼンシュテイン監督・脚本による1925年ソ連映画(白黒・66分)です

 1905年6月、軍隊の度重なる敗北に伴い ロシア国内には労働者ゼネスト、農民の暴動、従属民族の反乱が相次ぎ、革命の機運がようやく軍隊の内部にまで高まってきた 戦艦ポチョムキンは労働者のゼネストが行われているオデッサの港からほど遠くないところに停泊していた。6月14日の朝、甲板の一隅に吊るされた牛肉の表面に蛆が群がっていたことから、水兵たちの怒りは爆発した そこに現れた先任士官ギリヤロフスキーにより水兵たちは追い散らされ、食卓には腐肉のスープが出された。しかし、誰一人それを手に取ることはなかった 緊急集合のラッパが鳴り渡り、甲板に整列した全員に向かい艦長ゴリコフは、スープに満足した者は前に出ろと命じ、出ない者は帆桁に引っ張り上げるように命じた。水兵たちは動揺した その時、水兵の一人マトウシェンコは水兵たちに砲塔の下に集まるよう呼びかけ、多くの水兵は従った。ギリヤロフスキーは衛兵に艦首に残った数名の水兵を撃つように命令した。間髪を入れずに指導者ワクリンチュクが「兄弟たち、誰を撃つつもりか!」と叫んだ その言葉に、衛兵たちの銃は下ろされた。ギリヤロフスキー再度命令したが、撃つ気のない衛兵を見てその手から銃を取り上げ水兵たちを撃とうとした。水兵たちは一斉に立ち上がり、軍医や艦長は海に投げ込まれた。しかし、ワクリンチュクもギリヤロフスキーの銃に倒れた このポチョムキンでの暴動のニュースはすぐ町中に広がり、多くの大衆の心を大きく揺さぶった。それから間もなくポチョムキンには黒海艦隊が鎮圧に来るという情報が入った 降伏か抗戦かを巡って激しい討論の末、ポチョムキンは抗戦することに決まった 夜になり、艦隊は姿を見せた。マトウシェンコの命令で、ポチョムキンのマストには「われらに合流せよ」の信号が上げられた。艦隊は射程距離内に入った。戦いか、死か、緊張した一瞬が流れた そして次の瞬間、ポチョムキンの水兵たちが聞いたのは、津波のように押し寄せてくる「同志!」という言葉だった

 

     

 

この映画の製作は1925年で無声ですが、モスフィルムにより1950年に発声版が作られ、さらに1976年に完全復刻版が製作されています

この映画では、ショスタコーヴィチの「交響曲第5番 作品47」と「交響曲第10番 作品93」が有効に使われています 映画の冒頭では第5番の第1楽章「モデラート」の悲劇的なパトスに満ちたテーマが鳴り響きます 中盤では第2楽章「アレグレット」のスケルツォが行進曲のように流れます 艦長側と労働者側が対峙する場面では第10番の第2楽章「アレグロ」のスケルツォが両者を煽り立てます 有名なオデッサ階段の場面で、銃で撃たれた母親の手から赤ん坊を乗せた乳母車が階段を下っていくシーンでは第5番の第3楽章「ラルゴ」終盤の緊迫感に満ちた音楽が画面を支配します そして、映画の最終場面では第5番の第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」のフィナーレのティンパニの連打が労働者の勝利を歌い上げます

ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906‐1975)の「交響曲第5番作品47」は、1937年4月18日から7月20日までの3か月の間に集中的に作曲され、同年11月21日のソヴィエト革命20周年記念日にエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルにより初演されました 一般的には、共産党による批判に応え得ないと判断して初演を中止した交響曲第4番に対し、第5番は「社会主義リアリズムの偉大な成果」「民衆に分かりやすい音楽」として受け入れられ、作曲家の名誉を回復した作品として評価されました

一方、「交響曲第10番作品93」は1953年12月17日、レニングラードでムラヴィンスキーの指揮で初演されました 重要なのは、この年の3月5日、「諸民族の偉大な統領」と神格化されていたスターリンが死去したという歴史的事実です ショスタコーヴィチが1945年に作曲した「交響曲第9番」は、1948年に共産党「ジダーノフ批判」の第1対象となり、スターリンの死を経て 前作から8年ぶりに作曲したのが第10番だったのです その意味では、共産党をはじめ誰からも制約を受けないで自由に作曲した交響曲と言えるかも知れません

映画の話に戻りますが、この映画には エイゼンシュテイン自身が神父役で出演しています 死んだふりをして、目を開けてまた閉じたりして、なかなかお茶目な面があるんだな、と ちょっと楽しくなりました

 

         

 

ショスタコーヴィチついでに、いわゆる「ショスタコ」「タコ八」という言い方・書き方について考えてみたいと思います

昨年のあるコンサートの休憩時間でのことです。3人の若者が立ち話をしているのをそれとなく聞いていたら、「ショスタコの7番がさあ・・・」とか、「タコ八は〇〇の指揮が一番だね」という言葉が聞こえてきました これを翻訳すれば、前者が「ショスタコーヴィチの交響曲第7番作品60”レニングラード”がさあ」で、後者が「ショスタコーヴィチの交響曲第8番作品65の演奏は〇〇の指揮が一番だね」ということです ご本人たちは、いかにも”クラシック通”のように得意げに話していましたが、個人的にはあまり感心しませんでした   タコ八って、タコの八っつあんじゃないんですから

当ブログをご愛読下さっている読者の皆さまはお分かりになると思いますが、toraブログでは「ショスタコ」とか「タコ八」とか書いたことは一度もありません 他の作曲家の作品でも、例えばベートーヴェンの「交響曲第7番イ長調作品92」を「ベト7」と書いたり、ブラームスの「交響曲第1番ハ短調作品68」を「ブラ1」とか書いたりしたこともありません もちろん「話し言葉」と「書き言葉」とでは多少言い方や書き方に違いはあると思います。一例を挙げれば、書く場合はいちいち「ショスタコーヴィチ」と書くより「ショスタコ」の方が簡単で、読む人には意味が通じると思うから、というようなことです

なぜ私が「タコ八」と書かずに ショスタコーヴィチ「交響曲第8番作品65」と正確に書くかと言えば、オーケストラの楽団員が上下黒の正装で演奏するのが「作曲者に対する敬意の表れ」であるのと同じ理由によります 私は基本的にひと様のブログは見ない主義なので、どなたがどのように書かれておられるのか知りませんが、いわゆる”クラシック通”は省略形で書いているケースが多いのでしょうか? 私はクラシック通でも何でもない ただのクラシック音楽好き に過ぎないので、これからも作曲者に敬意を表して正確に書いていくつもりです

 

     

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小菅優(弾き振り) ✕ 東京交響楽団でモーツアルト「ピアノ協奏曲第8番」「ピアノ協奏曲第21番」を聴く ~ ミューザ川崎 第36回「モーツアルト・マチネ」

2019年01月15日 07時27分08秒 | 日記

15日(火)。わが家に来てから今日で1565日目を迎え、人気テレビドラマシリーズ「家政婦は見た!」の主役や、テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」のナレーションで知られる女優の市原悦子さんが1月12日、心不全のため都内の病院で死去した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       多くの庶民は「家政婦は見た!」で家政婦を演じる市原悦子さんの名演技を見た!

 

         

 

昨日、夕食に「野菜と挽肉のドライカレー」を作りました たまに食べたくなります

 

     

 

         

 

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールでモーツアルト・マチネ「第36回: モーツアルト✕協奏曲」を聴きました   プログラムは①モーツアルト「ピアノ協奏曲第8番ハ長調K.246」、②同「ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467」です 出演はピアノ(弾き振り)小菅優、管弦楽=東京交響楽団です

 

     

 

1階C8列16番の席は今回で終わりです。次シーズンは右の方に移ります

オケは30人ほどの小編成ですが、モーツアルトの時代はこれが普通だったと思われます 弦は左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります。コンマスは水谷晃。ステージ中央にはグランド・ピアノが蓋を開けた状態で鍵盤を見せています

1曲目は「ピアノ協奏曲第8番ハ長調K.246」です この曲はモーツアルト(1756-1791)がザルツブルクの宮廷音楽家を務めていた1776年2月に作曲されました ホーエンザルツブルク城塞の司令官ヨハン・ゴットフリート・リュッツォウ伯爵の夫人アント二エのために書かれたと言われています 第1楽章「アレグロ・アペルト」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「ロンド:テンポ・ディ・メヌエット」の3楽章から成ります

いつもファッショナブルな衣装の小菅優が登場、ピアノに向かいます 彼女の合図で第1楽章の演奏に入ります。軽快なテンポはモーツアルトそのものです バックを支えるオケの中では荒木奏美の”歌うオーボエ”が素晴らしい 第2楽章は優美な旋律が続き、第3楽章に入ると、再び軽快なテンポで進められ、聴衆は小菅優のたくましい二の腕と背中に躍動感を見ます 20歳のモーツアルトの溌剌とした息吹を感じさせる好演でした


     


2曲目は「ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467」です この曲は生まれ故郷のザルツブルクの大司教と喧嘩別れしてウィーンに出てきてから、フリーの音楽家として活躍していた時期に作曲されました ピアノ協奏曲第20番K.466の完成した1カ月後の1785年3月9日に自身が独奏を担当する予約演奏会のために完成し、翌日の3月10日にウィーンのブルグ劇場で初演されました 協奏曲第20番ニ短調のほの暗さから一転して、第21番は明るく晴朗なハ長調で書かれており両曲は対極の位置にあります 第1楽章「アレグロ・マエストーソ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ」の3楽章から成ります

1曲目で演奏したホルンとオーボエに、フルート、ファゴット、トランペット、ティンパニが加わり、小菅優がピアノに向かい第1楽章が開始されます この曲も軽快なモーツアルトのテンポで進められます オーボエの荒木奏美、フルートの甲藤さち、ファゴットの福士マリ子の冴えた演奏が独奏ピアノに華を添えます 第2楽章のアンダンテは、スウェーデン映画「短くも美しく燃え」で使われていたほか、OO7シリーズ(題名は忘れた)の中でも使われていました 優雅で穏やかな曲です。第3楽章は一転、躍動感溢れる軽快なテンポで進みます。小菅優とオケとの丁々発止が聴きどころです 演奏を聴きながら、生でモーツアルトのピアノ協奏曲を聴ける幸せをしみじみと味わっていました

小菅優というと、ベートーヴェンの演奏に見られるようにパワフルなピアニストという先入観で見てしまいがちですが、どうしてどうして モーツアルトは優雅で軽やかです ピアノを演奏しながら指揮をする弾き振りも堂に入っていました どうせなら、モーツアルトのピアノ協奏曲の全曲弾き振りコンサートをやってほしいところです その時は是非、東京交響楽団でお願いしたいと思います

 

     

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エイゼンシュテイン監督「全線(古きものと新しきもの)」、「十月」を観る ~ ショスタコーヴィチ「交響曲第12番『1917年』」が流れる

2019年01月14日 07時22分22秒 | 日記

14日(月・祝)。わが家に来てから今日で1564日目を迎え、米政府機関の一部閉鎖が過去最長にまで長引き、国民生活や企業活動、金融市場への影響が広がってきた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       メキシコとの壁を建設する前に トランプのバカの壁を取り払った方が良くね?

 

         

 

現在、高田馬場の早稲田松竹では、ソビエトが生んだ偉大な映画監督セルゲイ・M・エイゼンシュテイン(1898-1948)の生誕120年・没後70年祭を開催中です

 

     

 

昨日、「全線(古きものと新しきもの)」と「十月」の2本立てを観ました

「全線(古きものと新しきもの)」はエイゼンシュテイン監督・脚本による1929年ソ連映画(モノクロ・無声・90分)です

ロシアの貧しい農村で働く農婦マルファは、農業教師指導のもとに小さな協同組合を作る 組合では牛乳分離機という新しい機械を手に入れ牛乳の生産に取り組むが、それが評判になり組合員が増える 種牛も組合共有で飼育する。収穫の時期になると従来の牛や馬ではなく機械(トラクター)の必要を感じるようになり、マルファは組合の代表者として町へ出て官僚主義の役人と交渉する その留守中、種牛は富農の手によって毒殺されてしまう しかし、マルファたちはトラクターを手に入れ機械化による新しい農業の時代を切り開いていく

 

     

 

出演者は主人公の農婦マルファ以外は全員素人ということに驚きます この映画では1925年の「戦艦ポチョムキン」で新たに実験的に取り組んだ特殊なモンタージュ技法を使用しています それは、空に牛の姿が浮かび上がる映像として結実しています

この作品は無声映画なので、最初から最後まで90分間いっさい音がありません そのため睡眠不足の状態で観ると途中で目が閉じる可能性が高いので気を付けた方が良いと思います

それにしてもよく分からないのは「全線」という邦題です。「古きものと新しきもの」は、「古きもの=従来のしきたり・やり方、新しきもの=機械化・合理化」といった意味だろうと理解できますが、「全線」は理解できません。「全線不通」の全線ですか? 私は頭が良くなので理解できません

 

         

 

「十月」はエイゼンシュテイン監督・脚本による1928年ソ連映画(モノクロ・109分)です

帝政ロシアの第一次世界大戦での連戦連敗により、1917年にはツァーリズム(絶対君主制)は最期を迎え、社会生活の困難にストライキが頻発していた そのような情勢の中、指導者レーニンは来たるべき革命はプロレタリア革命であることを強調した そして4月にスイスから帰国したレーニンは「いっさいの権力をソビエト(評議会)へ!」というスローガンを唱えるが、この方針は、メンシェビキや社会革命党の主張と根本的に対立するものだった 6月にペトログラードで第1回全ロシア・ソビエト大会が開かれたが、レーニンが率いるボリシェビキは少数派で、メンシェビキと社会革命党の握る臨時政府と、戦争継続への支持が強かった。しかし、これに対し7月に40万人規模の戦争反対のデモが起きた その後、ボリシェビキに対する強い弾圧が加えられ、レーニンはフィンランドに亡命する。9月に入るとロシアの食糧事情は極度に悪化し、ボリシェビキの支持者は増加、亡命中のレーニンは武装蜂起を促した。10月20日 密かにペトログラードに帰ったレーニンは、中央委員会に参加、蜂起は第2回ソビエト大会の前日、11月6日と決定した。当日、軍事委員会の蜂起指令により、労働者の赤衛軍は各連隊の兵士らと共に行動を起こし、要所を占領する    11月7日(ロシア歴10月25日)午前10時、軍事革命委員会は、臨時政府の倒壊とソビエト政権の樹立、講和会議の開催、地主的土地所有の廃止などを宣言した そして、赤衛軍が冬宮を攻撃する砲声が轟く中、第2回全ロシア・ソビエト大会がスモルヌィで開かれ、すべての権力をソビエトに移すことを宣言した

 

     

 

この作品はエイゼンシュテインが、ソビエト革命十周年記念映画として製作した作品で、1917年の3月から11月までの激動するソビエトを描いています この映画でも特殊なモンタージュ技法を駆使した映像表現を見せています

この映画は無声映画であるにも関わらず、音声のみならず音楽まで入っています 映画の冒頭ではショスタコーヴィチの「交響曲第12番作品112『1917年』」の第1楽章が流れます また、映画の末尾では同曲の第4楽章が流れます 曲のサブタイトルにあるように、この曲は1917年のロシア革命を描いた作品なので、これ以上この映画に相応しい音楽もないでしょう また、この映画では彼の他の作品(ヴィオラ・ソナタ?)なども流れます

ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が「交響曲第12番作品112」を作曲したのは1961年で、初演も1961年です したがって、エイゼンシュテインが1928年に製作した無声映画に、後からショスタコーヴィチの交響曲や彼の作品、その他の音声を加えて編集したことになります 因みに「交響曲第12番」は第1楽章「革命のペトログラード:モデラート~アレグロ」、第2楽章「ラズリフ:アダージョ」、第3楽章「アウローラ号:アレグロ」、第4楽章「人類の夜明け:アレグロ~アレグレット」の4楽章から構成されています エイゼンシュテインの巧みな映像表現にショスタコーヴィチの音楽が加わることにより、より一層深みが増し 作品の芸術的価値が高められています

     

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ヴェルディ「レクイエム」を聴く ~ ロレンツォ・ヴィオッティ ✕ 東響 ✕ 森谷真理 ✕ 清水華澄 ✕ 福井敬 ✕ ジョン・ハオ ✕ 東響コーラス:第667回東響定期演奏会

2019年01月13日 07時24分26秒 | 日記

13日(日)その2。よい子は「その1」から読んでね。モコタロはそちらに出演しています 

昨日18時からサントリーホールで東京交響楽団の第667回定期演奏会を聴きました プログラムはヴェルディ「レクイエム」です 出演はソプラノ=森谷真理、メゾ・ソプラノ=清水華澄、テノール=福井敬、バス=ジョン・ハオ(リアン・リの代演)、管弦楽=東京交響楽団、合唱=東響コーラス、指揮=ロレンツォ・ヴィオッティです

この曲はジュゼッペ・ヴェルディ(1813‐1901)が1874年に作曲した鎮魂ミサ曲です 1868年、ロッシーニの死に際して13人のイタリアの作曲家による「レクイエム」合作の企画があり、ヴェルディは最後の部分「われを解き放ちたまえ」を作曲しましたが、この時は演奏の機会が与えられませんでした 1873年に詩人・小説家のマンゾーニの死を追悼して他の部分を全曲完成し、1874年5月22日の一周忌にミラノのサン・マルコ教会でヴェルディ指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団を中心とするオーケストラと合唱団によって初演されました

全体の構成は次の通りです

Ⅰ.「永遠の安息をお与えください」と「主よ、お憐みください」(レクイエム&キリエ)

Ⅱ.怒りの日(ディエス・イレ):「怒りの日」から「涙の日」までの10曲から成る。

Ⅲ.オフェルトリオ

Ⅳ.聖なるかな(サンクトゥス)

Ⅴ.神の子羊(アニュス・デイ)

Ⅵ.久遠の光が(ルクス・エテルナ)

Ⅶ.私をお救いください(リベラ・メ)

 

     

 

東響コーラスの混声合唱約150名がステージ後方にスタンバイします。女声陣は普段は上が白、下が黒の衣装ですが、曲目が「レクイエム」なので上下黒の衣装で統一しています オケはいつもの東響と同じで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並びです。コンマスは水谷晃。ソリストの4人が指揮者の左右にスタンバイします

全体の演奏を聴く限り、ヴィオッティの音楽作りは、最弱音から最強音までの振幅が大きいのですが、指揮は冷静沈着そのものです 第1曲「レクイエム」の冒頭は最弱音で始まり、第2曲「怒りの日」で大地を揺るがす最強音に達します

この曲は初演時から「オペラのようだ」とか「宗教曲らしくない」とか言われてきましたが、ヴェルディ自身は「オペラのように歌って欲しくない」という趣旨のことを語っています

プログラム冊子の「プログラム・ノート」に加藤浩子さんが次のように書いています

「ヴェルディの『レクイエム』は、おそらくイタリア人だからこそ書けた作品である 『これは祈りの音楽ではなく、神に要求する音楽』『ヴェルディは”レクイエム”を通じて神に問いかけている。解放して欲しい、けれど本当に解放されるのか、と』・・・筆者がこれまでインタビューしたイタリア人アーティストたちが本作について語った言葉だ

これを読んで、やっとこの作品の主張している本質的なものが分かったような気がしました 前述の通り、ヴェルディはこの曲を作曲するに当たって、一番最初に作曲したのは最終曲「リベラ・メ」(解き放ちたまえ)でした その歌詞を読むと「私を解き放ってください、主よ、永遠の死から。その恐ろしい日、私を解き放ってください」となっています この部分を森谷真理さんのソプラノで聴いていて、『祈りの音楽でなく、神に要求する音楽』という言葉が腑に落ちました


     

 

森谷さんをはじめソリストの4人は絶好調でした この日の4人はオペラ的な歌唱を排し、純粋に宗教曲としてのアプローチで歌っていたと思います そして、特筆すべきは 楽譜なしで終始迫力のある合唱を聴かせてくれた東響コーラスの皆さんです 「怒りの日」の合唱は、腹の底にズッシリと響きました   東京交響楽団の面々はヴィオッティの指揮のもと水谷晃コンマスのリードにより渾身の演奏を展開しました

ローザンヌ出身のロレンツォ・ヴィオッティはまだ28歳の若さですが、これからの活躍が大いに期待される指揮者として注目しています

 

     

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響きの森クラシックシリーズ「ニューイヤーコンサート2019」を聴く ~ 小林研一郎 ✕ 前橋汀子 ✕ 幸田浩子 ✕ ジョン・健・ヌッツォ ✕ 東京フィル

2019年01月13日 00時13分24秒 | 日記

13日(日)その1。わが家に来てから今日で1563日目を迎え、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が私的な損失を日産に付け替えたなどとされる事件で、東京地検特捜部は11日、ゴーン前会長を会社法違反の罪で追起訴したというニュースの一方で、2020年東京五輪・パラリンピックの招致を巡り、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長が汚職に関わった疑いがあるとして、フランス当局が竹田会長の訴追に向けた手続きに入っていたことが分かった というニュースが出たことについて感想を述べるモコタロです

 

     

     このタイミングで フランスの検察が動くのは 日本のゴーン捜査への報復措置か?

 

         

 

昨日、15時から文京シビックホールで「響きの森クラシックシリーズ『ニューイヤーコンサート2019』」を、18時からサントリーホールで東京交響楽団の第667回定期演奏会を聴きました。ここでは前者の『ニューイヤーコンサート』について書きます

この公演は私にとって6日の「北とぴあ」、8日の「日経ミューズサロン」に次いで3度目のニューイヤーコンサートです

プログラムは①ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「春の声」、②メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」、③ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」より「公爵様、あなたのようなお方は」、④プッチーニ:歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」、⑤マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲、⑥レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「ヴィリアの歌」、⑦プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」、⑧ラヴェル「ボレロ」です

演奏②のヴァイオリン独奏=前橋汀子、③⑥のソプラノ独唱=幸田浩子、④⑦のテノール独唱=ジョン・健・ヌッツォ、管弦楽=東京フィル、指揮=小林研一郎です

 

     

 

会場はいつもの通り満席状況です 事前のアナウンスで、当初プログラムの前半がオペラやオペレッタの歌、後半がヴァイオリン協奏曲とボレロの予定だったが、ヴァイオリン協奏曲を前半の2曲目に演奏すると伝えられました

オケの配置はいつもの東京フィルと同じで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成です コンマスは三浦章宏氏。拍手が起きたのでコバケンの登場かと勘違いした三浦氏が立ち上がり、オケのメンバーも全員立ちましたが、舞台袖から現れたのはMCの朝岡聡氏でした 彼を見た三浦氏は、勘違いに気が付き 全員を座らせました。歯科医者を識者と勘違い、もとい、司会者を指揮者と勘違いした一幕でした

今度はホンモノの”炎のコバケン”が登場し、早速1曲目のヨハン・シュトラウス2世(1825‐1899)のワルツ「春の声」の演奏に入ります やっぱり東京フィルはゴージャスなサウンドですね 一瞬にしてウィンナ・ワルツの世界に引き込まれました。まさに新春に相応しい名曲の華やかな演奏です

ここでソリストのスペースが空けられ、前橋汀子さんが真紅のドレスで登場します 早速2曲目のフェリックス・メンデルスゾーン(1809‐1847)の「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」の演奏に入ります この曲は第1楽章「アレグロ・モルト・アパッショナート」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグレット・ノン・トロッポ~アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります。3つの楽章は切れ目なく続けて演奏されます

この日は朝から寒い一日でしたね。誰でも思うように身体が動きませんよね・・・・そんな演奏でした 独奏ヴァイオリンが音楽の流れに乗り切れず不安定な演奏が続きました アンコールにバッハの無伴奏パルティータ第3番の「ガヴォット」を演奏しましたが、これも流れがイマイチでした


     


プログラム後半の1曲目はヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇「こうもり」から「公爵様、あなたのようなお方は」です この曲は、第2幕の夜会でアイゼンシュタイン家の小間使いアデーレが歌うコケティッシュな歌です ソプラノの幸田浩子さんが淡いパープルの衣装で登場、さっそく歌に入ります 2000年にオペレッタの名門、ウィーン・フォルクスオーパーと専属契約を結んだ彼女の十八番と言っても過言ではないでしょう  身振り手振りを交えながらアイゼンシュタインをあしらうアデーレの姿が目に浮かぶようです

次の曲はジャコモ・プッチーニ(1858-1924)の歌劇「トスカ」から「星は光りぬ」です この曲は第3幕でカヴァラドッシが歌うドラマティックなアリアです 冒頭のクラリネットの寂しげな前奏に導かれてジョン・健・ヌッツォのテノールが入ってきます。さすが、2000年にウィーン国立歌劇場と専属契約を結んだ実力者だけあって、特に高音部で聴かせます

ここで歌手陣の喉を休めるため、オケだけによる演奏が入ります ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)の歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲です タイトルは「田舎の騎士道」という意味です。日本語にしてしまうと何とも味気ないタイトルになってしまいますね オペラの間奏曲は数あれど、これほど美しく哀しい曲はないかも知れません 葬儀の時はこの曲を流して欲しいと言う人を知っています

次の曲は幸田浩子さんが再登場し、フランツ・レハール(1870-1948)の喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「ヴィリアの歌」を歌います 「メリー・ウィドウ」とは日本語で「陽気な未亡人」という意味です。日本語にしてしまうと・・・・・以下同文 この曲は、大富豪の未亡人ハンナが第2幕で歌うアリアで、森の妖精ヴィリアに恋した青年の想いが切なく歌われます 幸田浩子さんは、アデーレのアリアのようなコケティッシュな歌も上手いし、ハンナのこのアリアのような歌も上手いし、本当に素晴らしいです

次の曲はプッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」です この曲は第3幕冒頭でカラフが歌うアリアですが、この曲を聴いて感動しない人はいないでしょう この時ばかりは、いつも居眠りをしている隣席のオバサンも目をパッチリと開けて、ジョン・健・ヌッツォの歌うアリアに聴き入っていました

さて、この曲が終わった途端に、急いで会場を立ち去る人が居ました 明らかにコンサートの掛け持ちです。それを見て私は時計で時間を確かめました。17時5分前です。私の目論見ではこのコンサートは17時には終わるはずでしたが、まだラヴェルの「ボレロ」が残っています コバケンがどんなテンポで演奏するのか未知数だし、演奏だけならともかく話術に長けた朝岡氏のMCが入っているので、このままで行くと終演は17時半近くになってしまう可能性が高い 18時開演のサントリーホールでのヴェルディ「レクイエム」は100%途中休憩がないだろう。したがって遅刻は厳禁である 17時半に文京シビックを出てもコンサートにはぎりぎりで間に合うかも知れない しかし、それではプログラムの解説を読む時間もないまま演奏を聴くことになる。そういう聴き方はしたくない コンサートには精神的に余裕をもって臨みたい・・・と結論を出して、「ボレロ」を諦め、朝岡氏がコバケンと会話をしている間に会場を抜け出して、地下鉄でサントリーホールに向かいました 東京フィルの管楽器ソロのリレーによる「ボレロ」と、終演後にマイクで語る「コバケン節」が聞けないのは本当に 残念だったのですが、これも危機管理の一つです。コンサートをハシゴする時は、何を優先するかを短時間で判断して結論を出さなければなりません。要するに「何を捨てて、何を取るか」の選択です。今回は「ボレロ」を捨てて途中休憩のない「レクイエム」を取ったわけですが、後悔はしていません これからもこういうケースはあると思いますが、今回と同じ方針で臨みたいと思います

 

     

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