人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

貫井徳郎著「乱反射」を読む ~ 「風が吹けば桶屋が儲かる」的な負の連鎖を堂々の600ページで展開した傑作

2019年01月24日 07時20分28秒 | 日記

24日(木)。昨日は相変わらず喉の痛みが激しいので、1日中ベッドに横たわってベートーヴェンやモーツアルトのCDを聴きながら読書に勤しみました 体調が悪かったので昨日午後7時から東京文化会館小ホールで開かれた「前橋汀子カルテット『弦楽四重奏の神髄』」公演は聴きに行けませんでした 今夜も7時からサントリーホールで新日本フィルの定期演奏会があるのですが、とても行ける状態ではありません

ということで、わが家に来てから今日で1574日目を迎え、中国の映画製作会社が「ウルトラマン」のキャラクターを無許可で使い映画を製作・公開したとして円谷プロダクションから訴えられていたにもかかわらず、続編の映画を公開したことが23日までに分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      こんなことだから中国はトランプから著作権問題でやり玉に挙げられるんだよな

     

         

 

昨日、夕食に「鶏のトマト煮」を作りました 熱っぽいので、マスクをして短時間で出来る料理にしました

 

     

 

         

 

貫井徳郎著「乱反射」(朝日文庫)を読み終わりました 貫井徳郎は1968年東京都生まれ。1993年に第4回鮎川哲也賞の最終選考作となった「慟哭」によりデビュー。2010年に本作「乱反射」で第63回日本推理作家協会賞を受賞しています

 

     

 

600ページの大作を読み終わって思ったのは、「まるで ことわざ の『風が吹けば桶屋が儲かる』みたいなストーリーだな」ということでした

Wikipediaによれば「風が吹けば桶屋が儲かる」というのは、ある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの喩えで、ことわざの由来は、江戸時代の浮世草子「世間学者気質」に出てくるとのことです

その内容は「大風で土ぼこりが立つ ⇒ 土ぼこりが目に入って、盲人が増える ⇒ 盲人は三味線を使う ⇒ 三味線に使う猫皮が必要になり猫が殺される ⇒ 猫が減ればネズミが増える ⇒ ネズミは桶をかじる ⇒ 桶の需要が増えて桶屋が儲かる」というものです

「乱反射」では、マナーの悪い人が街路樹の根元に犬のフンを放置したことが幼児の死に繋がっていきます

大風の吹く夜、街路樹が倒れ ベビーカーの幼児を直撃した 救急車で病院に運ぶが、一番近い病院は受け入れを拒否する。その理由は当番医が外科専門でなく、夜間診療の患者が最近増えていたので対応できないというもの 道路上に車を放置したまま運転席を離れた常識外れがいたため道路が渋滞し、救急車がなかなか前に進めなかった 市の委託を受けた業者が街路樹の診断に赴いたが、街路樹伐採反対の主婦たちが接近を妨げた。やっと診断するチャンスがきたが、診断担当者が潔癖症のため、街路樹の根元のフンを見て近づくことが出来ず、結果的に診断できなかった 市民からはフンを片付けて欲しいという苦情が寄せられていたのに、担当者が放置していた・・・これらのことが複合的に絡み合って、結局幼児は死亡してしまった

幼児の父親は新聞記者で、子どもが死に至った真相を究明するため、市、病院、街路樹診断業者などの担当者に面会し取材をしますが、だれも自分の行為が子どもを死に追いやったとは思っていないことが分かり愕然とします そのことを筆者はこの小説の前文で「一見不運な事故にしか見えない幼児の死は、実は殺人だった それも大勢の人間が寄ってたかって無辜の幼児を殺したという、異常極まりない事件であった。にもかかわらず、幼児の死の異常性には誰も気づかず、現場となった地点には誰が手向けたとも知れない花だけが置かれている。犯人たちは今日も、己が死に追いやった幼児のことなど忘れ果て、平凡な日常の中を生きている」という言葉で表しています

普通の小説は1、2、3という順に番号を振って話が進められます。しかし、この小説はー44、-43という具合にマイナス番号で始まり ゼロに近づいていきます    そして、0(ゼロ)のところで、街路樹がベビーカーを直撃する場面が描かれ(360ページ)、その後は1、2、3と番号が振られて物語が展開します     つまり、前半のマイナス番号のところでは、事件が起こる前の登場人物たちの日常の出来事が淡々と綴られ、プラスの番号に入ってからは、それぞれの出来事の因果関係が幼児の父親によって解明されていきます

この本は、ちょっとしたマナー違反や自己中心的な考えが、他人を死に追いやることにつながる可能性があることを示しています

風邪のため寝ていたので、文字通り一気読みしましたが、久しぶりにボリュームのあるエンターテインメント(600ページ)を読み終わり、感慨もひとしおです

コメント (2)
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