9日(水)その2.よい子は「その1」から見てね モコタロはそちらに出演しています
昨夕、大手町の日経ホールで第480回日経ミューズサロン「ヨハネス・フライシュマン&村田千佳 ニューイヤーコンサート ~ オーストリア音楽大使によるウィーンからの贈り物」を聴きました プログラムは①シューベルト「ヴァイオリンとピアノのための華麗なるロンドD.895」、②リヒャルト・シュトラウス「ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調作品18」、③ブラームス「ハンガリー舞曲第5番」、④クライスラー「愛の喜び」、⑤同「愛の悲しみ」、⑥ヨハン・シュトラウス2世「南国のバラ」、⑦ヘルムート・スティビッチ「素晴らしい古くて新しい時間」(世界初演)、⑧クライスラー「ウィーン奇想曲作品2」、⑨同「オールド・リフレイン」、⑩同「ウィーン狂詩曲風幻想曲」です
演奏はヴァイオリン=ヨハネス・フライシュマン(オーストリア音楽大使)、ピアノ=村田千佳、バレエ=佐々木美緒、鎌田真帆、米津萌、葛西仁黎花、阿比留友里香です
自席はG列6番、左ブロック右から3つ目です
スマートなフライシュマンと村田千佳さんが登場し、1曲目のシューベルト「ヴァイオリンとピアノのための華麗なるロンドD.895」の演奏に入ります この曲はフランツ・シューベルト(1797-1828)が1826年10月に作曲した単一楽章の作品です シューベルト特有の、終わるかと思うとまだまだ続く長大なロンドです 29歳当時の作品ですが、シューベルトは31歳で亡くなっているので、結果的に晩年の作品になってしまいました 天才は早死にします。フライシュマンの演奏はどちらかと言うと、理知的なアプローチだと思います
2曲目はR・シュトラウスの「ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調作品18」です この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864‐1949)が1888年に作曲した作品です 作曲者が24歳の時に作曲された作品なので、瑞々しい感性を感じます 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」、第3楽章「フィナーレ:アンダンテ~アレグロ」の3楽章から成ります
フライシュマンはリヒャルト・シュトラウスの曲に求められる”艶やか”な音色で奏でます でも、作品に対するアプローチはあくまでも理知的です 第2楽章がとても美しい演奏でした ピアノの村田千佳さんがよく付けています
ここで終わったら「どこが『ニューイヤーコンサート』じゃい 責任者出てこい」と言いたいところですが、真打は後半のプログラムです
プログラム後半に入るにあたり照明が落ち、会場が暗転します 不安におののいていると照明がパッと点き、ステージを見ると 中央にフライシュマンと村田さんが、左右のスペースにバレエダンサーが2人ずつスタンバイしています さっそく後半最初の曲、ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」の演奏に入ります フライシュマンは前半の理知的な演奏がウソだったように情熱的な演奏を展開します どっちが本当のフライシュマンなんだい とツッコミを入れたくなります。それにつけても、クラシックバレエが入ると「ニューイヤーコンサート」らしくていいですね
次にフリッツ・クライスラー(1875‐1962)の「愛の喜び」と「愛の悲しみ」が続けて演奏されます この2曲は性格的に対を為す小品で、アンコール・ピースの定番です この曲を聴いている間、どこかでトントンという小さな音が聴こえてきました 日経ホールで やや規則的な”騒音”を聴くのは初めてなので、いったい何の音だろうと不思議に思っていましたが、次の曲でその原因が分かりました
次の曲はヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)のワルツ「南国のバラ」です この曲は6日の北とぴあの「ニューイヤーコンサート」で聴いたばかりですが、ヴァイオリンとピアノで聴くのは別の趣があります フライシュマンのウィーン情緒豊かな演奏に合わせて、バレエダンサーが華を添えます 彼女たちのバレエを観ていて、ハタと気が付きました 前の曲の時に聴こえたトントンという音は、彼女たちが舞台裏で踊っていたリハーサルだったのではないか、ということです 「トゥシューズ」ってジャンプして着地すると結構 大きな音が出るものだと気が付きました 次にこういう機会がある時は気を付けてほしいと思います
次の曲はフライシュマンの友人であるヘルムート・スティビッチがこの日のために作曲した「素晴らしく古くて新しい時間~世界で最も活気ある夢の都ウィーン」の世界初演です 演奏の前にフライシュマンがマイクを持って英語で曲目を解説し、村田さんが通訳をしましたが、この曲は「芸術都市ウィーンの伝統と歴史を受け継ぐ生活に根差した文化と自由な精神を反映した作品」ということのようで、「4日前に最終稿の楽譜が届いた」とのことです 二人の演奏で聴くこの曲は、ひと言でいえばピアソラのリベル・タンゴのような曲想でした 4日前に届いた楽譜を短期間でマスターしなければならなかったフライシュマンと村田さんは、何だかんだ言っても凄いなあ、と思いました
次にクライスラーの「ウィーン奇想曲作品2」を、続けてオーストリアの作曲家ブランドル(1835-1913)のオペレッタ「愛しのアウグスティン」の歌曲を編曲した「オールド・リフレイン」を演奏し、最後に「ウィーン狂詩曲風幻想曲」をウィーン情緒たっぷりに演奏してプログラムを終了しました この間もトントンという音が聴こえていたので、「おかしいな、プログラムはこれで最後だし・・・???」と思いましたが、またハタと思い付きました 「そうか、アンコール曲で踊るんだな」と。その予想は見事に当たり、アンコールにヨハン・シュトラウス2世のワルツ「美しく青きドナウ」がバレエ付きで演奏されました
今回の公演は前半よりも後半の方が圧倒的に楽しく、特にバレエが入ったのが「ニューイヤーコンサート」としては正解だったと思います 主役はフライシュマンでしたが、彼を支えた村田千佳さんのピアノは決して出しゃばることなく、それでいて抜群の存在感がありました 素晴らしいピアニストだと思います
ニューイヤーコンサートは楽しい