25日(土)。村上龍著「55歳からのハローライフ」(幻冬舎文庫)を読み終わりました 村上龍は1952年長崎県生まれ。1976年に「限りなく透明に近いブルー」で第75回芥川賞を受賞しました
最近ではテレビ東京の「カンブリア宮殿」の司会者としても知られています。この本の巻末でバークレイズ証券の北野一氏が「解説」を書いていますが、そちらの繋がりなのでしょう
その北野一氏が書いている通り、私もこの本のタイトルを「55歳からのハローワーク」と勘違いしていて、村上氏の書いた「13歳からのハローワーク」のシニア版だと思っていました ところが、ぱらぱらっとページをめくってみると中編小説集であることが分かりました
収録されているのは、晴れて夫と離婚したものの経済的な問題から結婚相談所に通い、様々な男たちに出会う中米志津子を描いた「結婚相談所」、早期退職してキャンピングカーで妻と旅する計画を家族から反対される富裕太郎を描いた「キャンピングカー」、落ちぶれた中学時代の友人を母親に会いに行かせる因藤茂雄を描いた「空飛ぶ夢をもう一度」、大切なペットの犬を亡くした妻とその夫の心理の変遷を描いた「ペットロス」、元大型トラック運転手・下総源一の老いらくの恋を描いた「トラベルヘルパー」の5つの小説から成っています
これらの物語に共通しているのは、いわゆる定年の一歩手前で、人生をもう一度やり直したいと考えている男女の小さな決意を描いているということです 小説ですから「そんなことは有り得ないだろう
」と思う部分もありますが、そこに書かれた世界に”思い当たる節”がある人にとっては光明となるでしょう
さらに、5つの物語に共通して出てくる大事なものがあります。それは飲み物です 「結婚相談所」ではアールグレイの紅茶
「キャンピングカー」ではパーコレーターで淹れたコーヒー
「空飛ぶ夢をもう一度」ではパラディーゾ(ミネラルウォーター)
「ペットロス」ではプーアール茶
「トラベルヘルパー」では狭山の新茶です
これらの飲み物が主人公と相手方との媒介となって物語が進行していきます
これは作者が意図して用意した小道具だと思います。蛇足ですが、”狭山の新茶”は、私の生まれ故郷である埼玉県狭山市や入間市付近で取れるお茶です
ちょうど今ごろが新茶の季節で、先日、狭山から新茶の詰め合わせを送ってきたばかりです
文庫本の帯によるとこの作品は6月14日からNHKでドラマ化されるとのこと。私はテレビは観ませんが、ドラマとしては面白いかも知れません
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