人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

元N響首席オーボエ奏者・茂木大輔氏が語る名指揮者 / ミッジ・コスティン監督「ようこそ映画音響の世界へ」を観る ~ ハリウッドの映画音響の歴史を概観する興味深いドキュメンタリー

2020年11月08日 07時30分35秒 | 日記

8日(日)。昨日の日経朝刊・読書欄のコラム「あとがきのあとがき」に、N響の首席オーボエを務め 昨年 定年退職した茂木大輔氏が出版した「交響録 N響で出会った名指揮者たち」について自身が語ったインタビューが上げられていました 超訳すると、

「『N響にとって名演とは何か』。一つの問いが念頭にあったという 名手揃いの楽団の演奏レヴェルは高い。観客の耳も肥えている。『人間、最高のものはよく覚えている。その上を行かないと感動はしてくれない』。期待を超える演奏が常に求められてきた。そんな楽団にあって『明らかな名演を引っ張り出した指揮者が、やっぱりいた』と力を込める ヴォルフガング・サヴァリッシュやホルスト・シュタイン、シャルル・デュトワ・・・。『本に挙げたのは、聴いたこともない音楽を引き出した人ばかり』。一方、世界的に有名な指揮者でも『個人的には、あまり理解できない人もいた』と、時折 厳しめの評価も飛び出す

私はこの本を読んでいないので何とも言えませんが、興味を持ったのは①ここで挙げられたN響客員指揮者の中に、「今年のN響ベスト・コンサート」で常に上位に入るヘルベルト・ブロムシュテットの名前がないこと、②「あまり理解できない人」とは具体的に誰を指すのか、ということです ①については、茂木氏の著書には書いてあるのかもしれません ただ、「同氏のリハーサルは説教じみた時間が長く退屈だ」「聴衆には受けが良いが楽団員には不評だ」という趣旨のことをかなり前に何かで読んだ記憶があります 記憶違いかもしれません 一方、サヴァリッシュについては、「管理能力が抜群で、指揮者として優れているだけでなく、何をやっても成功するのではないか」とN響の楽団員が語るシーンを何度かテレビで観た記憶があります ②については茂木氏の著書に書いてあるのかどうか、実際に確かめてみなければ分かりませんが、今や彼も指揮者なので先輩の悪口は書かないでしょうね

ということで、わが家に来てから今日で2229日目を迎え、米大統領選で7日、民主党のジョー・バイデン前副大統領の獲得選挙人が過半数に達したことを受け、共和党のドナルド・トランプ大統領は、「選挙はまだ終わっていない。民主主義と米国民が望む正当な票集計が行われるまで、私は闘うことをやめない」と述べ、敗北を受け入れず選挙結果を巡る法廷闘争を継続する考えを強調したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     負けるのが分かっていながら法廷闘争に走る哀れなトランプ  誰が付いていくのか

 

         

 

昨日、新文芸坐でミッジ・コスティン監督による2019年製作アメリカ映画「ようこそ映画音響の世界へ」(94分)を観ました

この映画は、ハリウッドの映画音響にスポットを当てたドキュメンタリーです 映画音響は、1927年に世界で初めてのトーキー映画「ジャズシンガー」が誕生して以来、常に進化を続けてきました この映画では、「キングコング(1933)」「市民ケーン」「ROMA ローマ」など、新旧の名作群の映像を使用し 映画音響の世界を紹介していきます    登場するのは、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグ、デビッド・リンチ、クリストファー・ノーランらの監督陣、「スター・ウォーズ」のべン・バート、「地獄の黙示録」のウォルター・マーチ、「ジュラシック・パーク」のゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドたちのインタビューを盛り込み、映画における「音」の効果と重要性に迫っていきます

 

     

 

この映画を観て、世界の映画音響の歴史の流れが 大雑把ではあるものの把握できました それは 無音 ⇒ モノラル ⇒ ステレオ ⇒ マルチトラックによるサラウンド という流れです この間、映像はモノクロ ⇒ カラー ⇒ デジタルという流れを辿っています

意外だったのは、それまで映画で使われた音楽はすべてモノラルだったのが、1976年の「スター誕生」で、バーブラ・ストライザンドが歌った「スター誕生  愛のテーマ」は初めてステレオを使用したということです

そして、1977年に公開されたジョージ・ルーカス監督による「スターウォーズ エピソード4 新たな希望」は映画音響に革命的な変化をもたらしたといいます 観衆の関心を映像だけでなく音響に向けさせたという点で画期的だったとのことです 音響はジョン・ウィリアムズ作曲による「スターウォーズ」のテーマに限らず、地球上に存在しないキャラクター(チューバッカ、R2-D2、C-3PO等)の声や様々な効果音が含まれています 私も初めて「スターウォーズ」を観た時の興奮を今でも忘れません さらに、シンセサイザー作曲家・冨田勲のマルチトラック録音に刺激を受けたフランシス・コッポラ監督が1979年に製作した「地獄の黙示録」は5.1トラックを採用してサラウンド効果を成功させています ヘリコプターから流されるワーグナー「ワルキューレの騎行」が耳について離れません

一番意外だったのは、1970年代以降の映画の音響はほとんどシンセサイザーで作り出しているのかと思っていたら、生の音を集めてきたり、物を叩いたりこすったりして、映像に相応しい音を作り出しているということです その上で、音に迫力が足りなければ他の音をかぶせて新しい音を作り出しているのです 例えば、ジェット戦闘機がマッハの速度で飛ぶシーンでは、ホンモノのジェット機が飛ぶ音に、猛獣が鳴く声をかぶせて迫力のある音を作り出しています

映画音響は、基本的には生の音や道具を使用しながら映像に相応しい音を作り出して耳に錯覚を起こさせる技術ですが、現代の映画にはなくてはならない技術になっています

この映画では、時には「音がない映像の重要さ」も紹介しています ヒチコック監督の「鳥」で、いきなり多くの鳥が人間に襲いかかるシーンでは、音のない空間の中に 突然出現した鳥の羽ばたく音が恐怖を駆り立てていることを紹介しています

映画好きにはたまらなく面白い作品でした

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