12日(日).わが家に来てから今日で1138日目を迎え,投打の「二刀流」で活躍するプロ野球日本ハムの大谷翔平選手が11日,日本記者クラブで記者会見を行い,「来年以降,米国で頑張りたい.一番の選手になりたい」と 今オフの米大リーグ挑戦を正式に表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
アメリカに行ったら「二刀流」は通用しないから 宮本武蔵で通した方がいいよ
昨日,晴海の第一生命ホールで「トリトン晴れた海のオーケストラ」第3回演奏会を聴きました オール・モーツアルト・プログラムで①歌劇「フィガロの結婚」序曲,②セレナータ・ノットゥルナK.239,③オーボエ協奏曲ハ長調K.314,④交響曲第39番変ロ長調K.543です
出演は②のオーボエ独奏=広田智之,コンマス=矢部達哉,他のメンバーは都響を中心とする首席クラスの寄せ集めメンバーです
自席は1階9列14番,センターブロック左から2つ目です.会場は9割近く入っているでしょうか.良く入りました
拍手の中,オケの面々が登場し配置に着きます オケを見渡して気が付くのは豪華な顔ぶれです
弦楽器の1列目だけをとってみても,左からコンマスの矢部達哉(都響ソロ・コンマス),渡邉ゆづき(都響第1ヴァイオリン副首席),双紙正哉(都響第2ヴァイオリン首席),戸上眞里(東京フィル第2ヴァイオリン首席),清水詩織(都響チェロ),山本裕康(神奈川フィル・チェロ首席),村田恵子(都響ヴィオラ副首席),篠崎友美(新日本フィル・ヴィオラ首席),池松宏(都響コントラバス首席)といった錚々たるメンバーです
第1ヴァイオリンには2010年ルーマニア国際音楽コンクール第1位の会田莉凡さんの姿があり,第2ヴァイオリンにはウェールズ弦楽四重奏団の三原久遠氏がスタンバイしています
が,一人一人挙げていったらキリがありません.ひと言で言えば「スーパー・オーケストラ」です
女性陣はブルー系,グリーン系の衣裳の人が多く,赤系統の派手な衣裳の人はいません.それだけに秋らしい爽やかさを感じます
1曲目は歌劇「フィガロの結婚」序曲です 周知の通りフランスの劇作家ボーマルシェの戯曲「フィガロの結婚」をもとに台本作家ダ・ポンテがシナリオを書き,モーツアルトが作曲し,1786年に初演された喜歌劇の最高傑作の序曲です
指揮者がいないので,コンマス矢部氏の音頭で演奏に入ります これがたった30数名で演奏しているのか
と驚くほど厚みのある力強い演奏が展開します
まずは小手調べといったところでしょうか
2曲目は「オーボエ協奏曲ハ長調K.314」です この曲は,モーツアルトがパリに行く前に立ち寄ったマンハイム時代に書いた「フルート協奏曲第2番ニ長調K.314」の元になった曲であると言われています
しかし,自筆譜が残されていないため出自がはっきりしていないというのが実情です
そのため,この2曲は同じケッヘル番号314番が振られています
個人的なことになりますが,「フルート協奏曲第2番K.314」はン十年前の私のクラシック入門曲です N響のライブ(Fl:N響首席・宮本明恭氏)をラジカセに録音したものですが,その時の音楽評論家S氏の解説は次のような内容でした
「モーツアルトがマンハイムに行ったとき,現地にヨハン・ヴェントリングという高名なフルート奏者がいた モーツアルトは,彼を通じてオランダ出身の商人でフルート愛好家ド・ジャンから『フルート協奏曲』3曲と『フルート四重奏曲』2曲の作曲を依頼された
モーツアルトはマンハイムを去る前にそれらを作曲したが,ド・ジャンからは約束の半分しか報酬をもらえなかった
というのは,モーツアルトは時間的な制約もありフルート協奏曲については「第1番」だけ作曲し,もう1曲はザルツブルク宮廷管弦楽団のオーボエ奏者フェルナンディスのために書いた『オーボエ協奏曲ハ長調』をニ長調に編曲したものを『フルート協奏曲第2番』としてド・ジャンに渡したからだった
」
これについては,「もともとフルート協奏曲であったものを一度オーボエ協奏曲として編曲し,さらにフルート協奏曲として編曲し直したものだ」という説(ブリュッヘン)もあるようです こればかりは,モーツアルトに訊いてみないと真相は分かりません
この曲は第1楽章「アレグロ・アぺルト」,第2楽章「アダージョ・ノン・トロッポ」,第3楽章「ロンド:アレグレット」の3楽章から成ります
都響オーボエ首席・広田智之氏が登場,ステージ中央にスタンバイします 矢部氏の音頭で第1楽章「アレグロ・アぺルト」に入ります
「アぺルト」はイタリア語で「解放された」といいう意味ですが,広田氏はまさに解放的な明るさをもって素晴らしい演奏を繰り広げます
矢部氏の率いる海オケは広田氏にぴったりと付けています
第2楽章「アダージョ・ノン・トロッポ」ではオーボエ特有の音色を生かして伸び伸びとした演奏を展開します
第3楽章「ロンド:アレグレット」では,リズム感も良くオケと丁々発止のやり取りを展開し,モーツアルトの愉悦感を醸し出していました
都響にオーボエの広田智之あり,と強く印象づけた演奏でした
プログラム後半の最初は「セレナータ・ノットゥルナK.239」(夜のセレナーデという意味)です 1776年,モーツアルトが20歳の時にザルツブルクで作曲されました
この曲の特徴は,弦楽器とティンパニだけで演奏されることです
ティンパニの岡田全弘氏(読響首席)を中央に,向かって左側にヴァイオリンセクション12人,右側にヴィオラ,チェロ,コントラバスの計7人がスタンバイします
この曲は第1楽章「マルチア(行進曲):マエストーソ」,第2楽章「メヌエット」,第3楽章「ロンド:アレグレット~アダージョ~アレグロ」の3楽章から成ります
矢部氏の合図で第1楽章に入りますが,弱音によるティンパニに導かれて,弦楽器が優雅なメロディーを紡いでいきます 3つの楽章それぞれの中間部で矢部,双紙,篠崎,池松の4人による四重奏が奏でられますが,まさに「セレナード」に相応しい洗練された素晴らしいアンサンブルでした
プログラムの最後は「交響曲第39番変ロ長調K.543」です この曲は10月中旬に 有田正広+クラシカルプレイヤーズ東京 と ジョナサン・ノット+東響 の演奏で3回聴いています
さあ,どんな演奏になるのか,聴く前から期待が高まります
モーツアルトの後期三大交響曲(第39番変ホ長調,第40番ト短調,第41番ハ長調)は1788年の夏に一気に書き上げられましたが,この第39番は同年6月に完成しています 3曲の作曲動機は今なお不明ですが,モーツアルトの三大交響曲の少し前(1785~86年)にハイドンが作曲した交響曲(第82番ハ長調,第83番ト短調,第84番変ホ長調曲)と調整が一致していることから,モーツアルトが尊敬していたハイドンを意識して3曲セットで作曲したのではないか,という説は説得力があります
この曲は第1楽章「アダージョ~アレグロ」,第2楽章「アンダンテ・コン・モート」,第3楽章「メヌエット:アレグレット」,第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章からなります この曲の大きな特徴はオーボエがなく,管楽器はフルート1,クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2となっていることです
矢部氏の音頭で第1楽章が重量感のある総奏でゆったりと開始されます この楽章はアダージョからアレグロに移るのですが,テンポ設定は私の頭の中にあるイメージそのものです
言い換えれば理想のテンポです
10月に聴いた有田+クラシカルプレイヤーズ東京と,ノット+東響は若干速すぎました
速い演奏は小気味の良さがありますが,速ければ良いというものではありません
その点,矢部氏率いる海オケの演奏は”中庸”をいくテンポ設定で十分に音楽を味わうことが出来ます
私がこの曲で最も注目するのは第3楽章「メヌエット:アレグレット」です これも申し分のない理想的なテンポです
そして中間部の木管群による「トリオ」では,クラリネットの三界秀実(都響首席)と糸井裕美子(都響),フルートの小池郁江(都響),ファゴットの岡本正之(都響首席),岩佐雅美(読響)の演奏が光りました
残念ながらホルンは必ずしも絶好調ではなかったようです
第4楽章「フィナーレ:アレグロ」は軽快そのものです モーツアルト特有の愉悦感に満ちた音楽が展開します
弦楽器,管・打楽器の総力を挙げての熱演に 聴いている聴衆の興奮が高まります
指揮者なしでこれほど集中力に満ちたレヴェルの高い演奏が出来るのは,コンマスの矢部達哉氏の非凡な統率力はもちろんのこと,個々の演奏者がソリストも務まるほど高いレヴェルの実力者ばかりであり,「サイトウキネンオーケストラ」等で共演する機会もある気心の知れたメンバーであることが大きな要素になっていると思われます
実力者揃いの彼らが指揮者を置かないのは正解です なぜなら,オーケストラの演奏会で一番ギャラが高いのは,音を一つも出さずに演奏者に指示を出すだけの指揮者だからです
演奏後,矢部氏が「2020年の東京オリンピックを見据えて,来年からベートーヴェン・チクルス(交響曲全9曲演奏会)を開始する」旨をアナウンスしました そして矢部+海オケは,アンコールにモーツアルト「ディベルティメント第17番ニ長調K.334」から第3楽章「メヌエット」を優雅に演奏し,満場の拍手の中 幸福感に満ちたコンサートを締めくくりました