今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

リコースーパーショット24って初めての巻

2023年09月14日 17時00分00秒 | ブログ

大阪の輸出機マニアさんからリコー・スーパーショットというカメラが来ています。この方は度々、ヒコーキの食玩を入れて頂きます。ありがとうございます。あら、中島の九七艦攻ですね。それも発動機が「光」の1号です。

 

頂いて文句は言えませんが、最近のエフトイズの塗装が荒いのが気になっています。以前の物は精密に塗られていたと思いますが、翼の銀塗装がボツボツです。一度剥離をして下地に黒を吹いてから明度の異なるシルバーで塗り分けたら良くなると思いますがその暇が・・

母艦搭載の海軍機は太平洋戦争に突入する前は九六艦戦なども同様なシルバーですが、これはジュラルミンの無塗装という訳ではなく塩害防止のためシルバーで塗装をしてあるのです。尾翼を赤に塗るのは、海上に不時着した時に発見を容易にするためとか読んだ記憶があります。そろそろ空母に改装した「かが」が完成しますね。

で、古いレンズシャッター(セイコー561)機はシャッター羽根の張付きが問題ですが、この個体はシャッターと絞りの両方ががっちりと張り付いて動きません。前回のキヤノネットも同じですが、レンズ前縁のリングネジは簡単に緩んでくれません。フィルターリングがアルミでリングネジが鉄ですから噛み込んでしまうのと、長い間の固着とフィルターリングの歪なども影響しています。しかし、ここを突破しないと何も始まりません。

何とか突破しました。内部は12時にCdsがあってレンズは前玉回転式。右側にファインダー内に表示されるダイヤフォーカス用のカムが見えます。

 

トップカバー内はシンプルです。露出計用の配線が見えます。

 

 

画像は正常な位置にセットしてありますが、絞り羽根が固着した状態でレリーズボタンを押したために連動が外れていました。ここは万一、絞り羽根固着の時に連動部分にダメージが及ばないように外れやすく設計されているのかも知れません?

絞り羽根のリターンスプリングが弱い(劣化?)こともあって絞り羽根の制御が不安定ですが、何とか作動するようになりました。

 

ファインダーを清掃しますが、ヘリコイドと連動する部分と一体になっています。

 

 

外れていたのがダイヤフォーカス用レンズ。メーカの解説では「フォーカスリングを回すと菱形の幅が大きくなったり地テサくなったりする。人間の顔の幅に菱形の幅を合わせるとピントが合う」とのことです。なるほどね。

 

シャッターの清掃とレンズの清掃をしました。前カバーは左右2分割式は面白い。

 

裏蓋はオートハーフと同じで全面にモルトが貼ってありますね。貼り直しをしますが、普通のカメラよりモルトの使用量が多いです。

 

トップカバーは単体でもかなり重くしっかりとした作りです。そのせいかへこみもありません。しかし、デザイン的には素敵な電池蓋は親指の腹で回す方式と思いますが、ネジの加工精度が良くないので引っかかって回しずらいです。

 

ヘリコンドグリスも抜けていましたので当然、清掃の上新しいグリスを入れてあります。

 

底部はオートハーフと同じです。ゼンマイ巻上げのためセイコーシャッター(561)はセットトルクは軽く設計されているとのことです。

 

しかし、修理をする時はゼンマイ巻上げは不便です。オーナーさんは本務機の他に必ず予備機を用意して頂いていますが今回は2台の予備機が付いていました。しかし、なるべくニコイチは避けたいので本務機のみで仕上げました。

 

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クセナー付きのローライ35ブラックの巻

2023年09月10日 14時00分00秒 | ブログ

念願のクセナー付ローライ35ブラック#3285XXXを専門店から購入されたとのことです。整備済みとのことでしたが、レンズのホコリなどが気になるので全体的に見て行きます。露出計は変圧アダプター無しのダイレクト(1.55V)で校正して欲しいとのご希望ですので、最近アマゾンで売っている真鍮製のアダプターにSR44を付けて使います。https://amzn.to/3EurvLU

ボチボチ使用される方もいらして、当方に送られてくるカメラに入っていることがあります。寸法をコピーすれば旋盤で作ることも出来ますが面倒なので購入しました。従来、MR-9型の使用済み電池からアダプターを作って使用していましたが、修理カメラに入れたままで発送してしまうことが度々でなくなってしまいました。

 

ファインダーの曇りやヘリコイドグリスの抜けと私の感覚では沈胴の摺動フィーリングも気になります。では、順番で見て行きます。

 

スプール駆動のアイドラーギヤの洗浄注油をしました。ファインダーは接眼レンズは分離して清掃された形跡がありますが、対物レンズは清掃されていません。すべてのレンズを分離して清掃します。

 

清掃の終わったファインダーに新しい保護テープを貼って取り付けます。スローガバナーの清掃と注油もしておきます。

 

気になるのはこれです。この個体は過去に電池の液漏れを起こしていて、そのような個体の場合Cdsからの配線がこの位置で腐食断線していることがあります。接片から侵入した電解液が侵す位置なのでしょう。現在は導通不良はありませんが半田を溶かすと断線しますね。

性能上の問題ではないですが、オーナーさんが気にされているのは、絞りとレンズの中央部分のシボ革が少し浮いているとのご指摘。ほんとだ。これはシボ革を再接着したからではなく、接着面の前面板(鉄製)が錆びていて、その錆でシボ革が盛り上がっているのです。

端からシボ革を剥離してしまうと再接着をしてもダメージは残ってしまうので、錆が出ている部分を針により清掃します。

 

沈胴は下向きでチューブが下降してしまう状態ではないので、これでも全然良品の範囲ですが、摺動フィーリングが気に入らない。調整をして行きます。

 

最近、8時ごろにgooに複数の画像をUPするとエラーになることが多い。サーバーが混んでいるみたい。仕方がないので1枚づつ何度もUPしている。レンズですけど、ローライ35の場合はチリは混入し易いので、あまり神経質になることも無いと思いますが、これはかなり汚れていますね。しかし、シャッターは分解されているので清掃はされたのでしょうね。

前玉のヘリコイドグリスはオリジナルの古いグリスのままです。これは清掃をして入れ替えます。

 

中玉を清掃したところ。前側に僅かに拭き傷がありますね。

 

 

問題はカウンターを進めるトランスポートレバーって言うのかな。これを留めているネジはM1.2と細く長さも裏側に沈胴レールがあるので短いため緩んでいる個体が多いです。この個体もネジのスリ割りに傷があるので過去に締め込まれていますが、それがいけません。強く締めると簡単に本体(ダイカスト側)の雌ネジが壊れてしまいます。

分かるかなぁ? ネジの半分が無くなっています。さて、どうするか? 一度デブコンでネジ孔を埋めてタップを立て直すのがベストですけど、もう外すことも無いでしょうから、今回は接着で止めておきます。

 

このように組み立てました。その他、チャージのリンケージなどにグリスを塗布しておきます。

 

裏蓋は作業前に洗浄してあります。カウンターは36枚まで正常に進んでいますので問題ないでしょう。巻き戻しダイヤルは分離して洗浄と樹脂の白化を戻してから潤滑して組んであります。

 

まぁ、なんです。作業前でも不都合なく撮影は出来るので作業をしなくても良いと言えば良いのですが、気になるところをやり直すと結局すべての部分に手を入れることになるのですね。ローライ35ファンの方の作業ご依頼をお待ちしております。

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謎の46万台PEN-FTの巻

2023年09月05日 11時00分00秒 | ブログ

明らかにPEN-FTのシリアル№は二系統ありますね。40万台は36~39万台の継続ではなく、今回の#460098と私の#460096は1970年4月の製造ですが、先日手がけた#3676XXは1971年3月の製造と一年近く前に生産されているのです。従って、露出計ユニットも基板別体タイプではなく、普通のユニットが組み込まれています。40万台が最後期の製造と思って入手をするとちょっと違うのですね。で、この個体はトップカバーに打痕と歪がありまして、過去に落下の衝撃を受けていると思われますが、アンダーカバーを外してみると、何やらガラスの破片が出て来ました。

接眼プリズムを外してみると、大きくカケていますね。事前に接眼から覗くと妙に光って見えた原因です。接眼枠部分に大きな衝撃を受けて、トップカバーの歪とプリズムの破損が起きたのでしょう。さて、どうするか・・

 

点検の結果、中央付近の視野は無事で、暗黒部に大きく光線漏れがある状態でしたので、欠けた部分を接着し遮光塗装を施しました。

 

接眼部の角に欠けがありますが、接眼枠でマスクされますから問題はありません。今回はこれで組立をします。オーナーさんがプリズムを探していらっしゃいますので、入手出来れば後日交換します。

 

先にシャッターユニットのメンテナンスをしておきました。ギヤの摩耗も無く良いユニットです。のチャージギヤは真鍮リングナットによる組立式(最後期)となっていますが、表側のコントロールレバーは改良前の仕様でした。

 

かなり汚れ放題であったダイカスト本体を洗浄後、モルトを貼ってスプロケット軸を組み立てて行きます。

 

実質的には34万台付近の個体と同じ頃の生産になりますが、それにしてはプリズムコーティングの劣化が激しいです。

 

完成している本体側に前板ユニットを取り付けます。

 

 

1970年4月と後期の生産にしてはハーフミラーも劣化が激しいです。今回はオーナーさん支給の純正30万台以降の中古ミラーを使用します。カメラの保管は良くなかったですね。

 

カウンター窓下の打痕は修正を試みましたが、材料が圧縮変形をしているのでフラットには出来ませんでした。接眼プリズムは組立に問題はありませんでした。接眼からの視野は情報窓の下部に僅かに欠けが見える程度で気になりません。接眼枠は研磨修正をして組みました。

経験的にハーフミラーの劣化が通常より進んでいる個体は保管状態が悪かったと推測できますが、同時にCdsなどのダメージも進んでいて感度も低下していることが多いです。この個体も感度が半分ぐらいに低下していました。

 

この個体はオークションの訳あり品だったそうで看板通りですから文句は言えませんね。次のブラック#3542XXはイーベイ物だそうで外観は良いですがハーフミラーの腐食が進んでいます。巻上げが固着して正常に作動しませんね。

 

長くなるので2台目は簡単にUPと思いましたがそうもいかなくなりました。過去に分解をされていますがオーナーさんでしょうか? まず、シャッターダイヤルと露出計を連動させるギヤの噛み合わせがかなり違いますね。

 

この個体が巻き上げが出来ない(引っかかる)原因はのトメレバーの動きがスムーズでないため。何が原因でしょうね。

 

原因はこれですね。途中でグリスを付けられていてベチョベチョなんです。このグリスがトメレバーにも回ったのでしょう。

 

最後期の個体なのでチャージギヤは真鍮のリングナットによる組立式となっていますが、ここは緩みやすいのです。(緩んでいます) 緩むのを嫌ってカシメ組立としていたものを、なぜ最後期になって組立式に変えたのか? 確かに摩耗をしたチャージギヤは交換可能となるのですが、実際には地板の孔の拡大もあるので中途半端な修理になりますけど・・

このような部品構成になっています。ねじ山二山も掛かるかですから緩みますよ。

 

調子良く組み上がっています。今日は長時間の作業で目が疲れたので止めます。

 

次の作業が控えているのでこれで終わりにしておきます。チャージギヤ組立式の独特な巻上げフィーリングはありますが、調子は良好です。ハーフミラーは交換しています。1970年6月製造。

 

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通常作業のローライフレックス2.8Cの巻

2023年09月03日 11時00分00秒 | ブログ

昨日は鉄道模型の運転会で出掛けていました。まだ暑いですから日中の外出は堪えます。特にUPの予定は無かったのですが、間が空いてしまうので簡単にしておきます。

こんなスクリーンもあるのかと思いましたが、良く見ると鉛筆のようなもので掻いてあるのですね。洗浄をしてみましたが完全には消えません。

やっぱり前回のキヤノネットのコパルシャッターより加工が精密に出来てるわ。ガバナー、セルフタイマーなどの洗浄注油などメンテナンスをしておきます。

 

昨日到着のカメラがありましたので事前の点検をしておきます。PEN-FTのクロームとブラックの2台ですが、ブラックは後で取り上げるとして・・通常はシリアル№の末尾二桁は消していますが、これは消すと何のことだか分からないので。上は私の私物#460096で下が今回来ました#460098です。奇しくも2番違いの個体ですから、同じラインを流れていた個体が再開したとも思えますが、シリアル№は必ず整数順になっている訳でもありませんから、内部を調査して判断が出来るかというところです。

トップ面にえくぼがありますね。衝撃でカウンター窓にクラックが入っています。何故かシリアル№の色が抜けています。また、巻上げレバーの先端部が内側に曲がっています。これは乱暴に机のようなところに置かれ続けた結果です。

トッフカバーの接眼枠部分が歪んでいます。また、接眼枠は過去に研磨されています。これは乱暴に机の上に投げ置いた証拠です。

 

ストラップ取付け部が曲がっていてフックのカシメが外れて紛失しています。曲がりは修正しましたがフックをどうするか・・良品を探して交換するのがベストですね。

 

巻き上げクランクの回転が非常に重い個体があります。クランク軸の潤滑が切れているので分解洗浄のうえグリスを入れ替えます。

 

また、カウンターの戻りが悪い個体も多いです。カウンター盤を分離して軸部の清掃と軽い油を塗布しておきます。

 

この頃のシボ革は本革ですのでブラッシングで汚れを落としてから保革をします。また、部分的に表皮の摩耗による色抜けがありましたので染料で補修しておきました。かなりきれいになりましたよ。

 

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キヤノネット19の巻

2023年09月01日 09時00分00秒 | ブログ

大阪のご常連さんは国産カメラの輸出モデルを集めるのがお好き。今回はBell&Howellとのダブルネーム、キヤノネット19#14563XXと予備機の#6017XXが来ています。キヤノネット19の発売は1961年1月(昭和36年)とのことですが、このカメラは製造時期によって少しづつ変更が加えられて行きますね。で、現状はシャッター不動ですが、この時はシャッター羽根の張付きと簡単に考えていたのでした。

まだ、トリガー巻き上げは残っています。カメラ底部に巻き上げレバーがあるのはこの時代の流行りなんでしょうかね? 慣れれば違和感はないです。

 

後にキヤノン特有のQL(クイックローディング)が装備されたモデルもありますが、この個体はシンプルな構造です。

 

時代を考慮すれば非常にきれいな個体ですがトップカバー背面にへこみがありますね。真鍮の板厚も厚いですし場所も修正がし難いので触らないことにします。

 

まず、ファインダーの清掃をと思いカバーを外すとミラーの接着が剥がれています。古い接着剤は長い年月を経ると剥がれてしまうのです。

 

二重像の横ズレが大きいので調整をしておきます。

 

 

簡易的にシャッター羽根を洗浄してもシャッターは切れない。よく見るとセルフタイマーがチャージされた状態で止まっています。分解をしてみると、セルフタイマーが固着していギヤが地板に接触していて分離が出来ません。

 

そこを何とか分離して観察してみると・・あれ、クラッチの円盤が千切れて曲がり隣りのギヤと接触しています。へぇ~、こんなの始めて見ました。

このユニットはネジの組立ではなくカシメで組まれているので分解出来ません。分解してもダメですけど・・では、予備機から調達と取り出してみると微妙に形状が異なります。細かなところで変更されています。

カム盤も違いますよ。右が本務機で左が予備機。シャツタースピードのクリックを作り出す位置も違います。

 

何とか取り付きましたけど正常に作動してくれるのか??

 

 

とりあえずシャッターは切れるようになりましたが、巻上げレバーを目いっぱい巻かないとチャージが完了しない時があります。そこで調整をしておきます。ついでにリンケージの清掃とグリス塗布。

 

セレンを半田付けしてEE性能をチェックするとEE機構のシャッタースピードとシャツターダイヤルが連動しない。鏡胴部の分解でレバーが↙から外れたため。

 

他にも細かなことで不具合が出て時間が掛かってしまいました。キヤノネットと軽く見てはいけません。メーカーの位置づけは中級カメラですから、戦略的に価格は安くは発売されましたが、メカは部品点数も多く作りもしっかりとしています。

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