今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

微妙な時期のPEN-FTの巻

2021年11月15日 17時40分00秒 | ブログ

20万台のPEN-FTはまだ改良前のユニットが使われている頃ではありますが、初期に比べれば製造時期的に新しい? という微妙な時期の個体で、主に露出計などを中心に劣化が見られるのですが、この個体はは良いです。たぶん、殆ど使われていない個体で保蔵状態もよろしいです。基本的なところで不具合は無く、自然劣化を中心にメンテナンスをして行きます。

とは言っても細かなところに不具合があります。右側の吊環がグラついています。

 

 

プリズムのコーティングの曇りが確認出来ます。

 

 

では、すべて分解洗浄のうえ、組立てて行きます。まず、吊環を取り付けますが、ここのネジは接着併用ですが、その接着が不完全でした。後期の個体はしっかりとネジが接着されています。まだ市場での不具合情報が反映されていない時期かも知れません。

モルト貼り、スプロケット軸、スプール軸を組み立てて行きます。

 

 

シャッターユニットを点検して行きます。殆ど消耗がありません。コントロールレバーにもガタは少なく、シャッターを切った回数が少ないのが分かります。

 

この頃は、ブレーキカンを留めるナットは真鍮製ですが、ねじは左ネジです。途中での分解歴はありませんが、スリ割りが痛んでいますね。ここは緩みやすいので「力一杯に締める」とか作業指示が出ていたのかな?

 

チャージギヤの軸に全く偏摩耗が認められません。やはり使用が少ないことが分かります。摩耗が無いので巻上げはスムーズです。

 

シャッターユニットも改良前ですのでシャッターバネは弱いタイプのユニットです。

 

 

この頃は、接眼プリズムのホルダーはアルミ製です。後期は真鍮製。

 

 

ハーフミラーは新品と交換します。

 

 

ファインダーの無限調整と露出計の調整をしました。無限が少し外れていました。これでトップカバーを閉めます。

 

付属の40mmは絞り羽根に油が回っていましたので分解洗浄のうえ組み立てます。

 

 

外観にも全く気になるキズが無く、素晴らしいコンディションの20万台(#2004XX 1968-3製)でした。シャッターユニットが変更される前の個体は、独特の滑らかな巻上げフィーリングがあって、これが本来の感触なんだと思います。中期以降の個体は巻上げゴリツキがひどい個体が多いですからね。

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ローライ35日記の巻

2021年11月13日 13時20分00秒 | ブログ

すみません。ローライ35が続いていましたのでUPする回数が減っていました。今回で一段落すると思います。この個体はレバーアテが欠損しているのと体裁ネジがスリ割ネジになっていますね。中古店の店長さんにお尋ねすると、スリ割ネジはオリジナルではないとのことでしたが、最近このようなネジを付けた個体を散見します。アフターパーツでも出ているのでしょうか?

トップカバー上面に惜しいへこみがありますね。出来るだけ修正をします。

 

 

巻き戻しレバーの回転が重いという症状の個体があると思います。原因は回転部分の汚れの蓄積です。特にフィルムを巻き戻す時が重くなりますので、そのような場合はCリングを取り外して清掃すると良くなります。ただし、巻き戻しレバー側は黒い樹脂製ですので、安易に注油することは控えます。

この個体はローライ35Tですが、レンズ先端のカバーリングが白化しています。このような個体も稀に見ますね。35Tは35の復刻版ですので製造は新しいはずなのになぜ白化したのか? シンガポールの成形メーカーが材料の質を落としたのかな? 知らんけど・・

これの修復は意外に厄介です。基本的には白化した部分を取り除くしか方法がないようです。画像は作業後。

 

この個体は見にくいですが巻き上げギヤのタイミングが違います。これですと巻上げレバーの予備角がなく、巻上げがし難くなってしまいます。

 

こちらは絞りダイヤルの動きがメーター内の追伸針に伝わらず動かないというもの。原因は画像のリンケージが僅かに内側に曲がっており、動きを規制していたため。過去の分解で不用意に曲げたのでしょう。

 

沈胴が緩い個体もありますね。分解してフェルトの厚みを調整します。

 

 

こちらは沈胴部の引き出しリングを留めるネジの頭が折れていたもの。これによってヘリコイドの回転が∞の手前で止まってしまう(噛み込んで)状態でした。ネジはかなり錆びていますので、緩めようとして折ったのではなく自然に折れたものと思います。

絞り羽根を分離するとバネによってバラバラに飛び出すので注意が必要です。

 

 

こちらの個体はシリアル№の色入れが抜けていますので入れ直しておきます。

 

 

ASA(DIN)の色入れが金色に見えますね。手垢で白い文字が黄ばんでいる個体も多いですが、この個体は元々金色で色入れされているようです。この個体以外でも見た記憶がありますのでオリジナルなんだろうなぁと思います。まぁ、多くの個体を見て行くと色々な問題があるというお話です。

 

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ローライ35初期のレストア? の巻

2021年11月05日 19時00分00秒 | ブログ

ローライ35の初期生産と思われる#30356XXですが、かなりラフに使われたようでトップカバーはへこみが大きく、状態はよろしくありません。この状態ですと通常のメンテナンスと言うよりはレストア的な作業になりますね。点検した不具合を列挙してみると、低速止まり、露出計感度低下、接眼枠キズ、メーターガラス割れ、内部に錆びと多量の水油の塗布、トップカバーへこみ、レンズ汚れ、ヘリコイドグリス抜け、カバー背面ねじ規格外、シューレール曲がり、B(バルブ)で羽根閉じず、トップカバー横ネジ規格外、沈胴自重で下降、などがあります。ふぅっとため息が出ますね。

露出計の窓は上側(表面)が樹脂製で下側が本物のガラスになります。(生産後期は樹脂)樹脂製は傷だらけ、ガラスは割れています。

 

ドイツ製の初期型は裏蓋の開閉レバーと巻き戻しクランクが以後のモデルと異なります。

 

内側から見るとネジによる組立式。以降はCリングによって固定されています。

 

 

トップカバーは軽く板金しますが元には戻りません。返ってそのままの方が良い場合もあります。レバーアテの欠落と右の化粧ネジは規格外です。

 

巻上げギヤの地板が錆びています。ファインダー窓から水か侵入したのでしょう。ギヤ列はすべて金属製はお約束です。巻上げギヤ(レバーが付く)は固着していて分離困難でした。すべて分解洗浄で組み直します。

 

下側(メーター側)のガラスが割れています。衝撃と言うよりはトップカバー上からの圧力で割れたのでしょう。

 

 

接眼枠のキズが多いですこちらも研磨をします。

 

 

管理の悪い個体のプリズムファインダーは剥離をしているものがありますが、幸いこの個体は剥離や曇りはありませんでした。接眼部に1点キズ。

 

メカ部とファインダーの組立が終りました。露出計の調整と純正ガラスを接着しておきます。

 

トップカバー横のネジも規格外。純正に交換です。

 

 

B(バルブ)で羽根が閉まらない不具合があります。原因は軽微の場合はのレバーの動きが渋い場合。

 

しかし、この個体はそれでは改善しません。前板を分離して点検します。の部分でレバーにより解除されますが、バネの張力劣化です。そもそも気になっていたのですが、この個体は注射器のようなもので大量に注油されています。沈胴部の樹脂フードも艶ありになっています。洗浄脱脂をします。

これですからね。洗浄します。右は内部から出て来たフィルムの切れっぱし。このカメラはフィルムにやさしくないのか、他の個体でも目につきます。意外に沈胴回転部やレバー接点部に挟まると不具合の原因にもなります。

で、すべて洗浄をしました。水油はダメですよ。

 

 

他の部分と比較してレンズとシャッターユニットは悪くはありません。洗浄とグリス交換をします。

 

∞を合わせてピントリングを取り付けます。

 

 

シューのレールが曲がっていますので修正をしておきます。

 

 

完成後に点検をしていると沈胴が自重で下降しだしました。おかしいなぁ最初の点検時には問題は無かったのに・・古い機械では再び作動を始めると不具合が出ることは良くあります。

 

本体のフェルト部を調整しました。沈胴部組み立てます。

 

 

見にくいですが、初期の個体は絞りダイヤルのフィルム感度ダイヤルがシャッターダイヤルと同じデザインになっています。しかし、感度設定がやり難いので以後のモデルでは爪を掛ける突起が2つ付いています。

 

レバーアテは旋盤で削り出したものを熱カシメしてあります。ネジは新品と交換しました。

 

 

と言うことで、色々と問題の多い初期型でしたが、貴重な個体なので頑張って直しました。基本の部分では意外に状態は良かったので快調に仕上がっています。

 

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色々な整備日記の巻

2021年11月01日 21時30分00秒 | ブログ

作業に没頭すると、一日全く歩いていない日のあるので運動不足になっています。そこで、ギヤ付きのママチャリの一番高いギヤのままで市内を走っています。帰りに低いギヤにするとメッチャペダルが軽いのにびっくりします。で、日々、同様な作業が続いています。このPEN-EESはシャッター羽根が開いたままで固着しているもの。シャッター羽根が張り付いた状態でシャッターを切ったのでシャッター羽根が変形して噛み込んだものです。修正をして組み立てます。

これはローライ35の絞りダイヤル部です。ロック解除ボタンを押し込むと樹脂側の歯との噛み合いが解除されてダイヤルが回転できるわけですが、樹脂側が摩耗をして来ると、反時計方向に解除ボタンを押さなくてもダイヤルが回ってしまう個体が目立ちます。これは新品か良品の部品と入れ替えなければ改善しません。

ローライ35の初期ジャーマニーの接眼枠の左側の樹脂が劣化している個体があります。この個体は相当削れています。何が原因でしょうね?

 

ストックの接眼枠に交換しますが程度の差はあれ、やはり枠の左側が劣化しています。なんでだろう??

 

本当はしなくても良い作業ですが、シャッターダイヤルに擦れた傷がありますので研磨して行きます。

 

このようになりました。

 

 

このジャーマニーはトップカバーがヘロヘロですね。出来るだけ修正をします。

 

 

内側は艶消し黒のため歪が分かりません。表面のへこみ位置を計測して位置を特定します。

 

その他スプールスプロケット軸を分解して清掃とグリス塗布をします。

 

最後はフィルムを入れて36枚まで巻き上げテストをします。

 

 

スーパーセミイコンタですが、前玉がかなり曇っています。分解して清掃をしましたがコーティング劣化の曇りは取れません。

 

ファインダーを清掃します。残念ながらプリズムの接眼側に劣化があります。

 

 

ローライC35。B-35から露出計ユニットを取り去ったモデル。すべて樹脂製の巻上げ機構は良く考えられていますが、何故か作動が不調になる個体があります。

 

ファインダーの清掃。ブライトフレームは接着併用(Uバネと)のため分離が困難です。

 

レンズの距離ダイヤルを回すと途中で僅かに滑る感じがあります。ヘリコイドグリス抜け? 先日もあったストップリングのネジ穴のバリが原因でした。

 

ローライコードⅤです。随分とビュー・テイク共レンズが汚れ放題です。すでに清掃をして取り付けるところ。

 

ビューレンズもすごいです。こちらはイモネジを緩めないと分解出来ませんので前カバーを分離する必要があります。

 

きれいになりました。

 

 

この頃はシボ革は本物ですが、剥離を繰り返す度に状態が悪くなるので苦手です。

 

 

はい、レンズはきれいになりました。

 

 

 

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