今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

中期頃のPEN-FTの巻

2020年01月14日 12時25分00秒 | ブログ

#2321XXと中期頃のPEN-FTです。各ユニットの変更は終わっている頃ですね。珍しいタイプのシューアダプターが付いていますが、強く押されるとトップカバーに傷が付いてしまいます。すでに凹んでいます。

 

一見、未分解かと思いきや、過去にプロがシボ革を剥がしています。使われている個体に多いシンクロソケットの絶縁部のカシメが外れています。

 

上部構造は手を付けていないようです。何をしたんでしょうね?

 

 

ハーフミラーの蒸着メッキがかなり薄くなっていますね。これではファインダー像は暗くなりますから交換をすることにします。

 

ダイカスト本体を洗浄しました。では組み立てて行きます。

 

 

中期の現役中のユニットとしては摩耗は少なく悪くはないですね。特に問題はありません。チャージギヤを分解洗浄の上グリス塗布で組み込みます。

 

スローガバナーは超音波洗浄をしてあります。この個体は調整シムが入っていました。これは非常に珍しいです。

 

前回の分解は何をしたのか分かりません。ファインダーのピント調整をされています。

 

ハーフミラーは新品と交換します。

 

 

じつは、シャッターバネのテンションは標準より弱い位置に組まれていましたので、バネの劣化を考慮して1段上げて標準のテンション位置としたのに、巻上げは非常に軽くスムーズです。これは最高の部類です。

 

本体はピント調整と露出計の調整を終えています。トップカバーを付ける前にシンクロソケットの修理をしておきます。

 

絶縁の樹脂がカシメが甘く抜けてしまうものが結構あります。オリンパスのカシメは・・再カシメをしておきました。

 

トップカバー巻き戻し横の打痕の修正とシンクロソケットを取付けて組立ます。

 

 

で、また厄介なシューアダプターです。バネの取付カシメの片方が外れています。またオリンパスのカシメですよ。

 

本当は真鍮材の方が強度は出るのですが適当な材料が無かったのでアルミのリベット材からリベットを製作しましたが、アイビース枠の隙間に挟むため、リベットの頭はベースと面一にならなければならず、非常にシビアです。まぁ、なんとか留まっていますが強度の保証は出来ません。工賃は頂きませんのでクレームは無しです。そもそも持ってこないで。

付属のレンズを清掃していきます。20mm f3.5ですが、過去に分解歴があるのにレンズ部のネジが親の仇のように緩みませんでした。やっと分解したところ。

 

追っかけでパンケーキの38mmが来ました。なんでもテスト撮影で全くピントが来ないそうです。分解前のチェックで、なるほど来ませんね。しかし、分解されたような形跡も無いのです。ヘリコイドの回転ムラを感じます。

 

前玉のネジ部が完全に脱落していました。しかも前群内でも振るとカタカタと音がします。通常ズイコーレンズは接着が強いので分解がしにくいのですが、パンケーキの場合、このようなガチャガチャなものがあります。

 

レンズ自体は傷やカビも殆どなく満点のレンズです。清掃をして行きます。

 

 

回転にムラがあって擦れたような動きを感じます。パンケーキの場合、ヘリコイドが短いですからグリスが抜けやすいのです。特にアウター側の劣化が激しい傾向にあります。また、この頃になるとグリスはホワイト系のグリスが使われていますが、潤滑と言う観点からはどうなんでしょう? ネジ部の摩耗が早い気がしますね。まぁ、仕様ですのでホワイト系グリスで入れ替えておきます。

ちょっとピンボケです。パンケーキを所有されている方はグリスのメンテナンスに心がけるようにしてください。なんかすごくマニア的な画像ですね。

 

と言うことで、この他に100mmも来ていましたが、特に問題は無いので作業はしません。このFTはジャンクカゴからの救出機だそうです。貴重なパンケーキを着けてもらって幸せな個体でした。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 

 

 

 

 


ローライコード・2台の巻。

2020年01月11日 20時40分00秒 | ブログ

去年からローライコードが2台作業待ちだったのを忘れていました。特に問題のないメンテナンスですので簡単に・・。これはⅤ型です。例によって低速不調ですのでメンテナンスをして行きます。

 

塗布されていた二硫化モリブデングリスがカラカラになっていますので清掃注油をして行きます。

 

スローガバナーは超音波洗浄をして注油をして戻します。

 

 

チャージレバーの動きが重いとのご指摘です。リンケージの回転部分の清掃とグリス塗布。

 

シボ革は本革ですが、接着剤が強固で清掃しにくいですが、ここで手を抜くと再接着時の仕上がりが良くありませんのでしっかり落とします。

 

ローライのミラーは国産の二眼レフより劣化が少ないと感じますね。置かれていた湿度などの環境の違いでしょうか。清掃をします。

 

最後にシボ革を接着します。

 

 

次はⅣ型です。作業は同じです。

 

 

こちらの方が内部が汚れています。

 

 

艶消しの強い塗装面に付着したホコリは拭き上げても中々取り除けないのです。私は秘密の方法で清掃します。

 

ピントグラスは汚れが染みついていて拭いてもきれいにならないのです。この場合は中性洗剤で洗うのが良いです。

 

カメラを机の上に置くと、ギッタンバッコン。原因はこちらの脚部分を強打していて陥没しているのです。これはプレスにて修正をしておきます。

 

同じシンクロコンパーでもⅤ型とは違いますね。こちらもメンテナンスをしておきます。

 

Ⅳ型のシボ革も本革ですが、Ⅴ型と異なり1枚ものです。

 

 

これで2台仕上げ完了です。

 

 

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


エタレッタというカメラの巻

2020年01月09日 21時10分00秒 | ブログ

エタレッタと言うカメラはチェコスロバキア製です。私がチェコスロバキアと言えば東京オリンピックの女子体操金メダリスト、チャフラフスカ選手ですね。現代の女子体操選手のように小柄ではなく、成熟した美人という感じの人で、当時は大人気でした。映画「東京オリンピック」でも平均台の演技がきれいに撮影されていました。で、このカメラの製造が1946年~1948年と聞くと、少しびっくりします。日本が敗戦した翌年(昭和21年)に今見てもシャープなデザインです。ダイカストを機械切削したようです。見本の写真が付いてきました。ピンボケということのようです。

ネットで調べてみると、このカメラは沈胴式のようですが、鏡胴を引っ張ってみてもレンズは前に出て来ません。そこで、専用の工具を製作してやっているうちに・・「コクッ」と動く気配。画像の部分が沈胴部ですが、固着していたものが分離したようです。

じつは、ここまでが何週間掛っています。すでにファインダーの清掃は終えています。シャッター羽根と絞り羽根を清掃して、清掃した後玉をセットします。

 

裏蓋もダイカスト製の1枚物。ロック部分の造形も非常にシャープです。

 

 

シャッターはETAXAという自社製のようですね。下のレバーでチャージをして、上のレバーがレリーズ。

 

セルフコッキングではないので、巻上げはロックボタンを押しながらダイヤルで巻きます。

 

これが沈胴を沈めた状態。

 

 

で、撮影時に鏡胴を伸ばした状態。ロックはローライ35のように左に捻じって固定します。共産圏のカメラとは思えない垢抜けたデザインのカメラですね。レンズはEtarⅢ 5cm f3.5で写りもよろしいようです。

 

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 

 

 

 


ENNA Lithegon 35mm の修理の巻

2020年01月08日 10時54分55秒 | ブログ

エナ・リサゴン 35mm f3.5というレンズですけどね。ヘリコイド固着で修理ご依頼です。点検するとヘリコイドグリスの硬化による固着ではなく、∞を通り越してネジの終端までねじ込まれて固着している状態ですね。

 

どうして∞で止まらないの? 古いグリスを取り除いてみると・・

 

 

ストッパーピンが根元から折れていますね。

 

 

折れたネジは緩み止めを塗布されてねじ込まれているため、取り出すことは出来ません。しかも、先日やりましたPEN-D2のようにネジの材質が真鍮ではなく炭素鋼ですので、ハイス鋼のドリルでは歯が立ちません。ダイヤのビットと超硬ドリルでやっと取り除きました。さらっとUPしていますがここまでが大変なのです。で、タップを立ててねじ山を再生します。

折れたストッパーピンを旋盤で製作しようかとも考えましたが、材質強度の問題とネジの終端部が不完全ネジになってしまうので不可です。そこで、ステンレスネジにパイプを組み合わせてオリジナルと同寸法としました。

 

エキザクタマウンドのレンズですね。最近はレンズアダプターによってデジカメで使用されるケースが多いようです。レンズ清掃とグリス交換をしてあります。

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/

 

 

 

 


今年初めはPEN-Fからの巻

2020年01月01日 14時30分39秒 | ブログ

みなさん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年は東京オリンピックの開催年で、私にとっては二度目の東京オリンピックを体験することは嬉しいのですが、観戦の抽選にはすべて外れて、結局、小学生だった一度目と同じテレビ観戦になりそうです。元日はゆっくりとしようかと思いましたが、ぼちぼちと作業を始めることにしました。今年最初はPEN-Fからです。

現状はリターンミラーがフリーズしてしまう状態です。その他、プリズムの腐食やスクリーンの汚れなどがありそうです。付属のレンズは38mm f2.8という廉価版のレンズですが、カビやヘリコイドに問題があります。

 

トップカバー横が凹んでいますね。留めネジは+ですかぁ? あまり見たことが無いなぁ・・

 

メッキに軽度の腐食があります。

 

 

内部は未分解のようですね。では分解をして行きます。

 

 

関東地方は穏やかな天気で、日中気温も上がり良い三が日となっています。昨日2日は立川の模型屋さん回りで材料などの調達に行きましたが、しばらく行かないと自分の地元なのに街並みが変わっていて浦島太郎状態でした。で、今日3日から作業再開しました。「未分解」と思っていましたが分解されていますね。シャッターユニットもシャッター幕まで分解されていて、にネジロックが塗布されているということは・・嫌な予感です。

あ~、こうなっちゃっているのね。ここは緩み止めでカシメ加工がされていますのでスリ割りネジを緩めるとカシメしろが壊れて緩みやすくなってしまうため分解は厳禁です。

 

ブレーキは交換したいところではありますが、重症という訳でもありませんので、今回はこのまま使用とします。

 

 

幸いスローガバナーの歯車の損傷は無いようです。超音波洗浄をしておきます。

 

洗浄注油をしながら組み立てました。作動に問題はありません。

 

 

本体もかなり汚れています。古いモルトを除去して洗浄をしてから組み立てます。

 

お正月なのでゆっくりと作業をして行きます。プリズムには腐食とコーティングのカビや劣化があってどうしますかね。

 

光学系の交換用パーツを付けて頂いていましたのでスクリーンと共に交換しました。

 

本体側と前板側が完成しました。

 

 

全反射ミラーはどちらも同程度でしたのでオリジナルを使用します。

 

 

これでメカ部完成。

 

 

問題は付属の38mm f2.8 レンズです。レンズのカビがひどいです。その他、ヘリコンドグリスの硬化があります。

 

まず、すべて分解洗浄をしてあります。ヘリコイドグリスの交換とレンズの清掃。絞り羽根の作動リングに何やら鉛筆を擦りつけたような跡があります。黒鉛のつもりでしょうか? 意味がありません。

 

まぁ、なんとか完成しました。調子は良好です。お正月なので時間を掛けてゆっくりと作業をしました。では、相も変わりませんが今年もお付き合いをお願いいたしますね。

 

http://www.tomys800.sakura.ne.jp/