都内の有名カメラ店様からのご依頼。買い取り機なんでしょうね。たぶん遺品でしょう。初期のPEN-F #1157XXで1964年1月の製造です。PEN-Fの発売は1963年5月ですから、やっと生産が安定して来た頃の製品でしょうね。外観はきれいですが、何分古いですからシャッターは動きません。レンズも油でベトベトです。
ボディーから仕上げていますが、復元レバーの先端が下側に曲がっていてダイカスト本体と接触をして正常に作動しません。
スプールギヤをスプール軸に締め込みます。
三脚環を取り付けます。
この個体は未分解機なのにブレーキのOリングホルダーナットのスリ割りが痛んでいますね。工場では、この部分の緩みを非常に気にしていたようです。緩み止めのポンチも打たれています。
当初は交換予定は無かったのですが、ブレーキが全く効いていません。まぁ、逆に効き過ぎているよりは実害は少ないのですが・・考えましたが、はやりOリングを交換することにします。
Oリングのゴムが悪さをしてホルダーとの接触面は激しく腐食しているのが普通です。
完全に錆を落として研磨をしておきますが、するとインナーの寸法は微妙に変わりますので、Oリングとの寸法嵌合はその個体ごとに調整が必要になります。
初期のシャッター幕はディンプルだけのピカピカに光っています。外周に強度を上げるためのリプもエッチングされていません。
爪バネは初期のみこのようなマブチモーターのローターのような板バネが使われています。しかし、回転による摩耗があって耐久性に難があり、後にコイルバネに変更されます。
シャッターを搭載しました。初期型のユニットは、ユニットの下端のリンケージ部分の構造が異なります。スローガバナーも部品図の#12が使われており、このタイプが正常に動くものは少なくなっています。
幸い、リターンミラーの腐食はありませんが、ホルダーが白化しています。修正をします。
PEN-FTはフレネルレンズの裏側がマット面ですが、PEN-Fの場合はプリズム面がマット面です。清掃をして組み立てます。
初期型のカギ板Aは部品図のD21カギ柱が無く、ブレス加工によって突起を作っています。しかし、組立時、D10カギバネが外れやすいので設計変更されたようです。また、初期のカギバネはニッケルメッキ仕様で、自由長も僅かに長いです。
付属のF用38mmです。全く使用されていないですね。レンズも僅かな周辺曇りで清掃が出来ました。
当時の電池が入ったままかと思いまして電圧を計測すると1.35V。良く見たら625で、たまたま1.35Vに電圧降下をしていただけですね。
たぶん、東京オリンピック直前に購入して競技を撮影した後、仕舞い込まれていたような初期型としては使用感の無い美品です。使用されているユニットは改良前のユニットで、現在、正常に作動する個体は少なくなっていますので、初期型マニアさんのコレクションにはよろしい個体でしょう。中古カメラ店様で見つけてください。
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