今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

フル装備の初期PEN-Fの巻

2019年01月14日 20時37分21秒 | ブログ

都内の有名カメラ店様からのご依頼。買い取り機なんでしょうね。たぶん遺品でしょう。初期のPEN-F #1157XXで1964年1月の製造です。PEN-Fの発売は1963年5月ですから、やっと生産が安定して来た頃の製品でしょうね。外観はきれいですが、何分古いですからシャッターは動きません。レンズも油でベトベトです。

ボディーから仕上げていますが、復元レバーの先端が下側に曲がっていてダイカスト本体と接触をして正常に作動しません。

 

スプールギヤをスプール軸に締め込みます。

 

 

三脚環を取り付けます。

 

 

この個体は未分解機なのにブレーキのOリングホルダーナットのスリ割りが痛んでいますね。工場では、この部分の緩みを非常に気にしていたようです。緩み止めのポンチも打たれています。

 

当初は交換予定は無かったのですが、ブレーキが全く効いていません。まぁ、逆に効き過ぎているよりは実害は少ないのですが・・考えましたが、はやりOリングを交換することにします。

 

Oリングのゴムが悪さをしてホルダーとの接触面は激しく腐食しているのが普通です。

 

 

完全に錆を落として研磨をしておきますが、するとインナーの寸法は微妙に変わりますので、Oリングとの寸法嵌合はその個体ごとに調整が必要になります。

 

初期のシャッター幕はディンプルだけのピカピカに光っています。外周に強度を上げるためのリプもエッチングされていません。

 

爪バネは初期のみこのようなマブチモーターのローターのような板バネが使われています。しかし、回転による摩耗があって耐久性に難があり、後にコイルバネに変更されます。

 

シャッターを搭載しました。初期型のユニットは、ユニットの下端のリンケージ部分の構造が異なります。スローガバナーも部品図の#12が使われており、このタイプが正常に動くものは少なくなっています。

 

幸い、リターンミラーの腐食はありませんが、ホルダーが白化しています。修正をします。

 

PEN-FTはフレネルレンズの裏側がマット面ですが、PEN-Fの場合はプリズム面がマット面です。清掃をして組み立てます。

 

初期型のカギ板Aは部品図のD21カギ柱が無く、ブレス加工によって突起を作っています。しかし、組立時、D10カギバネが外れやすいので設計変更されたようです。また、初期のカギバネはニッケルメッキ仕様で、自由長も僅かに長いです。

  

付属のF用38mmです。全く使用されていないですね。レンズも僅かな周辺曇りで清掃が出来ました。

 

当時の電池が入ったままかと思いまして電圧を計測すると1.35V。良く見たら625で、たまたま1.35Vに電圧降下をしていただけですね。

 

たぶん、東京オリンピック直前に購入して競技を撮影した後、仕舞い込まれていたような初期型としては使用感の無い美品です。使用されているユニットは改良前のユニットで、現在、正常に作動する個体は少なくなっていますので、初期型マニアさんのコレクションにはよろしい個体でしょう。中古カメラ店様で見つけてください。

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シャッター不調のPEN-Wの巻

2019年01月12日 20時24分18秒 | ブログ

お正月に撮影しようと思ったらシャッターが切れない。ということで来ています。ファインダーも曇っていますね。作業に特に問題はないでしょう。

 

気にされない方も多いですが、持病の駒数ガラスのクラックです。オーナーさんは交換をご希望ですので交換しますが、梨地クロームのボディーよりも、塗装ボディーは接着剤が塗料と一体になって分離が面倒なんです。ご希望ですのでやりますけどね。

 

シャッターは過去に分解を受けていません。それでは不調になるのは当然です。

 

 

保護ガラスがいつもより薄いですね。普通は1mm厚の板ガラスが使われていますが、この頃(1965-5)に極少数のロットで0.8mmの板ガラスが使われています。コストダウン? ファインダーブロックの方は1mmに合わせて設計してありますので、隙間がガタガタで接着がしにくいのです。

シャッターリングを洗浄したら、彫刻文字の色入れが抜けてしまいました。入れ直します。

 

レンズはあまり良いコンディションではありません。曇りは後玉のコーティング。中央のポツポツは中玉です。

 

清掃をして行きます。

 

 

駒数ガラスは交換してあります。

 

 

内部はきれいですね。モルト交換と圧板の研磨。

 

 

 

シャッターは快調、ファインダーはクリアーになりました。

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Zuiko 42mmの巻

2019年01月11日 10時15分41秒 | ブログ

大口径の42mmですが、本体と装着するとカメラがフリーズするという問題が多くあります。標準レンズに比べて絞り負荷は元々大きいのですか、絞り羽根などに油が回っていると、カメラ側の絞りトルクでは押し切らずに止まってしまうということです。ちょうど、トラックと荷物の関係で、トラックも随分とポンコツになって来ているので余計に厳しい条件になっています。でもみなさんは42mmを付けたいのです。この個体は持病である中玉の曇りはなくて程度は悪くはありませんが、カメラのレンズマウントに付着するほど油が染み出しています。

ピンセットで絞ってみても羽根が復帰しません。

 

 

鏡胴を分離して洗浄脱脂をします。

 

 

ヘリコイドグリスの調整とレンズの清掃をして組み立てました。

 

 

このFTはシャッターバネが強化された後の個体ですから条件的には良いのですが、シャッターバネの弱い初期のFTやFでの使用には注意が必要です。フリーズはしなくともシャッタースピードの低下はあると思います。まぁ、それでも欲しい42mmの魅力かな。

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変なPEN-FVの巻

2019年01月07日 09時02分46秒 | ブログ

変なカメラが来ましたよ。PEN-FVかと思いきやセルフタイマーが無い。種明かしはメディカル機ですね。このままでは普通に写真を撮ることが出来ませんので、FV仕様に戻す(改造)して欲しいとのご依頼です。

 

こう言うことね。メディカルはFとFTベースがあって、仕様も少しずつ違うんですね。

 

アンダーカバーの留めネジが変なのが付いています。これはオリジナルではありません。

 

普通のFT(V)と違うところ分かりますか? 「Mバネカケ」の形状(カム開度)が違いますね。

 

 吊環の留めネジの片方が変ですね。これは緩んでいるわけではなくて、工場で組立時にネジを斜めに締めてしまったんですね。

 

反対側を観察すると・・左側のネジが締め付け時に電動ドライバーのビットを滑らせています。新入社員の組立工が組んだのか? 日曜日に遊び過ぎて疲れた体調で月曜日に生産されたか・・

 

すみません。新年早々、目が厳しくなったので更新はゆっくり目にします。観察すると、この個体は工場で作られたままという訳ではなく、途中で手が入っていますね。それによって、どこまで元のオリジナル仕様なのかは不明です。仕上げたシャッターユニットを搭載します。

まず、この個体は通常の生産ライン外で作られたようです。本体は35万台付近の仕様ですが、整合性が合わない部分もあります。巻上げレバーユニットですが、中央付近のネジ頭がスリ割りですね。これは20万台付近の仕様で、35万台でしたら+ネジになっているはずです。

左端上下がメディカルのプリズム。右が普通のFT(V)仕様。これにフレネルレンズが追加されます。

 

前板に組み込みました。

 

 

FV仕様に組立完了。

 

 

本体ダイカストは30万台以降ですね。分からないのは、セルフタイマーは装備していないのに、ユニットを取り付けるネジが差し込まれていて接着で脱落しないようにしてある。そもそもネジはいらないじゃん。

 

リターンミラーユニットのMバネカケは交換しました。そもそも、このユニットも30万台以降のユニットではないですね。中央のネジが大きなスリ割りになっていますが、これも20万台の頃の仕様です。工場のライン以外で部品を集めて組立をしたのでユニットの仕様が時期に合っていないのか、途中で改造をされたものか? じゃあ、わざわざMバネカケをメディカル仕様とする必要もないですね。ファインダーのピント調整をいじられているので、人の手が入っていることは間違いありません。

メディカル機の場合、セルフタイマーが省略されているので、取付けネジはいらないのですが、マウントのネジは体裁面なので付けない訳にも行かないのですね。で、裏からナットで留めています。

 

カメラ側は完成。付属の40mmですけど、絞り羽根が絞られない。当初は絞り羽根の油付着と思いましたが違いましたね。この個体は過去に分解を受けていまして、組み間違いを発見しました。どこだか分かりますか? じつは11時位置のバネが裏表逆に付いているのです。

正解はこのようになります。これでは、いくらシャッターを切っても絞りは動かないですね。

 

基本的にシャッターダイヤルなどもPEN-FVの仕様となりますが、シンクロソケットはM/X切換のFT仕様となっています。

 

 

Medical use の彫刻とトップはPEN-Fになります。

 

 

セルフタイマーが無いと寂しいですかね? Fの花文字を入れたのはそのためでしょうね。メディカル機でも、セルフタイマーの穴加工はされていて、グロメット(メ◯ラ蓋)が付いているタイプもあります。他人と違ったFTを所有したいという欲求は理解出来ますね。メディカル機は消耗している個体は少なく、機械は非常に良いものが多いです。どうせ使われないメディカル機を実用可能にして現役復帰させることも意味があるのかも知れません。過去に何台作り出したが忘れましたけど。

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ビジネスAで初詣の巻

2019年01月05日 16時02分44秒 | ブログ

セイコーのビジネスA(エース)8346-8000 27石 18000振りです。1966年から製造されたモデルですが、この個体は12月の製造ですので初期タイプでしょうか。諏訪精工舎の製造したCal.8346Aは従来の手巻き機械の上に自動巻き機構を載せる二階建て構造ではなく、地板のサイズを大型化して、歯車巻上げ方式の自動巻き機構を組み込んで薄型に仕上げられた準高級機です。したがって56系と同じように輪列の配置などが従来のオーソドックスな設計と異なっています。画像の日の裏側も部品点数は多く、バネを多用していて私は組立は苦手なんですね。で、年始の初詣用に仕上げようと去年の暮から始めていたのですが、あら~、裏押えが折れている~。

一時、作業に中段してNOS部品を調達しました。これで作業が出来ると思ったのですが・・。

 

あら~、コハゼも折れていました。失敗した。全部分解をして点検するのでした。こちらも調達しました。時間ばかり掛かって果たして間に合うのかいな?

 

まぁいいや、組んで行きます。7時から9時辺りに自動巻き機構が組み込まれています。

 

丸穴車は極小のネジ2本で留める設計。

 

 

流石に部品精度は良く、受ケはピタッと収まります。テンプも取り付いて、最後に自動巻受を取り付けます。

 

こちら側は終了。元気に動き出しました。

 

 

ひっくり返して日の裏側。こちら側だけで3つのバネが使われています。ちょっと目を離すと「ピンッ」と言って四次元の彼方に消え去ってしまいますので集中します。

 

残念ながら、文字盤に黒点と針の腐食があります。

 

 

オリジナルのSSベルトは程度は良好ですが、ケース保護のため革ベルトを着けますので使いません。

 

 

ケースは軽く小キズ消しをした程度です。プラの純正風防も用意しましたが、文字盤と針の程度が良くないし、元々の風防も研磨で何とか使えそうなので交換はしませんでした。ケースの外径は約35mmと大型で見やすく、厚みは約11mmと薄い(従来型に比べて)ので、腕にピタッと収まりが良いです。曜日の早送りとハック機能はありません。

で、何とか松の内の初詣に間に合いましたよ。都下、立川の諏訪神社です。子供の頃は、元日にパラパラっと初詣をする人がいる程度だったのに、近年は5日でもまだ並んでいますよ。子供の頃は初詣なんか行かなかったなぁ。近所の子供達は正月用に買ってもらった一張羅の服に着替えて、外でララミー牧場やローハイドの二丁拳銃、あとライフルマンのウィンチェスター銃で遊んだんだよ。お年玉は板垣退助の百円札1枚だったね。

で、お参りをしてお約束の記念撮影。今年も無事お参りが出来て神様に感謝です。

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