今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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激しく落下のPEN-W

2011年08月09日 23時08分44秒 | インポート

Dscf282684 今日は関東地方も35℃を超えで厳しい環境の時に厳しい個体が来ていますね。PEN-W #1004XXですが、前回のPEN-Wと打って変わって状態は良くないです。オーナーさんは、非常に細かく不良個所をご指摘になっていらっしゃいましたが、それでしたら、なるべく状態の良い個体を選ばれた方がよろしかったような気もしますが・・・で、一番の問題は、トップカバーの変形です。「少しへこみ、変形」とのことでしたが、これは少しではありません。重症です。画像が暗くて見にくいのですが、巻き戻しダイヤルからファインダー上部に掛けて激しく陥没をしており、ファインダー窓周辺には歪みとトップカバー下端が直線的ではなく、ファインダー下で「く」の字に曲がっています。私は、自動車の板金も経験がありますが、一度変形した金属は絶対に元には戻りません。自動車の板金はきれいに直っているように見えても直っているようにごまかしているだけなのです。このトップカバーのケースでは、衝撃を受けたカバー上面は圧縮の力が働いて、下端では引っ張り(延び)の力が働いて変形しているのです。これは、何トンの力でプレスしても戻せないのです。

Dscf2827541 上面から見ます。↑の面全てと、前面にも歪による変形をきたしています。特に、塗膜の密着が悪いですから、巻き戻し部分では塗膜の剥離があって、圧力を掛けると必ず塗膜を剥離します。その他、カウンター側の吊環部にもへこみがあります。

Dscf283089シャッターは未分解でしたが、奇跡的に作動していました。これが全て分解した状態。各パーツは特に問題はありません。いつものように組立てて行きます。

Dscf282854 ファインダーのご指摘もあります。まず、分解してみると、前回の分解が下手っぴ過ぎますね。前面の保護ガラスが接着剤の分離時にバリバリに割られています。接眼レンズも同じ状態。また、フレーム枠の曲がりもご指摘がありましたが、普通の状態でもPEN,PEN-S,Wは構造的にアバウトですが、この個体は、一度脱落をしたものを適当に接着してあったことが原因です。

Dscf283655 接眼レンズの角が欠けていますね。これは落下による衝撃で割れたものでしょう。これによって、ファインダー像に光が出て見にくいので交換をご希望です。画像は。良品と交換したところ。

Dscf283128 巻上げダイヤル下のカバーですが、これも取付け部が折れているので修理をご希望でした。折れているのをご存知ということは、ご自身で分解されたんですね。ところで、欠けた部分を合わせてみると・・・?? 。合いませんね。じつは、この欠けた部分はこのカバーのものではありません。合わないわけです。暑いんですから余計なことしないでほしい。

Dscf283228 レンズは後玉のバルサムは良好でしたが、コーティングの曇りがあります。かなり曇っているでしょ。これは、コーティングが劣化したもので、清掃をするとコーティングは無くなります。

Dscf283367 トップカバーは出来るだけ修正をしましたがね。完成したファインダーを組み込みますが、遮光紙が剥がされて無くなっていましたので新製しておきます。

Dscf283423 仮組みをしてみましたら、巻き戻し軸のホルダーが空転してしまいますね。本来、この個体には画像の調整ワッシャーが入っていたはずです。途中でみんな無くされてしまうのです。追加をして組みます。

Dscf2835641 いろいろありましたが何とか完成です。トップカバーは出来るだけ修正をしましたが、これで一杯です。へこみの修正は完全に出来るわけは無いので半端な作業で費用を頂戴したことはありませんが、リスクのある作業でもありますからクレーム無しでお願いします。まぁ、不注意の使用による落下と途中の修理が更に状態を落とした個体でしょう。


私のO/HしたPEN-W ?

2011年08月03日 23時13分13秒 | インポート

Dscf2812331 ご常連さんからPEN-WとPEN-Dが来ています。「動かなくなった」とのことで、すわ、過去に私がO/Hをした個体かな? と心配になります。このシャッターは非常に小さな動力で作動しており、今となっては、肝心な部品が磨耗している個体も多いのです。その状態では、同じように作業をしても信頼性(安定性)に差が出て来て、シャッターが開かないという状態に陥るユニットもあります。それだけに、非常に神経を使って組んではいるのですが・・

この個体は殆ど使われなかったのでしょう。トップカバーの塗装がこれだけきれいな状態で残っているのは、人間の手汗があまり付いていなかったからです。ただ、残念なことに、シュー角の部分が大きく塗膜剥離をしており、タッチアップがされています。これ、私かなぁ? もう少し上手に塗ると思うんだけどなぁ。。

Dscf281365 シャッターユニットを分離してみると・・これ、私の仕事ではありませんね。分解した3本のビスは白いネジロックが破られたままです。私の場合は、全て取り去ってからブルーのネジロックをしてあるはずです。ほっ・・

Dscf281457 過去にO/Hを受けているシャッターユニットですね。真面目な作業ですが、画像の部分などは分解はされていません。シャッターの部品消耗は少ないのですが、この組み方ですと動かなくなることがあるでしょうね。構造は簡単ですけど、本当のところは奥の深いシャッターです。

Dscf281564 そこへ持ってきて、シャッター羽根をベンジンか何かで拭きませんでしたか? このシャッターはそれは厳禁です。一時的には動くようになってもすぐにシャッター羽根は開かなくなります。で、シャッターユニットは良好に完成しています。洗浄済みの本体に組み込んで行きます。

Dscf2816511 トップカバーの裏をチュックします。カウンターガラスは工場を出たままではなくて交換されていますね。→の横ビス孔を良く見てください。ここには本体との隙間を調整するワッシャーが貼られていたはずですが、剥離して無くなっています。殆どの作業者は無視をするか、ワッシャーが入っていたことすら気がついていません。ワッシャーを追加して組立てます。

Dscf281815

PEN-Wは調子は最高に仕上がっていますが、この個体で特筆すべきことは、レンズの状態が現存の個体中では最高の部類に入ると言うことでしょう。バルサム剥離や黄変もありませんので、オリジナル通りの写真が撮れることでしよう。

次です。PEN-D #2633XXで、こちらもシャッター羽根が張り付いていますので、全く作動しませんね。こちらも過去に分解歴があり、巻き戻しダイヤル下の皿ビスのスリ割りが壊されています。ちょっとイヤな予感・・・全体的にはきれいに保存されている個体ですね。

Dscf281992 すみません。ちょっと検診に行ってました。で、このシャッターですが、前期頃までの個体はヘリコイドグリスが古いタイプでして、変質して流れ出すのですね。同じ形式のシャッターのPEN-SやWなどでは起きないトラブルですが、D系の場合は背中にヘリコイドネジを背負っている関係で、どうしても流れ込んでしまうのです。この個体の場合は画像のように、シボリリングの回転重さを規制するブラシが1個だけですね。本来は3個の設計ですけど、2個の個体もあって、工場での組立時に組立重さによって個数を選択使用していたようです。

Dscf282012 ハウジングカバーを分離してみると・・・見事にシャッター羽根が張り付いていますね。

Dscf282102 張り付きだけではなくて、メカもダメですね。ピンセット先のレバーがスローガバナーを押し切れていません。全く固着しています。

Dscf282357 ハウジング内のシボリ羽根を点検してみますと、見事に油が回っていました。まぁ、こちら側から浸透して来たので当然ですが。すべて洗浄してから組立てておきます。また、ヘリコイドグリスは全て洗浄してホワイトグリスに交換しておきます。

Dscf282445 で、シャッターは無事組立られました。本来、磨耗はありませんでしたし、シャッター羽根も油漬け(笑)でしたから保存状態は良好でした。調子は非常に良好です。これにヘリコイド部分をドッキングして本体に搭載します。と、ここまで終ったところに、名古屋のご常連さんからエクスパックが届きました。アラ~、時計ですね。ご自宅に有った物だそうで頂戴してしまいました。懐中時計やスモールセコンドも有りますが、ベルトの付いた時計が目に止まります。これは、私の好きなセイコーのスポーツマチックファイブの初期のモデルですね。キャリバー№6619Aの諏訪製21石で、日付の日送りがリューズをプッシュすることで簡単に出来るようになった2代目のモデルです。非常に斬新な文字盤ですが、1964年製で、東京オリンピックの年ですから、PEN-Wなどと同じ時代に製造されたモデルです。残念なことにケースに腐食が目立ちますね。これは、ケースの材質は真鍮製で、それにステンレスメッキを施したセイコーではSTPと称する仕上げです。この後のモデルは、無垢のステンレスですから、耐久性を改善したのでしょう。そのうちオーバーホールをして使いたいですね。PEN-Dの方は、完成をしていますが、画像を撮り忘れました。